日本の歴史に見る肉食と屍姦



いざなぎ、いざなみ神話  伊邪那岐命は死んだ伊邪那美命にどうしても会いたくなり、黄泉国へ追って

いった。黄泉国の殿舎の塞がれた戸から出迎えた伊邪那美命に向かって、

伊邪那岐命は「愛しい我が妻よ、私と一緒に作った国はまだ作り終わっては

いない。だから一緒に帰ろう。」といった。これに伊邪那美命答えて

「悔しいことです。なぜもっと速く来てくれなかったのです。私は黄泉国の竃で

煮たものを食べてしまいました。もう現世には戻れません。でも愛しい夫が

せっかくここまで来てくれました。私が帰れるように黄泉神と相談してみましょう。

その間決して私を見ないで下さい」といった。

伊邪那美命はそういってから殿舎の中に帰っていった、長い間待っていたが

待ちきれなくなり、結った髪の左に刺していた湯津津間櫛(ゆつつまぐし)の

両端にある太い歯を一つ取って、火を灯して中に入り見た時、伊邪那美命は

蛆にたかられ、咽がかれてむせぶような音をたてていた。頭には大雷、胸には

火(ほの)雷、腹には黒雷、陰部には拆(さき)雷、左の手には若(わか)雷、

右の手には土雷、左の足には鳴(なり)雷、右の足には伏(ふし)雷、あわせて

八はしらの雷神が化生していた。



須佐之男命の大蛇退治  須佐之男命は、出雲国の斐伊川の上流、鳥髪(とりかみ、船通山の麓)という

所に降り立った。この時箸が川上から流れてきた。それをみて須佐之男命は

人が川上にいるのだと思って、人を尋ね求めて川をさかのぼると、老夫(おきな)

と老女(おみな)の二人が、童女(をとめ)を挟んで座って泣いている。

須佐之男命は「お前達は誰だ。」と聞いた。老夫は答え、「我々は国つ神、

大山津見神の子です。私の名は足名椎(あしなづち)といい、妻の名は手名椎

(てなづち)といい、娘の名は櫛名田比売(くしなだひめ)といいます。」といった。

 また「お前が泣く理由はなんだ。」と問えば、

「私の娘は、本当は八人いましたが、高志(出雲国神門郡古志郷)の八俣の

遠呂智(おろち)が毎年来て娘を食らうのです。今がその時期なのです。だから

泣いているのです」

 そして「どのような姿をしているのだ。」と問えば、「その目は赤いホオズキの

ようで、一つの体に八つの頭と八つの尻尾があります。そしてその体には苔や

檜や杉が茂り、身の丈は八つの谷八つの丘を渡るほどで、その腹は常に血で

爛れています」と答えた。

 速須佐之男命は、老夫に「お前の娘を私にくれるか」と聞くと、「恐れ多いこと

ではございますがあなたの名前を存じません。」と答えた。

 それに答え「私はは天照大御神の弟だ。今、天より降って来たのだ」といった。

足名椎手名椎は「それは恐れ多いことです。もちろん差し上げます」といった。



酒 呑 童 子

酒天童子は種族的な分類をすると”鬼”になるが昼間は赤い肌をした大男で、

夜になると恐ろしい鬼の姿に変身するのだという。
また、酒天童子は”茨城童子”

”星熊童子””熊童子””虎熊童子”という四天王の鬼を従えており、都の姫たちを

さらっては身辺の世話をさせたあげく、その肉を喰らった。


 そこでときの帝は占い師阿倍晴明にことの詳細を話し、助言を求めた。すると、

阿部晴明は酒天童子という鬼が諸悪の根元であるみかどに申し出た。みかどは

源頼光と配下に酒天童子の退治を依頼する。頼光らは天から”鬼にとっては

毒となる酒”を授かり山伏の格好をして酒天童子の屋敷に忍び込んだ。


酒を持った頼光らを屋敷に入れた酒天童子は頼光の持ってきた酒を飲みながら

大いに宴を楽しんだ。ここで、頼光のすごいところはなんと血の混った酒を酌み

交わし、人肉を喰らったと言うのである。

酒天童子に心を開かせるための策とはいえ、さすがは頼光である。
 そのうち、

すっかり酔っぱらった酒天童子は自分の寝床で寝てしまう。そこで、頼光らは、

いよいよ決戦の時が来たと鎧で身を固めて酒天童子の寝床を襲撃する。


そして壮絶な死闘が繰りひろげられた末頼光は酒天童子の首をなぎ払った。

酒天童子の首は大きく宙を舞った後頼光の兜に食らいついて息の根が止った。 

こうして、都の姫たちを救い、見事酒天童子退治を成し遂げた頼光はその首を

持って都に帰ってきた。




怪談・牡丹灯篭

やせ衰えていく自分には気づかず、骸骨に毛の生え残ったドクロを抱く姿は

凄惨なものだ。男はイイとこの坊ちゃんで新三郎という。幽霊はお露——。

名も体も美しい お露に惑わされて新三郎はある夜、しっかり結ばれてしまう。

物語のクライマックス、その幽霊が新三郎を迎えに来る。美女の正体を

見破った和尚が、新三郎を助けようと、離れの座敷に閉じ込める。

おびただしい数のお札が貼りつけてあるので邪悪なものは中に入れない。

「今夜堪えれば、妖怪との縁が切れる。もう悩まされることはないんですぞ」

そういわれた新三郎はやせ衰えた顔に安堵の表情を見せたが、今宵限りで

お露に会えなくなると思うと身を切られるような寂しさを覚えるのだった。

やがて、お露がやってくる。

カラン、コロン…………高下駄の音、手には牡丹灯篭の朧ろな明かり。

もちろんお露は座敷に入れない。戸に触れることさえできない。そこでお露は

中にいる愛しい男に向かってこう囁くのだ。

「愛しい恋しい新三郎さま、どうして逢っては下さらないのですか。何か来られ

ないご都合などあるのかと思いたち、こうして来ていますのに」

懸命に経を読んで声を聞かないようにする新三郎。やがて呼びかける声が

とろりと甘くなる。「ねえ、あなた中に入れてくださいまし。誰か邪魔をなさって

いるのでしょう? 私たちの仲を裂こうとするものを、どうか振り払っておいで

くださいまし」その願いは読経の声を上回り、生気のない目がぎょろりと

お露のほうに向いた。凄まじい性の快楽への未練と執念物語である。




芥川龍之介<羅生門>  下人は、守宮のやうに足音をぬすんで、やつと急な梯子を、一番上の段まで

這ふやうにして上りつめた。

さうして體を出來る丈、平にしながら、頸を出來る丈、前へ出して、恐る恐る、

樓の内を覗いて見た。 見ると樓の内には、噂に聞いた通り幾つかの屍骸が、

無造作に棄てゝあるが、火の光の及ぶ範圍が、思つたより狭いので、數は

幾つともわからない。

唯、おぽろげながら、知れるのは、その中に裸の屍骸と、着物を着た屍骸とが

あると云ふ事である。 勿論、中には女も男もまじつてゐるらしい。さうして、

その屍骸は皆、それが甞、生きてゐた人間だと云ふ事實さへ疑はれる程、

土を捏ねて造つた人形のやうに、口を開いたり手を延ばしたりしてごろごろ

床の上にころがつてゐた。

しかも、肩とか胸とかの高くなつてゐる部分に、ぼんやりした火の光をうけて、

低くなつてゐる部分の影を一層暗くしながら、永久に唖の如く默つてゐた。

 下人は、それらの屍骸の腐爛した臭氣に思はず、鼻を掩つた。 しかし、

その手は、次の瞬間には、もう鼻を掩ふ事を忘れてゐた。 或る強い感情が、

殆悉この男の嗅覺を奪つてしまつたからである。

 下人の眼は、その時、はじめて、其屍骸の中に蹲つてゐる人間を見た。

檜肌色の着物を著た、背の低い、痩せた、白髪頭の、猿のやうな老婆である。

その老婆は右の手に火をともした松の木片を持つて、その屍骸の一つの顏を

覗きこむやうに眺めてゐた。 髪の毛の長い所を見ると多分女の屍骸であらう。





淫痴気人類史

人間は何を食って生きてきたか












<戻る>