母の秘密・娘の秘密





   一、ゴッド・ヘルプミー

 まだ学生のころ、私は、ふとしたことから奇妙なツバメのような生活を

送っていたことがある。

 女の名前は、朝倉美和子…。年齢は35才だった。

京王線の沿線に建て売りの小さな家があって、私はそこから学校に通って

いたのだったが、あとは一日中、ごろごろしているだけで良かった。

 美和子は、そのころ進駐軍が多かった調布の町で怪しげなバーを

経営していた。本人もおそらく洋パンあがりだったのだろう。よく片言の

英語をしゃべった。

 明け方になって店から戻てくると、美和子はまるで人間が変わったように、

純情で従順な女になって一生懸命私に仕えようとした。いま思えば

母性本能というか、満たされない心の一面を追い求めていたのかもしれない。

「坊や、お風呂が沸いたわよ」

 狭い浴槽は、ひとり入れば満員である。美和子は裸のまま洗い場に

しゃがんで待っていて、湯から出ると広げた両股の間に身を屈めて

男根を洗ってくれた。

 手のひらに石鹸をいっぱいつけて、根もとからフクロの裏側まで爪で

掻くように丁寧に汚れを落とす。いまなら専用ソープランドといったところである。

ヌラヌラした快い感触で、男根はたちまち天井を向いた。

「アラいや、こんなになって怖いみたい…」

 美和子は嬉しそうに、皮のむけた亀頭のくびれを指先で何回も

なぞりながら笑った。

「ねえ、今日はやってくれるんでしよう?」

「またかよ、めんどくせえな」

「だって、こんなに立ってるじゃない。お願いよ。ね、ね…」

 ザァッと背中に湯をかけて、美和子は正面から腰にしがみついてきた。

カチカチの男根とまわりの毛に頬をこすりつける。狭い浴室では、

それが精一杯の表現なのである。

 風呂を出ると、朝から真っ白なシーツをかけた蒲団が敷いてある。

横になって煙草をふかしていると、美和子がタオル一枚の立て膝で

化粧をはじめた。

「待ってね、すぐだから…」

 横目で見ると身体の線はまだそれほど崩れているわけではないが、

乳首が黒く、腹にはタップリと脂肪がついて、やはり盛りを過ぎた三十女の

肉体である。

「坊や…」

 やがて、プンと香水の匂いが漂ってきて、美和子が上から覆いかぶさる

ように唇を重ねようとした。私はとっさに顔をそむけた。

「やめろよ。気持ち悪い!」

「ご、ごめんね。だって好きなんだもん…」

「お前、舐めるところが違ってるだろ」

「あ、じゃァやってあげる…」

 美和子はすぐ向きを変えると、腹這いになって男根をくわえた。

洋パンの経験があるだけ、フェラチオはさすがに巧みだった。

「キンタマもちゃんとしゃぶれよ」

「うふん…」

 ボンヤリと時間を忘れて、気持よく舐めさせてながらウトウトしていると、

我慢しきれなくなったように美和子が唇を離した。

「ねえ、もういいでしよう?」

「どうしたんだ」

「お願い。は、はやく入れて…」

「ちえっ、それじゃこっち向いて、股を拡げろ!」

 半身を起こして、膨らんだ下腹にモサモサと伸びた陰毛を手荒く引っ張る。

「や、優しくして…」

 股の間に深い割れ目がくろずんで、発達したビラビラが重なりあっている。

指を入れると、なかはもうドロドロになっていた。

「汚ッたねえ、ハメる気がしねえよ。お前、いったい何人とやったんだ」

「い、今は、坊やだけよ…」

「俺には、こっちの口を使え!」

 馬乗りになって、顔の上で大きく腰を弾ませると、直接咽喉を突かれて

息をすることができない。

「うッぷ、うぷッ…」

 美和子は顔を真っ赤にして、それでも歯を立てまいとしてもがいていた。

先刻から手や口で刺激されているので、快感はすぐに昂まってきた。

ドボッと最初の精液の塊りが抜ける。つづいてドクッドクッと五・六回、

一定の間隔をおいて美和子の咽喉に流れ込んだ。

「ウゲェェ…ッ」

 一段落したところで、軟らかい女の腹を枕にして、ゴロリと仰向けになった。

「いっちゃった…。とうぶん駄目だぜ」

「ひどい…、何故、何故なのよゥ」

 美和子が泣きながら抱きついてきた。

「知らねえよ。やりたけりゃ自分でやんな」

「オー、ゴッド・ヘルプミー!」

 暖かい女の肉に抱かれながら、いつの間にかぐっすりと眠ってしまった。

 こんな関係が半年ほど続いたあと、新しい女ができて、私はこの家を出た。



   二、おそ咲きの淫乱マゾ


 それから十数年を経て、私は自分で変態クラブを経営するようになった。

そのころになると、女を仕込むやり方はかなり徹底していた。飯島セツは、

ちょうどそんな時期に現れた女である。

 六年前、亭主に死なれて、デパートの派遣店員や化粧品の売り子をして

生活してきたのだが、子供を私立の女子高校に上げるためにどうしても

学資が欲しい。いままでの給料ではとても追いつかないというのが

事務所を訪れてきた理由だった。

「幾つだ?」

「39才です。お恥ずかしい年ですけど、そのぶん一生懸命にしますから…」

 裸にしてみると、あまり男に抱かれていないせいか、素肌から甘いヨーグルトの

香りがした。子供を産んでいるので乳房は少し垂れさがっているが、

それがかえって中年女の魅力といえば言えるのである。

「精液を飲んだことあるか」

「えっ、いいえ…」

「ケツの穴を舐めたことは…?」

「あ、ありません」

 意識して塗ってきたらしい紅いマニキュアが、緊張してブルブルと

震えている。

「おまんこの中身を見せろ」

 ふるえる指先で、セツが陰毛を掻きわけると、年のわりには小型の

クリトリスが固くなっていた。軽く突いてみると感電したようにビクビクッと

腰をひねる。敏感というより、ほとんど男に触られていないのである。

「お前、亭主と別れてから誰ともやっていないのかよ」

「はい…」

 セツは、耳たぶまで真っ赤になっていた。

 どんな事情があったとはいえ、よくも決心してきたものだと思ったのだが、

だからと言って、情けをかけてやる場合でもない。

 とにかく客をとってみろと言うと、素裸のまま絨毯に両手をついた。

「ありがとうございます」

「変態は甘くないぜ。覚悟はしているんだろうな」

「教えていただければ、きっとその通りにいたします…」

 それから、少し顔を上げて、すがるような調子で言った。

「あの、このことは子供には絶対に秘密にして頂きたいんですけど…」

「わかってるよ。安心しろ…」

「どうか、よろしくお願い致します」

 セツはもう一度、深々と頭を下げた。

 翌日、初めての客をつけてやると、セツは急に不安がこみあげて

きたようであった。

「私にできるでしようか…?」


「いまさら考えたって仕様がねえだろう。相手がイクまで何回でも

犯られてこい…!」

「ワ、わかりました」

 結局、戻ってきたのは夜遅く、12時を過ぎてからであった。

「満足してもらったのかよ?」

「2回、お口に入れていただきました。あとはオシッコを飲まされて…」

「そうか、そいつは良かったな」

 途中で吐いてきたらしく、セツはまだナマ唾を嚥みこんでいた。

 だが、長い間使わなかった穴に、毎日蛇のような男の道具を入れて

掻きまわされ、弄ばれるのである。身体に火がつかない筈がなかった。

はじめのうちは、羞かしさと緊張とでギコチないところもあったが、客扱いが

丁寧で何をされても言うことをきく。3ケ月もたつとけっこう常連がついた。

子供がいるので泊まることはできなかったが、マゾ女としての評判は

悪いほうではなかった。

 その日も、セツは指名の客がついて外出していた。

 夕方、ベルが鳴って受話器を取ると、まだ幼い感じの女の声である。

「スイマセン、飯島ですけどお母さんお願いします」

「お母さん…?」

 ちょっと意外だったが、どうやら無事高校に入学したというセツの娘であるらしい。

「ああ、お母さんね。今ちょっと外に出ているよ」

「いつごろ戻るんでしようか」

「さあ、わからないな。お客さんと一緒だから…」

「あの、そこでお仕事をしているんじゃないんですか?」

「お母さんがどんな仕事をしているのか、知らないのかい」

 娘が知らないのは当り前だが、そのとき私の頭の中では、マゾ飼育人としての

嗅覚が、何かを囁きはじめていた。



    三、母の秘密・娘の秘密


 その娘の名前は、絵里子といった。

 電話で疑心暗鬼を与え、適当に脅したりすかしたりして、その日のうちに

近くの喫茶店に呼び出すのはわけもないことであった。

 会ってみると、痩せ型で母親よりいくぶん背が高い。まだ少女らしさの

抜けきらない顔で、ちょうど子供から大人への境いめといった感じである。

「うそ、嘘でしよう?」

 信じられない…、と絵里子は息をのんだ。

「嘘なんかじゃねえよ。だから母ァちゃんは毎晩おそいんだぜ」

 娘には、絶対に知らせてはならない秘密である。セツが聞いたら

狂ってしまうかも知れないのだった。

「女はセックスすれば金になることくらい、お前だって知っているだろ」

「うん…」

「どうだ、お前もやってみねえか?」

「やめてよゥ…」

 絵里子は身を縮めて、上目使いに盗むような視線を向けた。

「怖いもん、できないよ…」

「セックスなんて、大人になればみんなやってる。馴れてしまえば

どうってことないさ」

「………」

「母ァちゃんに話せば反対されるに決まってるから、ここで良く考えてみな」

「でも、どうやればいいの…?」

「教えてやるよ。そろそろお前も一人前の女になったほうが良いころだぜ」

 こうなると、催眠術にかかった小猫のようなものであった。

 場末のラブホテルに連れ込んでセーラー服を脱がせると、薄くて固い

胸にはブラジャーもつけていない。スカートの下は少年のように細い腰、

背は高いが女らしい膨らみがまだ発達していないのである。ちょうど、

童話のピノキオのような体型をしていた。

「こっちに来い。痛くしねえから…」

 手首を握って、強引にベッドに引き寄せると、よろめくように倒れ込んできた。

 それを横抱きにして太腿の間に割り込む。ほとんど濡れていないので、

入れるとき軋むような感じがしたが、意外なことに、絵里子はもう処女を

失っていた。

「お前、おまんこしたことがあるのかよ?」

 穴の感触を確かめながら聞くと、悪戯を見つかった子供のように頷く。

道理で、それほど怖がらないわけであった。問いつめると、一人でいるのが

淋しくて、友達の家に遊びにいっては二三人の同級生と関係を持ったらしい。

それも、最近のことであった。

「馬鹿だな。親が苦労して稼いでるっていうのに、そんなガキとタダマン

やってるとロクなことはねえぞ」

「もうしない、お母さんに悪いから…」

 ハメたまま、絵里子は泣き声になった。

「ねえ、どうしよう…」

 突然、上半身を捩じるようにして抱きついてきた。

「どうしよう。わたし、生理がこないのよ」

「何だと…?」

「もう、ふた月も無いんです。お母さんにわかったらどうしよう!」

 妊娠しているとは想像もできなかったが、絵里子が嘘を言う筈もなかった。

「てめえが悪いんだろ!」

 いきなり突き放して、容赦なく根元まで入れる。絵里子はのけぞって

呻くような声を上げた。

「おろす金は自分でつくれ。おふくろには黙っていてやるから、客をとるか!」

「や、やります。うえ…ッ」

 もう遠慮する必要はなかった。孕んでいるのなら、あとで妊娠したのどうのと

付きまとわれる心配もない。

股裂きにして上から横から存分に弄んだあと、幼い性器に溜まっていた

精液を吐き出すと、まだイクことを知らない少女は、ゼイゼイと喘ぎながら

ベッドにしがみついていた。

 セツが事務所に戻ってきたのは、その日も午前零時を少しまわった頃である。

「毎日遅くなって、子供は大丈夫なのか?」

「あの子はしっかりしていますから…」

 そんなとき、セツはふと甘い母親の顔になった。娘の変化にはまったく

気がついていないのである。

「ちょっと、おまんこを見せろ」

 疲れている様子だったが、セツは従順に脚をひろげた。陰毛はとっくに

剃り落されて、露出したクリトリスのまわりが赤く爛れたように腫れあがっている。

「だいぶ酷くいかされたな」

「すいません…。すぐなおります」

「どうだ、今度は俺とやってみるかい?」

 冗談のように言うと、セツは何故か哀しそうな微笑を浮かべた。

「お願いできますか、私なんかと…」

 それからまたひと月ほどたって、私はセツに強制的に泊まりの客をとらせた。

 その日、絵里子に子供を堕ろさせるためであった。



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