Sの奴隷とMの女王様



メル友のS男性から久しぶりにきたメールに「お願い」があったのがひと月前だった。

もともとMっ気もあると言っていた人だったが、転勤で一人東京で暮らし出して、

環境の変化の影響か、Mの面が強く出てきたらしい。

女王様に苛められたい、と強く願うが、誰でもいいというわけでもなく

できるなら、自分を知る信頼できる相手に、ということで、あえてMの私にお願いしたらしい。

最初は無理だと思い断っていたが、願望が強いことと、

彼が求めるものが、私に似ていたので、少しは役に立てるだろうか、と思い切って承諾した。

彼が求めるもの・・・羞恥と、猿轡と、縛りと、痛み

ひと月の間、何度もメールをやりとりして、やっとだいたいのことが見えてきた。

しかし、本当に私に彼を悦ばすことができるだろうか。すごい不安だった。

ネットで調べて、初歩の縛りを覚えた。浣腸の仕方、猿轡の仕方、

何より女王様がどういうふうにあるべきなのか、それが一番わからなかった。

SM小説館にある東海帝王さんの「SとMの狭間で」を読み、女王様のすごさを知った。

私が膝まつきたいくらいだ。

じゃあ、私は?Mの私の女王様ってどうあったらいい?

すごく考えたけれど、よくわからない。

わかるのは、彼が被虐を求める気持ちと、与えられたときの快感。

だとしたら、私がされて気持ちよかったことを与える、そして共感する。

この形しかできない、と思うに至った。



彼が逢う前日によこしたメールに、こんなことが書いてあった。

「息のできない苦しさを味わいたい。だから、猿轡した後に鼻と口にビールをたらして欲しい。」

「強い痛みを求める」

息の出来ない苦しさか。経験したことあるから、よくわかる。

生半可なものじゃない。だけど、頭がボーとしてくると、その向こうに花畑が見えてくる。

それは、死の一歩手前が、入り口か。

血圧が落ちて、意識がなくなるのに似てる。あれは花畑じゃなくて、井戸の中に落ちていくのだけれど。

しかし・・・一つ間違えば私は殺人者だよ。なんて思ったりもしたけれど、

実際にそこまで本当にできるのかわからないから、一応心構えだけはしていくつもりでいた。



さて、とうとう当日の夜がきた。

ホテルに入り、準備。彼はシャワーを浴び、私は黒の下着にストッキング。

二人とも、どうもソワソワして落ち着かない感じ。

やっと彼の口から「やりましょうか」という言葉が出た。

「じゃあ、まず挨拶ね」

「お願いします」

「ダメ!(バシッと左頬にピンタ)。もっと心をこめて、奴隷の気持ちを誓いなさい。」

「今日は、女王様に気にいっていただけるようにがんばりますので、よろしくお願いします」

「本当にそう思ってる?(右頬にピンタ)」

「はい」

「じゃあ、苛めてあげるから、そこへ立ちなさい」

立ち上がった彼の肉棒は、すでにそそり立っていた。

鞭で、肉棒をピタピタと軽く叩きながら、

「さあ、何をして欲しいか言ってごらん」と言うと

「パンティとストッキングを履かせてください」

「男のくせにそんなものを履きたいの?」

「はい、変態ですから。」

変態!ドキッ・・・「そう、変態なの。どのくらい変態か見せてごらん」

彼がパンティとストッキングをはきだした。大きな身体を揺らせながら、女性の下着をつける姿は

本当に異様だ。

「本当に恥ずかしい姿ね。でも、似合うわよ。うん、似合う。うれしい?」

「ありがとうございます」

そう答える彼のモノは一段と大きく張り出していた。

そこを鞭でつつく。「うっ!」という声が洩れる。

「欲しかった痛みをあげるから、そこに寝てごらん」

私は床に仰向けになった彼のモノを鞭で叩きはじめた。

最初はほどほどに、だんだん強く。きっとかなり痛いだろう。

それでも、パンティはどんどん盛り上がっていく。

腕、足、背中にお尻、にも鞭をおろす。不慣れだから、うまく叩けずよけい痛いと思う。

初めて鞭をおろした時、「怖い」と思った。叩くのが怖いと思った。

叩いているうちに、怖さは消え、今度はうらやましさが生まれた。

痛いよね、痛いよね、気が変になるよね・・・

そんなことを言いながら鞭を下ろしていた。

鞭の痕が赤く線を作って表れてきた。

紅潮する肌を見ていると、異様に興奮する私がいた。

「桜色になってきた。よかったね。」まるで自分に言っているような。



「ご希望の浣腸をしてあげるね。お尻を出して。」

醜い尻の穴がさらされた。彼が犯して欲しいと強く願った尻の穴。

アナルバイブや、アナルストッパーも持参した。

私は、穴にゼリーをたらし、ゴム手袋をした指をグスグスと沈めた。

「うううぅぅ〜〜」

うれしそうな声が洩れる。

「どう?気持ちいい?うれしい?」

中に指を動かしながら、そう問うと

「ありがとうございます、うれしいです」と上ずった声で答えた。

気持ちいいよね、私も大好き。

「一つ40ccの浣腸を、幾つ入れてほしい?」

「全部・・・」

「全部って10本だよ。400ccだよ。いいの?」

「はい」

私は指を抜くと、浣腸液のキャップをとり、穴に差し込んだ。

ゆっくりと液が吸い込まれていく。

2本、3本・・・だいぶ苦痛に表情が歪んできた。

「洩らしちゃダメよ。もらしたら、おしおきよ。」

アナルストッパーを入れようとしたら、穴から液が噴出した。

「こら!洩らしちゃダメって言ったでしょ。あとでおしおきだからね!我慢のない子だね」

「くっくっくっ〜〜」

「初めてだから、ここらへんで許してあげる。トイレへ行っていいよ」

彼は一目散にトイレへと足にパンティを絡ませながら行った。



長〜いトイレタイム。だいぶ辛そうだ。

そうだよね。私はグリセリン浣腸は苦手で、50%液を30CCでも泣けてきてしまうもの。

だから、お腹にやさしい微温湯でできるように、エネマポンプを買って、

自分でしているんだもん。

かわいそうなことしたかな。でも、彼の望みだから仕方ないよ。

「いつになったら腹痛とれる?」とトイレから声がした。

「全部出たら!」と一言答えた。



彼を待っている間、私は手持ちぶさたなで、持っていた鞭で自分の身体を打ち始めた。

憧れの一本鞭。よくしなり、振り下ろすと「ビュウーッ!」と音が鳴る。素敵!

私は思い浮かべてた。こーじさんの小説の銀の鈴が、鞭をあびて転げまわりながら、イク場面を。

この鞭で叩かれたら、かなり痛いのだろうなぁ。痕がどんなふうにつくんだろう。

足の先からペチッペチッと鞭を下ろしてみた。ちょっとでも、けっこう痛い。

少しづつ強くしていった。太もものあたりではかなり痛かった。

ショーツの上からだけど、おまんこに向かってふりおろしてみた。

やっぱり怖くて弱くなってしまう。毛がないから、モロにクリトリスにあたる。

痛い!痛いけれど、もっと強くしたい。少しづつ手の力を強くしていった。

なかなか上手くクリトリスに当たらない。それでもいい。

おまんこ全体を夢中で叩いた。なんともいえない熱さ。

たまらなくなって、鞭をおき、指をおまんこに突っ込んだ。

熱くねっとりとした状態のおまんこを、グニュグニュと激しくかき回した。

あ〜たまらない。私が責められたい。苛められたい。

ショーツをおまんこに食い込ませ、こすりあげた。熱い、熱い。

泣きたい気分だ。



トイレの水の音がした。急いで指を抜き、Sの顔をした。

「もう、たまらんわ。全然気持ちよくない。」

疲れた顔で彼が愚痴り始めた。

「おしまいにする?それとも縛る?」と聞くと

「やっぱり縛られんと興奮しないな」と言う。

では、せっかく勉強したのだから、と赤い綿ロープで

後ろ手に縛りあげた。本当に初歩の手と胸の縛りだけ。

それでも、彼はすごく興奮して、また勃起した。

縛った状態で手ぬぐいの猿轡。ボールギャグをくわえ込み

その上から三重の手ぬぐいの猿轡をした。

ボールギャグのベルトで目は覆われ視界はない。

鼻は三重に覆われて息も苦しいはず。ただ耳だけが働いていた。

呼吸困難を味わう為に、手ぬぐいの隙間から水をたらした。

湿った手ぬぐいでは、かなり苦しいだろうな。

表情はもちろんわからない。

「どう、気持ちいい?うれしい?」と聞くと、頷く。

どんどん勃起は高くなり、まさしくそそり立っている状態。そのうえ、先からは我慢汁がたれていた。

「あらら、汁を洩らして困った子ね。我慢がないんだから」

鞭でペチペチと軽く叩くと、ビクンビクンと、痙攣する。


そのまま立った姿勢で、乳首を噛んであげた。舐めて噛んで、また舐めて。

うれしそうに乳首が勃つ。かわいい乳首。

どこでおしまいにするか、見極めが難しい。とりあえず、時間を測り

ほどほどで、声をかける。

「一度解いて、今度はご希望の私のショーツを入れてあげるね」

ゆっくりと猿轡を解いていく。とりあえず、無事だった。

「足も縛ってください」とのお願い。

今度は、口にショーツを突っ込み、その上にコブを作った手ぬぐいを噛ませ、

また湿った手ぬぐいを三重に巻いた。

そして、ベッドに転がすと、足を蛙の足状態に開かせて、曲げた状態で縛った。

「すごい恥ずかしい姿だよ。ビデオに撮ってあとで見せてあげるね」

転がった姿勢のまま、乳首に洗濯バサミをそおっと挟んであげた。

「これはお前のために買ってきたんだよ。これは気持ちいいよ。私好きなんだ、これ」

乳首を挟んだまま、洗濯バサミを引っ張ったり、よじったりする。

「うう〜うう〜」痛いのか、気持ちいいのか、わからない声が洩れる。

私は彼の頭側に回り、後ろから頭を抱えるようにすわり、手ぬぐいの上から

鼻と口をさらに押さえた。

「こうして欲しかったんだよね。どう?苦しい?気持ちいい?」

彼が身をよじり始めた。

「おしまいにする?」と聞くと首を振る。そのまま押さえ続けた。

何分たっただろう。「おしまいにするよ」と言うと、やっと頷いた。

身体を起こし、猿轡を解き、ロープも解いた。

第一声は

「俺にはMはできん。なんにも気持ちよくないぞ。痛いだけで、やってられんわ」

おいおい、それじゃあ、私の努力はなんなのよ〜〜!!

「ほどほどがいいな。気持ちいいくらいの痛みで。」

勝手に言っていなさい。

さんざんメールで、痛いことして欲しい、苦しいことして欲しい、とかって本格的なことを言っていたのに

実際やってみると、浣腸はお腹が痛いからやってられん、鞭は痛いからほどほどで、とか

勝手なことばかり言っている。すごく腹が立ってきた。

でも、口でそう言いながらも、肉棒だけはしっかりと悦んでいたよ。ガンガンにそそり立っていたもの。

頭と身体は別ものなのね、きっと。



「ねぇ、ちょっとだけ猿轡していい?」

あれ?Sに戻ってる。あれよあれよという間に、しっかりと手ぬぐいで猿轡をされてしまった私。

やっぱりこうされるほうが気持ちいい〜。やっと自分の居場所に帰ってきた気分になった。

「うん、君にはやっぱり猿轡が似合うよ。うれしい?」  私は頷く。

刹那い息苦しさが身体を疼かせる。縛られたい・・・

「ふぃふぁっふぇふふぁふぁい(しばってください)」

猿轡の奥から一生懸命お願いをした。彼は意地悪して何度も聞きなおす。

やっとのことで縛ってもらえた。

このとき、ふっと気づいた。

同じ縛りでも、個性があるんだってことに。

彼の縛りは、どちらかといえば硬い。肌に食い込むというより、針金で巻かれているような感覚を覚える。

気持ちよさはなく、ただ拘束感を強く感じた。

ご主人様はソフトだったように思う。丁寧に独楽の紐を巻くように綺麗に巻いていった。

それは楽しそうに縛るのだ。こちらもうれしくなってしまう。発想がすごい。

Hさんは、じっくりと縄が肌に食い込むように縛ってくれる。

丁寧に気持ちいいところに縄があたるように気を配ってくれる。

どれがいいとか、悪いとかではなく、ただ縛るという行為だけでも、人間性が表れるのだということ。

そう思うと、もっと色んな人に縛られてみたい、なんて思ってしまう。

もちろん、縛られるということは、命を託すのだから、誰でも、ということではないけれど。



結局彼は、自分のS性を再認識して東京へ帰って行った。

私も自分のM性を、また縛りについても再認識できたのだから、まあよしとしよう。

もう、女王様役はこりごり!








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