紫 陽 花 �@
篠原 歩美
1)
最低。痛くはなかったけど、ちっとも良くなかった。セックスって
あんなもんなのかな。でも、明日香なんか、記憶がなくなるくらい
頭がふらふらして、最高ーなんて言ってたし。美佳も、しばらく立てない
くらいよかったなんて言ってたし。あいつが上手いのか下手なのか、
初めてなのでよく分からないけど、全然気持ちよくなかった。
処女だったのにさ。あいつにあげて、失敗って感じ。
二回三回って経験積めば違ってくるかな。ううん、あいつとだけは違う、
絶対に。うまく言えないけど、私の体が求めてるのは、あいつの、
なんというか、ご丁寧なくせに淡泊なやり方じゃない。どんなやり方って
聞かれても困るけど、もっと、体の芯から溶けちゃうような世界が、
絶対あるはず。
あれから二時間くらい経ったはずなのに、なんか、股間に二つ折りの
座布団を挟んで歩いているような感じなの、まだ。それがすごい違和感で、
それがあいつの腰の感触だと考えると、不思議と寒気がする。
春風と言うよりはもう初夏の風なのに、しかも、お気に入りの古風な
ポニーテイルをなびかせているというのに、すがすがしさがちっとも無い。
いつも通っている駅前商店街なんだけど、すれ違う人がみんな冷たそうに
見える。私も、犯罪を犯してきたみたいに、びくびくした感じで、うつむいて
歩いている、セックスしてきただけなのに。
あいつが嫌いなんじゃないんだけど、あいつに抱かれるのが何となくいや。
何でだろ。優しすぎるほど優しくて、顔も整っているし、背も高いし、
頭も悪くない、ちょっと優柔不断だけどむかつくほどでもないし。普通に
つきあっているには、何も問題なかったのにな。
まいいか、まだ8時だけど、早く家に帰って、風呂入って寝ちゃお。
2)
あの日から一週間後、あいつから電話が来た。
「おれのマンションに、来ないか。」
マンションだってさ、賃貸のくせに。
「いかない。」
セックスのお誘いでしょ。もうセックスしないもん、決めたんだから。
「何で?」
何で?何を聞きたいって言うのかな。17才の乙女の口からセックスしたくない、
なんて言えると思ってるのか、ばーか。
「どうしても。いやなの。」
「電話では・・・言いにくいっていうか・・・言いたくないっていうか・・・」
じれったいやつ。
「言わなくちゃ、行かないから。」
やばい。これって、行くって言うのと同じ事?
「おまえ次第だけど・・・別れてもいいかなって・・・なんだか・・・
嫌われてるみたいだし・・・」
そっか。こっちの気持ち、伝わってたのか。
「分かった。行ってあげる。」
未練がましいかな。でも、ほんと、嫌いじゃないし、ただ、セックスの相性が
合わないだけなんだもん、きっと。笑顔で、別れられる、と、思う。
3)
「来てやったぞー。」
あれ?なんか様子が変だな。
「おーい。」
鍵あけたまま留守するか、おい。上がって待ってるか。相変わらず
きれいにしてるな、あいつの部屋って感じ。黄色のチェックのカーテンなんか、
男臭くねえな。
「いらっしゃい。」
「どちら様です・・か?」
誰?この人。何で、あいつの部屋にいるの?それにしても、変なやつ。
「ケンの先輩ってとこかな。」
あいつと正反対。ださくて、背が低くてデブで、だらしなさそうで、
頭悪そうで。年齢不詳、25から35の間、かな。
「あいつ いないんなら帰ります。」
「帰られちゃ困るんだよ。」
気持ちわるー。
「帰ります。痛い。何するんですか。大声出しますよ。」
手なんかつかむなよ、気持ち悪い。
「どうぞ、すきなだけ叫んで。このマンションは、飛行場が近いから、
遮音性の高いのが売りなんだそうだ。」
「やめて下さい。」
手、放せってんだよ、この野郎。
「きゃ!」
最低な野郎。女を殴るか、いきなり、しかも顔を。あ、やばい、転んだら
ショーツが丸見えだぜ。見るなよスケベ野郎。このすきに、走って逃げよう。
「待ちな、来たばかりなのに。お楽しみはこれからだ。」
もしかして、これって、強姦。あいつは何してんだよ、いったい。
早く来て助けろよな。
「何すんだよ、やめろって。」
「見ればわかるとおり。逃げられないように縛ってるんだよ。」
最悪。こいつ縛るの馴れてる。早い。変な言い方だけどうまい。
抵抗する前に、動けなくなっちゃった。ベットに放り投げるなよ、物みたいに。
おいおい。後ろ手に縛られたとこが痛いじゃねえかよ。
「お願いですから、帰して下さい。」
「力では逃げられないって分かったようだな。まあ、焦らないで、もうちょっと
つきあいな。」
「あいつは、どこに行ったんです?」
「もうすぐ帰ってくるはずなんだが。カメラを買いに行ってるだけだから。」
カメラ、どういう意味。もしかして、いやそんなこと無い。
「姉ちゃん、あんたの彼が帰ってきたみたいだな。」
「助けろよ早く!」
なにぼーとつったんてんだよ、このたこ。少しはあせろよなあ。
「助けて、こいつ・・・」
「ご苦労さん。このお嬢さんをじゃんじゃん撮って。」
「はい。」
どういうことだ、いったい。信じらんない。あいつ、このすけべとぐるかよ。
まじめな好青年って、信じてたのに。笑顔で別れようなんて、
のこのこ出てきた私は何なのよ。
おいおい、写真なんか撮るなよ。
「やめてよ。なに考えてるの。」
「なにも考えてない。」
頭くるなあ。
「どういう事?」
「ちょっとうるさいので黙らせて下さい。」
答えろって。納得いかねえんだよ。
「分かった。この姉ちゃんの足持っててくれ。」
少しでも近づいたら、蹴飛ばしてやる。え?男の力って、すごい、重いよ、
痛いよ。何、なにすんのよ。
「やめろって。どこ触ってんだよ。」
かよわい乙女に、男二人がかりは卑怯だぞ。触るな。恥ずかしいことすんなよ。
触るな。見るな。
「かわいいパンティーだね、ん?ちょっと濡れてんじゃない。」
嘘よ、そんなはず無い。こんな状態で。痛い。ショーツが、破けちゃうって。
え?その私のショーツ、口に押し込もうっていうの?やだ。そんなこと。
「んぐんぐんぐ。」
むちゃくちゃだ。乱暴するな。恥ずかしい。やだ、このショーツ、ちょっと臭い、
もしかして、こんな状況で、私って。
「これで良いか、お高く止まった姉ちゃんも台無しだな。良い写真が
撮れそうだ。ケン、もっと近くから撮れ。スカートの中を覗くように、
顔もちゃんとはいるように。」
やばい、スカートの中が丸見え?
「もう遅いよ。今頃足を組んでも。」
恥ずかしい。もう最悪なんだから。顔が熱い、耳から火が出そう。
「切れ上がった少々きつめの目。つんとお高く止まったような小さな鼻。
生意気そうな小さな口。上品ぶったとがった顎。良いね。おれの好みに
ぴったりだ。胸はどうだ。」
いきなり、馬乗りになって重いじゃねーか。触るなよ。気持ち悪いから
触らないでって。
「ブラジャーの上からでも分かるな、ずいぶんちいせえな。」
うるせー。
「見せてもらうよ。」
やだやだやだやだ。
「すごい目つきだね。普通の女なら泣き叫んでるところだが、気丈でいいや。
でも、ふるえてるな、怖いか。」
強姦されそうなのに、怖いのは当たり前だろう。
「おや、フロントホックブラか、気が利いてるね。」
ばか、はずすのに便利なんじゃなくて、付けるのに便利なんだよ、
このスケベが。
「これで17の胸か。胸は我慢するか。要は感度なんだが。」
そんなにじろじろ見るなよ。見られんのも嫌だけど、触るなって。
こらー揉むなよ。ううん。顔が熱い。離れろって。やばい、こんな状況で
感じてたまるか。あいつに触られたとき、全然感じなかったのに、
こんな気持ち悪いやつに触られて、やだ、ほんと、やばい。
力入れてないと声が出ちゃう。それだけはやばい、絶対。
「どれどれ、暴れると困るから両足も縛らせてもらいますか。
写真はどんどん撮って。」
恥ずかしいじゃねえか。そんなことするなよ、もう。あああ。スカートが
すっかりまくれ上がっちゃったよ。あいつ、無表情のまま写真撮ってるよ。
変態か、あいつも。にたにたされるのも気持ち悪いけど、無表情は
もっと気持ち悪いな。
「安産型じゃないが、きゅっと締まった良い尻だ。」
ぎゃ。指。やだ、やだ、やだ。あああ。顔だけじゃなく、腰のあたりも
熱くなってきた。感じない、感じない、感じない。
「ここに入れてほしいだろ。だが、今日は、入れてあげない。
お願いされるまでは、ここまでだ。」
なにいってんだ、ばーか。
「お高く止まってても、ちょっと濡れてるな。」
嘘だろ。もうやめろよそんなこと。あ。そこは駄目だって。つまむな、
クリトリスをつまむな。あ。あ熱い。何だこれ。何だこの感じ。恥ずかしいだろ。
やめろよ。痛い。つまんで引っ張ったな。痛い。そんなに強くつまんで
引っ張ったら。痛いって。
あああああ。腰から背骨を駆け上がるような熱さが。声が出ちゃう。
「今日はこのくらいにしておくか。来週、またここに来い。」
何いってんだ、この変態。強姦するつもりじゃなかったのか?
一安心かな、今日は。もう、二度と来るか、ばーか。
「こっちには、今日撮った写真があるんだ。言うことは聞いた方が身のためだね。」
がーん。泥沼。どうなっちゃうの、これ。恥ずかしい写真で、脅迫されて、
来週来ないとどうなっちゃうの。でも、腰のあたりがじーんとしてる。何だろ、
この感覚。 あ、そうだ、やだ。もしかして、口の中のよだれびじょびじょの
ショーツ履いて帰えんなくちゃなんないの。
4)
一週間が、あっという間だった。この日が気になって気になって。
恐ろしくて、不安で、恥ずかしくて。誰にも相談できなくて、胃は、きりきり痛くなるし、
最悪だった。
「いい子だ。約束どうりちゃんと来たか。近所にばらまく写真がむだになって
良かったな。」
何、その沢山の写真。やだ、私そんな格好してたの、恥ずかしい。
真っ赤な耳して。丸見えじゃない。こんなの近所に撒かれたら、生きていけない。
よかった、こんな写真みんなに見られなくて。これからなにされるか怖いけど、
とりあえずは、来てよかったのかな。
「あいつは?」
「今日はいない。」
「そう。」
「ずいぶん、今日はしおらしいな。」
「変態の相棒だったなんて。」
「人間なんて、そんなもんさ。おまえだって、同じ。」
「私は、変態じゃありません。」
「そうかな。」
「どういう意味ですか。」
「そのうちに分かるよ。」
何だろ。怖くないって言えば嘘になるけど、先週と違う。大げさだけど、
死ぬかもしれないって感じの怖さがあったんだけど、今はそれがない。
恥ずかしくて恥ずかしくて、逃げ出したい気持ちに変わりはないんだけど、
胸の奥がちょっとじーんとしている。
体がすくんで動けない。蛇に睨まれた蛙?
ちょっと違う。お化け屋敷の怖い物見たさ?そんなはず無い。
「キッチンテーブルに腹這いになりな。」
なにされんだろ。これから、毎週毎週こうやって、この変態に
いたずらされんのか。死んだ方がましかな。あーあ、やっぱ縛んのか。
おや、今日の縛りはきつくない。暴れないからかな。手足をテーブルの
足に縛るのか、どうせ逃げないのに。やだ、ショーツおろされた。
う。気持ち悪い、そこ、お尻の穴だって。
「やめて下さい、そんなとこ。」
「ケツの穴は嫌だけど、おまんこならいいって意味かな。」
「どっちもいやです。」
動こうとすると、縛られたところが痛い。そうか、逃げられないようにってより、
動けないように縛ったのか。何をされても構いませんって姿よね。そう思うと、
恥ずかしい、こんなの。
「イヤ。」
うう。変な感じ。クリームみたいのぬり込んでる。
「お願いですから、変なことはしないで下さい。」
「変なこと?」
何されるんだろ。犯すならさっさと犯せばいいのに。お尻の穴なんか
いじって、変なやつ。
「力を抜いて。違う。ケツの穴の力を抜くんだ。」
そんなこと言ったって、出来ない。気持ち悪いから、自然に力が
入っちゃうんだ。
「ウンコを出すときみたいにして。」
うううううん。何、お尻の穴に指入れんの?変態だ。
「やだ、そんなこと。やめて下さい。」
「力を入れるなって。痛くなるぞ。」
「痛い。」
「指を押し出すようにして見ろ。」
そんなこと言って、あ、やだ、逆に指を深く入れた。気持ち悪いったら。
「やめて下さい。いやです。」
動かすな、気持ち悪いだろう。動かすなって。なんだか、ウンチしたい
時みたいな感じだよ。やだ、こんなの、やめてって。そんなに深く指を入れて、
大丈夫なの。中で指を動かすなよ、指を回すなよ。ふうう、指が抜けた。
「今度は、何をしたんです。やめて。やめて。やだ、やめて。」
指じゃない。何を入れた、この変態。かたくて、細い物。あ、冷たい。
「浣腸さ。」
「やめて、そんな、やめて下さい。それだけは。お願いです。お願いです。」
冷たい。やだー。入ってくる。
「お願いします。やめて下さい。」
「泣いても、騒いでも、もちろんお願いされても駄目だね。」
もう、暴れてやる。お、浣腸器が抜けた。
「いつまででも待つよ。暴れても、縛られた手首、足首が痛いだけじゃないかな。」
ちくしょう。死にたいほど恥ずかしいじゃねえか。あーあ。いったん抜いた
浣腸をまた入れやがった。冷たい。
「本当は、体温と同じくらいが良いんだが、それじゃ、されてるって感じが
足りないと思ってね。冷蔵庫でちょっと冷やしてあげたのさ。」
ぴゅぴゅって入ってくるのが分かる。変な感じ。これからのことを考えると、
ぞっとする。
「やめて下さい。」
「終わったよ。」
何でもないじゃない。浣腸なんて平気みたい。
「縄を解いて下さい。」
「その前に、誓いを立ててもらおうか。」
「漏れちゃいます。ここでされたら、あなたも困るでしょ。」
「いいや。構わない。掃除の仕事はおまえだからな。」
あ!出そう。急に来た。やばい。これが浣腸?お腹がぐるぐるする。
「トイレに。」
「これから、おまえは、私の奴隷になるんだ。」
え?奴隷。これってSM。そんな趣味無いよ。やめてほしいな、もう。
「返事は?」
痛い。お尻をぶった。そんなことしたら、漏れちゃうよ。痛い。
「どうしろッて言うのよ。」
痛い。漏れちゃうって。我慢できない。
「奴隷には奴隷の口の効き方がある。」
「どうすればよろしいのでございますでしょうか。」
痛い。お尻の穴がぴくぴくしてきたよ。
「ふざける余裕など無いはずだがな。」
「はい。奴隷になれば良いんでしょ。」
痛い。やばい。出そう。
「お願い。縄を解いてよ。」
痛い。お尻をぶつなよ、痛いのは我慢できるけど、お薬が出ちゃいそうで。
「おまえは頭がいいはずだ。私の気に入るように、きっちり演じてほしい。
分かったね。」
演じればいいのね、演じれば。
「はい、ご主人様。これから、私は、ご主人様の奴隷となります。
人間以下ですので、お好きなように扱って下さい。」
「よろしい。」
早くトイレに行かせろよ、変態野郎。
「お願いがあります。言ってもよろしいでしょうか。」
やばいんだよ、限界、もう。
「分かった。素直になれば良いんだ。行きな。」
「ありがとうございます。」
走らないと間に合わない。何だよ、ついてくるなよ。
「トイレじゃなく、風呂の洗面器でしろ。」
ええ?言わせておけば、つけあがって。
「お願いです。トイレで・・・」
ここで殴られたら危ない。手をあげるなよ。限界越えてんだ、もう。
間に合わない。駄目だ。じいっと見てる。
「見ないで下さい、お願いです。」
恥ずかしい。駄目。こんなところで。洗面器?
見るな。にやにやしてる。あっち向け。恥ずかしい。出ちゃう。
あああああああ。恥ずかしい。
「駄目えええ。」
なんなのこれ、めまいがする。腰のあたりがじーんとして。
「どうした、洗面器に座り込んで。その目つきだと、感じたな。素質があるな。」
え。何?。汚い。う。動かない。痺れてる。どうしたって言うの、感じてる?
気持ちいい?嘘だ。そんなこと無い。
「体をきれいに洗ったら、またキッチンテーブルに腹這いになるんだ。」