あなたの見ている前で






    一、変態パーティ

「ア、アッ」

「フゥゥ…、ムッ」

 女たちが、それぞれ相手を意識して特徴のある嬌声を上げる。

「あんた良い身体しているんだねぇ。ほら、もっと手を後ろに回してごらん」

「ホゥ慣れたもんですなァ。なるほどそうやるんですか」

「いやぁ自己流ですよ。こんなチャンスは滅多にないからね、楽しませて

貰わんと…」

「私、縛るのは初めてなんで…、思ったより難しいね、へっへっへ」

 周囲に人がいるので半分はテレたような感じで、もう一人の男が

笑いながら言った。

「ちょっと、本当に濡れているのかい?」

 こっちは縛るより、そちらのほうに興味があるらしい。

「うわぁ、よく興奮するもんだねぇ。もう出していますよ」

「あぁぅ…、くくッ」

 場所はメンバーの一人が提供した自宅の応接間、集まっているのは、

男が5人、女が3人、物好きな連中が費用を出し合って女を呼んだ

奇妙なパーティである。

 会場には、淫靡だがどこかマンガチックな雰囲気が漂っていた。

一対一だと男も真剣になって何をされるか判らないのだが、こうした集団に

なると、どうしても互いに牽制し合ってしまう。彼女たちにとっては、

そのほうがむしろ楽なのである。

 昭和30年代の後半…、私がやっていたのはSMクラブと言っても

最近のように整備されたものではなかった。

 現在のように女王様とM女といった区別もなく、女は客の求めに応じて

どんなことでもやらせる。それほど宣伝していたわけではないが、客は

どこからともなく口コミで集まってきて、ときどきこうしたパーティの

申込みがあった。

 その日私が連れて行ったのは、岡田麻美、水上京子、高波聖子の

三人である。

 京子と麻美は、集団プレイはもう何回か経験していて、ある程度コツが

判っているのだが、聖子は初体験でかなり緊張していた。年令も二人が

30代だが聖子は24才、この世界に入ってひと月そこそこの新人である。

「誰か、ちょっと手を貸してくださいよ」

 そのとき、部屋の隅から年かさの男が声を掛けた。

「恥ずかしがっているんですよ。脚を広げさせたいんで、そっちを

持ってください」

「あぁッいや…!」

 本気で悲鳴を上げたのは聖子である。

「お願いッ、ハッ、恥ずかしい…」

「大丈夫ですか」

 初参加の男が、心配そうに言った。

「良いんじゃないですか、これくらいは」

 古顔の常連が委細構わずグイと膝を開く。そのままロープを使って

折り曲げた脚をギリギリと縛り上げた。

「ヒィィ、許してェ」

「あんた、そんなに暴れちゃ駄目よ。お客さんが困るじゃない」

 楽々と後ろにまわした腕をもう一人の男に縛らせながら、先輩の京子が

たしなめるように言った。これは仕事なのよと言わんばかりの口振りである。

「いいよいいよ、このくらい元気なほうが張り合いがあって良い」

 ニタニタと笑いながら、常連が聖子の腕を後ろ手にねじる。

「ヒイッ」

「そうそう、もっと真に迫った声で悲鳴を上げてごらん」

 馴れ合いでプレイするより面白いことは確かだろうが、おかげで聖子は

完全に気持ちが動転してしまったようだ。

 もともと嫌がるのを半分強制的に連れてきたので、集団プレイの中で

裸にされること自体、初めての経験である。こうなると、男たちの興味が

聖子に集中するようになったのも無理からぬことであった。

 最初は冗談まじりだった雰囲気もかなり盛り上がって、常連が真っ先に

着ているものを脱いだ。

「おい、舐めてごらん」

 けっこう大きくなった奴を突きつけると、とたんに聖子は反射的に顔をそむけた。

「舐めろっ」

 髪の毛を掴んで食いしばった唇の間に捩じ込むように入れる。

「噛んだら承知しないよ。舌を使いなさい舌を…」

「ぐふぅ、げぇッ」

「ほぅ、太いですなぁ、こいつはかなわん」

 覗き込んでいた初参加の男が、さも感心したように言った。



    二、淫らな飲みもの


 それでも男が射精するまで、それから5分以上かかった。

「うぅ、ええ気持ちやった。お宅もやってごらんなさいな」

 男根をしごいて、最後の一滴まで聖子の口の中に搾り出す。

「お互いに恥は掻き捨て、そんなに気にしなくても良いですよ」

 言いながら、両手脚を縛られて肩で息をしている聖子を新しい男のほうに

向けた。すぐ横で麻美と京子が、それぞれの相手の股間に顔を埋めて

男根にしゃぶりついている。

「そうですか、じゃ、やらせて貰おうかな」

 成り行きと言ってしまえばそれまでだが、二人目の男をくわえて聖子は

ゲクゲクと咽喉を鳴らした。

「い、いきそうや…」

 快感が上昇してくると、男は尻の筋肉をピクピクと硬直させて、

がむしゃらに腰を揺する。

「ぐぇぇ、ゲホゲホッ」

 やがて、食道に直接大量の精液を放出されて聖子は激しく噎せかえった。

 本人は苦しそうだが、当時のSMクラブでは新米のマゾの女はだいたい

こんなものだったのである。5人の男たちの射精が一巡して休憩ということに

なったが、聖子はそのうちの3人の精液を飲まされていた。

 一番若かったせいもあるが、先輩の女たちが要領良く射精の順番を

まわしてしまったためである。聖子は口許を歪めて、まだ時折込み上げてくる

吐き気とたたかっていた。

「じゃ時間がないから、そろそろ第二ラウンドを始めますか…」

 10分もしないうちに、最初の男が立ち上がって、ゆっくりと聖子の

そばに寄った。

「お前、ちょっとこっちを向いてごらん」

「え、え…?」

「いいから、口を開けて目をつぶっていな」

「はい」

 聖子は不安そうな顔をしたが、言われたとうり目をつぶって僅かに

唇を開けた。

「よしよし、良い子だね。良いもの上げるからね」

 男がダラリと垂れ下がっているのを片手で支えて、先端を顔の

真ん中に向ける。しばらくして先走りの滴がポトポトと落ちたかと思うと、

シューッと一条の水流が鼻のまわりで飛沫を上げた。

「ぶはッ、グェェ…」

「アッ駄目よッ、ぜんぶ飲まなきゃ汚しちゃうじゃない」

 京子があわてて後ろから背中を押さえた。

「ウグググ…」

 ジョボジョボと音がして、口の中に泡が立っている。小便の切れ目が

ないので飲み込むことができないのである。溢れた水滴が顎から乳首へ、

そのままボタボタと床の絨毯を濡らしていた。

 男が放出を止めると、噴き出しそうになるのを耐えて口いっぱいになった

小便をゴクッと飲み下ろす。息をつくヒマもなく、また次の放出が始まった。

「これはいい、私もさっきから我慢していたんで…」

「ハイどうぞ、皆さまの人間トイレですからご遠慮なく…」

 調子に乗って次の男が立ち上がると、すかさず京子が顔を上に向けた。

「さぁお口をアーンして、上手にいただきましょうね」

 自分が飲まされたのではたまらない。このあたり、京子は要領よく

女王様役に変身していた。同じマゾ女でも先輩の特権である。

「グブッ、グブッ…」

 まるで小便でうがいをしているように咽喉を鳴らして、聖子は二人分の

液体を飲んだ。

 額に脂汗を浮かべて、嘔吐をこらえるのがやっとである。量にすれば、

ビール瓶に七・八分目くらいはあったろうと思う。

 だがこの程度のことは、そのころの変態クラブなら当り前で、私は終始

見ていたのだがそれほど酷い仕打ちだとも思えなかった。

 問題が起こったのは、実はそれから先の話なのである。

 後ろ手に括られて転がされている女たちの間を、5人の男が犯しまくる。

方法は指で抉ったり性器の締まり具合をハメ比べてみたりいろいろだが、

一度射精した後なので余裕があった。ターゲットになったのは、やはり

聖子である。

「ほれぼれしますな。この色、サーモンピンクだ」

 太った男が、指で肉ベラを拡げて、奥を覗きこみながら言った。

「こういうのを巾着オメコというんだろうねぇ。家のカミさんなんか

比べ物にならん」

「ああぅっ…」

「どれ、せっかくだから、もう一度楽しませて貰いますかな」



    三、急性下痢症状


 縛られたままなので、男はダルマを抱えるように聖子を膝の上に乗せた。

 直立した男根に狙いをつけて、根もとまでグスッとひと息に埋める。

「うぅぅむッ」

「おうおう、そんなにええのかい。そんじゃもっと快くしてやるでェ」

 腰を弾ませると、その度に聖子はハッハッと口から息を吐いた。

「お、お、お願い…。な、縄を解いてッ」

「えっどうしたの、苦しいのかい?」

「お腹が、お、お腹が…、痛い」

「何だってェ」

 男にはその意味が良く分からなかったらしい。相手の身体より、

自分の快感のほうが先なのである。

「そうか、わしのは人一倍大きいからな。少しは辛抱せぇ、すぐに快くなる」

 見当違いの誤解をして、男はいっそう腰の動きを早めた。

「うェッ、や、やめて…、出ちゃうッ」

 実を言うと私はしばらく前から気がついていたのだが、わざと黙っていた。

 先刻から精液だの小便だの、男たちの排泄物を大量に胃袋に

注ぎ込まれて、腹の中がおかしくなっているのだ。それを構わず

突き上げられ、捏ねまわされたのでは、たまったものではあるまい。

「ヒッヒッ、ヒィッ」

 ちょっとトイレに…、などと言っている場合ではなかった。男根の上で

ダルマ踊りを踊りながら、聖子は引きつったような声で言った。

「お願いですッ、なッ縄を…」

「へぇぇ、どうかしたのかい」

 ようやく異変に気付いて、男が動きを止めた。

「気持ちが良いんじゃねぇのか。いったいどうしたってんだよ」

「助けて…、あぁぁ」

「もしもし、そいつ腹をこわしているんじゃありませんか?」

 すぐ横で、仰向けにした麻美のクリトリスを弄んでいた男が、ニヤニヤと

笑いながら声をかける。

「何とかしてやらないと…、さっきから少し臭うぜ」

「えぇっ」

 あわてて膝からほうり出すと、男は頓狂な声を上げた。

「わっ本当だ。洩らしやがった」

 投げ出されて、横ざまにひっくり返った拍子に、また少し洩らしたらしい。

割れ目から尻ペタを伝わって薄茶色の滴が一筋垂れ落ちていた。

「この野郎、何でもっと早く言わねぇんだ」

 いまさら、そんなことを言われても手遅れである。見ると男の濃い陰毛が

ベッタリと濡れて下腹に貼りついていた。

「おいタオル、タオル…! 風呂場で洗ってくる」

 弄んでいた女の始末より、自分の方が先なのである。こうなると

盛り上がっていた雰囲気がいっぺんに冷めて、みんなの視線が一斉に

聖子に集まる。

「新聞紙か何かありませんか。このままだと絨毯が汚れますぜ」

 急に気がついたように誰かが言った。それでも縄を解いてやろうと

いうものは一人もいない。

「う、うぅむ…」

 自分で縄から抜けようとするのか、聖子が身悶えしてヒクヒクと震える。

だがギチギチに縛られていて、それは無理であった。

「あんたァ、しっかりしなさいよ。我慢できないの?」

 麻美が呆れ返ったように言った。

「困るわねぇ。こんなとき急にウンチだなんて駄目じゃない」

 助けてやろうと思っても、そう言っている本人が縛られたままだから

手も脚も出ない。

「見、見ないで…ェ」

 ジュルジュルッと黄土色の流れが太くなった。続いてブワッと

異様な音がして、軟便の飛沫があたりに飛んだ。場所を提供した

この家の主人があわてて新聞紙を敷いたが、もう間に合わなかった。

「うぇぇ、ご、ごめんなさい…ッ」

「いいよいいよ。仕様がない、これもプレイのうちだ」

「はッ恥ずかしい…」

 ぶくぶくと泡を吹いて、飲まされた大量の小便が身体を一巡して

噴き出してくる。味わおうとしても味わうことができない羞恥に、

聖子はほとんど放心状態になっていた。

 失敗といえば失敗だが、成功といえば、これ以上の大成功はなかった。

このことがあって、聖子は本格的なマゾ奴隷として目覚めたようだ。やがて

浣腸プレイが普及して、縛りよりむしろそっちのほうに重点を置いた

パーティまで開かれるような時代になったが、初期の雑誌のグラビヤに

浣腸モデル高波聖子の姿を見た古い読者も多いことと思う。



<この項終り>