一、淫らな結婚
その日、私はできたばかりの上越新幹線に乗って新潟に行った。
以前から親しかった女の結婚式に招待されて、わざわざ東京から
出席するためである。女の名前は織田サチ子と言った。
あるいは知っている人がいるかも知れないが、その道では、
きらら女王様と言う名で通っていたサディスチンである。
SMクラブや雑誌のグラビヤなどで活躍していたのだが、年令は
案外若くて24才、まだまだこれからという時の引退であった。
だがそんなことは、郷里の親類や結婚式に参列した地元の招待客などは
知るよしもなかった。本人もケロリとした顔で、白無垢のドレスに身を包んで
艶やかな花嫁ぶりである。
もちろん裏には裏があったのだが、それを知っているのは私だけであろう。
新郎はこの地方の金持ちの息子で、私の事務所に出入りしているうちに
紹介してやったのがサチ子である。
かなり強烈なマゾで、いっぺんにきらら女王様の囚になってしまった。
どうしても結婚したいと言うことになって、すったもんだのあげく、
ようやく挙式にまでこぎつける事ができたというのが真相である。
地方の旧家という事で、親戚は反対だったようだが、そのわりには
派手で華やかな結婚式であった。
育ちはともかく、見てくれのスタイルは抜群だし、きりっとひき締まった
顔立ちは田舎には惜しいような美貌である。
「花嫁さん、なかなか見栄えがするじゃないですか」
「はぁ、そうですねぇ」
親類も少なく、友達といえば男ばかりなので、花嫁側の参列者は
いくらもいなかった。隣の席にいる母親に声をかけると、一人娘を
手放すのがつらいのか、サチ子の母は笑顔も見せずに言った。
「でも、あの子がこんな遠くの人と結婚してしまうなんて、わたし考えても
いなかったんですよ」
まだ50才前の、たっぷりと脂の乗った肌の白い女である。
「仕様がないでしょう。まぁ、そのうちに戻ってくるかも知れないし…」
「あら困ります、そんな…」
母親は、結婚式の真っ最中に平気でそんな話をする私を呆れたように
見たが、案外そんなところが本心だったのかも知れない。初対面だが、
それから親しげに口を利くようになった。
サチ子については女王様として栗色に染めた陰毛や、男に小便を
飲ませる現場に立ち会ったりして性器の奥まで知っていたが、
母親はもちろんそんな事は知らないのである。だがこの女が
有名なきらら女王様を産んだのかと思うと、私は妙にそそられるような
気持ちになった。
「新婚旅行は、ハワイですか?」
「いえ、ラスベガスとかで…」
「ほう、いいですな。あそこにはいろいろと面白い遊びがあってね」
「はぁ」
緊張しているのか、母親はその言葉の意味を良く理解できなかったようだ。
ラスベガスの秘密クラブで本場のSMショーでも見学してこいと
そそのかしたのは、実は私である。
「彼氏とは恋愛結婚ですか?」
「さぁ、私には何も話さない子ですから」
「それにしても初夜が楽しみだな」
「エッ」
「いや、ふたりとも若いから羨ましいですねぇ。そう思いませんか」
返事をすることができなくて、母親はみるみるうちに真っ赤な
顔になった。
「男に抱かれるのがわかっていて、娘を送り出すお母さんの気持ちは
どうです?」
「………」
「案外、心の中では嫉妬しているんじゃないかな。それとも反対に
興奮しますか?」
母親は、マジマジと私の顔を見つめた。
何を失礼なという目の色ではなかった。怯えたような、一種の
驚きに似た表情である。
「気にしなくても良いですよ。本当のことを言っているだけです」
「あ、あなたはサチ子とはどういう…?」
「別に、あやしい関係じゃありませんがね」
私は笑いながら言った。
「まぁいろいろと相談にのっていたもんで、お嬢さんのことは
良く知ってるんです」
式は滞りなく進行してやがてお開きになったが、披露宴といっても
地元の名士へのお披露目のようなもので、東京から招ばれて
いるのはほんの数人である。
結局、式が終ってホテルに泊まることになったのは、私と
母親の常子だけであった。
二、母性の欲情
常子が示した異常な反応は、たしかに普通の母親とは違っていた。
娘のサチ子が女王様という変態の素質を持って生まれたことを
思えば、おそらく、常子にも何かがあるに違いない。変態は
遺伝するものではないが、育った環境やよく似た性格などによって
色濃く受け継がれることは確かである。
その夜、常子はそれまで抱えていた大きなものが突然身体から
抜け落ちてしまったように呆然としていた。
もう深夜になって、ホテルのロビーには人影もなくなっていたが、
いつまでも私から離れようとしない。部屋はそれぞれ別に取って
あるので、おやすみなさいと言えば、あとは他人である。
だが娘を結婚させた感動と、ジワジワと締め上げられるような
性欲の板挟みになって、常子は理性を取り戻す余裕を失っていた。
「サチ子が赤ん坊のとき、おしめを換えてやったことがあるでしょう?」
ごくさりげない感じで私は話を続けた。
「そんなとき、母親というものは娘のおまんこに異常がないか、
中まで開けて見るものだと思うが…」
「は、はい」
「そのころはまだ固くて、小さな肉の裂け目にしか見えなかった
おまんこが、今では男の太いのをくわえているんだぜ。めでたい
じゃないか」
「………」
これはセックスの話なのだろうか。それとも母親の心のヒダに
秘められたわが子への密かな愛の思い出か、常子自身にも
わからなかったろう。
「同じ女だから、あんたも感じることができるだろう。今だって、
もう濡れ始めているんじゃないのか?」
「え、えッ」
「まだ男に抱かれるのを遠慮する年でもないし、旦那は
死んじゃったのかい?」
「あ、あの子が16のときに…」
「それは気の毒だな。せっかく娘が楽しんでいるというのに、
もったいない」
「わたしは、私はそんな…」
「嘘をつけ。サチ子が結婚すると言い出してから何回オナニーした」
「あふぅ…ッ」
「ほとんど毎晩、違うかね?」
「いやッ、し、してません」
「そうかい、だったら今夜はもう遅い。疲れているだろうから
グッスリと寝ることだな」
席を立って、私は何のためらいもなく常子に背中を向けた。
後ろから常子が何か言ったようだが、振り向きもせずそのまま
エレベーターのボタンを押した。
部屋に入って、ゆっくりと洋服を脱ぐ。シャワーを浴びて、大の字に
ベッドに横になるまで10分か15分である。
そのとき、微かにドアをノックする音が聞こえた。
鍵はわざとかけてない。無視して黙っていると、おそるおそると
言った感じで音もなくドアが半分ほど開いた。
「誰だ」
「わ、わたし…」
「何だ、早く寝た方が良いと言ったろう」
「ご迷惑ですか、ご迷惑でなかったら…」
「入れよ、人目につくぜ」
「ごめんなさい、こんなに遅く…」
常子が後ろ手にドアを閉めた。それからこちらに視線を向けて、
ギョッとして言葉をのんだ。
「どうした、まだ何か用かい?」
ベッドの上で、男根が斜めに天井を向いている。
「あんた、男は何年ぶりだ?」
「わ、忘れました」
「そうか、それじゃこんなのを見ると懐かしいだろう」
「あぁッ、はい」
今までさんざん迷っていたのだろうが、いきなり怒張した男根を
見せつけられて、常子は呻くように言った。
「た、助けてください。わたし、今夜だけ獣になろうと思って…」
二・三歩よろめくように、常子はベッドのそばに寄った。
「お願い。お願いだから、これ以上恥をかかせないで…」
前のめりになって、足もとの絨毯に膝をつくと、常子は泳ぐように
手を股間の肉塊に延ばそうとした。
「待てよ、男が欲しいんだったら自分で裸になってからにしろ」
「わ、わたし、もう若くないから…」
「ここまで来て、恥ずかしがることはないだろう。着ているものが
台無しになるぜ」
「い、い、意地悪…」
三、三段腹の味
四十才を半ば過ぎて、性欲の虜になった女に情け容赦をかける
必要はなかった。
貸衣装なのか、常子はまだ松と鶴の模様の留め袖の盛装である。
私は嫌応なしにその場で帯を解かせた。
下は白の長襦袢と薄いピンクの腰巻、おまけにパンティを穿いて
いるのはやはり現代の女である。
「ハッ恥ずかしい」
最近のギャルなら見せることは平気なのだが、この世代の女にとって、
裸をさらすことはセックスそのものよりもっと羞恥心を煽られるものだ。
常子はパンティを穿いたまま、脱いだ衣装を抱えて蹲ってしまった。
「立ってみなよ。ケツの穴まで見せろ」
無理やりベッドに引き上げると、和服ではそれほど目立たなかったが、
柔らかな腹の肉がたるんで重なっていた。文字通りの三段腹である。
「ヒィィィ」
腹の肉を掴んで捩じるように前後に揺すると、常子はとたんに
押し殺したような悲鳴を上げた。
「獣になりたいと言ったけど、こりゃあ豚というよりアザラシだな」
「ひ、酷い…」
「性欲を持て余すほど精力があると褒めているんじゃねぇか」
それは、そのとうりであった。陰毛が濃くて尻の方まで黒々と
覆っている。左右に分け開いてみると、われめの土手に内部の
肉ベラがはみ出していた。
臍の下に幾筋もの妊娠線が刻まれて皺を作っていたし、乳首は
焦げ茶色に変色して垂れ下がっていた。きらら女王様の若鹿のような
肉体に比べるのはあまりにも酷だが、それがかえって動物的な
猥褻感を漂わせているから不思議である。
「舐めな」
セックスから遠ざかっていても、女は本能的に男を舐めることを
知っている。常子は太股を両手で抱えるように私の股間に顔を寄せた。
下から腰を揺すってやると、そのたびに奥を突かれて、常子はゲクゲクと
咽喉を鳴らした。
「このおふくろじゃ娘が変態になるのも無理はねぇな」
一突き咽喉の奥を突いて、私は残酷に言った。
「花嫁さんも今ごろは、こうやって彼氏に舐めさせているだろうよ」
「ウゥゥ…、ウプッ」
「母親とは正反対だな。あんた、結構なマゾだぜ」
常子は身体を震わせたが、脚で後頭部を挟まれているので
顔を上げることができない。苦しそうに息を吐いた拍子に、
たるんだ三段腹が大きく波を打った。
「よし、尻をこっちに向けろ」
唇のまわりが涎でべとべとになっているのをそのまま四ッん這いに
すると、私は後ろからボリュームある腰に両手をかけた。脂ぎって
盛り上がった尻の肉が眩しいほど白い。
唾液がついているので前戯もなにもなかった。先端を後ろの穴に
当てると、容赦なく腰骨を手前に引いた。
「ギャッ、ウゥムッ」
常子は悲鳴のような唸り声を上げたが、肛門の括約筋が伸びて
いるのか、興奮した神経が麻痺しているのか、思ったより痛がらなかった。
ブチッと穴にメリ込んで、そのまま半分以上いっぺんに埋没した。
「も、も、もっと…」
手加減せず乱暴に抜き差しすると、常子は両手でベッドのカバーを
握り締め、かすれた声でうわ言のように言った。
「わ、わたしを壊して、目茶目茶にしてェ」
身体に自信のある若い女をおだてながら抱くよりもはるかに面白い。
メスという名の動物を犯す快感である。
「キレイにしろ。汚れがついているぜ」
「ブハッ、ウゥゥ」
イキそうになると引き抜いて口の中に入れる。続いて前の穴に
入れたが、二度三度繰り返しているうちに、どこに入れても感覚が
ほとんど変わらないようになった。
「イクぜ。どこに出して欲しい?」
「ドッどこでもいいから出して、出してッ」
「ようし、おまんこを締めろ」
だが、最後に射精したのは結局柔らかい肉の三段腹の上である。
それでも私が射精したと判ると、常子はのけぞって全身で満足の
反応を示した。
常子とは、これが最初で最後の遊びだったが、世に言う姥桜も散りぎわの、
奇妙に印象に残る女だった。
きらら女王様のサチ子が彼氏と離婚したと聞いたのは、それから一年も
経っていない、その年の暮れのことである。