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                                  篠原 歩美




13)

「浣腸をするから、そこの絨毯の上で四つん這いになりなさい。」

「はい。」

 ご主人様は、浣腸が好きなのかな。

う、入ってきた。ゆっくり区切りながら入ってくる、これって、もしかして、

良いかもしれない。あとのことを考えると、そんなこと言ってられないけど、

薬が入ってくるこの感覚、悪くない。

 でも、いつになったら強姦・・・強姦じゃないか、心のどこかで求めてるんだから。

いつになったら抱いてくれるんだろ。

あ、浣腸、終わっちゃった。え?もう一本浣腸するの?

わー、ごぼごぼって、もしかして、お薬じゃなくて、空気が入ってきた。

「よし、仰向けになって、腰を上げなさい。」

「はい。」

 何それ、ご主人様の手にあるの、大人用の紙おむつ。

「毛が無くなったから、よく似合うよ。」

「ありがとうございます。」

 どうなっちゃうの、おむつをされて、何をするの?17才の乙女がおむつ?

恥ずかしいなあ、見られる見られないに関係なく、おむつをするって事自体が、

超恥ずかしい。もこもこして気持ち悪いな、これ。みっともない。かっこわる。

「服を着なさい。」

「はい。」

 きつくてはけないよ、こんなもこもこのおむつしてんだから。

「そのタイトスカートは、はけないみたいだな。」

「私は、このままでも我慢できます。」

 変な格好させられるよりはこの方がましかな。

「近くの本屋まで買い物を頼むつもりなんだが。」

「え?」

「そのままで行くかい?」

「ごめんなさい、出来ません、許して下さい。ここから出るなんて、

思ってなかったものですから。」

 紙おむつのままで外を歩くなんて、死んでもできない。ご主人様の

奴隷だけど、他では、普通の女子高生なんだから。

「これを着なさい。」

 グレーのセーターだ。薄手だから、今着ても変じゃないし、十分おむつも

隠れるし、袖をまくれば、見た目も平気かな。

「似合うね、良いじゃないか。」

「はい、ありがとうございます。」

 おなかがぐるぐるしてきた。いつもよりお薬が少ないから、20分くらいは

我慢できると思ったんだけど、危ないな。

「なんの本を買ってくるんですか。」

「SM雑誌。2,000円あれば足りると思う。」

「え?はい。」

「早くしな。」

「はい。」

 どうしよう。行くしかないのはわかってんだけど。ずいぶんと残酷なこと

考え出すよなあ。どんな顔して、SM雑誌なんか買えばいいんだって言うのよ。

 紙おむつのもこもこは、セーターがうまく隠してくれてるけど、短めの

スカートと変わりないじゃない。見えたらやばいよ。

う、う、お腹が痛い。

「いらっしゃいませー。」

「いらっしゃいませ。」

 店員が二人もいる。客が居ない。私一人注目されちゃう。構わないで

ほしいんだなあ。見ないでほしいんだなあ。どこにあるのかなあ。

あ、あった。でも、立ち止まれない。行き過ぎて。旅行関係の雑誌の

棚の前から、目だけで見よっと。わああ、恥ずかしい絵だ。こんな雑誌、

レジに持っていけないよ。縛られた女の人が、苦しそうな顔をして。

一目で何の本か分かっちゃうじゃない。やばい、観察している暇はないんだ。

このぐるぐるお腹は、かなりやばい。ええい、どうにでもなれ!

「いらっしゃいませ。」

 恥ずかしい絵が見えないように雑誌を裏向きに置いたのに、どうして

表向きに替えるんだよ、早く袋にいれろって。こっちの顔見るな。

「1,500円になります。2,000円お預かりします。」

 ジャ、ジャ、ジャー。あ、出ちゃった。立ったままで、しちゃった。

う、う、う、感じる。立っているのがやっとなのに。音聴かれなかったかな、

この店員に。

ジャ、ビリ、ブリ、ビビビ。

最悪、もう駄目だ。空気も入れたのは、このためか。

「大丈夫ですか、お客様、あ、おつりを。お客様。おつりをお忘れです。」

 ばーか。忘れてんじゃねえんだよ。恥ずかしくて、こんな所にいられる

かってんだ。」

ビビビビビ。ああああああ。

感じて走れない。こんな所じゃうずくまれないし。立ったままで漏らすのって、

すごく恥ずかしい。ちょっと足を開いて、腰を引いて、すごくかっこわるい。

おむつの中が、生ぬるくて気持ち悪い。恥ずかしい。きっとアヒルみたいな

かっこで歩いてる。 



14)


「お仕置きだな。」

「はい、ありがとうございます。」

「裸になりな。」

「はい。」

 おつりをもらわなかっただけなのに、お仕置き?あの状況では無理だよ、

絶対に。おならの音は聞かれちゃうし、お漏らしして感じてきたし、

おむつの中はなま暖かくて気持ち悪かったし、恥ずかしくて恥ずかしくて

感じてきたし、これじゃ人目に付くところには居られないよ。

でも、理由はどうでもいいんだ。お仕置きって、縛ってもらえるみたい。

ちょっぴり、気になる。

「うれしそうだな。」

「そんなことありません。怖くて、恥ずかしいです。」

 ちょっと嘘かな。怖くて恥ずかしいのは本当だけど、何かを期待している。

怖くて恥ずかしい思いが、胸をじーんとさせる。

 柱を抱くように縛られてる。胸は上下で挟むようにして、う、乳首が

立ってきた。え?お腹に回ったロープが股を通って後ろに?

クリトリスに擦れて、感じる。お尻の割れ目に沿ってロープが持ち上げられて、

どこかに固定したみたい。無理して動かなければいたくはない。

でも、ちょっとの動きで、ロープが擦れて感じてくる。悪くない。

なんだろう。股で擦れるロープの気持ちよさの他に、何かある。

痴漢から逃げて、ご主人様に抱きしめられたときのような、安心感がある。

自由を奪われた不安や恐怖よりも、ご主人様に身を委ねた安堵感の方が

強い。そして何よりも、こんな姿になったことの恥ずかしさで感じちゃう。

「いてえ!」

 いきなりお尻をたたかれた。

「いてえとは、ずいぶんと下品な言い方だな。」

「申し訳ありません、考え事をしていたものですから。」

 急に、しかもいきなりお尻をたたかれて、痛いですわ、なんて言えるかよ。

「痛い。」

 スリッパでたたいてる。ひりひりしてきた。痛いのは嫌なんだよな。

「あ、あああ、あ。」

 乱暴に胸を揉んできた。お尻が痛い。見えないけど、お尻が二倍に

腫れ上がったみたいに感じる。痛いのはやめてくれって。

「う、いたい、あ、う。」

 胸を揉みながら、たたくのもやめない。ロープも擦れて、濡れてきた。

「あ、あ、あ、う、いた、あ。」

 じーんとしてきた。痛いのは痛いだけで、やっぱ、好きじゃない。

早くやめてほしい。乱暴に胸を揉むのは良いけど、スリッパはやめてほしいな。

「やめて下さい。」

 返事をしてくれない変わりに、強くスリッパでたたいてきた。

「痛いのは嫌です。」

 また、黙ったまま強くスリッパでたたいてきた。黙れってこと?

 お尻が熱い、痛い、ひりひりしてる。変な感じ。乱暴に乳首をつままれて

痛いけど、それが気持ちいい、クリトリスもその回りもロープで擦れて

気持ちいい、お尻の穴のあたりもロープに擦れて気持ちいい、

それ全部が、どうしたんだろう、お尻をスリッパでたたかれた痛さと

合わさると、信じられないけど、もっといい。私、たたかれて、感じてる。

 股を締め上げていたロープがはずれた。あ、もしかして、う、濡れてる

ところに指を入れて、ううう、それでお尻の穴を揉んでいる。

お尻は嫌なのに。何度も何度も指を濡らしてはお尻の穴を揉んでいる。

これだけでいきそう。ああああ。お尻の穴に押しつけてきた。

い、い、いた、痛い。もっとお尻をつきだして、力をぬいて、それでも痛い。

あ、入ってきた。太い。ゆっくり奥に入ってくる。胃袋にまで届きそうなほど、

違和感がお腹の中にある。ふううう。ゆっくり動かしてきた。好きじゃない、

やっぱ。前に入れてくれないかなあ。

「おまんこに、入れて下さい。お尻じゃなくて、おまんこが好きなんです。」

「だめだ。」

「お尻は、汚いです。」

「あとで舐めてもらうから、構わない。」

 動きが早くなってきた。何で、嫌いなのに、やめてほしいのに、

感じてくるんだ。胸を揉まれてるのと、後ろから攻められてるので、

駄目だ、立っていられない。いく、あ、ああ、うううううう。


15)



「いらっしゃいませ。」

 え、何、誰?

「何を、そんなに驚いているんだね。」

「だって、ご主人様。」

 誰だって、玄関を入ったら、裸の男が三つ指ついて現れたら、驚くよ。

「ケンだよ。」

「え?」

「元恋人のケンだよ。」

 この恥ずかしい姿をした男が、あの素敵に見えてたあいつだなんて。

「今日は、女王様に仕えるように命令されております。どのようなことでも

いたしますので、言いつけて下さい。」

 よしてくれよ。あいつのことなんか、考えたくもない、思い出したくもない、

ましてや、そんな惨めな姿なんて見たくもないよ。だまされたときは、

殺してやりたいくらい憎んだけど、そのお陰で、ご主人様に巡り会えた訳だし、

今はなんとも思っていない。

「女王様といきなり言われても、何をしたらいいか分からないだろうから、

私から命令しよう。」

「はい。分かりました。」

 どうなっちゃうの。今日は期待はずれかな。

「どうした。」

「いえ、別に。分かりました、ご主人様。」

「それじゃ、おまえも裸になりなさい。」

「ケン、おまえは女王様に舌で奉仕しなさい。」

「はい。」

「おまえは、仰向けに寝ているだけでいい。」

 ま、お仕置きと思えばいいか。我慢、我慢、気持ち悪いけど。

 こいつ、足をなめている。足の指に絡まる舌の感触が気持ち悪いな。

それに、汚い。ちょっとくすぐったいだけで、ちっとも気持ちよくない。

こいつとは、相性が合わないんだよ、絶対に。それにしても、こいつ、

だらしない。男はこんな事しちゃだめだね。こんなかっこわるいやつに、

しゃれじゃないけど、なめられたくない。

「女王様は気に入っていないようだな、もっと気を入れなさい。」

「はい。」

 いいよ、気なんか入れなくても。

あ、頭が上にあがってきた。くるぶし、ふくらはぎ、膝の裏、太股の内側、

げ、あそこも。何でだろ、全然感じない。逆に気持ち悪い。

はっきり言って、やめてほしい。ご主人様の命令でなかったら、

蹴飛ばしてるんだけど。 そんなに一生懸命にならなくてもいいって。

あ、う、そこクリトリス、やだ、そこはおしっこが出るところだって。

汚いよ、あーあ、あそこに舌が入ってきた。もう、いや。やめてほしいな、

気持ち悪いだけだもん。

「四つん這いになりな。」

「はい。」

 これ、気に入らない。奴隷の身分で生意気かもしれないけど、やめてほしい。

「いや、だめ、やめて。」

 あ、う、うむ、汚いって、お尻の穴にまで舌を入れてきた。

「やめて。」

「駄目か。」

「ご主人様、許して下さい。」

「女王様が嫌がってたんじゃしょうがない。それじゃ、おまえが、ケンに

やってやれ。」

「え?これでですか?」

 これ、バイブレーターで、まさか、嫌だ。そんなこと、恥ずかしいよ。

「ケン、穴を出しな。」

「はい、よろしくお願いいたします、女王様。」

 きったないお尻。ここに、これ、入れるの?え?

「何をしている、遠慮はいらない。早くしなさい。」

「はい。」

 こいつ、情けない格好。

「いくよ。」

「お願いします。」

 やだあ、結構太いのに、入っていく。

「う、うううん。」

 え?これだけで、おちんちん大きくしている。

「動かすんだ、激しくしても大丈夫だから。」

 全く、こんなだから、まともに女を喜ばすことが出来ねえんだよ。

こうされるのが、気持ちいいのかい。やってやるよ、やけくそだ。

ま!はしたないお言葉。男のお尻にバイブレーター出し入れしながら、

はしたない言葉もないか、恥ずかしいけど。

「あ、あ、うんんん。」

 感じてるよ、こいつ。こうかい、これがいいのかい。

「む、む、う、あ、ああ、ううう。」

 はいはい、これは、どうだって。

「女王様。」

「は?」

「あの、その、しごいても、いいでしょうか。」

「こいつ、何言ってんですか、ご主人様。」

「奴隷に直接聞きなさい。」

「どういう意味?」

「女王様に、お尻を、掘って、いただき、気持ちが、よくなりましたので、

オナニーをして、一人で、いかせて、もらって、構わないで、しょうか。」

「好きにしな。」

「ありがとう、ございます。」

 そんなにいいなら、手伝ってやるよ。ほら、ぐりぐりぐりぐり。

スゲ、結構深く入るんだ。こんなのもいいかもね。

一気に引き抜いて、入口のところで、もぞもぞやるの。

「あ、あ、う、うう、むむむ。」

 感じてるみたいだね、手の動きが早くなったみたいだし。

「あ、あ、あ、あ、うん、ふん。」

 あれ、どうしたんだろう。感じてるこいつを見ていたら、濡れてきた。

「いい、女王様、もっと、強く。」

 こうかい。これでどうだ、ってか。

「あ、いい、ありがとう、ございます。」

 じらしてやろうか。つんつん。

「あ、もっと、激しく。」

 ハイよ、ハイよ、むちゃくちゃにしてやるよ。

「いい、ああ。」

 背筋がジーンとしてきた。こういうのも、なかなかいいじゃん。

男を、もてあそんでる、おもちゃにしている、てな感じかな。

ほらほらほらほら、ぐううっと入れてやるよ。

「ああああああ、うううううう、いい。」

 これって、結構、か・い・か・ん、気持ちいい。



16)


 ご主人様にお会いして、七週間目。あっという間だったような気がする。

今日こそは。 白のワンピース、ご主人様は気に入ってくれるかな、

それよりも、控えめのレースが可愛い白のショーツの方かな。

今日身につけているものは、二時間もかけて吟味したんだから。

「抱いて下さい。」

「どうしたんだ、入ってくるなり。」

「だって、いつまでたっても、」

 心から、望んでる、変態野郎って心で呼んでた奴なのに。変わった、身も心も。

「奴隷とは、セックスしないのが私の主義なんだが。」

「お願いを聞き入れてくれないなら、」

「どうする。」

「私が、ご主人様を犯す。」

 そんなに笑うな、本気だぞ。

「可愛い奴だ。」

「抱いてくれるんですか。」

「ああ。」

 うれしい。抱き上げて、ベットに運んでくれるんだ。寝室に入るの初めてだ。

きれいな部屋。地味だけど、きっちり片づいている。

「ありがとうございます。」

 わくわく、ワンピースを脱ぐのも、下着を取るのも、あまり恥ずかしくない。

いやいや服を脱ぐ恥ずかしさもよかったけど。

 でも、奴隷とはセックスしないのに、抱いてくれるってどういう意味?

もしかして、私は、奴隷よりましって事かな。

「あの。」

「よけいなことは聴くな。」

「はい。」

 太ってると思ってたけど、ご主人様の裸、結構筋肉質で締まって

いるじゃない。わ、いきなり、来た。

はいはい、どうぞ、どうぞ、淫らに足を広げてあげる。

え?もう、濡れてるからいいけど、いきなり入れるの?

前戯とか愛撫とか、ないの?

「う、うう。」

 もう、これって、乱暴の一歩手前って感じ。これがセックス?

激しすぎる。胃袋まで突き上げてくる感じ。

「は、ううん。」

 わああ、胸を揉む力も半端じゃない。痛い、けど、気持ちいい。

「あ、あ、あ、あ、あああん。」

 地震みたい。ベットが揺れてるだけじゃなくて、私の頭の中まで

揺れている。耳を噛んだ。痛い、けど、気持ちいい。

「うん、ううん、うううん、あああ、いい。」

 腰から背骨に電気が駆け上がるみたい。溶けそう。

「はあああああん、いい、ううううむう。」

 腰のあたりが、自分の肉体じゃなく、別の物体になって、何もない

暗い穴の中に吸い込まれて行くみたい。

「ふううううう、あはああ、う、う。」

 ジーンなんて生やさしいものじゃなく、全身びりびり。

「あ、あ、あ、あ、う、う、う、いい、い、いい。」

 乳首を噛んだ。痛い、けど、気持ちいい。

「いや、いい、ううはうう。」

 あ、だめだ、最高。

「うん、ああん、は、ううううう。」

 初めて、こんなの、信じられない、いい。

「うん、ああん、い、あうう、ううう。」

 だめだ、わーあ、今までのと全然違う。これだ、きっと。

「いく、いく、いい、いい、もっと、もっと。」

 ポニーテイルをそよがす夜風が、とっても気持ちいい。いつも通っている

駅前商店街のショーウィンドウが、いつもより明るく見える。

あ、お花やさん。そうだ、花を買って帰ろうかな。何がいいかな。

あ、可愛い、あの、ひまわりにしよう。






あ と が き


 梅雨時期という湿っぽいちょっぴり暗いイメージの季節、そこに、

色を変えて咲くという紫陽花のしたたかさが、私は前から好きでした。

だから、題名に使ったのですが、後で、花言葉を調べて驚いてしまいました。

移り気という花言葉は予想どおりだったのですが、ピンクの花は、

乙女の夢、処女の幻想。白い花は、気の迷い。空色の花は、冷淡。

あまりにもはまり過ぎだったので、調子に乗って、敬慕、崇拝、という

花言葉を持つ”ひまわり”を、最後、主人公に買わせてしまいました。

私自身が、移り気のしたたかさから、一途に敬い慕うようになりたいという

願いを込めながら。

 最後に、未熟で未完の作品ながら、このようなすばらしいページに

掲載していただき、そればかりか、温かい励ましのお言葉、ご助言を

いただきました山岸先生に、心より感謝いたします。

また、この小説の貴重なヒントとアドバイスをいただきました東海帝王様に、

この場をお借りして、御礼を述べたいと思います。

                                平成十一年五月




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