スケベ椅子の女
一、変態トルコ嬢
売春防止法が施行されると、当時、赤線と呼ばれていた風俗地帯は
一斉に鳴りをひそめた。かわって登場したのがいわゆるトルコ風呂、
現在のソープランドである。
その頃のソープ嬢は、早い話が垢すり女とさして変わらなかった。
女はショートパンツにブラジャーか水着を着て客の相手をする。
浴槽に一緒に入るようになったのはかなり後のことで、こちらが湯に
漬かっている間にローションを薄め、スポンジに石鹸をこすりつけて
待っているのが普通だった。
せまい流し場のスケベー椅子に腰を下ろすと、前から後ろから一応の
かたちで洗ったあと、股の間に割り込んで男根を両手に握ってシコシコと
みがく。ヌルヌルしたローションの感触でイクことはできたが、ただそれだけ
のものであった。
ローラ…。本名伊達絹子は、そんな草創期の特殊浴場で働いていた
女である。出会いは偶然で、飛び込んだ店でたまたま番に当たったに
すぎない。
「お前、こんなんじゃ男はよろこばねえぞ」
「わかっているんですけど…」
ローラは申しわけなさそうな顔で言った。
「ハメるのは禁止なのよ」
アホらしい話だが、今をときめくソープランドも、実はこんなところから
出発していったのである。
「じゃ、ちょっとサービスね」
洗ったばかりの先端をつまんで、チュッと唇をつける。
「ハメなけりゃ良いんだろ。ついでにケツの穴も舐めろ」
「ハイ」
ローラはスケベ椅子に顔をつっ込むようにして、後ろから舌をのばした。
尻を突き出してやると嫌がりもせず熱心に舐める。
やがて、ああ疲れた…、といった感じで顔を上げた。
「何だ、もう終りかよ?」
「ごめんネ。そろそろ時間なんです…」
「ここじゃ面白くねえ。こんどプライベートで会おうぜ」
もしかしたら変わった素質を持っているのかもしれない。こちらも若かったし、
初対面で尻の穴を舐めてくれたのが気に入ったせいもあった。誘うとなぜか
気が合って、簡単にデートの約束が決まった。
「いいわ。私、明後日が休みだから…」
その日、ローラは約束どうり喫茶店に現れると、持っていたデパートの
包みをトンとテーブルの上に置いた。
「お客さんにもらったの。わたし飲めないから、あんたにあげる」
当時、高級ウイスキーだった通称ダルマ、つまりサントリーオールドである。
ささいなことだが、ローラは素人娘と違った心遣いを身につけた女だった。
「それじゃ、これからスグに行くかい?」
相手はプロの女だ。遠慮なく温泉マークに誘うと、ローラはちょっと
眉をひそめた。
「悪いけど、わたし今朝からアンネなの。まだ大丈夫だと思っていたんだけど…」
今ではあまり使われなくなったが、アンネは生理の代名詞である。
「構わねえよ。おまんこだけが穴じゃねえだろう」
エッ、と眼を見張ったが、ローラはすぐに笑いながら言った。
「そりゃ、あんたさえ良かったら…」
部屋に入ると、眼の前で裸になったローラは均整のとれた良い身体をしていた。
年は25才前後か、当時のソープランドには赤線くずれのスレた女が
多かったものだが、乳首が小さくて胴のくびれもクッキリと見事だった。
これは、まだそれほど荒らされていない証拠である。
「待って…、わたしがヤッてあげる」
クリトリスに触ると、ローラは良く張った腰をピクピクと震わせて、
うわずった声を上げた。
立ったまま両足の間にもぐりこんでフクロを舐める。顎が上下するたびに、
股間に生温かい感触が伝わってきた。
プロの女が普通の客にやらないことを進んでやってくれるのは、やはり
精一杯の好意のあらわれである。尻の割れ目のほうまで濡らして、
片手で陰毛をまさぐりながらローラはグビグビと咽喉を鳴らした。
「私、あんまり上手じゃないでしよう?」
しばらくして、ローラは上目使いに淫らな笑みを浮かべながら言った。
「血がつくけど、もの足りなかったら入れてもいいわよ」
これは、一種の催促である。
仰向けにして脚を拡げると、割れ目の線に沿って、赤黒い血の痕が
ミミズが這ったように滲み出していた。
二、粘膜やぶり
「もっと、ケツを上げてみな」
おむすびの形に背中を曲げて、天井を向いた尻の真ん中に亀頭を
こすりつけると、ローラは急に不安そうな声を出した。
「ナ、何をするの…?」
「メンスじゃ仕様がねえ。穴はおまんこだけじゃねえと言ったろう」
「アッ、駄目よゥッ」
そのときまでフェラチオのことだと思っていたらしい。ようやく目的を
察して、あわてて起き上がろうとする。
「や、やめて、私それやったことないの」
「心配すんな。女は痛くねえんだ」
「うそッ」
嫌おうなしに抑さえつけて、反りかえったやつに指を添えると
真上から当てた。
「息を抜け。そんなに怖がるとかえって痛えぞ」
「ほ、ほんとに大丈夫…?」
「いいから、言うことを聞けよ。やってみなきゃわからねえだろう」
観念して、ローラは息を詰めた。自分で抱えた足首をブルブルと
震わせている。
「いくぜ」
みるみる凹みの中央がメリこんで、ローラはカリカリと奥歯を噛んだ。
「イ、痛い。切れちゃう…ッ」
「我慢しろ、もっと穴をひらけ!」
「ど、どうするのよゥッ」
必死で受け入れようとするのだが、唾液が乾いてしまったせいか、
無理をするとこちらの包皮も切れそうに引きつる。
「ちぇっ、濡れていねえからだ」
亀頭をずらして割れ目をなぞる。先端に生理の血を塗りまわして、
もう一度捩じ込むように入れた。
「うえぇッ」
ヌルッという感じで頭だけ入った。だが血が粘って、それ以上
進むことができない。
「お前、いつものローション持ってこなかったのかよ」
「持ってないッ、お店で使うだけだもん」
「仕様がねえな」
手を離すとローラはガックリと身体を横にして、苦しそうに肩で
息を吐いた。
「ふうっ、も、もう良いでしよう…?」
「馬鹿、まだハマッちゃいねえよ」
ふと思いついて、持ってきたウイスキーの瓶をあけた。
「待ってろ。いま穴を柔らかくしてやる」
血に汚れた男根をくわえさせておいて、尻をこちらに向けると、
注ぎ口をいきなり穴の真ん中に当てた。
「動くなよ!」
ウイスキーが割れ目を伝わって、陰毛の先から雫になって落ちる。
構わず突っ込むと、ダルマの肩のところまでひと息に入った。
「アッ熱いッ。ヒェェ…ッ」
「動くんじゃねえっ」
瓶を逆さまにすると、ゴボッと音がしてかなりの量のウイスキーが
体内に流れこんだ。
「わッ、うわッ、灼けちゃうッ」
直腸の粘膜にアルコールの刺激は想像以上に強烈だった。
恥も外聞もなく、大股をひろげて陰毛のまわりを掻きむしる。
跳ね上がろうとするのを抑さえつけて二・三度繰り返すと、ローラは
脚をバッタのように曲げ、両手で下腹を押さえて転げまわった。
「ヒィッ、お腹が痛い…ッ」
夢中でしがみついてきた顔の前に男根を突きつけると、ローラは
無意識にくわえようとして、そのままズルズルと足もとに蹲ってしまった。
「死にやしねえよ。中味は酒じゃねえか…」
捩じれた股の間に割り込んで、容赦なく骨盤を引き寄せる。ぐいと腰を
入れると、粘膜を破るときの喰い締めるような確かな手応えがあった。
「ぎぇぇッ」
ローラがのけ反って白眼を剥いた。
「よし、おまんこより快いぜ」
覗くと、いっぺんに根もと近くまで陥没していた。
括約筋が痙攣して、ヒクヒクと快い締めが伝わってくる。ウイスキーの
刺激で、肉塊がカッと火照って灼けつくような、媚薬に似た気持ち良さである。
穴の周囲が痺れているのか、ローラは麻酔でもかけられたように
痛がらなくなった。腰を揺する度に焦点のない視線を宙に泳がせている。
気がつくと真っ白だった尻ぺたが、腰から太腿にかけて鮮やかな
桜色に染まっていた。腸管からいっきに吸収されたアルコールのしわざである。
もともと酒は駄目な女なのだが、尻から飲ませるとこんな具合に
酔うものか…。これは新しい発見であった。
三、尻酔いマゾの快感
どうやら刺激はおさまったが、今度はそれが腹痛、というより猛烈な
便意に変わった。
「お、お腹が痛い…」
ハッハッと荒い息を吐きながら、ローラが身をもだえる。いつのまにか
桜色が全身に広がって、首筋まで真っ赤になっていた。
「洩れそう、出ちゃう…ッ」
「バカ、しっかりしろ!」
男根のまわりにベッタリと辛子色の粘液が付着している。引き起こそうと
したが、腰がフラついて立ち上がることができない。
「我慢しろ、洩らすんじゃねえぞ」
それでなくても敷布にはメンスの血が点々とシミをつくっていた。
ここで出されたのではたまったものではなかろう。四ツ這いにして
尻を高く上げ、栓をするつもりでもう一度根もとまで入れた。
「ダッ、駄目よゥ」
自然にイキミがかかって、括約筋が膨らんでくる。ローラは前のめりに
なって、ダダッ子のような叫び声をあげた。
「アァッ、出るゥ」
ビッ、と微かな音がして、練り歯ミガキを押し出すように、すき間から
一条の汚物が洩れた。
「汚ねえ、この野郎っ」
括約筋がゆるんだせいか、抜き差しするたびにウイスキーに溶けた
糞便のカスが、穴の周囲からあぶくと一緒に噴き出してくる。たちまち
下腹がベトベトになって、敷布に黄土色の地図ができた。
「キッ気持ちいい…」
尻たぶをブルブルと震わせて、女が意外な反応を示したときであった。
突然、股間に熱い感触があった。
ジョォォ…。
失禁である。こうなっては布団はもう滅茶々々だった。こちらも覚悟を
決めて糞まみれのセックスを続けるよりほかになかった。
「もっとしてェッ」
ほとんど泥酔状態で、ローラ完全に羞恥心を失っていた。
「てめえ、まだ飲み足りねえのか」
ビンを透かして見ると、ウイスキーがまだ三分の一ほど残っている。
朦朧としているところを、グシャグシャになった布団に突き倒して、
穴にダルマの口をつっこむ。
「ウッ、ウウムッ」 こんどは吸収する暇もなく、ビンを抜くと同時に、
ウイスキーの匂いのする大量の軟便をブワッとあたり一面に撒き散らした。
「うわっ、凄げえ!」
あたりに匂いが充満してしまうと、かえって気にならないものだ。
コリコリした筋肉の輪にしごかれて、次第に射精が近づいてくる。
イキそうになると前の穴に挿しかえては交互に攻めた。
「いくう…」
どちらに感じているのか、おそらく両方だったろうと思う。 ローラは
ゲェゲェと咽喉を鳴らして呻き声を上げた。
「いくッ、いくッ」
どんなに苦しくても、胃袋に酒を飲んでいないので吐くことができない。
身体中の快感を無理やりつかみ出されるように、ローラは悲鳴を上げた。
「よし、今度はこっちの口で飲め!」
射精する直前になって、血と粘便で生焼けのサツマ芋みたいになった奴を
上の口に捩じりこんだ。
「ウップ、ゲェッ…」
後頭部を抱えて激しく揺すると、ドボッと大きな塊りがいっぺんに抜けた。
続いてすぐに2回目の脈動がきた。
おさまるのを待って手を離すと、首から上が、まるで西瓜を
転がしたようにグラグラになっている。
「おい、早く起きろ」
唇のまわりにベットリと汚れがついているのだが、それを拭こうとも
しない。ようやく風呂場に引きずっていって、頭から水をぶっかけて
ゴシゴシと洗った。
「お前、本当にケツでイッたのかよ」
「わ、わかんない…」
敷布を丸めて押し入れに放りこみ、布団を裏返しにして、逃げるように
温泉マークを出る。ローラはまだフラフラと足もとがおぼつかなかった。
「もう一回逢ってね。あんたの都合の良いときでいいから…」
別れるとき、ローラは恥ずかしそうに言った。
「また、おシリでやっても良いわよ。あんただけだから…」
だがローラとは、それきり逢うこともなかった。
当時のトルコ風呂には、実際にこんな奇妙な女がいたのである。