魅くものと魅かれるものと、奇しき縁に結ばれた男と女



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田沼 葵の手記 「愛奴への道」




3月○日 【調教第8日目】

 今日、御主人様は新しい車で来て下さるとのこと。

支度が早くできたら、待ちきれなくなって、30分ほど早かったけど、待ち合わせ

場所へ向かう。お天気がいいので待ってても苦にならない。待つこと20分、

グレーっぽいワゴン車に乗って御主人様到着。大きかったのでビックリした。

どっこいしょと助手席によじ登る。

 近くの店で腹ごしらえをしたあと、近くのお寺へ梅を見に行く。まだ蕾のも

あったけど、白梅、紅梅、いっぱいあって綺麗だった。

 帰りしな、御主人様が、お寺の門の所で、ペットお断りの看板を発見。

「あっ、葵は入ったらあかんかったんや」

 言われると思ったよ。

          *          *

 そしてホテルへ。

「さあ、葵のいやらしいからだを見せて」

 言われて服を脱ぐ。鎖のついた首輪をして、股縄を何重にもギュッと

締めていただいて、御主人様の前にひざまづくと、乗馬鞭をくわえさせて下さった。

そして両手を肩のあたりまで上げたワンちゃんのポーズ。

「ほら、ちゃんとあげて」

 手をおろしそうになると叱咤の声が飛ぶ。恥ずかしいポーズだった。

 そのあと部屋の隅まで鎖を引かれて行った。部屋に入ったとき見渡したら、

縛りつけられるような柱も何もなくて、今日はどうなさるのかなって思ってたけど

さすがは御主人様だ、尊敬してしまう。部屋の隅に天井からぶら下がっている

スピーカーに首輪の鎖をひっかけて繋がれた。そして、乳首とアソコに大きな鈴のついた

洗濯バサミがつけられ、皮のアイマスクをされて、乗馬鞭をくわえさせて下さった。

「自分のいやらしい姿を想像してごらん」

 耳元で御主人様の声がする。

「自分のたてる鈴の音だけ聞いていなさい」

 そう言い残して、御主人様はお風呂へ。しばらくすると独りでに体が揺れ出した。

チリン、チリン、チリリンと4つの鈴たちがかすかな音を立て始めた。お風呂から出た

御主人様が部屋に入ってこられたとたん、気配を感じただけで、いっそう激しく体が揺れた。

 洗濯バサミにロープを結ばれて引っ張られもした。そのあと、そのままの格好で

全身に乗馬鞭をいただいた。前にも後ろにも、乳首も、アソコも、いっぱい鞭をいただいた。

 拘束を解かれて再び前にひざまづくと、御主人様は私に何かをくわえさせた。最初は

何かわからなかった。それを私の口から取った御主人様は、部屋の隅へ放り投げた。

床に転がった物は犬用の骨の形をした物だった。

「さあ、取っておいで」

 言われて犬のように歩いて行き、くわえて戻る。御主人様に渡す。御主人様は

それを受け取ると、また放り投げる。それが3、4回繰り返された。

「良くできたね」

 御主人様は私の頭を撫でて下さった。私も御主人様の足に体を擦り寄せて甘えた。

私は犬。御主人様に飼っていただいている犬!

 そのあと御主人様の全身をご奉仕。背中から脇腹、お尻からアナルへと舌を動かす。

アナルでは気持ちよさそうな声をあげて下さった。

 膝の後ろで両手を組むようなポーズで縛られて、また乳首とアソコの両方に洗濯バサミを

つけていただいたうえでのin。そして、それに加えて蝋燭も垂らしていただいた。

今日の蝋燭は熱かった。

 そのあと指でクリちゃんを愛撫していただいて、とても気持ちよくなって、思わず

欲しいっておねだりして御主人様のをいただいた。もっと焦らして欲しかったような

気もした。

「久しぶりに剃ってあげよう」

 約一ヶ月ぶりの剃毛で、さっぱりと綺麗になった。

 そのあと体中に散った赤い蝋の花びらを取っていただいてから、お風呂へ。

一緒に湯船に浸かって、シアワセ!

「今日の蝋燭、熱かったよ」

「良かったぁ。だんだん慣れてくるからな、熱いのを探すのが大変なんだ」

 湯船の中で抱っこしてもらいながら、そんな会話をする。しかし、御主人様にも

苦労はあるんだなと思った。ちなみに今日のは赤いキャンドルだった。

 食事をしたあと、すっかり暗くなった道を、御主人様は車を走らせた。

人の少ないないところで車を止めると、御主人様は後部座席へ移動して、まわりの

カーテンを閉めはじめた。

「こっちへおいで」

 カーテンを閉め終わられた御主人様が、黙って見学していた私におっしゃった。

おそるおそる後ろへ移動。あっという間にセーターを脱いで、首輪とアイマスクと

マスクをして、後ろ手に皮の手錠をされて、シートに転がされた。

 そのまま御主人様は運転席へ。まもなく車は走り出した。

行き交う車の気配にドキドキした。一周して元の所へ戻ったのだと思った。

御主人様が後ろへ来られて、私のアソコへ手を伸ばしてチェック。

「こんなにビショビショに濡らして……」

 その言葉に、そんなことない、濡れてるわけないと、心の中で否定し続けた私。

今度は両手を左右に開いてシートに繋がれ、もう一度ドライブ。

 車を停め、御主人様が傍にこられた。

「葵を晒し者にして下さいって言ってごらん」

 御主人様にそう命令されたけど、言えなかった。苦しくなるほどクリちゃんを

愛撫責めされてそのままイカせてもらえなかったけど、やっぱり言えなかった。

 後ろのカーテンを開けておこうと言われたとき、ドアをしばらく開けたままにされたとき、

夢中で抵抗していた。まだダメ。まだ露出系はできない。でも、そう思いながら、

心のどこかでは次の露出調教を期待している部分もある。

「今日はこれくらいにしておこうね」

 暖かくなったら連れ出されそうな気もする。今日の車でのことも、御主人様は

ゾクゾクするとおっしゃってた。 9時半頃、お別れ。どんな拷問よりも、

別れるときが一番つらい。

         *         *

 そういえば、今日は両手首だけしか縛っていただいてない。アナル調教もなかった。

剃毛しては下さったけど、「愛奴」とは書いて下さらなかったなかった。その点では、

ちょっと物足りないような気もした。

 でも御主人様に楽しかったって言ってもらえると嬉しい。それで満足できる。

少しずつ調教メニューも変わっているように思う。

今度は何?

 そう思える。

「次に逢うときの期待感のある交際にしよう」と最初の頃におっしゃったが、まさに

そのとおりになってると思う。

でも早く逢いたい。いえ、早くまた御主人様のもとへ帰りたい。



4月×日 【調教第9日目】


 道路が混んでいたため、御主人様は2時間ほど遅れて到着。

「お疲れさま〜」

 言いながら、よっこいしょっと助手席によじ登る。

 今日の私の服装は黒いスーツ。スカートはミニのタイト。そして編みタイツ。

「それ、よく似合ってるよ」

 きっと気に入ってくださるだろうと思ってはいたけど、誉めていただけて、超うれしい。

で、まずは腹ごしらえ。その後、ホテルへ。

 上着を脱いだだけで立たされたまま、大の字に繋がれる。そして首輪とボールギャグ。

 鞭をアソコにあてがってロープで固定された。それだけで感じてきて自然に腰が動く。

じれったくなるような、変な気持ちになった。

 そのあと久しぶりに褌を締めてくださった。今日のは六尺褌だった。ギュッと

締められると気持ちいい。そのうえ、乳首とアソコに洗濯バサミをつけてもらって

歓喜の声をあげる。そのあと乳首を思いっきり噛まれて悲鳴をあげた。

鞭もいただいた。そんな様々な責めを長時間受け続け、手枷を外されたときには

よろけてしまった。

「ほら、ちゃんと立って」

 叱咤の声が飛ぶ。立っているのもつらかった。

 四つん這いになって、御主人様が背中へ乗ってこられた。今日はお馬さんになる。

御主人様を乗せて一歩二歩。やはり御主人様は重かった。

「そう、そう。じょうず、じょうず」

 御主人様を乗せて歩きながら褒めてもらった。御主人様は褒めるのが上手い。

私が上手くできると必ず褒めてくださる。私も褒めてもらいたいから頑張る。そしてまた

褒めてもらえる。つくづく御主人様は育て方が上手いと思う。そのあと御奉仕を

命じられたが、ずっとボールギャグをしていたので、口が思うように動かせず、満足に

できなかった。

 テーブルの足に両手首だけ縛りつけられて、四つん這いの姿勢や、仰向けに

なったりしながら鞭をいただく。時折踏んづけられた。

 ベッドに御主人様が俯けに寝そべって、足の指からアナルまで御奉仕。そのあと

今度は私が俯けにされたと思ったら、両足を縛って、そのまま両手首も縛られた。

逆エビ状態。ボールギャグの上から、全頭マスクを被せられた。顎がはずれそうで

痛かった。おまけに目の部分も覆われて完全に視界を失った。とても苦しい。

そのまま仰向けにされてin。

「肉の塊になって、穴だけ使われる気分はどう?」

 その言葉だけでも凄く感じた。

 アソコを指で責められたり、乳首を噛まれたりしたあと、蝋燭をいただいた。

今日のもこの前のより熱かった。ピリッと香辛料が効いたような熱さ。

「イッてごらん」

 そう言われたけど、最後まではいけなかった。

 そのあと、いつのまにか御主人様は眠ってしまわれた。時折いびきが聞こえた。

お疲れなんだなって思う。

          *         *

 今日の私の服装、本当に気に入って下さったみたいで嬉しかった。このスカートに

透ける素材のブラウスをリクエストされた。もっと悦んでいただけるような服を探そう。

成長したねって言われて、何とも言えず嬉しかった。最初の頃なら、とても着る勇気は

なかったと思う。でも今では、御主人様に気に入っていただける格好をしている自分が

誇らしくさえ思うから不思議。本当の調教っていうのは、こういうふうに内面から

変わっていけるものなんだ。私がここまで成長できたのは御主人様が本当の意味での

調教をして下さったから。そんな御主人様の奴隷でいられる自分を誇りにも思う。

もっともっと成長したい、最高の真性マゾ奴隷になりたい。



4月○日 【調教第10日目】


 約束の時間にいつもの場所で待つ。やがて改札の向こうに姿が見えた。

嬉しくて駆け寄った。本当はその胸に飛び込みたかったけど、御主人様が困るだろうと

思ってやめた。タクシーで移動。食事のあと、ホテルへ。

          *          *

 挨拶のキスのあと、御主人様は下着姿になった私を後ろ手に縛りあげ、首輪と

ボールギャグをつけて、鏡の前に正座させらせた。

「自分の惨めな姿をしっかり見なさい」

 御主人様の手にはカメラが…… 久しぶりの写真撮影だ。

 ブラを押し下げられて、乳首を弄ばれた。そんな私の姿が鏡に写っている。

しばらく鏡の中の自分とにらめっこしたあと、拘束を解かれ、下着も取りさられ、首輪と

ボールギャグだけで、浴室の前まで鎖を引かれて行った。

ドアの横にある籐製の脱衣篭に鎖を無造作につないで、御主人はお風呂に入られた。

その間、ワンちゃんのポーズで待っていた。待っている間に軽くイッてしまった。

涎がどんどん流れて落ちた。

浴室から出てこられた御主人様がそれを見て、「おー、たくさん流したな」って、

おっしゃったほど。

 来たときと同じように鎖を引かれて部屋へ戻ると、御主人様にお尻を向けて

四つん這いになる。全部丸見えの姿勢。お尻の割れ目にそって撫で下ろされたり、

撫で上げられたりした。すごく感じた。御主人様が背中に乗ってこられたり、

お尻をスリッパで打たれたりもした。両手だけ縛って柱に繋ぐと、サイドボードの

ガラス戸を外して、私の背中に乗せ、その上にビールを注いだグラスを置かれた。

私は人間テーブルと化した。しばらくは、私のお尻を見ながら、ビールを飲んで

おられた。わざとこぼされたのだろう。冷たいビールが背中を伝ってお尻へと流れた。

その冷たさも快感になっていった。

「ほら、落ちるよ」

 少し動くと叱られる。御主人様にアソコを弄ばれても動けない。そのうちに膝も

肘も痛くなってくる。じっと動かずに耐えるのがこんなにつらいとは思っても見なかった。

これこそ拷問。

「SMパーティーをするときには、人間テーブルになって使ってもらおうね」

御主人様の頭の中には、そんな映像があるのだろう。そういうシーンを想像すると、

とても恥ずかしくて、逃げ出したくなるけど、快感にもつながっていくような気がした。

 そのあと仰向けに転がされた。御主人様は鞭を手にされている。乳首への

狙い打ちが続いて、とてもつらかった。無意識に身をよじって逃げていたような

気がする。アソコにも容赦のない狙い打ちが続いた。そのあと金属製のクリップで

乳首を挟まれた。

「痛みを、自分で快感に変えてごらん」

 クリップについている皮紐を引っ張る御主人様。まだ私には痛みに耐えるだけで

精一杯で、そんな余裕はない。

 御奉仕のあと、今度は部屋の真ん中にある2本の柱の間に立たされた。

御主人様は首輪の両側にロープを結び、天井近くにある柱の窪みに、それぞれの

端を結びつけた。首輪で吊られるみたいな感じ。最初は少し苦しかったけど

慣れてくれば、そうでもなかった。そして再び鞭を受ける。首輪とロープに体を

預けて、ゆらゆらしていた。

「葵は御主人様の愛を勘違いしているようだけどね、御主人様が

愛奴を可愛がるっていうのは、こういうことを言うんだよ。これが愛奴に

対する御主人様の愛情なんだよ」

 鞭を振り下ろしながら、御主人様はそうおっしゃった。いつもより痛かった。

 鞭での責めがひとしきり続いたあと、タバコを吸わないはずの御主人様が、

タバコを手に近づいてきた。

「さあ、頑張ったから、一服させてあげようね」

 御主人様は私の鼻の穴に煙草を差し込み、火をつけた。

「ほら、ちゃんと吸わないから火が消えたやろ。しっかり吸いなさい」

 叱られながら、おずおずと鼻から息を吸う。何度か失敗して、やっと火がついた。

途中から、もう一方の鼻の穴にもタバコが差し込まれた。これ、じつは今日が

初めてではない。2度目、いや3度目か。

何度やっても、とても恥ずかしい、そして我ながら滑稽な姿だと思う。

誰かがこんなことをしているのを見たら、きっと笑ってしまうだろう。でも御主人様は

これを売り物にしようなどとおっしゃっる。鼻から吸って、口から出す。

「そう、そう、上手、上手」

 褒められて、今日は前よりたくさん吸った。メンソールだったから、その刺激で

だんだんと鼻の奥が痛くなってきた。それでもなかなかお許しがでなかった。

やがて、そんな私を見ながら御主人様はおっしゃった。

「こんな恥ずかしい姿を見たら、きっとみんなが葵を笑い者にするだろうね。

軽蔑するだろうね。でもね……、御主人様は葵を愛しているよ」

 この最後の一言で涙がどっとあふれてきた。

 やがて鼻から煙草が取り去られ、アイマスクをされた。足首を縛ったロープを

柱に巻きつけ、その続きに肘の辺りを縛った。2本の柱の真ん中で身動き

できなくなっていった。そこへ洗濯バサミが登場。両方の乳首、太腿の付け根、

そしてラビアにも。いや、ラビアのは洗濯バサミじゃない。痛さが違う。あのクリップだ。

洗濯バサミなら目隠しはされないはずだもの。ラビアからの強烈な痛みが体中を

駆けめぐった。と、まもなく奇妙な振動が伝わってきた。なんとも言えない奇妙な

感覚だった。クリップについてる紐を引っ張って揺らしてらっしゃるんだろう。

思わず腰を引いて、逃れようとした。

「ん? 自分で引っ張ってるの? じゃあ、今の葵が耐えられるギリギリまで、

自分で引っ張ってごらん」

 何度も何度も揺らされて、その奇妙な振動が伝わってくるたびに、私は性懲りも

なく腰を引いてしまった。それで痛みが倍増すると分かっていても、そうせざるを

得なかった。頭のなかは、とっくの昔に真っ白になっていた。

 拘束を解かれたときは立っているのがやっとだった。気を失うまでは

いかなかったけど、意識は朦朧としていた。御主人様はそんな私をベッドへ

引きずって行って下さった。そこで御主人様の乳首をおしゃぶりさせていただいた、

と思う。そのときもまた泣いたような気がするが、どうして泣いたのか思い出せない。

そのとき御主人様がおっしゃったことも覚えてない。ちょっと悲しい。

 少し休んで、今度は両手両足を椅子に縛りつけられた。棒状の口枷が登場。

その両端に蝋燭がつけられるようになっていた。赤くて細い蝋燭が2本つけられた。

乳首に集中して落ちる。熱かった。最後は御主人様に身体中へ蝋の赤い花びらを

散らせてもらた。

 最後はバイブが登場。クリちゃんを重点的に責めて下さった。何度もバイブで何度も、

半ば強制的にイカされると、だんだんつらくなってくる。立て続けに何度もイッた。

最後は、とうとう我慢できなくなって、「お許し下さい」と何度も叫んでいたように思う。

しまいには責めから逃れようと、椅子からずり落ちてしまった。やっとバイブ責めから

解放されたときには、身動きできない悲惨な格好だった。

 お風呂場で蝋燭を取ってもらったあと、一緒に湯船に入る。暖かくて気持ちいい、

お湯も、御主人様も。

「今日は心を鬼にして調教したから、ワンステップもツーステップも成長できたね。

可愛がるだけじゃダメなんだなあ、やっぱり」

 御主人様は満足げにおっしゃった。


確かに今日の御主人様はいつもより恐かった。それでも調教中に「可愛いね」って

言って下さったけど。

    



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