新宿スカトロ通り









一、 売春婦登美子


昭和三十年代の後半、売春防止法は施行されていたが、

そんなことにはお構いなく、街にはそれらしい女の影が散在していた。

プロとアマチュアの区別がなくなっただけで、実態は現在も同じである。

ただ当時の売春婦たちは、はっきりそれと判る風俗を身につけて

いたものだ。そのころ私は堤登美子という名前の女の子と付き合って

いたのだが、年令は十八才で、売春婦と呼ぶにはあまりにも若い。

だが毎日新宿の盛り場に出て、客を取ってはその日暮らしをしている

ことに変りはなかった。

登美子とは、街で見かけて声をかけたのが始まりで、旅館代を節約して

自分のアパートに連れ込んだのがキッカケである。

金額は泊りでも五千円くらいだったと思うが、もともと住所不定なので、

その晩一緒に寝てくれる男がいればそれで良い。早い話が宿無しの

フーテンだった。とは言え、毎晩決まって客がつくという保証は

どこにもなかった。

三日に一度、五日に一度アブれると私の部屋に来て泊って行く。

泊らせてもらう以上、手を出せばいつでもタダでヤラせるのだが、

かと言って恋人でも情婦でもなく、ただの友達でもないといった

奇妙な関係がズルズルと続いていた。

その晩も、私は早く帰って布団の中でウトウトとしていた。

夜更けになって、コツコツとかすかに扉を叩く音がする。鍵を開けて

やると、例によって登美子が安っぽいパーマの髪をクシャクシャにして

立っていた。

「遅いじゃねぇか、またアブレかい」

「ごめんね。三人ついたんだけど、泊ってくれる人がいなかったの」

「仕様がねぇな。いいから入れ」

「うん、ありがと」

さも疲れた様子で、登美子は部屋に入るとハンドバックを投げ出して

ベッタリと横座りになった。

若いといっても、男に弄ばれてきた淫らな匂いが全身に漂っている。

「寝ろよ。早くおまんこ洗ってこい」

「はい」

当時の木造アパートは、6帖の部屋に押入れが1間、入口の横に

3尺の炊事場というのが決まりである。ノロノロと立ち上がって、

登美子は炊事場でお湯を沸かし、それを洗面器に移すと後ろを向いて

下半身裸になった。

ビシャビシャと音を立てて、手の平にお湯をすくっては道具を洗う。

しゃがみこんでいるので尻の大きさが丸々とはちきれそうに見えた。

頬杖をついてぼんやりとそれを眺めていると、男に抱かれる事でしか

生きて行けない女の宿命のようなものを感じる。

「早くこい。寒いから風邪を引くぜ」

「うん」

目の前で上着を脱いだところを見ると、盛り上がった乳房のつけ根に、

クッキリと濃いキスマークの痕がついていた。

布団は、一組しかない。女に着せてやるパジャマもなかった。

下半身むき出しのまま、薄いシュミーズ一枚でもぐり込んできた女の

体温は、それでも思いのほか温かかった。

「お前、昼間は何をやっているんだ。時間を持て余して仕様がねぇだろう」

「映画を見たり、伊勢丹に行ったり、わりと退屈しないわよ」

「彼氏でも作ったらどうなんだよ」

「いい人いないもん。こんな商売してたら、彼氏なんか出来ないよ」

「それもそうだな。第一、男一人じゃ身体が満足出来ねぇだろう」

「お客さんが昼間からついてくれれば良いんだけど、そう上手い具合には

いかないしね」

まるで、他人事のような会話である。

「今夜だって8時過ぎてから立て続けに3人だもん、疲れちゃった」

「商売だろ、それくらい辛抱しろ。客がついただけ有り難いじゃねぇか」

話しながら腕を伸ばして陰毛を探ると、ごく自然に股をひろげる。

それほど多くはないが、滑らかで手触りの良い陰毛だった。

「それにしても、この身体ならお前を買った客はトクだな」

「ほんと? だったら嬉しいけど」

身体の向きを変えて、女の片足を腰の上に乗せると、疲れていると

言いながら登美子は当り前のように受け入れる姿勢をとった。

息を荒くするわけでもなく、反対に抵抗するわけでもない。

男に抱かれることが一種の習慣になっているのであろう。

「おまんこは悪くねぇな。まだ若いんだから稼ぐんなら今のうちだぜ」

それでも男根だけはしっかりと勃起している。私は無造作に腰をつかった。



二、糞食い問答


前の男の精液が残っているのか、ヌメリは十分に滲み出していたが、

登美子はぼんやりと天井を見上げたまま、ほとんど表情を変えなかった。

「おめぇ気持ち良くねぇのかよ」

「うぅん、気持ち良いよ」

自分の身体の奥で動いているものの感触を確かめるように、二三度

肯いてみせる。

だがクリトリスへの感覚は、おそらく麻痺しているのであろう。コリコリした

肉の粒を指先で捏ねると、登美子はふと何かを思い出したように言った。

「ねぇ、ウンチの臭いって嫌い?」

「臭ぇな、お前好きなのかい」

「うん、自分のなら好きよ」

クリトリスには反応を示さず、登美子はニタッと卑猥な微笑を浮かべた。

「今日ね、ウンチ食べてきちゃった。わりと美味しいよ」

「へぇっ、クソをか?」

「嘘じゃないよ、ホラ」

ハァッと息を吐いてみせると、確かに微かな糞臭がした。

「少しだけだけど、前からやってみたいと思っていたのよ。私って

変態よねぇ」

「面白ぇ、詳しく話してみな」

「だってさ、青カンのお客さんがひつこくてなかなかイカないんだもん」

最後についた客と公園のベンチで絡み合っているうちに便意をもよおして、

終ってからあわてて公衆便所に入ったのだが、指で尻の穴をこすって

そのまま舐めてしまったのだと言う。

「バカだな。淫売のくせに紙ぐらい持ってなかったのかよ」

「おちんぼ拭いてやったらなくなっちゃったのよ。服を汚すわけには

いかないじゃん」

「だからと言って舐めるとは良い度胸だ。普通の女の神経で出来る

ことじゃねぇぞ」

「だってェ、そうするっきゃ他になかったんだもん」

それからおそらく一時間も経っていない。口の中に、まだホロ苦い糞の味が

残っているのであろう。

「やっぱ私変態よね。またやってみたい」

クリトリスを嬲らせたまま、登美子は舌なめずりをしながら言った。

「そうかい、だったら本気で糞食ってみる気があんのか?」

「えッ、うん」

何故か判らないが、奇妙な欲情に駆り立てられて、私は乱暴に

抜き差しを続けながら言った。

「よぅし、それじゃ食わせてやる。食えるだけ食ってみろ」

「あッ、つぅぅッ」

半身を起こして女の腰を横抱きにすると、ザリザリと陰毛が擦れ合うほど

深く入れた。

「あふッ、あふぅ」

登美子は苦しそうに眉を顰めたが、とたんに新しい淫汁がドッと

滲み出してきた。快感がたちまち上昇する。だが、ここで射精して

しまったのでは何もならない。

限界に近くなって、私は思い切り硬直したやつを引っこ抜くと、

炊事場から中華そば用のドンブリを持って畳の上に置いた。

「この中に出せ。こぼすんじゃねぇぞ」

それでも念のため、新聞紙を分厚く敷いて真ん中に置いた中華ドンブリを

跨がせると、登美子はドンブリの縁に尻を乗せて大きく股を広げた。

正面から見ると、真っ赤に充血した肉のワレメが剥き出しである。

「早くしろ。出ねぇのかよ」

「ウゥムッ」

ときどき下腹に力を入れてイキむのだが、排便の直後ではやはり

無理であった。

何度目かのイキミで、陰毛の中から湧き出すようにシュウッと小便が

ドンブリの外に飛んだだけである。

「ダッ駄目よゥ、出ないったら」

「ちぇっ意気地がねぇな。出せるようにしてやるからもっとケツを上げろっ」

そのまま四ッン這いにして、露出した尻の穴に男根の先端を当てる。

「うぇッ、やッ、やめて」

前のめりになって逃れようとするのを引き戻して、直角に狙いをつけた

穴の中心にグイと体重をかけた。

「ぎゃッ」

ブチッと筋肉が開く感触があって、中程の一番太いところまで、

メリ込むようにひと息に埋まった。

立て膝に腰を突き出した姿勢で女の骨盤を前後に揺すると、ヌメリが

ついているせいか動かすのにさほどの抵抗もなかった。

「う、わ、わ、あぁ快いッ」

クリトリスを嬲られても反応を示さなかった登美子が、そのとき初めて

異様な嬌声を発した。



三、 糞尿ドンブリ


勃起も限界を超えると、かえって射精しなくなってしまうものであるらしい。

それからおよそ二十分近く、尻の穴で繋がったまま登美子は狂いまわった。

男には感覚が麻痺してほとんどイカされることのない女なのだが、

突き刺す場所が変ると、まるで別人のようになったのは不思議である。

「あイクうッ、いくぅ」

若いだけに、こうなるともう止め処がなかった。絶頂を迎えるたびに

全身の筋肉が激しく痙攣する。抑えつけていないと、身体が跳ねて

根もとまで埋まった男根が抜けてしまうのである。

五六回そんなことがあって身体を離すと、今度は大地震の後の余震のような

揺り返しが来た。まるでしゃっくりでもするように腹筋が不規則に痙攣する。

その度に女の若い肉体がエビのように跳ねた。

「何やってんだ。そろそろ本番だぜ」

放心状態になっているのを引き起こして股の間にドンブリをあてがってやると、

登美子はうつろな眼をあけて呆然とこちらを見つめた。

身体を支える力がないので、広口のドンブリの中に尻餅をついたような

姿勢である。

「舐めろ」

汚れが着いたままの男根を突きつけると、登美子は痴呆のように唇をあけた。

「うめぇだろ。お前のケツの味だぜ」

「ムムッ、ウグゥ」

やがて、下からブチブチッとチューブから何かを絞り出すような音が聞こえた。

「ホラ出たじゃねぇか。もっと出せ」

「ウゥゥ、で、出る、出ちゃうゥ」

ビビッ、ビビビッ続いて小便が漏れ出す微かな音。だがこれは尻の溝を伝って

ドンブリの中に入ったのより、新聞紙に撒いてしまったほうが多かったようだ。

ドンブリを取ってみると、中には黄色みがかかった少しユルめの塊りと

僅かばかりの小便が溜まっていた。

分量にすれば、せいぜい握り飯一個分である。

「出来たぜ。こいつは新しいクソだな」

仰向けになった顔の横においてやると、しばらくして登美子はうわ言

のように言った。

「いい匂い。あぁたまんない」

「食ってみるか?」

「う、うん」

登美子はようやくノロノロと身体を起こした。それから何か不思議なものを

眺めるような感じでドンブリの中を覗きこんでいたが、やがて手を伸ばして

人さし指を一本だけ塊りの中に入れた。 ゆっくりと掻き回しながら、

立ち昇る異臭を楽しんでいるような雰囲気である。

「どうした、良かったら醤油でもかけてやろうか」

「いらない」

糞汁のついた指先を唇に当てて舌の上に乗せる。それからチュッと音を

立てて指先ごと吸った。

「そんなもん、美味いのかい」

「ううん」

登美子は首を振って、片頬に淫らな笑いを浮かべた。

「苦いけど、お汁粉みたい」

それがいったいどんな味なのかわからないが、登美子はまた小便に融けて

ドロドロになった糞丼のなかに指を入れた。

「スプーンを持ってきてやろうか」

「お匙に匂いがつくから、これで良いよ」

思い出したように手を伸ばして陰毛を掻き分けると、登美子は黙って

脚を広げた。内部にはべっとりと濃い淫汁が溜っている。

「ヤルの?」

「まだ出すものを出していねぇからな。いいからお前は糞を舐めてろ」

再び横取りのかたちで片足を肩に担ぐ。

「あッ、あんまり揺らさないでね。こぼれちゃうから」

「わかってるよ」

私はわざと感度の鈍い前の穴に入れた。下手にヨガリ声など上げて

騒がれるより、このほうがよほど趣きがある。変態と言えばこれ以上の

変態はないが、糞食い女を人形のように抱いて勝手に弄ぶ快味は、

実際に体験したものでなければ理解することの出来ない感覚であろう。

「イクぜ。ドンブリをこっちによこせ」

「え、えッ?」

「早くしろっ。味を良くしてやる」

相手が動かないのに、快感の上昇は早かった。二三度大きく登美子の

奥を突いて、私はひと思いに男根を抜いた。

ドボッ、 薄茶色に染まったドンブリのなかに、白くて熱い精液の塊りが

勢いよく飛んだ。



<この項終り>