危険な遊戯



一、浣腸オセロ


「見ろ、お前の負けだぜ」

「えぇ…」 

数えると、黒のコマが6個足りない。 

くすんだような笑いを浮かべて、明美はゆっくりと立ち上がった。始めてから、

これが3回目の勝負である。 

少しよろめくような足取りで、冷蔵庫からプラスチックの密閉ケースを持ってくると、

明美は黙ってオセロの盤の横に置いた。 

蓋を開けると、中から更に小さく包装されたブルーの箱を取り出す。

「みっつ…、ですね?」

「そうだよ。早くしろ」 

あちこちの薬局から少しづつ買い集めてきたイチジク浣腸の箱を、明美は

自分で借りたマンションの冷蔵庫の中に保存していた。 

毎日買ってくるから、ケースの中にはブルーの小箱が30個ほど溜まっている。

一箱2個入りだから、イチジクは全部で60個である。 

無造作に包装を破って、明美は独特の形をした肌色の容器を握った。 

穿いている方が色っぽいくらいのミニスカートを腰まで捲ると、下には

何もつけていない。そのまま仰向けになって、明美は両手で膝の裏側を

抱えると身体を二つに折った。

ちょうど、自転車に乗った姿勢をそっくり逆転させた形である。 

当然、尻の穴がまともに天井を向いた。 

手に持ったイチジクの先端で穴の中心を探ると、器用に手首を曲げる。

細いノズルが何の抵抗もなくスルッと根もとまで入った。

「冷たい…」 

これが、明美が自分で工夫したという浣腸のポーズである。イチジクを下から

差し込んだのでは、薬液が残って全部注入することができない。

独りで浣腸する時、注入口を下に向けるためには、どうしてもこの方法しか

ないのだという。 

指先に力を入れると、それまで丸く張っていたイチジクの容器が、見る見るうちに

グシャッとひしゃげた形になった。

「あぁ、キツいわ」 

3個めのイチジクを潰してしまうと、明美は肩で息をしながら呟くように言った。 

足もとに、ひしゃげてカラになった容器が散乱している。その数はこれで

15個である。

「もう一番、いけるか?」

「はい…」 

顔をしかめて、明美は再びオセロの盤に這い寄りながら言った。 

これは、一種の罰ゲームなのである。

明美との間で決めたルールは次のとうり……。 

明美の負け2個につきイチジク1個の罰 10個以上の負け、イチジク5個+バイブ 

15個以上の負け、イチジク10個+バイブ 20個以上の負け、お風呂でおしっこ浴びせ 

パーフェクト負け、そのまま20分の外出 明美の勝ち1個につきイチジク1個のご褒美 

いったい何が罰で何がご褒美かわからないが、どっちみち、明美が勝つ気づかいは

なかった。要するにオセロなどやっているのは、何とか気を紛らわせて時間を

引き伸ばすことが真の目的である。 

普通なら5分もしないうちに便意が来て、あとはただ身を捩って耐えるしか

方法がないのだが、オセロ盤に向かっていると、どんなに苦しくてもゲームが

終るまでは排泄することができない。しかも次のゲームに負ければ容赦なく

イチジクが追加されてゆく。 

その数を食い止めようとして、明美は必死になった。だが結果は1回目が4個、

2回目が8個、そして3回目が3個である。 

どんなに急いでも、勝負がつくまでに最低5分はかかる。額に脂汗を浮かべて、

明美はときどき呻き声をあげた。

「どうした、そんなことやってるとパーフェクト負けだぜ」

「ウ、嘘でしょう?」

「もっと良く考えろよ。頭が悪いなぁ」 

考えろと言われても、視線が宙に浮いて焦点が合っていない。腸の中で蛇が

暴れているような激しい便意に間断なく襲われて、コマを持つ指先がブルブルと

震えていた。

「ウゥゥ、も、もう駄目…ッ」

「何だ、ギブアップか?」

「いやァッ、許して…」 

ギブアップというのは、浴室に連れて行かれてオナニーしながら頭から自分の

排泄物を浴びなければならない。これは明美にとつて恐怖の罰ゲームである。

「おい何やってんだ、お前の番だぜ」

「お願いッ、ギ、ギブアップです…」 

もう、一刻の猶予もなかった。 震える手でミニスカートを脱ぎ捨てると、

明美はよろけながら、前のめりに浴室のドアに向かって這い寄っていった。    



二、缶ジュースと洗面器 


量はそれほどでもないが、イチジクはレッキとした薬品である。 

15個もまとめていれると、腸の中が灼けるようになって、痛さというより苦しさが

全身に津波のように広がってくる。 

片手で陰毛を掴んだまま、明美は身をよじってドアの前に蹲ってしまった。

放っておけば、力尽きて中身を噴出してしまうことは眼に見えている。 

急いで浴室のドアを開けてやると、明美はつんのめるようにタイルに腹這いになった。

少しでも気を緩めると、肛門の括約筋がいっぺんに開いてしまう。

「カ、カンを、早く。冷蔵庫の中に入っているから…」

「待ってろ、まだ漏らすんじゃないぞ」 

引き返して冷蔵庫を開けると、新しい缶ジュースが二・三本冷えていた。

「ほらよ」

「あ、ありがと…」 

ジュースの缶を受け取ると、明美は両脚を延ばしたまま、あわてて股の間に

差し込む。ちょうど鉄棒を跨いだような格好で、明美はようやく身体を起こした。 

額にベットリと脂汗が滲んでいる。だがこれが、浣腸マニヤ明美が工夫した

絶対安全なアヌス栓なのである。 

未開封のスチール缶は女一人の体重を乗せても十分な余裕があった。

尻の割れ目に埋まったような形で、当然、肛門には全体重がかかっている。

明美が我慢しきれなくなって、肛門が開いたままになっても絶対に漏れることは

なかった。市販のアヌス栓では、この状態を保つことは不可能である。

直径4センチ近くあるアヌス栓が、猛烈な腹圧で内側から噴き飛ばされてしまう。 

だからと言って苦しさが軽くなったわけではなかった。出口を塞がれた

黄土色の蛇が、ところ構わず腹の中を暴れまわる。

「オ、オナニーしますから、洗面器を用意しておいて…」

「お前のすぐ横にあるじゃないか。自分で取れよ」

「あぁうぅむッ」 

悶絶するような腸の圧力と斗いながら、明美は僅かに広げた内股に指を入れた。 

だがクリトリスが痺れて、感覚はほとんど失っているようあった。すべての神経が

肛門に集中して、クリトリスが用をなさないのである。

「うぅぅ、うぅむ…ッ」 

いくら刺激しても、通常のセックスで味わうような、パチパチとはじける快感は

沸き上がってこない。その代わり、鉛のように鈍重な痺れの塊が少しづつ

蓄積されていった。

「せ、洗面器…」 

片手を割れ目に突っ込んだまま、明美は身体をねじって洗面器に手を伸ばそうと

するのだが、それ以上腰を浮かすことが出来ない。

「お願いッ、取って…ェ」

「まだ、まだ。一度イッてからだ」

「そんなッ、いじ悪ゥ」 

排泄用の古い洗面器が、明美の斜め後ろにあった。思い切って後ろを

向いたとたん、肛門の位置がズレて濃い茶色の溶液がドボッと溢れ出してきた。

「わぁッ」 

夢中で洗面器にしがみついて尻に当てようとしたのだが、間に合う筈もなかった。 

ぶわッ… 

凄まじい勢いで内容物が噴出する。

「だッ、駄目ェェ…」 

ようやく半分は洗面器に受けたが、噴き出した塊が直接タイルに当たって

八方に飛沫をあげた。

「うぇぇぇ…ッ」 

ムッとする臭気と、顔をそむけたくなるような汚点が狭い浴室いっぱいに広がる。

明美は洗面器を抱えたまま、背中を向けて尻の筋肉を激しく痙攣させた。

実を言うと、本当に苦しくなるのはこの直後である。 

一回目の排泄のあと、凄まじい残便感がやってくる。肛門と直腸が熱くなって、

臓物を捩じられるような苦痛が持続するのだ。

「ウゥゥ…ムッ」 

明美は全身でイキミをかけた。肛門が開ききって、直腸の一部が露出するような

感じで膨れ上がったが、内容物がそれきり出てこないのである。

いっぺんに噴き出してしまったので、残りの便が下の方に降りてくるまで、

しばらくの時間が必要であった。 

明美は夢中で、クリトリスに再び指をやった。

「苦しい…ッ、あァ快いぃ…ッ」 

先刻まで圧縮された空気のように溜まっていた淫らな塊が、ドロドロと溶けて

溢れ出してくる。

「い、い、いくぅ…」 

明美は圧し潰したような声をあげた。    



三、浣腸地獄への途 


明美とは、これまでにも随分いろいろなことをやって遊んだ。オセロゲームに

負けたときの罰もこの度に変わっている。 

例えば卵産み、明美の肛門は前に述べたアナル栓でも分かるとうり、

直径4センチ以上伸びた。軽くイチジク2・3個を注入して、その後にピンポン玉を入れる。 

最初に快い抵抗があるが、押し込むとツルッという感じで簡単に潜りこんでいった。 

内部で重なり合っているのか、一列に並んでいるのか良く分からないが、数は

10個が限界で、10個目になると穴から半分顔を出したような形になって、あとは

いくら押しても戻ってしまう。 

卵産みは鶏というより海亀の産卵を思わせるような過酷なゲームで、自力で

排泄する以外取り出す方法がないから、苦しみは一時間以上も続く。

終わったとき、明美はものも言えないくらい体力を消耗してクタクタになっていた。 

もうひとつ油粘土の便秘ゲームというのがある。 

浣腸ではふつう排泄が一度で終わってしまうので、何回も味わうことが出来ない。

一度排泄してから、また体内に戻せればと思って明美が自分で工夫したのが

油粘土である。 

はじめに浣腸して、腸内をきれいにしてから、コンドームの中に粘土を詰めて

棒状にしたものにクリームを塗って挿入する。粘土が柔らかいので、細目にして

挿入しても腸内で驚くほど太くなった。 

ちょうど便秘したときの太さで、クリームの代わりに浣腸液を塗るとすぐに

便意が起こった。この時はあまり我慢しないで出してしまうのだが、

熱いくらいになった粘土を手の上に出して、ちょっとしたスカトロ気分も

味わうことが出来る。 

あまり繰り返すと肛門が痛くなってくるので、まぁ2〜3度が限界であろう。 

こうした奇妙な性癖は、明美が高校を卒業する頃からで、もともと便秘症だったので

自分で浣腸することを思いつくのは何の造作もなかったという。それが私と

知り合って急速にエスカレートしていったのである。 

片手に洗面器を抱いたまま、明美は糞便の飛び散ったタイルの上で

まだオナニーを続けていた。

「ねぇッ、カ、身体を洗って…」 

どっちみち、また漏らしてしまうのだからいくら洗っても同じことだが、浴槽から

お湯を汲んでぶっかけてやると、溶けた糞汁がごぼごぼと排出口に流れ落ちてゆく。

「うっぷ、あッ気持ちいい…」 

そろそろ次の便意が差し迫ってきたような感じで、明美は指の動きを早めた。 

大量のイチジクを浣腸すると、1分から5分おきに強烈な衝動が起こって、

腸内の残留物をドバドバと排泄してしまうのがふつうである。

「イキそう、ど、どうしよう…ッ」

「ばか、焦るんじゃねぇ」 

あちこちに滓が貼りついているのを頭からお湯をかけて流す。オナニーと身体を

洗うのが同時である。

「待ってろ、まだギブアップの罰は終わってないんだ」

「うぇぇッ」 

濡れた太腿を抱えてひっくり返すと、おむすびの形に身体を曲げた。

俗にいうまんぐり返しで、当然、尻の穴がてっぺんにきて上を向く。その下に

オナニーを途中で止めて勃起したままのクリトリスが露出していた。

「よし、いいよ」 

この姿勢で手を延ばしてオナニーを続けようとするのだが、不安定で、とても

イクところまでは出来ない。反対に便意が衝き上げてきて、明美はとうとう

悲鳴のような声をあげた。

「あぁぁ、出、出ちゃうわよゥ」 

とたんに、ドロドロと溶岩のような塊が割れ目に沿ってクリトリスの上を

流れ落ちる。そして次の瞬間、今度は水のようにユルくなった糞汁が、

ビュッと30センチ近く噴きあがって、びしゃびしゃっと胸から顔のあたりに飛んだ。

「わ、わッ」 

飛沫がまともに口の中に入ったのか、吐きだそうとして夢中で唾を吐く。 

ブフゥ、ブブブ…ッ 

続いていつ混入したのか大量の空気が漏れて卑猥な音を立てた。 

それで一挙に腹の中が楽になったのか、明美が突然異様な叫び声を上げた。

「いッ、いくぅぅ…」 

まんぐり返しが崩れて、明美はタイルの上で瀕死の魚のように痙攣した。 

それから、まだ本当の糞の色をしていない薄黄色の粘っこい塊が、ブクブクと

尻の穴から噴き出してきた。      




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