強 制 便 秘
一、強制便秘
変態クラブを経営していると、ときどき、とんでもない客に出くわすことがある。
昭和20年代の終り、『芸苑社』がまだ初期のころ…。女をクソ責めにしたいという
申し込みを受けたことがあった。
「ええと、アナルセックスなら、たいていの女はできますけどね」
「いや、ハメるのはどっちでも良いんです」
「それじゃ、浣腸ですか?」
「興味はあるんですが、私、もともとマゾですから…」
「はあ」
要するに、眼の前で女が排泄するところを観賞して楽しみたいという、
ただそれだけの話である。
おそらく、裏には何か異常な欲望がひそんでいるに違いない。
今でこそスカトロはブームになって、客の前でウンコをタレ流して見せる女も
珍しくはないが、これはウンコビデオが登場してから後の風潮である。
設備が整っていない事情もあったが、そのころは芸苑社でも、まだそんな
変った客を取ったことはなかった。
請けあったものの、問題は誰にやらせるかという人選である。プロである以上、
出来ませんと言って断るのも癪だし、第一プライドが許さなかった。
事務所には常時五・六人の女たちが出入りしていたが、あまり適当なのが
いない。結局選び出したのが桜井千枝…。
26才、子供が一人いるのだが、結婚はしていない。いまふうに言えば
未婚の母で、それだけに年よりも若く見えた。
両親のところに子供を預けて住込みで働いている。成績は可もなく不可もない
といった新米のマゾ女である。
「ちょっと臭えが、楽な仕事だぜ。まかせるから上手くやってみろ」
条件を言うと、千枝はとたんに尻込みして小刻みに首を振った。
「あ、あの私、いま便秘して…」
「嘘をつけ」
笑いながら、私はフレアーの多いスカートの裾を捲った。真っ白な太腿の奥は
何もつけていない。パンティを穿かせないのは、そのころの芸苑社のしきたりである。
「カッ、カンニンして下さい。私、とてもお客さまの前では…」
スカートの前を押さえて、千枝は両膝を合わせて前かがみになった。
「そこを我慢してやって見せるのが、てめえの商売だろうが」
「無理ですッ、そんな…」
恥ずかしくて出るものも出なくなってしまうと言いたいのだろうが、
これもマゾ修行のひとつである。
「お前、ここに来てどのくらいになる?」
「サ、三ケ月です」
「だったら、そろそろ真物のマゾになっても良いころだぜ」
「あッ、許して…」
ビシャッと尻ベタを叩くと、千枝はよろめいて自然に壁に寄り掛かる
かたちになった。
「いいから、股を広げてみな」
スカートを腰のあたりまで捲ると、横巾の広い骨盤に思ったよりボリュームのある
太腿が滑らかな曲線を描いていた。後ろから見ると、盛り上がった尻の谷間から
土手のふくらみが僅かにハミ出している。
「いいケツしてるじゃねえか。子供を産むとやっぱり違うもんだな」
「ひぇッ」
ナマコのはらわたをえぐるように指を入れて、ヌメリをからませると、すぐ上の
茶色の凹みに捩じりこんだ。
「アアッ、痛…ッ」
上半身を壁で支えて、千枝は膝をガクガクさせながら腰を浮かした。
入口の括約筋がふたつの穴を分離していたが、内部は薄い粘膜一枚である。
親指と人さし指を前後から突っこんで掻ききわすと、それぞれの指の動きが
はっきりとわかった。
「良く締まってるぜ、これまでケツを犯られたことくらいあるんだろう?」
「ハッ、恥ずかしいッ」
「辛抱しろっ。子供のことを考えたらわがままは言えねえ筈だ」
「いやぁッ、助けてください」
括約筋を掴まれているので逃げることができない。手首を動かすたびに、
千枝は蛙のように身体を伸び縮みさせた。
「入れるより出すほうが楽だ。いいか、今日から便所に行くんじゃねえぞ」
「ヒェェ、ううムッ」
約束の日までまだ三日ほどある。それまで排泄することを禁じて、私は指を抜いた。
二、怪人トイレ男
当日…。
そのころ出来たばかりの小田急のロマンスカーに乗って、私は千枝と一緒に
指定された箱根の旅館にいった。
三日間、ウドンやパンなど糞のタネになりそうなものばかり喰わせてある。
電車の中で無理に弁当を食べさせると、千枝はもたれたゲップが出そうな
顔をしていた。
「すいませんね、わざわざ…」
待っていたのは、痩せてあばら骨が浮き出た貧相な中年男だった。
「この方でしようか、お出しになるところを見せてくださるのは…?」
私の背中に隠れるように立っている千枝を見て、男はいかにもマゾらしく、
バカ丁寧な言葉づかいで言った。そのくせ、妙にさぐるような眼で女を
観察している。
「あんまり馴れていませんがね。食ったものが詰まってますから、出ると思いますよ」
「あ、それは有り難い。変った趣味なんで、よろしくお願いします」
振り向いて顎をしゃくると、千枝は固い表情で頭を下げた。
それほど豪勢な宿ではないが、部屋は専用の浴室つきである。この男に
してみれば精一杯のふんぱつであろう。
実際のプレイが始まったのは、夜の6時過ぎくらいからであった。
「どうぞ、ご遠慮なさらないで…、お好きなだけ召し上がってください」
「いえ私、もう…」
食卓に天プラや刺身や、温泉宿の定番料理が並んでいる。千枝が食べ残すと
男はいっそうしつこくすすめた。食ったものがすぐ糞に変るわけでもないだろうが、
腹が重くなることには変わりがない。
ようやく食事が終わって、千枝が腰を浮かすと、男は急に顔色を変えた。
「あっ、さっそく大のほうですか?」
「いえあの…」
「あゝ、お小水でしたら構いませんから、どうぞここで…」
立ちすくんでいる女の前で、男は後ろ手に身体を支えて顔を天井に向けた。
「ここでやってください。私、便器になりますから…」
そう言えば、ロマンスカーに乗ったときから千枝はトイレにいっていないのである。
先刻からモジモジしていたのだったが、どうやら我慢の限界に来ていたようだ。
「おい、言われたとうりにしろ」
「わ、私お風呂に入っていないから…」
「いや、そのほうが良いんです。少しくらい匂ったほうが…」
女として、いちばん恥かしい匂いである。千枝は救いを求めるような
視線をこちらに向けた。
「何やってるんだ。さっさと脱げっ」
「ハッ、ハイ…」
あわてて腰を屈めると千枝はぎこちない動作でスカートを取った。
パンティは、はじめから穿かせていない。
「遠慮なさらないで、ここに来て顔を跨いでください」
千枝はもう一度私の顔を見たが、駄目だとわかると、両手で前を隠して
ヨタヨタと男のそばに寄った。やらなければ、あとの仕置きのほうが
よほど怖いのである。
「この野郎、どこを隠しているんだっ」
「アッ、すいません」
反射的に手をはなすと、毛の生えていないクリーム色のふくらみが
ムキ出しになった。当時、芸苑社の女たちは陰毛を客に剃り落されて、
生え揃うヒマがなかったのである。ワレメの真ん中にクリトリスが顔を
覗かせているのが妙にナマナマしく、卑猥に見えた。
「おお、素晴らしいですね」
上を向いたまま、男が嬉しそうに言った。
「早く、お恵みを戴かせてください」
死ぬほどの恥かしさに耐えて顔を跨ぐと、無毛の亀裂がパックリと口をひらく。
男は咽喉を鳴らして、いきなり鼻柱を溝の中心にに埋めた。
「うェェッ」
千枝が尻ベタの筋肉を硬直させて、震えながらのけ反る。直接クリトリスごと
吸われたのでは、たまったものではなかった。
「アア、駄目…」
やがて、男の顎の横からブクブクと薄黄色の尿が吹き出す。
ぐぶッ、ぐぶッ、と男は咽喉仏を上下させたが、とても飲みきれる
量ではなかった。
「うへぇ、もったいない…」
眼に入った小便を手の甲でこすりながら、男はタタミに這いつくばって
水たまりをすすった。
「お、お願いします。大のほうも出してください。オシッコが出れば、きっとウンコも
したくなる筈ですから…」
三、箱根温泉ウンコ風呂
ところが不思議なことに、これがなかなか出てこなかったのである。
あれほど食わせておいたのに、なかで固まってしまったのか、緊張で穴が
締まったせいか、身体中こづきまわされて千枝は世にも悲惨な状態になった。
「おかしいんじゃねえか、てめえ勝手にクソをやったんじゃねえだろうな」
「チ、違いますッ。うゥ…ッ」
脇腹を蹴ると、身体をくの字に曲げて、千枝は恨めしそうにこちらを見上げた。
「まあまあ、そんなに叱っても仕様がない」
男がとりなして、四ツ這いにして後ろから尻の穴を舐める。
それから仰向けにひっくりかえして腹を圧したり、クリトリスを刺激したりして
みたが結果は同じだった。肛門に指を突っ込んで掻きまわすと、苦しそうに
身をよじるばかりである。
「固いんですよ。中身はいっぱい詰まっているんですがねぇ」
男が、肛門から抜いた指をしゃぶりながら言った。
「仕方がない、お風呂でやりましよう。そのほうが早そうだ」
フラフラになった女をひきずって、浴室のドアをあける。
「一緒に入りましよう。あったまれば気分も楽になりますよ」
小便だらけの身体を流しもせず湯ぶねに漬けると、ザァッと音をたてて
勢い良く温泉が溢れ出した。大きな睾丸をブラブラさせながら男が入ってゆくと、
千枝は身を縮めて、湯の中にうずくまった。
「いい湯だな。ここの温泉はね、便秘にも効くらしいですよ」
ドップリと首だけ出して、男は気持ち良さそうに言った。
「今すぐに出やすくしてあげますからね」
いつ用意したのか、石油ストーブ用の簡易ポンプを持っている。あのころどこの
家庭にもあった、石油を入れかえるときに使うプラスチック製のポンプである。
男が注入口を上に向けて握りを圧すと、思ったより大量のお湯が勢い良く
前に飛んだ。
「ヤッ、止めてくださいッ」
とっさに目的を察して、千枝はあわてて逃れようとした。
「待った、どこへ行くんですか」
浴槽を跨いだところで、下から足首を掴んで引き戻すと、バランスを失って
ザバッと湯の中に倒れこむ。
「あっぷう…ッ」
ブクブクッと頭が沈んだ。湯の中で髪の毛が海草のように揺れている。
足を掴まれているので、身体を起こすことができない。
「じっとして! すぐ終わりますから…」
もがいている太腿の間に、男はポンプの先端をふかぶかと刺した。
「ぶはァッ」
「ほらごらんなさい。暴れるからこんなめに会うんです」
どれだけの温泉が注ぎ込まれたのかわからないが、男がポンプを圧すたびに
千枝は浴槽の縁にしがみついて、身をよじりながら苦悶の表情を浮かべた。
「ウゲェ、も、もう助けて…」
突然、澄みとおった温泉の中にブクブクと濁った雲のようなものが
湧きあがってきた。
ちょうど、原子爆弾の雲を上から眺めているような感じである。
「うわァ出ましたよ。出ましたッ」
男が奇妙な歓声を上げた。
暫くして、ぽっかりと黒味を帯びた糞の塊りが浮きあがった。浮ぶのと沈むのと、
重さにも二種類あるのが面白い。
それを手のひらで溶かして、男はズルズルと音をたててすすった。
見ていても気色が悪くなりそうな光景である。
どのくらい経ったか、茹であがって失神したようになった女を浴槽から
引き上げると、髪の毛にカスが付着して、べったりと頬に張りついていた。
タイルに尻餅をついたまま、千枝は無意識にヌルヌルと太くて長いやつを出した。
「ほうっ、まだ出るんですか…?」
排泄という感覚は完全に失っている。うつろな眼であたりを見まわしながら
自分がどうなっているのか、ほとんど理解していないのである。
ブワッと音がして、今度は温泉と一緒に、黄土色の軟らかいのを大量に噴いた。
「ウワ、凄いですねェ」
砂人形が崩れるように、千枝はクソ溜まりの中にのめり込んだ。
抱き上げて、もう一度浴槽に放りこむ。
得体の知れない浮遊物が漂って、ヘドロをかき混ぜたようになった温泉に、
プカリと女の真っ白な背中が浮かんだ。