(最終回)





三十七、凌辱のリズム


「よぅし、イケるだけイッてみい」

嘉助の掛け声で、立ったまま両脚を開いた江里子に男たちの手が

いっせいに伸びた。

「あ、あぁッ」

人形を倒すように横倒しになって、はずみで大きく広げた足を

閉じようと夢中で身をよじる。すかさず膝の間に割り込んだ男が、

柔らかい下腹の肉を鷲掴みにして引き寄せながら、無毛の陰丘に

ベッタリと顔を伏せた。

「あひぃ、ウゥム…」

仰け反って、反射的に男を払いのけようとしたところに、中年男の

太鼓腹が容赦なくのしかかってきた。

「さぁさぁ、旦那様のお許しだ。遠慮なく可愛がらせて貰いますよ」

乳首をつまんで揺すりながら、粘り気の強い唾液を撒き散らして

ベロベロと舐める。

「あぁうん、いや…ァ」

股間に密着したもう一人の男の舌が、吸い上げた肉ベラをキリキリと

噛む。刺すような鋭い刺激が一瞬のうちに脳天まで駆け上がって、

江里子は無意識に首を振った。

その口元に赤黒く脂でりした男根が二本、ヌッと突き出されてきた。

「ほれっ、舐めな。美味いぜ」

「ウグゥ、ムムッ…」

綾乃を抱いていた男も途中から加わって、こめかみを抑えて顔を亀頭の

正面に向ける。

「口をあけろっ。ちゃんと舌を使って、歯を立てるんじゃねぇぞ」

「ひぃぃ、ぐぇッ、ぐぇッ…」

頬ばった二本の肉棒で、唇の端が裂けそうに伸びた。

「早く入れろっ。舐めてばかりいないで、おまんこに突っ込んでみな」

「はいよ…」

股間を舐めていた男が、上半身を起こして膝立ちになった。

「それじゃハメさせて貰いますぜ。奥さん、悪いですねぇ」

男が握った熱くて丸い肉の塊りが、肛門の柔らかいところに

グリグリと当たる。

「はぁッ、や、やめて、ェ」

「今さら恥ずかしがるこたぁねぇでしょう。奥さん、思いっきりヨガッてごらん」

とっさに腰を引こうとしたとたん、江里子はグンッと内臓を

突き上げられるような衝撃を感じて息を詰めた。

「うぅぅむッ」

「よぅし入ったっ」

「入れおったか、メスブタが、とうとう入れおったか。わはは…」

嘉助の下卑た笑い声が耳の遠くで聞えた。

「これっ、見物席にもよう見えるように、もっと脚を広げて見せんかい」

嘉助が叱咤すると、残った男たちの手が女の足首を捩じるように曲げる。

足の裏を天井に向けて、江里子はカエルをひっくり返したような格好になった。

集まった男たちのの数は、八人のうち全部で五人である。

こうなったらもう誰の女でもなかった。

全身を男の固い筋肉に揉まれて、江里子は奇妙な蕩酔を感じた。

それは淫乱とも違う、獣欲の海に溺れたメスの本能的な悦びであったろう。

「あぁふぅッ、あぁぁ…」

夢中で手を伸ばすと、江里子はすぐ横にいた男のいきり立った

男根を握った。

「おぉっと、奥さん好きだなァ」

男が下腹を突き出すと、抱かれたまま顔を横に向けて舌を伸ばす。

亀頭が上を向いているので口に入れることが出来ず、

付け根から袋の周りを舐めまわすと、たちまち頬から顎にかけて

唾液でベトベトになった。

「道具は絶品だぜ。ウゥたまらん、こりゃあ天国だわい」

上に乗った男の動きが早くなった。

無毛の陰丘に男の粗い陰毛が擦れてクリトリスに異様な痺れが

伝わってくる。男が腰を使うたびに、折れ曲がった小太りの肉が

バネのように弾んだ。

ハッハッという不規則な喘ぎが、やがて、サカリがついた牝獣の

啼き声に変る。

「奥さん気持ち良いんか。良いなら良いとはっきり言ってみな」

「ウゥッ、キッ気持ち、もう…」

自分でも不思議なほど、下腹にギリギリと力が入る。自然に括約筋が

締まってくるのを抑えることが出来ないのだった。

あと一息、ゴム風船を針の先で突く程度の刺激を与えてやれば、

堤防が決壊して淫楽の濁流が溢れ出す。

「わっ駄目だっ、もう我慢できん」

いきなり上に乗っていた男が、声と同時にズボッと男根を抜いた。

アッと思う間もなく、白濁した精液が乳首から首筋のあたりまで

飛んだ。



三十八、第三の穴


突然、重さを失った腰骨が止めようもなくヒクヒクと痙攣する。

「おい大丈夫か、中に洩らさなかっただろうな」

「可哀相に、女が物足りなくてもがいてるじゃねぇか。元気な人、

誰か始末してやんな」

「よし、退け。おいらがヤッてやる」

射精した男を押しのけて、背中に刺青をしたヤクザ風の男が交代した。

何時の間にか、お妾さんとか奥さんとか呼んでいた男たちの態度が

変わって、扱いがただの嬲りものになっている。

「てめぇ、イキそびれたんだろ。いいから上に乗んな」

「ウェェ、ま、待って…ッ」

掬い上げるように抱き起こすと、刺青の男が江里子の身体を

胡座をかいた股の間に据えた。

「いいか、狙いをつけてケツを落とせ」

太腿で男の胴を挟むように抱き合って、腰を少し浮かし、男根を

埋め込もうとする。亀頭の先端がゴツゴツと尻の肉に当たった。

「おいどうした、ちんぼが行き場を失って遊んどる。手を使え、手を…」

嘉助が、何時の間にか綾乃を股の間に入れて舐めさせながら言った。

「生娘やあるまいし、穴はとっくにひろがっているやろ」

だが亀頭が滑ってうまく入らないのだ。江里子が、刺青男の太棹に

指を添えて、入口と思える辺りに当てようとしたときであった。

嘉助が綾乃に舐めさせているソファの後ろから、思いがけなく

低いがドスの利いた声が聞えた。

「お兄さん、それじゃちょっと無理だよ」

「……?」

「この女、興奮しすぎて軽い膣痙攣を起こしているんだ」

人食い源次郎…!

声は間違いなく、貞淑な嘉助の妾だった江里子を、花川戸の見世物宿で

加奈や綾乃に劣らぬ淫獣に仕込んだ張本人である。

突然、カァッと江里子の胸が熱くなった。

飼い主の嘉助の前で痴態を晒すより、源次郎に見られるほうが、

江里子には何倍も恥ずかしく思える。

膣痙攣と言われたこともショックだった。知識として知っているのは、

何かの原因で括約筋が収縮して用を成さなくなるのだという。

犬として仕込まれてきた自分がそんな状態になったことは、

もう一度仕置きを受け直さなければならないほどの醜態である。

「ほう、それは珍しいな。よし、それじゃケツをこっちに向けろ」

刺青の男がすかさず女を四ツ這いにする。当時のヤクザには

よくあったことだが、素人の女をレイプするのは慣れているらしく、

後ろから太腿を抱えて、怒張した奴を容赦なく江里子の後門に当てた。

「てめえ、こっちの穴はまだ使ったことがなさそうだな」

「あ、あッ、汚れます」

「構やしねぇよ。最初はちょっと痛いぜ」

思わず悲鳴を上げたが、男が手加減する様子はなかった。

「ヤッてみなさいよ。きっとヨガリますぜ」

取り囲んだ男たちが、口々にざわめく。

「いや、この年でまだ処女だとは羨ましい」

「大丈夫、うしろの穴はユルんでいる筈だから心配ないよ」

犬のように尻を高く上げた姿勢で、江里子は朦朧と源次郎を見つめた。

これで良いのでしょうか…、

とその眼が訊いている。

「どっちみち、オモチャにするなら両方使えるようにしておかねばならん。

協力してもらえますかね」

それが、冷酷で事務的な源次郎の言葉だった。

「わかった、せっかくの初物だ。有り難くいただきやしょう」

刺青の男が江里子の周りを取り囲んだ客に声をかける。

「狙いをつけるから、暴れないように女を抑えて下せえ」

よしきた、と男たちが寄ってたかって女の肩や手足に手をかける。


息を止めて、江里子は大きく口をあけた。次の瞬間、ブチッと中心の

肉の壁が破れてブッとい肉塊が突き刺さった。

「ぐふッ、ぎェェ…」

「こいつぁ快い。生娘とおんなじだな」

ギリギリと強引に根元まで捩じり込むと、男は十分に腰を引いて

グサッと二度目の突きを入れた。

「ぐゥゥむッ、うッ、うッ…」

その度に、畳スレスレに垂れた乳房がユサユサと揺れる。

開け広げた唇の端から、涎が糸を引いて落ちた。苦痛というより、

それは一種の痺れに近い感覚であった。



三十九、淫欲の河


「誰か、おまんこに嵌めてみなせぇ」

源次郎の言葉に、刺青の男が四ツ這いになった女の腋の下を

羽交い締めにして、身体全体を捲り上げるように仰向けになった。

後門で繋がったまま、真っ赤になった淫裂が白い腹の真ん中で

パツクリと口をあける。

四肢を宙に泳がせて、江里子は折り重なってくる男の体重を感じた。

ギシギシと軋むような感触があって、粘膜で僅か1ミリを隔てた

上の穴に異様な物体が侵入してくるのがわかった。

「ウムム、いい…ッ」

極限まで伸張した括約筋は張り裂けそうに痛むが、それは不思議な

恍惚であった。

腹腔の中でグリグリと動く二個のボールが互いにせめぎあって、

江里子は内臓のすべてが揺さぶられているような気がした。

「おうおう、感じているようだぜ。流石に年増は違うもんじゃのう」

「わっはっは、穴という穴を塞がれて掻きまわされたんじゃ、いくら淫乱な

年増でもたまらんじゃろ」

「もうイキそうな顔してるじゃねぇか、乳首も揉んでやれっ」

全身の毛穴から火を吹くような感覚の嵐の中で、江里子は引きつったような

視線を源次郎に向けた。

わ、わたし犯されています。褒めて下さい…ッ

江里子が無言の叫び声を上げたとき、眼の前にギョッとするほどの

意外なものを見た。ソファの上で、綾乃を組み敷いた嘉助が尻を

こちらに向けて上下に動かしている。

毛深い股の間で睾丸がブラブラと揺れ、その奥で怒張した男根が深々と

突き刺さっていた。あの、舐めても舐めても勃起することがなかった

インポの嘉助がである。

男の太いのを咥えているので、まともな声にはならなかったが、

次の瞬間、江里子の感覚が爆発した。

「くゥゥゥッ、くくゥッ」

手足が痙攣し、腹筋が激しく収縮してビクビクと跳ねる。

「やぁイッとるイッとる。凄ンげぇイキ方じゃねぇか」

「こっちもたまらんわい。くっくそぅ」

とたんに、咥えていた肉棒の先端から生臭い液体がドッと溢れ出して、

江里子は噎せ返りそうになるのをしたたかに嚥んだ。

同時に、上に重なっていた男の身体が突然硬直してギクシャクと震える。

あっけなく射精してしまったのか、子宮の奥にそれらしい微妙な脈動が

伝わってきた。

「くわッ、イッ、イクッ…」

「退けっ、わしにもヤラせろ」

射精した男を跳ね飛ばすように、次の男が圧し掛かって激しく

抜き差しをはじめた。

「よぅし交代だ、誰か代われっ」

刺青の男がズボッと肛門から抜くと、いきなり女の顔を抱えて、

微かに異臭の残る股間に叩きつける。

アッと思う間もなく、口の中いっぱいに大量の精液を弾き飛ばされて、

江里子はゲフゲフと咽喉を鳴らした。

咳き込むたびに、括約筋がキリキリと締まる。

二人目の客が射精するまで、時間はいくらもかからなかった。

だがそれでも八人目の客が体内に精液を吐き出すまで、

およそ三十分近くが必要であった。

この間、ずっとイキ続けである。絶え間なく襲いかかってくる淫虐の嵐に

翻弄されて、江里子はほとんど失神寸前になっていた。

ようやく最後の男の射精が終わったとき、源次郎が片頬に冷たい微笑を

浮かべながら言った。

「加奈、おまんこを綺麗にしてやれ。身体中精液まみれだぜ」

源次郎に促されて、加奈が寄り添って内股から恥骨のふくらみ、

臍の周りから乳房にかけて、混じりあって付着した男の精液を

念入りに舐める。

「やぁ、済まんのう、済まんのう」

そのとき、嘉助がようやく抱いていた綾乃を離して起き上がった。

「おかげでちんぼが立った。源さん、恩にきるで、

言うたとうり約束は守りまっせ」

「そいつは有り難い。それじゃ綾乃と交換してもらえるんですね」

「ええとも、でも何でこんな中古の年増が好きになったんや。

物好きやな、ほんまにこの女を嫁にするつもりなのかい」

「いやなに、あっしもそろそろ身を固めようと思いましてね」

源次郎が、こともなげに言った。

「オモチャならちょうど良い、こいつは仕込み甲斐のある女房になりそうだ」

それが何を意味しているのか、まだヒクヒクと痙攣しながら、

江里子は朦朧とした意識の底で、自分とは別の世界の会話を聞いていた。



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