一、 欲情ドライブ
「惜しいわね。昼間だったらきっと良い眺めだったのに」
窓に額を擦りつけて、女は外の景色を透かすように言った。
夜の9時を過ぎて、それほど混んでいない海沿いの高速道路を、
車はかなりのスピードで走っていた。
外が明るければ、左手に相模湾の平らな水平線が見渡す限り
広がっている筈であった。
「まぁ仕方ないね、東京を出てくるのが遅かったから」
「初めからドライブするって判っていれば、もっと早く出てこれたのよ」
「好いじゃないっすか、このへんは夜になると静かだしさ」
片手ハンドルになって、さりげなく女の太腿に掌を乗せると、
ピクリと身体を固くしたがそのまま避けようとしない。
「あんまり人には見られたくないからね。奥さんだって、その方が
良いんだろ」
「あら、別に浮気してるわけじゃなし、誰に見られたって構わないでしょ」
「ふっふっふ、そりゃま、今のうちはね」
「何よ、まさかヘンな所に連れて行くんじゃないでしょうね」
名前は竹下ひろみ、人妻である。二人だけで逢うのはこの日が
初めてであった。
たまたま、義理で観にいった友人の個展で一緒になって話をする
ようになったのだが、しばらくして、女のほうから誘いの電話を
かけてきた。こいつ、ヤレそうだな、 あらためて逢ってみると、
三十才を半ば過ぎて、そろそろ身体に贅肉がつきはじめていたが、
その代わりタップリとしたボリュームがあって、抱きしめると全身から
淫らな脂が滲み出してくるような感じである。
赤坂のホテルで食事をとって、ドライブに誘ってみると意外と簡単に
承知した。
今日は旦那が出張で帰ってこないから、久しぶりに羽を伸ばして
みようかしらなどと言う。それならこちらの思う壷である。
東京を出たのが7時過ぎ、そのころはまだ暴走族も出現しておらず、
湘南にドライブなどといえば当時としては贅沢な遊びだった。
「ねぇどこへ行くの、もう帰ろうよ」
車が茅ヶ崎を過ぎると、ひろみはさすがに心配そうな声で言った。
「こんな所に何もないじゃない。遅くなるから、私帰りたいわ」
「奥さん、今日は泊れないのかい」
「そんな、無理ですよ」
「そうか、それじゃどっかで休んで行こう」
当然のように、すぐ近くに見えるドライブインへの道を曲がろうとすると、
思いがけなく女が急に態度を変えた。
「あ、嫌よ。ちょっと、見損なわないでッ」
「何だと」
「私、そんなつもりで来たんじゃないわ。こんな所に入るなんて、いや」
「ほう、そうかい」
ムカつく気持ちを抑えて、私は出来るだけ穏やかな口調で言った。
「それじゃどうして、二人っきりでドライブなんかする気になったんだい」
「あなたを信用していたから、おともしただけじゃありませんか、
そんなことする人だとは思わなかったわ」
ふざけんな! 太ももに手をかけようとすると、ひろみは今度はそれを
払いのけるように身体をズラしながら言った。
「止めてください。失礼なことしないで」
「判ったよ。けどあんた、ずいぶん考えが甘いな」
「えッ何で?」
「まぁ良い、じゃ帰るぜ」
不機嫌に車をUターンさせると、気まずい雰囲気のままもと来た国道を
突っ走る。だがどうにも気持ちのおさまりがつかなかった。
この野郎、ただじゃ帰さねぇぞ ・・・。
わざわざこんな所まで連れてきて、何もしないで引き返す阿呆らしさが
我慢できない。その上女のとってつけたような拒絶の仕方も
気に食わなかった。
今なら道の両側にファミレスなどが立ち並ぶ行楽道路だが、当時の
茅ヶ崎周辺は防風林と砂浜に挟まれた2車線の道で、尾高丸という
釣り宿が一軒あるだけの淋しい場所であった。
夏ならキスの投釣りの人影も見えるが、この季節、この時間帯になると、
人の姿はまったくと言って良いほど見えない。
「アッあぶない」
いきなりアスファルトの道を外れて、砂混じりのゴツゴツした防風林の
中を走る。女はびっくりして声を上げたが、構わず行けるところまで
行って私は突当たりで車を停めた。
二、強姦もどき
「ど、どうするの?」
「部屋の中でヤルのが嫌なら外でやろうぜ。少し狭いけど我慢しな」
「えぇッ」
ひろみの顔に、はじめて恐怖の表情が浮かんだ。
「あ、あなた、私に何をする気?」
「決まってるじゃねぇか。男と女が二人きりになりゃ、何をするかぐらい
判ってるだろ」
「ひぇッ」
身体のわりには臆病な女である。ひろみはブルブルと震えだしたが、
それでも何とか虚勢を張ろうとした。
「よ、よして、ヘンなことすると訴えるわよ」
「そりゃ面白いな。奥さん、本当にヤルのが嫌いなのかい?」
こんなとき決め手になるのは、相手を圧倒する迫力とタイミングである。
ニヤリと笑ってみせると、女はそのままこわばった顔で黙ってしまった。
「つまらない見栄を張らないで、おとなしく言うことを聞きなよ」
腕を伸ばして胸ぐらを掴むと、ビリッと微かな音がして、ブラウスの
ボタンがひとつ飛んだ。
「ぼ、暴力は止めて」
「冗談じゃねぇ。まだ殴ってなんかいませんよ」
顔は笑っているが、言葉には十分に脅しの効いた響きがあった。
そのまま胸をはだけると、下にもう一枚、シュミーズのような
薄い下着をつけている。
「邪魔だな」
力まかせに手前に引くと、身体を固くしているので、V字形の谷間の
ところから簡単に裂けてしまった。だが、まだその下にブラジャーが
あって、これは引っ張ったくらいでは千切れそうもない。
業を煮やして今度はスカートの裾を捲ろうとしたが、ピッタリと両足を
合わされると膝頭まで露出させるのがやっとである。
よくカーセックスなどと言うが、合意の上ならともかく、相手が納得して
いないとこの狭いスペースではどうにもならない。
「ちぇっ、それじゃ外でやろうぜ」
すぐ横の国道を車が走っているが、防風林のなかには誰もいる筈は
なかった。とっさにドアを開けると、私は車の外に出た。
トランクからロープを出して、反対側の助手席のドアを開ける。
「降りろ、誰もいやしねぇよ」
「いや、いやよゥ。許してッ」
「出てこい、来ねぇと引きずり出すぞ」
強引に二の腕を掴むと、ひろみはつんのめるような姿勢で上半身を
車の外に出した。
「ダッ誰か…」
よろめきながら身体を立て直すと、何を思ったのか、突然国道の方に
向かって走り出そうとする。防風林といっても、足もとは海岸に近い
砂地である。引き戻すかわりに後ろから背中を突いてやると、
ひろみは足を取られて前のめりにひっくり返った。
「わァァッ」
「見ろ、言わんこっちゃねぇ」
こうなると、あとは猫が鼠をいたぶるような遊戯である。
「あんた、その恰好でほかの車でも呼ぼうって言うのかい」
「助けてお願いッ。わ、私、今日は本当に駄目なの」
「ちえっ、悪あがきするんじゃねぇよ」
持っていたロープを木の枝にかけて、先端をぐるぐると3回ほど
ひろみの首に巻いた。
「いいから立てっ、逃げたって無駄だぜ。立たないとロープを引くぞ」
「ぐェェッ」軽く引いただけだが、首が絞まったのか、ひろみは奇妙な
声で鳴くとあわてて身体を起こした。
「やめてェッ、な、何でもするからッ」
「ようし、それじゃ自分でスカートを捲ってみな」
「・・・・・・」
ひろみは、追い詰められたような目でまじまじと私の顔を見た。
まさかセックスを断ったくらいで、男がこれほど変貌するとは
思っていなかったのであろう。 だが私にしてみれば、どちらに
転んでも女をいたぶるつもりだったことに変りはない。このほうが、
むしろ口実が出来ただけ好都合であった。
「早くしろっ」
もう一本のロープを鞭のかわりにして腰のあたりを叩くと、太ももに
巻きついたロープがグシャッと鈍い音をたてた。ほとんど反射的に、
ひろみはスカートに手をかけた。
三、 犬あつかい
ヘビに睨まれた蛙のように、ひろみは意志の力を失っていた。
男にチヤホヤされることしか知らずに生きてきた女が初めて
出会った恐怖である。
「ら、乱暴しないで、お願いだから」
「言う通りにすればそれで良いんだよ。ヤラせるのかヤラせないのか?」
「あぁッ、カンニンしてェ」
「このやろう、もっとスカートを上げろっ」
枝に引っかけたロープを引くと、ひろみはヒイッと咽喉を鳴らして
爪先立ちになった。
「動くと首が絞まるぜ。そのまま立ってろ」
ロープの端を木の幹に結んで、スカートの中に手を入れると、
コルセットらしい厚手の下着をパンストもろとも尻の皮を剥くように
ズルズルッと下げた。とたんに甘酸っぱい女の匂いが鼻をつく。
「あれぇ奥さん、この調子じゃ、けっこう濡らしているんじゃねぇのかい」
股の間に指を入れると、温かくて湿った感触だが、それほど濡れて
いるわけではなかった。そのかわり指に触ったのは、軟らかい肉の間に
挟まっている細い紐である。
「何だこれは、メンスなのかい」
引っ張ってみたが、穴の入口に引っかかっているのか容易に抜けてこない。
「へぇ、奥さん、締まりが良いんだな」
はずみをつけてもう一度強く引くと、ズポッと卑猥な音がして、ドス黒い
血にまみれた綿の塊が指先にぶら下がった。
なるほど、それでホテルに入るのを断ったのかと思ったのだが、
ここまで来てしまったのではもう後に引けなかった。
「そんならそうと早く言えば良いのに、あんたバカじゃねぇのか」
「そんなッ、ハッ恥ずかしい」
「メンスだって、俺はいっこうに構わねぇんだぜ。妊娠しないんなら
ちょうど良いや」
血まみれのタンポンを棄てると、私は無造作にブラジャーのホックを
はずした。
「でっけぇオッパイだな。子供を産んだことはねぇのかい」
「ヒィィッ」
乳首を摘まんで捻り上げると、ひろみはのけ反って糸を引くような
悲鳴を上げた。
「うるせぇな、静かにしなよ」
「はッはい」
木の枝に首を吊られて、両手でスカートを持ったまま、胸もとをはだけ、
パンティを膝の下までズリ下ろされて立っている女の恰好は、みじめと
言うよりむしろ滑稽に近い。だがこのほうが素裸に剥くよりもよほど
雰囲気にマッチしていた。
「スカートを上げて、こっちにケツを向けな」
「は、は、はい」
まるで操り人形のように、ひろみは言うなりになった。
すぐ横を、ヘッドライトの光を交差させながら車が何台も走り抜けて行く。
だが防風林の中で蠢いている人間の影に気がついた車は一台も
なかった。思ったより幅のある人妻の尻を後ろから抱えて、私は容赦なく
突き刺そうとしたのだったが、首を吊っているので、お馴染みのワンワン
スタイルというわけにはいかない。二人とも、ほとんど直立したままの
絡みである。穴が下を向いているので、先端がようやく埋まる程度、
これではとても射精するまでにはいかなかった。
「脚をあげろ、転ぶんじゃねぇぞ」
踵が肩に届くくらいまで上げさせて、間に割り込んで突上げる。
ひろみは両手で木の幹にしがみついているのだが、その度に
枝全体がガサガサと揺れた。経血が落ちてくるのか内部はヌラヌラと
濃いヌメリがあつて、抜き差しに不自由はなかった。
「イクぜ。いつまでも遊んでるわけにゃいかねぇからな」
「ウッ、ウッ、ウッ」
まるで、暗い夜空に向かって精液を噴き上げるような奇妙な快感である。
やがて湿った肉の襞に包まれた男根が、二度三度と激しく脈動した。
「ふぅ、ご苦労さん」
さすがに腰がダルくなって担いでいた脚を放すと、とたんに大量の精液が
ダラダラと太腿を伝わって落ちてきた。
「ダラシがねぇおまんこだな。少しは中に残しておけよ」
砂だらけなったタンポンを拾って、捻じ込むようにグチャグチャになった
穴に戻すと、粘膜を刺激するのか、ひろみはまた小さな悲鳴を上げた。
「帰るぜ。家まで送ってやるから、悪く思うな」
首のロープを解いてやると、ひろみはクタクタとその場にしゃがみこんだまま
動こうとしない。私は、構わず車のエンジンをかけた。