快 速 痴 漢 電 車



一、痴漢好み


JRがまだ国電と呼ばれて現在ほど整備されていなかったころ、ラッシュアワーの混雑は

並大抵のものではなかった。そのころ私は中央線の沿線に住んでいたのだが、

特別快速が三鷹を出ると中野までノンストップで、かなりの時間がかかる。車内はすし詰めで

痴漢にとってはまたとない環境であった。

私は常習ではなかったが、混雑に紛れて若い女に乳房を圧しつけられたり、太腿の間に

足を入れて感触を楽しむ気持ちも悪くない。時として女のほうが興奮して、思いがけない

ハプニングにであったりして、けっこう恩恵にあずかっていた。

その日、私が乗ったのは午前九時を少し回った頃で、この時間になるとラッシュアワーも

流石に山を越え、車内は満員だが、吊り革にはまだ多少のゆとりがあった。

ドアの近くの鉄棒につかまって立っていると、微かに良い匂いがする。すぐ横の、座席と扉の

境にある僅かなスペースに俯いて立っている女の髪の毛が匂うのである。

三十才は過ぎていそうだが、小柄で小太りの、典型的なOL風の女だった。いい香水つけてるな…

そう思ったのだが、さして気にもとめずにいると、電車が三鷹を過ぎて快速運転になったころから、

股間に妙な感触を感じた。つかず触らず、虫が這うように、ズボンの下の男根に微妙な動きが

伝わってくる。

ん……?

それが前の女の指の動きである事はすぐにわかった。

相変わらず俯いたままだが、女のほうでも、先刻から身体全体の神経でこちらの様子を

観察しているらしい気配だった。女の痴漢か…?とっさにそう思ったのだが、痴女と言っても、

露骨にズボンのチャックを下ろすといった動きではなく、僅かに固くなり始めた男根の、

弾力のある感触を確かめているといったタッチだった。

この女、俺に気があるのか…

こんなのは、私にとって初めての経験である。

様子を窺っているうちに、電車はいつのまにか中野を過ぎ、新宿を過ぎ、信濃町あたりを

走っていた。ためしに電車の揺れを利用して腰を押しつけてみると、とたんにキュッと女の指先に

力が入った。

そうか、よし…

相手の気持ちが判ってしまえば、こちらはいくらでも大胆になれる。クイと脚を曲げて膝頭で

恥骨の下を突くと、女はハッとした様子で顔を上げた。年は食っているが、決して見栄えの悪い

女ではない。手首を握って男根に圧しつけてやると、そのまま手を引っ込める様子もなかった。

「え、ヤリたいのか?」

耳元で小声で言うと、女は無言でニッと恥かしそうな笑顔を浮かべた。いかにも卑猥で

欲情を抑えきれないといった笑いである。

こいつ、モノになるな…

これまで、内気そうな女子高生を狙ってイタズラを仕掛けたことはあったが、

女のほうからモーションを掛けられたことは初めてであった。

こちらも専門の痴漢ではないので、何か上手い方法はないかと考えているうちに電車が

御茶ノ水の駅に着いた。

あ……?!

すぐ横のドアが開いたとたん、女がパッと身をひるがえすようにして外に出た。その後から

何人かの乗客が続いて、仕舞ったと思ったときはもう遅かった。目の前でドアが締り、

人ごみに紛れて歩いている女を尻目に、電車は次の駅に向かって走り出していた。

畜生…っ

釣り落とした魚は大きい。馴れないせいもあったが、せっかく向こうからモーションを

かけてきた女を、みすみす逃がしてしまったことが癪であった。

このままじゃ惜しい…

同じ路線の電車で通勤していることは間違いないので、私はそれ以来、意識して女を

探すようになった。

だが再び顔を合わせるというのはなかなか難しい。一週間経ち、二週間過ぎたが、

それきりあの女にめぐり合うことはなかった。

思いがけなく見覚えのある顔を発見したのは、それから一ヶ月以上経ったあとの午後、

新宿の地下街である。大きな靴店のショーウィンドの前で、熱心に覗きこんでいるコート姿が

間違いなくあのときの女だった。傍によって、しっかり横顔を確かめると、私はさりげなく

女の肩に手をかけた。



二、釣り上げた女


「おい久し振りだな、覚えているかい?」

女は一瞬けげんそうな顔をしたが、すぐにアッと思い出したらしい。

忘れていなかったということは、女のほうでもかなりの関心を持っていた証拠である。

「探したぜ。こんなところで、何やっているんだ」

女はちょっと怯えたように身を引こうとしたが、こちらの態度が馴れ馴れしいので

逃げ出すきっかけを失ってしまったようだ。

「え、えぇちょっと、時間があったから…」

言い訳のつもりだったのだろうが、この返事は渡りに船だ。

「そうか、そんならお茶でも飲もう」

「えッいや、どうして…」

「好いからつきあえよ。話がある」

無遠慮に腕を掴む。こうなれば網にかかった野兎も同然である。

地下街にある喫茶店に入って向い合うと、女は覚悟を決めたのか、それほど

動揺している様子もなかった。

「痴漢にしては変だと思ったけど、どうしてあんなことする気になったんだ」

「ごめんなさい。あなたが初恋の人に似ていたものだから、ついおかしくなって…」

「そうかい、そいつぁありがてぇな」

私は鼻の先で笑って見せた。女にはありがちな言い訳だが、早い話が、こっちが

たまたま好みの男だったので思わず手が出てしまったと言うのが本当のところであろう。

「名前はなんて言うんだ。いまさら隠したって仕様がねぇだろ」

「野末…、芙美子です」

女は俯いて、小さな声で言った。

「あんた、亭主はいるのかい」

「いえ、いいえ…」

「どうだって良いが、女のほうからモーションをかければどうなるか判ってるだろ」

……… 芙美子はしばらく間を置いて、やがて呟くように言った。

「恥かしい…。私、こんなこと誰にも知られたくないの」

「当り前だ。俺だってしゃべりたかねぇよ」

「だったら、私どうしたら良いのかしら」

「ま、二人だけの秘密にしておくことだな」

言葉の意味を探るように、芙美子はしばらく黙って考えている様子だった。弱みにつけこんだ

言いがかりということはミエミエだが、芙美子の表情にも、どこかチラチラと欲情の影が

見え隠れしている。やがて、芙美子は奇妙に念を押すような調子で言った。

「ねぇ、どうしても?どうしても許していただけないの?」

「許すとかそんな問題じゃねぇ。男が欲しかったんなら、はっきり欲しかったと言え」

「そんな、酷い…」

「だってそうなんだろ。その年じゃ我慢できるわけねぇよな」

見たところ三十過ぎとは思っていたが、実際にはもう少し年がいっているようで、

熟れきった女のズルさもタップリと身につけている。男も十分に知っている様子で、

それでなければ、衝動的にあんなことが出来る筈もなかろう。

「出るぜ、ついて来な」

伝票を持って立ちあがると、体裁を作っても無駄だと思ったのか、芙美子はもう抵抗する気配も

なかった。

こま劇場裏のホテルに連れ込んで裸にしてみると、年のわりには良い身体をしている。

芙美子は腹の弛みを気にしていたようだが、それも見ようによっては酷く猥褻で肉感的に見えた。

陰毛はさして濃いほうではなかった。型どおり風呂に入ってベッドで抱いたが、濡れ方も

並み以上で良く締る道具である。だが、これではどこか物足りない。こう簡単に

身を任せられたのでは面白くなかった。この女には、もっと常人とは別の遊び方がある筈であった。

「はぁぁッ快い、い、いいわ…」

感覚が高潮してくると、芙美子は次第に理性を失っていった。発情しているせいか、穴の周りが

濡れて腰を動かすたびにネチャネチャと卑猥な音をたてる。

「あッ駄目もう…、あァァッ」

芙美子が仰け反って、根もとまで受け入れようと腰を持ち上げたとき、私は容赦なく男根を抜いた。

「イヤイヤッ、ど、どうして…ェ」

「イクのは待て、場所を変えよう」

「えぇぇッ」

いま一歩のところで弾けそうになった感覚を逃すまいとして、夢中でしがみついて来るのを

突き放すと、芙美子は呆然と股を広げたままこちらを見上げた。



三、環状線の痴戯


「イクんなら電車の中でいけ。お前そういうのが好きなんだろ」

「え、えぇッ?」

一瞬信じられないという顔をしたが、強引にベッドから起こすと、芙美子はようやく真剣に

恐怖の表情を浮かべた。

「わ、わたし、そんな…」

「うるせぇっ、早く服を着ろっ」

ベッドの下に落ちていたパンティをポケットに捻じ込んで、女を急き立てながら外に出る。

結局、ホテルにいたのは僅か一時間足らずだった。あたりが暗くなって人の流れが増え始めた

ネオンの下を、ヨタヨタする芙美子を引きずるように駅に向かって歩く。これからが、ちょうど

夕方のラッシュの時間帯である。

乗ったのは山手線の内回りだった。これなら混雑に紛れて、どこまで行っても終点がない。

思ったとうり、車内はギチギチのすし詰めだった。人混みに押されて、後ろから抱くような形で

隣の車両との境のドアに芙美子を圧しつけると、私はいきなりスカートを尻タブの上のほうまで

引っ張り上げた。

「うぇぇッ…」

半分以上露出した太腿を隠そうとして、芙美子が顔を歪めてスカートの裾を掴む。構わず

尻の割れ目から指を入れると、先刻までの残り汁が陰裂に溜まってドロドロになっている。

指を伸ばすと、その先に濡れて膨らんだクリトリスがコリコリと触った。

「おまんこがヒクついてるぜ。あんた、よっぽど好きだな」

「う、うぅむ…ッ」

耳もとに息をふきかけると、芙美子は頬をドアのガラスに圧しつけたまま、微かな呻き声を

上げた。必死に耐えていなければ、隣で身体を擦りあっている乗客にモロにわかってしまうのである。

快感なのか、羞恥か恐怖か、頭の中が真っ白になって本人にも判然としなかったに違いない。

指を曲げて穴の入口に引っ掛け、グイと持ち上げるようにすると、とたんにヒクヒクと括約筋が

締った。

ホテルでイカされる寸前まで膨張して、お預けを食った道具が嫌おうなしに反応する。

こっちも射精していないので、やり方は手荒かった。

「くッ、くゥゥ」

「イケよ、イッてみな」

「はぁッ、た、助け…、てェ」

私は容赦なく、ズボンから跳ねだした男根を掴んで尻の穴に入れようとしたが、これは無理であった。

この間、僅かに5.6分、ビクンビクンと芙美子が異様な痙攣をはじめたとき、電車が渋谷についた。

押し込まれていた乗客がいっせいに動き出し、私は仕方なく尻から指を抜いた。動作が

楽になったのを利用して女の身体を正面に向けると、眼が焦点を失って、ドアに寄りかかったまま

ズルズルとその場にへたり込んでしまいそうな感じである。

それでも、捲くれあがったスカートを慌てて下ろそうとしたのは女の本能であろう。

そのとき入れ違いに、人の塊りが車内にドッとなだれ込んできた。

今度は正面から向かい合う形になったが、もう一度スカートに手を掛けられる状態ではなかった。

やむを得ずブラウスの間から手を入れて乳房を鷲掴みにする。

「イッたのか?えっ、どっちなんだよ」

「わわ、わかんない」

「けっ、俺はまだイッていねぇんだぜ。この間のようにやってみろ」

「ひィィ…ッ」

掴んだ乳房に力を入れると、芙美子は反射的に股間で硬直している男根を握った。

「こここ、これ…?」

「よし、見えないようにしていてやるから、おまんこにくっつけて上手くしごけ」

グリグリと乳首を揉むと、それに合わせてギコチなく指を動かす。いつもならこんなやり方で

イク筈もないのだが、このときの刺激はたまらなかった。電車が品川について混雑は

半分くらいになったが、もう誰に見られても構うものかと言った気持ちである。

新橋、有楽町と過ぎて神田までくると、ラッシュは再びぶり返して身動きも出来ない状態になった。

だが混めば混むほど、熟した女の柔らかい肉が心地快い。

ここまでくると、芙美子もさすがに恥ずかしさを通り越して、この淫靡な遊戯に没入していた。

混雑に紛れて男の肉の弾力を確かめるように、指先が微妙に締ったり緩んだりする。

ようやく捲ったスカートの奥で、男根の先端がジャリジャリと陰毛に当たった。

私が大量の精液を芙美子の太腿に吐いたのは、その直後、ちょうど電車が上野駅に

さしかかったときであった。







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