露出と排泄の限界





    一、淫らな実験

「これを入れるんですか?」

 少し不安そうな顔で、真弓は小さな箱を見つめた。

「トイレはあっちだぜ。自分で入れてこい」

 私鉄の駅前にあるファミリーレストランの片隅である。昼時をかなり過ぎて、

それほど混んでいる時間ではなかった。

「立ったまま入れてくるんだ。しゃがむと出てきちゃうからな」

「はい」

 あたりを見まわして、ウエィトレスが奥に引っ込んでいるのを確かめると、

真弓はさりげなく小箱を掴んで立ち上がった。膝上10センチほどの

ミニスカートである。ちょっと裾を上げれば、尻に手をのばすのは

造作もないことであった。

「じゃ、行ってきます」

 トイレは、レヂの横を通って突き当たりである。背が低いわりには

均整の取れた後ろ姿を見送って、私はゆっくりとタバコに火をつけた。

 面白い女だ…。

 眞弓はテレクラでゲットした女だが、職業はどこかの病院で事務員で、

わりとあか抜けした感じの25才である。

 もう2・3ケ月前から付き合っているのだが、もともとセックスには

目がないほうで、2度目にはアナルをやったし、フェラチオが好きで、

けっこうドぎついことも平気でやらせる。縛ったり叩いたりのマゾではないが、

淫乱というより奉仕型の、男にとっては十分に楽しめるタイプである。

「アァ、何かヘンな気持ち…」

 トイレから出てきた眞弓は、少し顔を赤くして、テーブルのコーヒーを

ひと息に飲みながら言った。

「うまく入ったのか?」

「えぇ…」

 眞弓は、左手に握っていたものをそっとテーブルの隅に置いた。

薄いピンク色の、真ん中が凹んで潰れた蛙のようになったイチヂク浣腸の

容器である。

「まだ中身が残ってるじゃねぇか」

「だって、注し口が上を向いているから無理なんです」

 中腰になって、浮かした尻に自分でイチヂクを突っ込んでいる眞弓のポーズを

想像すると、私はそれだけで奇妙に卑猥な気持ちになった。

「入れるとき、おまんこが濡れていなかったか?」

「え? えぇ…」

 そのときウエィトレスが注文していた料理を運んできたので、眞弓は慌てて

テーブルのイチヂクの残骸を隠しながら言った。

「でもどうしよう、もうお腹が痛くなってきたみたい」

「バカ、いま入れたばっかりじゃねぇか。もう少し我慢しろ」

 チラリとウエィトレスの様子を窺って、眞弓が頷く。この調子なら、まだ当分は

保ちそうであった。

 最近の浣腸ゲームは、2000CCだの3000CCだのと大量の液体を

注入することばかり流行っているが、わずか30CCの薬液でも十分に

効果が上がる。運ばれてきたスパゲッティをゆっくりと時間をかけて

食べながら、とりとめもない話がしばらく続いた。

「どうだ、そろそろ効いてきたかい」

「ううん」

 先刻から、眞弓はほとんど変化を示していない。少量なので腸から

吸収してしまったのか、とくに腹痛を訴えると言うこともなかった。

「でも、何だかヘン…」

 眞弓が、上目使いに欲情したような視線をこちらに向けた。

「あの、お尻より前の方がね。濡れちゃったみたい…」

「へぇ、感じてるのか?」

「そういうわけじゃないけど…」

「あとでタップリと抱いてやるよ。そろそろ行くか?」

「はい」

 体内に残った刺激が内側から神経を刺激するのであろう。淫汁が

パンティまで滲み出しているらしく、眞弓は立ち上がってちょっと腰を

くねらせるようなポーズを見せた。

 私鉄の駅まで歩いてほんの5分、だが、それだけでも身体を動かした

ことがいけなかった。改札口を入ってホームに立つと、眞弓はとたんに

顔をしかめた。

「どうした?」

「わ、わたし、やっぱりトイレに入ってくれば良かった」

 戻ろうとするヒマもなく、そのとき電車が勢い良くホームに滑り込んできた。



    二、おもらし電車


 それでも眞弓にはまだ余裕があった。本当に苦しくなったのは、電車が

走りだしてからである。

 液体と違って、いきなり噴き出してしまうことはないが、その代わり

腸管の深部にまで滲み通った薬液が、奥の方から内容物をモロに

降下させてくる。それが肛門括約筋の内側に溜まって、得体の知れない

塊りがたちまち大きくなってくる感じだ。

「うぅぅむ」

 眞弓はドアにもたれて、虚ろな眼で窓の外を見つめながら微かな

呻き声を出した。

 腸管が周期的に蠕動するたびに、重苦しい下腹の痛みが激しくなって

くるらしい。ときどき靴の踵を小刻みに動かすのは、今にも穴を押し広げて

中味が出てきそうになるのを必死でこらえている証拠である。

 若い娘にとって、それはどうしても耐えなければならない恥かしい

粗相だった。

「おい、顔色が悪いぜ」

「………」

「まだ、おまんこが濡れてくるのか?」

 笑いながら話しかけると、眞弓はこわばった表情でわずかに首を振った。

 ここから新宿まで約20分、電車は急行で、駅と駅との間隔は意外に長い。

車内は思いのほか混み合っていて、揺れたり人に触れてよろめくたびに、

眞弓はしゃっくりでもするように息を引いた。

 次の駅では乗客が塊になってなだれ込んできた。

 勢いに押されて、眞弓がしがみつくように身体を寄せる。見ると額にうすく

脂汗が浮かんで、腕全体がブルブルと震えていた。

「おまんこに触ってやろうか?」

 人混みにまぎれてミニスカの裾を手繰りあげると、パンティの上から

土手の膨らみを揉むように掴んだ。

「ウ、ウ…」

 肛門を固く締めているので、クリトリスが勃起してビリビリと感じるらしい。

眞弓は反射的にヒクヒクッと腹筋を痙攣させた。

「も、も、漏れちゃう…」

「何だよ、我慢できねぇのか」

 さすがに私はあわてて指を放した。たった一個のイチヂクの思いがけない

効果に、私自身が多少戸惑っていた。

「もう少しじゃねぇか、そんなことじゃトイレまでもたねぇぞ」

 実際、もしここで我慢の堤が切れたらおしまいである。

 眞弓はミニスカートしか穿いていないし、混雑した電車の中に広がる

匂いはどうすることも出来ない。あとは耐えさせるしか方法はない

わけだが、この様子ではそれにも限界があった。

「俺は知らねぇぞ。自分で責任を取れよ」

 だが眞弓は返事をすることが出来ないほど差し迫っている様子だった。

「あぁうッ…」

 電車がようやく新宿の街に入って、あと少しで終点というときであった。

突然、眞弓が絶望的な声を上げた。

 全身が硬直したと思うと、次の瞬間ブルブルッと身震いするように震えた。

 やったな…!

 とっさにそう思ったのだが、不思議なことに音も匂いもなかった。おそらく、

蛇のように太いのが、ムクムクと肛門を押し分けて溢れだしたのであろう。

パンティの横から直接床に落ちてこなかったのは、パンストという名の

ナイロンの薄い膜のおかげである。

「で、でる…」

 えっと下を見ると、黒のパンプスの足もとに小さな水溜まりが

音もなく広がっていた。いちど括約筋が緩むと、大便より小便の方が

堪えようもなく漏れてしまうのであろう。その場に立ちすくんだまま、

眞弓は今にも泣き出しそうな顔でこちらを見つめた。

 だが、このことに気がついた乗客はほとんどなかったと言って良い。

ちょうど良く電車が新宿の駅に着いて、人々はいっせいに移動していた。

もし気づいた客がいたとしても、まさかこの女が大便まで漏らしているとは

思わなかったであろう。問題は、これから先の眞弓の動き方である。

 幸いなことに、大部分の塊りはパンティの中に溜まっていた。

浣腸といっても注ぎ込んだ量が少なかったので、便が流動状態に

なっていないのである。

 これなら、歌舞伎町裏のラブホテルまで何とか歩くことは出来そうであった。

「そぅっと歩け、うんこが落ちてきたらどうしようもねぇぞ」

「ど、どこに行くの」

「ホテルに決まってるじゃねぇか」

「それより、ト、トイレに…」

「馬鹿野郎、駅のトイレなんか入ってどうすんだよ」



    三、歌舞伎町を歩く


 たしかに、このままパンティを脱げば身体から洋服まで糞だらけに

なってしまう。嫌でもラブホテルまで歩くしかなかった。

 しかも、こみ上げてくる便意は一度だけではなかった。漏らしたのは

むしろギリギリの少量だったと言ったほうがよい。数えきれないほどの

人波とすれ違いながら駅の地下街を歩いているとき、眞弓はまた

立ち止まってしまった。

「てめえ、またウンコか」

「あ、歩くと駄目…」

 下腹を押さえて、今にもしゃがみ込んでしまいそうな様子である。

「おい、しゃがむと糞が垂れるぞ」

「どうしよう…ッ」

「構うことはねぇ、歩きながら漏らせ」

 ヨタヨタとよろめくようについてくる。 もしかしたら本当に歩きながら

出しているのかも知れなかった。

 駅を出ると、人の流れにそって新宿の繁華街を横断する。

 人間の注意力は案外散漫なもので、ほとんどの人が無関心で

擦れ違っていった。ミニスカートの若いOLがウンコを漏らしながら

新宿の街を歩いているなど、はじめから想像の範囲を超えて

いるのだから無理もあるまい。

 気がつくとパンティから滲み出した糞汁が内股を伝わって、膝の下まで

黄土色に染まっていた。電車の中で小便を漏らしているので靴の底まで

グシャグシャである。

「お、お願いちょっと休ませて」

 不自然な歩き方で息が切れるのか、眞弓がたまりかねたように言った。

ちょうど音量を上げたスピーカーが同じ宣伝文句を繰り返しがなり立てている

テレクラの真ん前である。

 そのとき向こうから来た女子高生らしいグループの一人が、エッという

感じで目を見張った。それまで大声でしゃべっていたのをやめて、眞弓の

顔をのぞき込むように横をスリ抜けると、しばらく行ってからドッと

笑い声を上げた。

「ねぇ、わたし見られちゃった…?」

 眞弓がさぐるように言った。覚悟を決めて開き直ったのか、漏らしたあと

腹の中が落ち着いてきたせいなのか、先刻ほどの緊迫した調子はなかった。

「見られたって良いじゃねぇか、どうせアカの他人だ」

 眞弓は、またおぼつかない足取りで歩きだした。歩き方がおかしいので、

通りすがりの男や女が、何人かはすれ違うとき気がついたようだ。

「ねぇまだ遠いの?」

「すぐそこだよ。そんなに急がなくても良いさ」

「私のこと、ホテルに行ったらまたお尻でやってくれる?」

 歩きながら、眞弓がふと甘えたように言った。

「締まるから、きっと気持ち良いわよ」

「へぇ、もう感じてるのかい」

「私、変わったこと好きだから…」

 恥ずかしさがいつの間にか性欲に変換している。それは奇妙な羞恥と

露出の快感であった。

 ようやくラブホテルにたどりついてオートロックのドアを開けると、そのまま

バスルームに連れ込む。ミニスカを脱がしてみると、パンティが糞の重みで

半分ズレ落ちそうになっていた。

 パンストごと足首から抜くと、いつもの糞の匂いとは違った魚が腐ったような

異臭が鼻をついた。

「臭っせぇ、おまんこをキレイに洗え」

「はい」

 恥も外聞もなく、眞弓は立ったまま足を広げた。陰毛の上からシャワーを

かけて、指先でえぐるようにワレメを洗う。

「おい、後ろを向いてみろ」

 尻ペタに乾いた糞滓がこびりついていた。

 タオルでこすり落として、そのまま指をうしろの穴に入れる。中は熱くて、

これが今まで糞が満タンに詰まっていたとは思えないほどのヌメリと

弾力があった。

「お前いつ全部出しちゃったんだよ。中は空っぽだぜ」

 奥の方まで掻まわしてみたが、指についてくるものは何もなかった。

 とすると、歩きながらウンコをしていたのか。これはちょっと他の女には

真似の出来ない芸当である。

「入れてみるか、これならおまんこと変わらねぇよ」

「ほ、ほんと…?」

 眞弓は、もういつもの淫乱で奉仕型の女に戻っていた。

「いくぜ」

 両手で腰骨を抱えると、私は容赦なく先端をアナルの中心に向けた。



<この項終り>