湯けむり 熟 女    







一、夜更けの混浴


外は雪であった。時計は、もう夜の9時をまわっている。

場所は信州の山ふところに抱かれた小さな温泉宿。平日だし、

付近に有名なスキー場がないこともあって空いていた。

それでも何人かのスキー客が泊っていたが、すっかり寝静まって

物音一つしない。

「そろそろ時間だな、行ってみるか」

夕食が終ってから、蒲団の中でさんざん弄んでいた女の身体を

離すと、濡れて爛れたように熱くなっている股間から腰を引いて、

私は無造作に立ち上がった。

「向こうは待っているぜ。服なんか着なくても良いよ」

「はぁッ、えぇ」

目の前に霞がかかったようにボンヤリとしていた女が、あわてて

立ち上がろうとして両手を蒲団についた。そのまま、まだしばらく

肩で息をしている。

「今までヤッていましたなんて顔をするんじゃねぇぞ。これからが

本番だからな」

「わ、判ってるけど」

女は恨めしそうにこちらを見上げながら、喘ぐように言った。

先刻からギリギリの絶頂をさ迷いながら、イキそうで

イカせてもらえない。おかげで全身が痺れて、関節に力が

入らないのである。

「しっかりしろ。腰が抜けてるんじゃねぇのか」

二の腕を掴んで引き起こすと、ようやく我に返った様子で、女は

手の平で自分の陰毛を抑えた。腹の筋肉はさすがに弛みを

見せていたが、乳房がピンと張って、これまでに吸い取った

男の精液がそのまま脂肪になったようなワイセツな体型をしている。

35才、名前は塚田美根子。

数年前亭主に死なれて、あちこちと浮気の遍歴を重ねたあげく、

ふとしたことから私と知り合って、それ以来性欲の吐け口に

なっている女である。

セックスならどんなことでも大好きと言う淫乱だが、これから始まる

四人プレイというのは初めての体験であった。

話があったのは一週間ほど前、私の事務所に、以前から

遊び仲間だった大阪の靴屋の主人から電話があった。

「オモろい女がおりますねん。久しぶりで、一緒に遊んでみまへんか」

「良いですね。言うことは聞くんですか?」

「そやから、それを先生に仕込んでもらいたいんや。えらく助平な

女でっせ」

「ほう、素質は十分だね。それじゃこっちからもひとり連れて行こう」

今では3Pだの乱交パーティだの、それほど珍しいことではないが、

当時は夫婦交換という呼び方で、それなりにスリルのあるマニヤの

遊びだった。

「どうやろ、場所代は持ちますさかい。どこかの温泉場あたりで

落ちあうと言うことにしては」

「良いですよ。じゃ場所はお任せします」

ということで、さっそく白羽の矢を立てたのが美根子である。

話をしてみると、美根子は一も二もなく承知した。こうして

実現したのが今回の小旅行である。

列車の都合で早く宿に着いたので、約束の時間までまだタップリと

余裕があった。

「ねぇ、ダ、大丈夫かしら」その間の愛撫と、これから始まる

淫事への期待と不安で、腰が抜けるほど発情はしているのだが、

いざとなると美根子はさすがに怯えたような逡巡を見せた。

「わたし、もし気に入ってもらえなかったらどうしよう」

「お前くらいヤルことが好きな女なら心配ねぇよ。早く行け」

照明を落とした薄暗い廊下で立ちすくんだ背中を後ろから押すと、

美根子はよろめくように浴室の戸に手をかけた。

広い脱衣場に入ると、もうひとつ奥にあるガラス戸の向こうが

大浴場で、内部は明るかったが、温泉の湯気に曇って誰が

いるのかは判然としない。

「脱ぎな。そんなことより相手の女に負けないようにしろ」

「えぇ」

覚悟を決めた様子で、美根子は引っかけてきた宿の丹前を

スルリと肩から抜いた。普段はさして見栄えがする方ではないが、

こんな場所で見ると二の腕から盛り上がった乳房の膨らみが

ひどく色っぽかった。

「あ、や、やめて」

陰毛の中に指を入れると、音がするほど濡れている。部屋でさんざん

弄んだあとの名残りである。

そのとき、浴室からパァンと湯桶を抛る小気味良い音が聞こえた。



二、年増くらべ


指を抜くと、少しガニ股になっているのを構わず、私は美根子を

引きずるようにして浴室のガラス戸を開けた。

「どうも、遅くなっちゃって」

「お久しぶりでんな」

石造りの浴槽に肩まで浸かって、首だけで振り向いたのは、

顔なじみの靴屋の主人である。

「いい案配に誰もいなかったんで、ゆっくりさせてもろてます」

見ると、その横に女が一人、背中を向けたまま俯いてじっと

湯の中に沈んでいた。一年ぶりの挨拶にしては異様な光景だが、

それほどの違和感も感じさせないのが面白い。

こちらも遠慮なく、ザバッと湯をかぶって湯ぶねに身体を沈めた。

「お連れさんでっか?なかなかべっぴんな奥さんやな。

こら今夜が楽しみや」

靴屋の主人は如何にも大阪人らしい露骨な視線で美根子を

見上げると、ニタニタと好色そうな笑顔を見せた。

「どやろ、さっそくうちのと交換させてもらえまへんやろか?」

「どうぞ、本人もその気になってますから」

えぇッ、と美根子は私の顔を見たが、それだけで頭の中が真っ白に

なってしまったようだ。

「ははは、裸の付き合いやさかい、挨拶は抜きや。悪う思わんどいてや」

そのまま洗い場でしゃがみこんでいるのを誘うように男が言った。

「いいお湯でっせ。奥さん、早く温ったまんなはれ」

「え、えぇ」

斜めに背中を見せて、汲んだ湯を身体にかける。湯けむりの中で、

妙に色っぽいポーズだった。

「おい、もっとこっちを向けよ」

「えッ」

「おまんこを洗うところをちゃんと見てもらえ。お前、見られるのも

好きなんだろ」

「い、いや、違う」

「恥ずかしがるんじゃねぇ。いつものとうりにやれっ」

ヒィッと息を引いて、美根子が無意識に正面を向く。

どれどれ、と靴屋が湯ぶねの縁に顎を乗せた。

「毛深いほうやな。そやけど、も少し股を広げてもらわんと」

「いや許してェ」

たまりかねて、美根子がつんのめるように浴槽に飛び込んで

きたので、靴屋の鼻先で大きな湯しぶきが上がった。

「はっは、まぁええ、後でゆっくりと味を見させてもらいますわ」

それから思い出したように、一緒に連れていた女を振りかえって言った。

「あ、そうや、先生に仕込まれたいと言っていたのは、これですねん」

女は相変らず俯いて身体を固くしている。見たところ美根子より年上で、

そろそろ四十才になろうかという年ごろである。

「年増やが、あのほうはエラい助平なんで、なぁお前、そうやろ?」

「………」

「名前は知代っていいます。こんなんで気に入ってもらえますやろか」

こんなとき、下手な遠慮は禁物である。腕を伸ばして脇から乳房を

抱えるように引き寄せると、ふわりと女の身体が浮いて顔がこちらを向いた。

「経験は、まだないのかい」

年を取っているのが恥ずかしいのか、知代が黙っているのを見て、

靴屋が口を添えた。

「ヤリたくてウズウズしてまんねん。好きなように遊んでやっとくなはれ」

さりげなく股間に指をやると、温泉の感触とは違った濃いヌメリが

ヌルヌルと滲み出していた。

「わかった、もう出ようぜ。ノボセそうだ」

勢いよく立ち上がると、知代の手を引いて洗い場に出た。

無口なわりには、知代は何の抵抗もなく寄り添うようについてくる。

このあたり中年女の厚かましさというのか、私が美根子を連れていることが

判っていても平気なのである。冷たい洗い場の石に横になると、

知代は待っていたように足下に蹲って、半立ちになった肉塊を

口に入れた。まるで、それが当り前のようなしぐさである。

あちらでは、靴屋の主人が美根子と本格的に始めたらしい。ときどき

すすり泣くような喘ぎ声が聞こえた。湯気の間を透かしてみると、浴槽の

縁にしがみついて尻を突き出している女の影が、ぼかし絵のように

揺らめいている。

「よし、脚を広げてみな」

十分に勃起したところで、私はゆっくりと身体を起こした。



三、 メス犬の狂宴


下が石なので、まともに乗りかかったのではかえってハメにくい。

私は半身を起こすと両手で膝の内側を抱えて、知代を腹の上に乗せた。

美根子よりずっと痩せているので、これは楽であった。正面から見ると、

乳房は明らかに美根子より垂れている。ザラザラした感じの薄い陰毛で、

W型になった足の付け根に、パックリと割れ目が開いているのが見えた。

陰毛を掻き分ける必要もないので、私はそのまま直立した肉塊の先端に

ワレメの中心を当てた。

「ウゥゥムッ」

腕の力を抜くと、ひと息にメリ込んだ肉の感触は悪いものではなかった。

下から突上げると、とたんに知代の手足が小刻みに痙攣して

上体がのけ反る。

「どうした、気持ちが良いのかい」

「ヒィィッ」

四十女のどこに、こんな快感が潜んでいるのか、靴屋の主人は

助平な女だと言っていたが、それとは別の、病的といって良いほどの

反応である。これは美根子をいたぶるのより面白い。

「うわッ、いいッ」

その時また、美根子の嬌声が聞こえた。

「待ってろ、今いいものを見せてやる」

肉塊を突き刺したまま立ち上がって浴槽の近くに戻ると、湯ぶねから

引き上げられた美根子が男の下敷きになって、のたうつように

乳房を震わせていた。その上に、ズシンと知代の頭を落とす。

「ギャッ」

「おう、いよいよ合体でんな」

腰を使っていた靴屋の主人が、とっさに半身を起こした。

「ホレ見てみい、うまくハマってるやろ」

「ウゥゥ」

知代が獣のように咽喉を鳴らした。そして何を思ったのか、身体を捻じると、

繋がっている陰陽の性器に頬ずりするように顔を寄せた。

「あひぃッ、ダッ駄目ェ」

クリトリスに舌の刺激をまともに受けて、美根子が悲鳴を上げる。

それでなくてもいきかけていたところに一たまりもなかった。

「いッ、いッくうッ」

美根子が腰を跳ねるたびに、知代の括約筋がヒクヒクと締まる。

奇妙な感覚の連動である。

「お前たち、二人ともまだ挨拶をしていねぇんだろ」

ふと思いついて、私は知代から肉塊を抜いた。

「不思議なご縁だ。おまんこを並べてみろ」

「そやな、そらおもろいわ」

靴屋の主人が、美根子の足首を握ってグイと左右に広げた。

その前に子供にオシッコをさせる姿勢で知代を据えると、

見るも無残なポーズで二人の女が向き合うことになった。

「どっちも淫乱おめこや、よう似とるやろ」

だが実際には、美根子が毛深くて周囲の土手が膨らんでいるのに

比べて、知代の肉唇は薄く、クリトリスだけが異常に大きい。

性器の形状は性欲の強さには関係ないようであった。

ふつう複数のプレイというのは、どうしても互いに意識しあって

なかなか上手くゆかないものだが、この二人は例外であった。

「あいいッ、いっちゃうゥ」

知代に見せつけるように美根子の穴に指を突っ込むと、知代は

自分が犯されたように痙攣した。

かたちを変えて、男に抱かれながら女が女を舐める。舐められた女は

上の口に男を求めてしがみついてくる。

「よっしゃ、今度はイキくらべや」

女の太腿を交叉させ、男が跨って突きまくる。ある時は、湯ぶねに

女を浮かべて前後から嵌めた。冬の温泉の湯けむりのなかで、

それは一幅の淫ら絵巻である。

とうとうたまりかねて、靴屋の主人が射精してしまったのをしおに

浴室を出たが、部屋に戻ってからも二匹のメスの性欲は衰えなかった。

それから明け方まで、ほとんど休みなしに絡み合ったあげく、私が2回、

靴屋の主人は浴場の分も含めて4回も射精させられる羽目になった。

さすがにグッタリして、翌日は昼過ぎまで寝ていたのだが、その間も

知代は私の男根を握って離そうとしない。

年増女の性欲の凄まじさというか、仮面を脱いだ女の本性を

思い知らされたような経験であった。

「もうお会いできないかもしれないけど、一生の思い出ね」

別れるとき、美根子は少し涙声になって言った。お互いに生まれも

育ちも違う他人なのである。

「………」

知代はしばらく私の顔を見つめていたが、未練を振り払うように黙って頭を下げた。




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