裏門のお値段






   一、マゾ女の面接室


 そのころ、SMクラブと言えば一種の秘密組織で、最近のように

堂々と雑誌に広告を出すなどということはなかった。

 ほとんどが口込みで、客の希望に合わせて女を調教する。

高価だがそれだけに希少価値があった。

当然、女たちの選別も厳格で訓練は過酷だった。

「お前か、マゾ志望というのは…」

「はい」

「名前は?」

「秋吉紀子、23才です」

「男とは、これまでにどのくらいやった?」

「二十人くらい…、です」

「男に抱かれてイクことを覚えたのは、いつだ」

「去年…」

「嘘をつけ!」

「ほ、本当です」

 紀子は口ごもりながら、ドギマギと視線を伏せた。

「それまでは、犯されるところを想像したりして…」

「ふむ、オナニーの常習だったんだな」

「は、はい…」

 甘いマスクとスタイルは、悪いほうではなかった。かなりマゾっぽい

ところもあって、これなら仕込み方によっては十分ものになりそうな

感じである。

「いま、ちょうど専属の女を雇いたいというスポンサーがいるんだが、

テストを受けてみるか?」

「どんな方なんでしよう?」

「よくは知らないがね。まあ、相当なお金持ちだ」

「私なんかで、気に入っていただけるでしようか?」

「それは、お前さん次第だな」

 紀子は不安そうな顔になった。詳しいことを言えば、尻込みするに

決まっている。あとは身体で納得させるほかないのだ。

 うつむいてしばらく考えていたが、紀子はやがて決心したように言った。

「お願いします。私、犯されるのは嫌いではありませんから…」

「覚悟を決めておかないと、途中で逃げ出すわけにはいかないんだぞ」

「わ、わかりました」

「それじゃ、とにかく身体を見てやるから、オッパイ出してみろ」

「ハイ…」

 意外に従順に、紀子は上着を脱いだ。下に固いブラジャーを

つけている。両手を後ろにまわしてホックを外すと、プリンとした

大きめの乳房があらわになった。

「あの、全部脱ぐんですか…?」

「当たり前だ」

 立ち上がって、腰に食い込んだジーンズを捩じるように爪先から

抜くと、紀子は無意識に両手で毛の部分を押さえた。

「手を上にあげろ」

「………」

「この野郎、いつまでもおまんこ隠してるんじゃねえ!」

 バシッと平手で太腿を叩くと、弾かれたようにバンザイの形になった。



   二、アナルマゾへの転身


 淫毛は卵形で、それほど多いほうではなかった。その下にクッキリと

縦の線が刻まれている。タンポンを入れているのか、割れ目から

細い紐が五センチほど垂れさがっていた。

「何だこれは、メンスなのか」

「いえ、下着が汚れるといけないと思ったものですから…」

 乱暴に引っ張ると、卑猥な音を立ててタンポンが抜けた。

「舐めろ。自分で出した汁だ」

 本能的に顔をそむけようとしたが、食いしばった唇をこじあけて

タンポンをくわえさせると、紀子は二三回、鶏のように咽喉を鳴らした。

「後ろを向いて、ケツを出してみろ」

 四ツ這いにして、うしろから割れ目を開ける。充血した谷間に

もう新しい粘液が滲み出していた。

「若いくせに、ビラビラが厚いな。オナニーのやりすぎだよ」

「す、すみません…」

「こんなおまんこじゃ、人に笑われるぞ」

 割れ目から少し垂れ下がっているのを引っ張ると、とたんに紀子は

小さな悲鳴を上げた。指を入れて掻きまわすと、ほどよいヌメリと

ザラザラした感触があって、口で言うほどお粗末な道具ではなかった。

 だが、スポンサーからの注文は全然べつなのである。

「こっちは、まだバージンだな」

 突き出した尻の真ん中に、まだ荒れていない栗色の蕾がひっそりと

埋まっている。つつくと、いそぎんちゃくが触手を閉じるようにキュッと締まった。

「お前のお客さんは、こいつがお目当てなんだよ」

「えっ…?」

「初めてだと、入れるときはおまんこより痛えぞ」

「あ、あの。前のほうでは駄目なんでしようか…」

「贅沢言うんじゃねえ。女には三ツも穴があるんだ。どれを使おうと

同じことだろう」

「でもおしりは、まだやったことが…」

「だから、覚悟を決めろと言ったろう」

「ハ、ハイ…」

「知らなければ教えてやる。やる気があるんだったら

二三日かよってこい」

「………」

「わかったのかと聞いてるんだよ!」

 髪の毛を掴んで顔を捩じ向けると、タンポンをくわえたまま、

紀子は何回もうなずいてみせた。

「楽に通るように馴らしてやるから、ケツをこっちに向けろ!」

「あっ、はい…」

 動かないように腰を抱えて、唾液でひとまわり大きくなったのを

グリグリと穴に捩じ込む。

「うっ、ううむ…」

「見ろ、簡単に入ったじゃねえか」

 紐の先端を残して、押さえていた腕を離すと、紀子はクタクタと

蹲ってしまった。

「嫌だったら、自分で抜いて家に帰れ!」

「いやっ、お願いします。わたし一生懸命にしますから…ッ」

 こうして、翌日から本格的なアナルマゾとしての教育が

はじまることになった。



   三、バスルームの凌辱


 次の日の午後、ミニスカートを穿いてきた紀子の尻を捲ると、

昨日入れたタンポンの紐が、そのまま垂れ下がっていた。

「お前、糞をしてこなかったのか」

「あのう、我慢したほうがいいと思ったものですから…」

 言われたとうり訓練を受けようとしている気持はいじらしい。

マゾ女の素質は、こんなところにも現れるものだ。

「それじゃ、腹の中は糞だらけだろ」

「すみません、そうかも知れません」

 引き抜いてみると、全体が褐色の汚物に染まって、まわりに

滓がこびりついていた。

「裸になってこっちに来い。臓物を洗ってやる」

 バスルームでしゃがませると、いやおうなしに、卵形の淫毛が

パックリと口をひらく。

「見ていてやるから、溜まっているやつを先に出してしまえ」

「こ、ここで…、ですか?」

「マゾの女は、いちいちトイレなんか使うもんじゃねえんだよ」

「あっはい、やってみます…」

 両膝を抱えて、乳房を押しつぶすように蹲ると、紀子は唇を噛んだ。

「ううむ…」

 いきむのだが、緊張しているのと羞かしさとで、排出はなかなか

はじまらなかった。馴れない姿勢で5分も踏ん張っていると、身体が

ぐらぐらと揺れる。紀子はよたよたと脚の位置を変えた。

「今のうちに精一杯出しておかないと、後が辛いぞ」

「うん…ッ」

 突然、ブワッと激しい破裂音がして、噴き出した大量の塊が

いっぺんにとぐろを巻いて盛り上がった。

「うわ、臭え!」

「ああっ、ごめんなさい…ッ」

 続いてジョロジョロと、割れ目から小便が流れ出す。薄黄色い液体が

たちまちタイルに大きな水溜まりをつくった。

「はぁ…ッ」

 崩れるように、紀子は腹這いになった。足首が痺れて、

もうしゃがんでいられないのである。蛙のように拡げた脚の奥から、

糞の塊が湧き出してボタボタと落ちてきた。

 クリトリスから下腹にかけて、べったりと糞便が付着している。

「汚ねえ。おまんこが糞だらけだ!」

「す、すみません」

 ホースを蛇口につないで水の量を調節すると、汚物を流して

貰えると思ったのか、紀子は少し腰を浮かした。

 その穴を狙って、グサリと直角にホースを突っ込む。

「ギヤァァッ」

「ばか、動くんじゃねえ」

「かッ、かんにんして…ェ」

「暴れると、はらわたが破れるぞ!」

 みるみるうちに、腹が固くなって膨らんでくるのがわかった。

「苦しいッ。お腹が痛い…ッ」

 ホースを抜くと激しく水が逆流する。強い腹圧で、タイルの

あちこちに糞の塊が飛び散った。噴出が止まるとまた容赦なく

ホースを入れる。

「タッ、助けてッ」

「駄目だ。腹の中がきれいになるまで我慢しろ」

「し、死んじゃうッ。グフッ…」

 限界にくると、紀子は嗚咽して胃袋の内容物を大量に吐いた。

「ウゲェッ、ゲェッ」

「もっと吐け。汚いものを全部出して、生まれ変わるんだ」

 頭を下にして、身体を海老のように曲げると、ホースを突き刺した

穴がモロに天井を向いた。

 すぐに、周囲からぶくぶくと白い泡が溢れだす。ホースを抜くと、

空気の混ざった濁った水が、50センチほどの高さまで音を立てて

噴き上がった。

「ゲホッ、ゲホゲホ…ッ」

 汚水と一緒に、吐いたものまで嚥み込んでしまったのか、紀子は

息も出来ないほど噎せかえった。

 文字どうり臓物の中を洗うのである。浣腸などという、生やさしい

ことではなかった。

 はじめ濁っていた水も、三回目くらいから白い寒天のようなものが

出るようになり、やがて透明な普通の水になった。

「よし、立ってみろ」

 半ば失神して、全身が溶けた糞便と嘔吐にまみれてヌルヌルと滑る。

 蛇口を全開にして頭から浴びせると、紀子は水をかけられる度に

よろよろと倒れそうになった。

「だらしがねえ、もっとちゃんとしろ!」

「は、はい…。申し訳ありません」

 ときどき、立ったまま尻の割れ目からジャーッと残った水を吐き出す。

 秋吉紀子は、確実にマゾの道を歩きはじめていた。



   四、紀子の就職


 それから一週間かけて、紀子はさまざまな訓練を受けた。

 舌と唇のテクニック、アナルオナニー、排便のマナー、浣腸と洗滌の実習、

穴の拡張と収縮の訓練、アナル態位のなど。

 そろそろ良いだろう…。

 スポンサーに電話をかけると、すぐにでも会ってみたいと言う。相手は

二部上場会社のオーナーで、女の裏門を犯すことには異常な執念を

持っている男である。

 紀子は尻込みしたが、いつまでも事務所に置いておくわけにも

いかなかった。仕事は仕事と割り切って指定された場所で女を渡すと、

出来上った作品を手放したときのように、何となくうつろな気分になった。

 翌日、思いがけなく、秋吉紀子が少しよろめくような足取りで

戻ってきた。腕にかなり高価な洋蘭の花束を抱えている。

「どうだ、採用になったのか?」

「有難うございます。秘書ということで、使って頂けることになりました」

「そうか、良かったな」

「これ、気持ちだけなんですけど…」

 紀子は花束をさし出すと、急にあらたまった調子で絨毯に両手をついた。

「それから、最後にお願いが…」

「何だ?」

「もう一度だけ、私を見ていただけないでしようか」

 あのマニヤの男にどんなことをされてきたのか、こちらにも興味があった。

 裸にして前後から眺めてみたが、身体は別に傷ついていない。

たった一日のことだが、商品として扱っていたときと違って、

プリンとした大きめの乳房が美味しそうだった。

「お願い、脚を拡げて…」

 紀子は、すがるようにこちらを見上げた。

 両膝に手をかけて左右にひらくと、卵形の淫毛がきれいに

剃り落とされて、ツルツルになっている。膨らみに縦割れの線が

いっそう生々しく露出していた。

「ふうむ…。これじゃ、おまんこはもう無理だな」

当時まだ珍しかったピアスなのだが、これは単純で、最も効果的な

貞操具である。

 見ると、はみだした秘肉を引き寄せるように、金属の輪が二枚の肉ビラを

貫通している。取付けられたばかりなので周囲が腫れているのか、厚めの

唇がいっそう膨らんで盛り上がっていた。

「これからは、ケツの穴しか使えないという意味か?」

「はい…」

「それで辛抱できるか…?」

「そのつもりです。私、やっぱりマゾですから…」

 紀子は、後悔していないようであった。

 秘書という名目で、月給は当時として破格の二十五万円である。




<この項終り>