一、戻ってきた女
「モシモシ、あのゥ、私ですけど…」
受話器の向こうに、くぐもった女の声を聞いたとき、私はとっさに
その声の主を思い出すことができなかった。
「徳子です、お忘れになったかしら」
「へえ?」
「ずっと前お交際いして、それきりになってしまって…」
「あ、パイパンの徳子か…?」
「はい」
古い引出しをこじあけるように、ゆっくりと昔の女の思い出がよみがえってきた。
「驚いたな。いま何をやってるんだ?」
「ごめんなさい。私、あれから結婚することになって…」
新藤徳子は、もう8年も前に私の前から姿を消した女である。
東京の大学を卒業して、ある商社に勤めていたのだったが、処女を奪って
玩具のように弄んだホロ苦い思い出がある。小柄だが男好きのする
可愛い顔をしていた。
初めての時、無理やりホテルに連れ込んで犯したのだが、裸に剥くと
プックリと膨らんだ陰丘はなめらかなクリーム色で、ほとんど毛が生えて
いなかった。
「ほう、お前パイパンか…」
「は、恥ずかしいッ」
「ここまで来て、なに言ってるんだ!」
下腹部をおさえて隠そうとするのをベッドに突きとばすと、徳子は
兎のように身体を縮めて丸くなった。
「いや見ないでッ」
「こっち向け。そんなに気にすることはねえよ」
力まかせに膝小僧をつかんで拡げると、毛のない割れ目の真ん中に、
鶏肉のように軟らかなベロが濡れていた。
「へえ、珍しいおまんこだな」
そのころ、私はすでに変態クラブを経営していたのだが、こんな道具は
まだ見たことがない。
「あッ痛い、いたいッ」
有無を言わさずコジ入れると、粘膜には弾力があって、
感触は悪くなかった。
最初は痛がったが、セックスはもともと嫌いなほうではなかった。
処女を破って3回目くらいにはイクことを覚え、要求すれば嫌な顔もせず
何でも言うことをきいた。
女が足りないときには臨時に客を取らせたりして、遊ぶにはまことに
都合の良い女だったが、義理で見合いしてくると言って郷里の新潟に
帰ったきり連絡が絶えてしまった。
それ以来、8年ぶりの突然の電話である。
「こんど主人が転勤になって、東京に出てきたんです」
子供ができて、いま世田谷のマンションに住んでいるのだという。
別れたとき26才になっていたから、たしか34才の筈であった。
「お会いしたいわ。ご迷惑でなかったら…」
徳子は、こちらの気持をさぐるように言った。逢えばどうなるか、
承知のうえの口ぶりである。
「来週は、主人が出張なの」
久し振りに遊んでみるか…。
どんな暮らしをしているのか、興味もあった。さっそく相談がまとまって、
マンションを訪ねてみると、徳子はあの頃に較べてかなり太って、
いかにも30代の主婦らしい雰囲気を身につけていた。
「こんなオバさんになって、びっくりなさったでしよう?」
足もとにまつわりつく子供を叱りながら、徳子は恥ずかしそうに頬を染めた。
千夏という名前の5才の女の子である。
「旦那とは、うまくいってるのかよ」
「ええ、まあ…」
それから、あのとき結婚しなければならなくなった理由の説明が
えんえんと続いた。
「でも、やっぱり忘れられなかったの。あとになって後悔したのよ」
それは未練というより、あのころの快感がまだ肉体の隅々に残っていて、
くすぶっているといった感じである。
隣の部屋に子供を寝かしつけてしまうと、徳子はビールを出して、
ふたつのグラスに泡がこぼれそうになるほど注いだ。
「ずいぶん太ったな」
「そうなの、嫌になっちゃう」
腹にタップリと脂肪がついて、腰がひとまわり大きくなったような気がする。
「相変わらずパイパンか?」
「だって、生れつきですもの…」
手をのばすと徳子は自分から少し膝をゆるめた。久し振りに触れる無毛の
肉唇は、いっそう軟らかくなって、もう全体にヌルヌルとヌメリが滲み出していた。
二、子持ち弁天
「ねえ私なんかと…、嫌じゃない?」
徳子はまだ気にしている様子だった。
「仕様がねえだろう。あの頃と比べてどのくらい変わったか調べてやるよ」
「ほんと…?」
亭主の留守に男を引き入れる罪悪感はまるでないようであった。
二本目のビールがまだ半分残っていたが、徳子は待ち切れないように
食卓の横に布団を敷いた。
いつもは亭主と一緒に寝る布団なのだろうが、敷布を取り換えただけで、
妙に色っぽい雰囲気になるのは不思議である。
「子供は大丈夫かい」
「いいのよ、ぐっすり眠ってるから…」
服を脱がせると、徳子は相変わらず真っ白な肌をしていた。
抱くと甘い牛乳の匂いがする。ナマ貝の舌のような肉ベラも昔のままで、
子供を生んだ穴とは思えないほど良く締まっていた。
「いや私、本気になっちゃう」
焼け棒っくいに火がついて、結局その夜は明け方まで…。こちらも二回続けて
射精してマンションを出た。
一晩でヨリが戻ると、徳子はたちまち大胆になった。
亭主は月に一・二度出張があって、その度に電話で誘いがかかってくる。
セックスはもともと大好きな女なのだが、独身時代にくらべると、性欲は
いっそう強くなっていた。
「ねえ、後ろからヤッて…」
その日は子供がなかなか眠らないので、徳子は添い寝したまま
焦れったそうに言った。
「お願い、声を出さないようにするから…」
「仕様がねえな、パンティを脱ぎな」
反対側から布団にもぐりこんで、スプーンを合わせたように重なると
尻の割れ目に亀頭の先端を当てた。
「入れるぜ」
ウッ…、と徳子が息を詰めた。
「ママァ、何やってんのよゥ」
「いい子だから、むこう向いて早くおやすみなさいっ」
娘がすがりついてくるのを振りはらって、後ろ向きに尻をつき出す。
こんなところが、子持ち女の醍醐味である。
「そっとね、キツくしないで…」
背中で囁くように徳子が言った。
布団の中に甘酸っぱい女臭がこもってムレたようになっている。内股に
滲み出したヌメリで、動きはらくであった。かすかに卑猥な音がして
布団が揺れる。
「ふうッ、イイわ…」
徳子がせつない声を上げたとき、とうとう我慢できなくなって、娘の千夏が
起き上がって布団から這い出してしまった。
「うゥン、ママァ」
「だめッ、この子ったら…」
徳子があわてて引き戻そうとした。
「よしよし、お姉ちゃんはそこで見てな」
掛け布団をはねのけると、いきなり白い尻がムキ出しになった。真ん中に
毛の生えた赤黒い肉塊が突き刺さっているのを見つけて、娘はとたんに
おびえた声を上げた。
「アッ駄目ッ」
「良いじゃねえか、ちゃんと見せてやれ」
「だ、だめよゥ…」
わざと乱暴に動かしてみせると、千夏は幼い顔をゆがめた。母親が
何をされているのか本能がそれを知っている。
「怖くなんかねえよ。ほら、ママは気持がいいんだってよ」
「あッ、ううン…ッ」
「おいで。こっちに来て、ママのおまんこに触ってごらん」
尻を高く上げて、四ッ這いになったところに千夏をよんだ。
「やめてェ。そんなことさせないで…ッ」
「かまわねえよ、これも性教育だ」
「許して、ああ快い…ッ」
徳子は、無意識に腰を振った。
「待ってろ、もっと快くしてやる」
男根を抜いて、かわりに幼い手を捩じこむように穴の中に埋めた。
「ヒェェッ。出してッ、抜いてェッ」
徳子は狂ったような叫び声を上げた。
「静かにしてろ。どうだ、ママのお腹の中はあったかいだろう?」
「ヤ、止めさせてッ。イッちゃうからッ」
「いけよ。娘にイカしてもらえれば最高じゃねえか」
「ああッ、どッどうしよう…ッ」
徳子は、完全に理性を失っていた。
ピンポーン…
その時、この場の雰囲気とはまったく異質の乾いた電子音が鳴った。
「エッ…?」
ピンポーン…
一瞬、徳子が凍りついたように呼吸を止めた。
「主人だわ、帰ってきた!」
三、不倫の代償
この状態では、もう取り繕う方法がなかった。ひらき直って布団に
胡座をかいたとき、襖の向こうに人の気配がした。
「こ、来ないで…。あなたッ」
徳子があわてて襖を押さえようとしたが、入ってきたのはごく普通の
サラリーマン風の男である。これが亭主なのだろう。
「なんだ、これは…?」
男は、あっけにとられたように言った。
返事のしようもないので黙っていると、徳子が裸のまますがりついて、
必死に外に押し出そうとする。
「あなたちょっと待って、ね、ね…」
部屋の外で、早口で何か弁解している様子だった。しばらくして、
グシャッと鈍い音がして女が悲鳴を上げた。
「あッ、ぶたないで…ッ」
「こんなことして、恥ずかしいと思わないのかっ」
「待って、話を聞いて…」
それから続けざまに、徳子が殴られる音が聞こえた。
「ひィッ」
「出ていけっ。行かないんなら俺が出ていってやる!」
先刻までの淫靡な痴態が嘘のような修羅場である。とにかく亭主を
なだめなければと思ったのだが、素っ裸ではこちらも恰好がつかない。
「離せっ」
襖の間から、徳子が突き飛ばされて部屋の中に倒れ込んできた。
「助けてェッ」
とっさに身をかわして乳房を蹴ると、徳子は蛙のように白い腹を見せて
仰向けにひっくり返った。
「ぎゃッ」
「冗談じゃねえ、てめえが悪いんだ」
この場合、精一杯のハッタリである。
「俺だって、こんな恥をかかされたのは初めてだぜ。ヘマやりやがって…」
鼻血か口を切ったのか、顔の半分が真っ赤になっている。毛のない割れ目を
さらして、徳子は呆然となった。
すぐ横で、子供が激しく泣いている。
そのとき、ガシャッと手荒くドアが閉まる音がした。
「あっ、あなた待ってッ」
「バカ野郎、裸で追いかけるつもりか!」
髪の毛を掴んで引き戻すと、血だらけの顔で眼が宙に浮いていた。
「ちょうど良かったじゃねえか。今のうちにヤッておこうぜ」
「ええッ」
「イカしてやるよ。さっきはもう少しでイクところだったんだろ?」
徳子は一瞬ひきつったような顔になった。
「止めてくださいッ。ワ、私が悪かったんだから…ッ」
こうなると、しなびかけていた肉塊がみるみるうちに硬直して、勢いを
盛り返してくるのが不思議である。
「カッ、カンニンしてェ」
「うるせえ、こっちはまだイッてねえんだ」
布団に引き倒すと、小柄な身体が半回転して、徳子は観念したように
グタッと全身の力を抜いた。
「ママ、ママァ…」
千夏が、泣きながら乳房にすがりつく。
「さっきより濡れてるじゃねえか、インランな女だ…」
片足をかつぐと、残酷にひらいた股の間に容赦なく腰を入れた。
「ウゥムッ」
泣きじゃくる千夏と一緒に、熟れきった女の淫汁がとび散るほどに
突き上げる。徳子が絶頂に駆けあがるまで、5分とはかからなかった。
「ああ、もうッ」
「子供が見てるぜ、それでも良かったらイッてみな」
「千夏ッ、ああいくゥ…」
娘を抱き締めたまま、徳子は堰を切ったように痙攣した。
「ク、狂っちゃうッ」
亭主にバレた以上、遠慮することはなかった。存分に精液を吐いたあと、
ムキ貝の口がいつまでもブクブクと白い泡を吹いていた。
「バージンを犯ったときより快かったぜ」
焦点のない視線の奥に、一種の蕩酔に似た妖しい光が沈んでいる。
これが、マゾ女の本性であろう。
「も、もう逢えないの?」
「離婚になったら訪ねてこい。よかったら、また働かせてやるよ」
痴呆のようになった母娘を残してマンションを出る。
だがそれきり何も言ってこなかったところを見ると、離婚にもならず徳子は案外うまく
解決したのかもしれない。