小さな頃から我慢をしても、それをつらいとは思いませんでした。
男性とのお付き合いも普通にしてきま
した。高校生の頃から彼氏も出来ましたし、卒業間近に付き合っていた先輩と
初体験もしました。
普通の初体験でした。痛かったですが、好きな人と一つになれたという事で
嬉しくもありました。
大学は女子大で回りに男性はいなかったのですが、彼氏に連れられて
彼の大学の学祭に行った時の
ことです。彼の大学は中学からある私立で、彼氏はバレーボール部
だったので学祭には彼の先輩から後輩の高校生、中学生も集まっていました。
その中で私は一人の高校生から腕を掴まれたのです。彼氏は仲間の中で、
私の様子に気が付いた様子はありませんでした。
「連絡先を教えて」
その子はたじろぐ私から電話番号を聞き出すと携帯のメモリに入れました。
そして何事もなかったかのように仲間の輪に入っていきました。
ナンパされた、そう思いました。彼氏がいるのに連絡先を言ってしまう
なんて、だらしないような、ふしだらなような気がして自己嫌悪に落ちました。
でもその子から電話があった時は自分がモテたような気がして浮かれて
しまいました。
デートに誘われ喫茶店に入りました。甘い会話を期待していた私に
その子は言いました。
「先輩がいるのに、来たんだ?」
身体が凍ったようになりました。そんな事はお構い無しにその子は自分の
事を話しはじめました。通って
いる学校はお坊ちゃん学校で自分には合わないとか、バレーボールの
部活のこととか。次第に話に引込まれていったのです。仮に秀巳君と
しておきます。
彼氏にはナイショで秀巳君とデートを重ねました。デートは他愛もない
ものでした。映画を見たり、遊園地に行ったり、美術館に行ったり。
その日は、銀座の画廊に絵を見に行きました。そこはビルの中に
ありました。絵を見た後、帰るのにエレベータを使わずに階段で
下りていました。階段を使っていたのは私達だけで、秀巳君は階段の途中で
私を抱き締めてキスしてきました。
稚拙なキス。遊び人の彼氏に経験させられていた私には、秀巳君の
キスをそう感じたのです。でもキスしながら掴んでいた私の腕への力が
強くなってきて、指が食い込むように痛くなりました。その瞬間です
、私の身体に電流が流れたような感じがしてギクンと震えてしまったは。
自分の反応もびっくりしたのですが、そんな私を見ていた、秀巳君の反応に
びっくりしました。秀巳君は私から離れると、不思議そうな、それでいて、
とってもまじめな顔で私を見つめていました。私もどうしたのかと、
不思議そうな顔で彼を見ていると、彼はゆっくりと笑みを浮かべました。
何だかとっても嬉しそうだったので、私までつられて笑ってしまいました。
でも彼の次の言葉でまた固まってしまいました。
「あなたって、そういう人だったんだ」
「そういう人って?」
秀巳君は何も言わずに階段を降りていきました。
私は次第に秀巳君を好きになって、彼氏と別れようと思いました。
でもそれを秀巳君に言うと
「先輩、いい人だから付き合っていた方が良いよ」
などと言ったのです。私は秀巳君が本気で付き合っていないのだと
考えて、逆に秀巳君とは別れて彼氏と仲良くやっていこうと決めました。
でも、たまに電話が入ると、彼氏との約束もキャンセルして秀巳君に
会いに行ってしまうのでした。
そんなある日、秀巳君と渋谷でデートしていたら、ラブホテル外の方に
どんどん歩いていってしまうのです。期待と少しの不安を感じながら
後を付いていくと、1軒のラブホテルに入ってしまいました。
部屋に入るとベッドに腰掛けた秀巳君が尋ねました。
「なんで付いてきたの?」
「だって・・・好きだもの・・・私・・・」
「先輩とも来るんでしょ、こういう所?」
「今までは・・・でも秀巳君とこうなったら、ちゃんと別れる」
「いいよ、わざわざ別れなくても。薫子さんは何度も来ているかも
しれないけど、俺は初めてだから」
「初めて? 来たのが?」
「ううん、俺、ドーテーだから」
そう聞くと初めての相手に選んでもらえて嬉しくなってしまいました。
だから脱いでと言われた時は、恥ずかしさもありましたが、秀巳君の
目の前で洋服を脱ぎました。全部脱いでからベッドに横になるように
言われて仰向けに寝ると、服を脱いだ秀巳君が覆い被さってきました。
愛撫も何もなしに、秀巳君は既に大きくなったアレを私の身体に
擦りつけてきました。私は既に濡れていたようで、アレで肉を上下に
撫でられました。それからいきなり奥まで入れられたのです。痛いのとは
違うのですが、キツイ感じが苦しくて思わずうめき声を漏らしてしまいました。
付き合っていた彼氏の丹念な前戯と優しい挿入とは違っていました。
でも違っていて良かったのです。
同じだったら、私はどちらにも罪悪感を抱いたと思います。その時、私は
好きな秀巳君を自分の物に出来たような気がしていました。
秀巳君とセックスしても秀巳君の態度は、私を彼女とは見ていないようで、
もどかしく感じました。何度も彼氏と別れるといいましたが、止めるように
言われました。遊びなんだ、私とは! そう言ってなじった事もありました。
そんな時秀巳君は笑いなながら
「薫子さんとは楽しく遊べるんだからいいじゃない」
と言うのです。
そんなある日、彼氏に誘われてパーティに行きました。大学のパーティ
ですが、やはり先輩後輩も来ていて、その中に秀巳君もいました。
秀巳君は女の子を連れていました。その親しげな様子から二人が出
来ているのだと感じました。
次に会った時、秀巳君にそう言いました。
「あの娘は彼女なの?」
「いや、向こうはそう思ってるかもしれないけど、決めるのはかったるいから・・・」
「だから私も彼女じゃないのね?」
「だって先輩の彼女だもん」
「彼女とも寝たの?」
「したよ。女が足広げて待ってるんだもの」
「他にもいるのね?」
「そんなに多くないよ」
秀巳君が何を言っているのか、理解出来ないまま、私は興奮してきました。
涙も溢れました。
「こんなに好きなのに」
とか、色々秀巳君を責める言葉を泣きながら吐きつづけました。
秀巳君が側に寄ってきて、軽く私の頬を叩いたのです。はっと息を飲んで、
訳の分からない事を言っていたのが止まりました。びっくりして秀巳君を
見上げた時、もう一度、少し強く叩かれました。重たい音がして、頬が
かぁっと熱くなりました。
「あ・・・」
震え出した私を張り倒すような強い手が飛んできました。私は痛さと衝撃で
倒れ込みました。
コワイ・・・
秀巳君は怒っているのだと怯えました。
倒れた私の横に座った秀巳君は、普通の調子で話し始めました。
「薫子さんの身体、震えてるよ。感じてる時と同じだ。じゃなくて感じてんだよね?」
私は叩かれた頬を手で押さえながら、身体を駆け巡る感覚に震えていました。
感じている? 秀巳君の言っているのが本当なのか、分かりませんでした。
彼氏とのセックスでも秀巳君とのセックスでもイクという絶頂感とかは
感じた事が無かったのです。だから感じていると言われても、よく分かり
ませんでした。
「他の女とだって寝るよ。だって俺は毎日だってしたいんだよ。でもね、
こんなに興奮するのは薫子さんだけなんだ。分かる? 薫子さんの
苦しそうな目とか妬いている唇とか見てると興奮するんだよ。射精し
たいんじゃなくて、もっと興奮したいんだ」
「なに、言ってんの?」
眉をひそめて聞いた私に、秀巳君は急に冷たい表情になって吐き捨てるように
「お前がマゾだって言ってんだよ」
と言いました。
「私が変態だって言うの?」
悲鳴に近い声で言った私を、秀巳君は押し倒して、のしかかってきました。
何が起こっているのか理解に苦しんで抵抗もうまく出来ずに、そうは
言っても素直に身体を開くのではない私を乱暴に扱いながら、
秀巳君は私の中に入ってきました。秀巳君の動きに反射的に
「あっ、あっ、あっ・・・」
と声を上げる私を見下ろしながら秀巳君は
「お前は俺を興奮させるマゾなんだよ」
と言いました。