セックスを貢いだ女(4)


      処女の残骸




    一、メス犬の嫉妬

 そのころの私は、女一人で満足しているような生活ではなかった。

加納淳子が部屋に居着くようになってからも、女漁りは相変わらず

続いていた。

 夜遅く戻ってきたり、時には泊まってしまうこともあったが、それでも

淳子は文句も言わず私に仕えていた。いわば、押しかけM女といった

形である。

 遊んできたことが分かると淳子はひどく悲しそうな顔をしたが、

嫉妬して捨てられたくないと思うのだろう。ちょっと卑屈な笑いを

浮かべて、眼を伏せたまま冷えた煮物の鍋を温めなおしたりする。

 その日もおそく、というより明け方の4時近くなって部屋に戻ると、

思いがけなく淳子が上り口の板のところに正座して私を待っていた。

「お帰りなさい」

「なんだ、そんなところで…」

 着のみ着のままで転がり込んでいるので、部屋ではパンティを

穿いていない。着替えるものもなく、素肌に男もののパジャマ一枚、

その下は丸裸である。

「どけ」

 足で払いのけて部屋に入ろうとすると、淳子が突然その足に

しがみついてきた。

「危ねぇ、何するんだ」

「お、お願い…」

 引きずられるように斜めになって、顔だけ上に向ける。

「私もう、5日も何もして貰ってない」

「おまんこは外でヤッてきた。今日はいらねぇよ」

「いやァッ、わッ私にもやって…」

「そんなこと言ったって仕様がないだろ。俺は女に独占されるのは

嫌いだからな」

 取りすがった腕を冷たく振りほどいて、私は敷いてあった布団に

大の字になった。

「疲れた、寝るぜ」

「ご、御飯は…?」

「いいよ、面倒くさい」

 取り付くしまもなくうなだれている淳子の横顔を見ると、ふと

いたずら心がわいた。

「今日の女はさァ、お前よりよっぽどいい女だったぜ」

「や、やってきたの?」

「決まってるじゃねぇか。バージンじゃなかったけど、おかげで楽しめたよ」

「本当?」

「お前よりおっぱいがデカくて、毛がモジャモジャなんだ。俺、毛深い女は

好きだからな」

「………」

「向こうも興奮しやがって、おかげで身体中ベタベタだぜ」

 一人前に嫉妬しているのだが、感情をおもてに出すことが出来ない。

淳子は、世にも情けない顔になった。

「よ、良かったわね」

 浮気公認というのは、初めからの条件である。無意識に自分で乳房を

握り締めながら、淳子は低い声で言った。

「じゃ、か、身体拭いてあげようか?」



    二、家畜現象


 そのころのアパートにはバス付の部屋などなかった。入口の横にある

狭い炊事場で、淳子はガス台に洗面器を乗せて急いでお湯を沸かした。

「おい、何やってるんだ」

「あの、タオルで身体を…」

「バカヤロ、そんなもんで拭いてどうするんだよ。綺麗にしたかったら

お前が舐めろ」

「えッ、でも…」

 無理難題というより、計算づくの嫌がらせである。

「それとも、よその女の汁で汚れたちんぼを舐めるのは嫌だって

いうのか?」

「い、い、嫌じゃない…」

「だったら、そんな変な顔していないでこっちへ来い。5日もやって

いないんだろ」

 淳子は、震える手でガスの火を止めた。

 縄で手繰られるようにいざり寄ってズボンのベルトを外す。

腰を少し浮かしてやると、寝たままの姿勢で、下着ごとズボンを

抜き取る。つい先刻まで女を抱いて射精したあとの肉塊が、

汚れや滓をくっつけたまま半立ちになっていた。

「カ、紙がついてる」

「暗いところで拭いたからな、舐めれば取れるよ」

「キ、汚い…」

 爪の先で摘むように紙の滓を取り除こうとするのだが、最近の

ティッシュと違って容易に剥がれそうもない。

「何やってんだ。早くしろ!」

「あぁぅッ…」

 太腿を蹴ると、淳子は前後の見境もなく肉塊を握って鼻柱を

陰毛にこすりつけた。

「馬鹿ッ、もっと丁寧にやれ!」

「は、はい…ッ」

「よぅし、ぜんぶ舐めろ。根もとまで綺麗にしろよ」

「うっぷぅ…」

「いい匂いがするだろう。前の女の味だぜ」

「うぇ、お、美味しい…」

 噴き上げる嫉妬が、不思議な性欲に転換していた。

 自分とは違う女の淫汁を口で始末させられることがマゾなのかどうか、

ダブダブのパジャマの中に腕を突っ込んでみると、いつ分泌したのか

新しい粘液が大量に溢れて溶けた蜂蜜のようになっている。

それは明らかに一種の家畜現象と言ってよかった。

 指でクリトリスを掻きあげると、淳子は小刻みに身体を震わせて

ゲクゲクと咽喉の奥で啼いた。

 寝そべったまま、次第に復活して固さを増してくる肉塊をしゃぶらせて

いると、本当にメス犬を飼っているような気がする。縛ったり叩いたりして

責める作為的なSMよりも、女を精神的に弄んで蹂躙したほうが

はるかに快味があった。

 強引に処女を奪ったときから、新宿駅での待ちぼうけ、路上での

露出セックスと思い出してくると、淳子の精神構造は明らかに

変化していた。奴隷型というより、どちらかと言えば家畜型の

マゾなのである。

「よし、こっちに来い。もう少し仕込んでやる」

 ゆっくりと身体を起こして、私は淳子の首根っこをつかんだ。



    三、処女の残骸


「ちゃんと股をひらけ」

 文字どうり犬同然に部屋の隅まで引きずってゆくと、右の足首を

浴衣の紐で括って柱の中程に結んだ。

「あ、困る」

「なに言ってんだ。犬だってションベンするときはもっと足を上げるぜ」

 吊り責めとも違う。四ッ這いのまま、淳子は片足で柱に繋がれた

かたちになった。

「はッ恥ずかしい…」

 ダブダブのパジャマが脱げて、白い尻が丸出しになっている。

「待てよ、穴がどのくらい広がるようになったか調べてやる」

「あッ、いやぁ…」

「動くな。先が尖んがっているから動くと穴があくぜ」

 その頃ようやく普及するようになったボールペンを3本まとめて入れて

みたが、入口が下を向いているので手を放すと簡単に落ちてしまう。

「何だ、ブカブカじゃねぇか」

 手で押さえておいて、1ダース次々に入れるとようやく一杯になった。

ちょうど、手の中で一握りの太さである。

 それから後は一本づつ、ねじるように挿し込んで、17本目を入れようと

したとき淳子がとうとう悲鳴を上げた。

「い、痛い。切れちゃうゥ」

 最近のように、ボンデージだボールギャグだといったSMファッションなど

想像もつかなかった時代の責め道具である。だがこのほうが

よほど残酷だった。

「ひぃぃッ」

 無理やり17本目を押し込むと、淳子は顔を真っ赤にしてタタミに

つんのめった。

「ケツを上げろ、落としたら承知しねぇぞ」

 だが、これは無理な注文であった。しばらくすると、ボールペンが

いっぺんに穴から飛び出して足下に散乱した。

「ダラシねぇおまんこだな。こんなんじゃ男には通用しねぇぜ」

「ごッ、ごめんなさい」

 もう処女だったころの面影はなかった。猫の舌のようだった二枚の

肉唇が膨らんで、わずかに肥大している。

「お、お願いやって…ェ」

 片足を柱にくくり付けられたまま、淳子が手を延ばしてしがみつこうとした。

「駄目なら、ほ、他のところでも良いから、お願い入れて…ッ」

「他のところって何処だ?」

「お、お、お尻…」

 淳子は、呻くように言った。

「ほう、犬みたいな格好して、お尻も使えるのかい?」

 三ケ月前まで処女だった女の無残な変身である。

「それじゃワンと啼いてみろ。そうしたら入れてやるよ」

「わ、わん、いやぁぁ…ッ」

「フフ、面白い、もっと啼け…!」

 片足を上げたままの股の間に割り込んで、私はおもむろに先端を

アナルの真ん中に当てた。



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