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                                篠原 歩美 




        9)


 何にも手に着かなかった。ウンチをするときとお風呂は外して、

それと、どうしても眠れないので、寝るときは外したけど、あとは、

ずーっとお尻の穴にこいつを入れてたんだから。学校もだよ。

体育もだよ。椅子に座ると、お尻の穴からおなかに突き上げられるような

嫌な感じだったし、歩いていると、お尻の穴が擦れるようで、やっぱ変な

感じだった。すごい、頑張った自分をほめてあげよう、なんてね。

 それで、気になって気になって、どうしても、意識がお尻の穴に

いっちゃうんだよ。まいった。何にも考えられない。そればかりか、

どうしても、恥ずかしいことを考えちゃう。そうなると駄目なんだよ、

自然と濡れて来ちゃうんだ。だから、二日目からはナプキン使っちゃった。

だって、知らないうちに太股の内側から垂れて来るんだから。一日目なんか、

トイレの往復で大変だったんだから。

 三日目に二番目に太いきのこにかえて、四日目には、一番太いやつを

試したら、ちょっときつかったけど入っちゃった。

自分でも不思議なんだけど、これ、楽しんでる。あの、変態野郎には

知られたくないんだけど、きついきついって思いながら、わくわくしている

自分が怖い。お尻の穴にこんな物入れたままで、勉強したり、

友達と話したりして、私って、変態?でも、すごくすごく恥ずかしいんだけど、

心のどこかで、素敵な隠し事をしている楽しさみたいなのもあって、

変態野郎が怖いからだけじゃなくて、やめられなかったんだ。

 知ってるんだ、お尻の穴でセックスできるって。でも、これは

嘘じゃないけど、お尻の穴でセックスしたいんじゃない、絶対に。

例え、気持ちよくても、絶対イヤだと思ってる。汚いし、正常じゃない。

気持ちいいなら、何でもありなんておかしい。男の人をいかせるのは、

あそこじゃなくちゃ駄目。

 だから、面白がりながら、自分のお尻の穴を大きく馴らしている自分が

分からない。あの変態野郎にいたずらされるとき、痛くないように?

もしそうだったら、わくわくまではしない。何でだろう。恥ずかしいのが、感じるから?

 やだ、私って、こんな事考えている。はしたない。恥ずかしい。



         10)


「ケツの穴にくわえ込んでるやつをはずしな。」

「はい、分かりました。」

 かっこわりー。股開いて、深い中腰で、お尻に手をやってもぞもぞしてるのを、

じっと見てる。あー恥ずかしい。でも、気になるなこいつの目。でれっとした

スケベの目でもないし、ぎらぎらした物欲しそうな目でもないし、

うまく言えないけど、良い子だ良い子だって包み込むような優しさが、どこかにある。

「調べるから、四つん這いになって尻を高く上げな。」

「はい、分かりました。」

 またか。何回やられても恥ずかしいな、これは。クリームを塗り込んで、

指を出し入れして、揉みほぐして、そして、今日は何を入れるんだろ?

ずいぶん、ていねいに、長いこといじり回してる。感じて来るんだよね、

このはしたないことに。私ってこんな体だったんだ。でも、精神的には、

お尻の穴はやめてほしいんだよな。

あ。冷たい。あまり太くない。すんなり入った。え?え?何?太くなってきた。

え?お尻の穴を広げてる。ゆっくりだけど、きつくなってきた。

「痛くないか?」

「はい。」

 痛くはないけど、きつい、まだまだ広がってる。あ!変に力を入れると痛い。

「まだ、大丈夫か?」

「少し痛いです。でも、もう少し我慢します。」

 え?私って何言ってんだろう。何で、やめろって言わないんだ?

「奴隷らしくなってきたな。褒美をあげよう。」

 わー変な感じ、もしかして、お尻の穴の中で、風を感じてるの、これ。

「褒美の鏡だ、ゆっくり見るんだね。」

 目の前に鏡をおいて、あら、後ろにも大きな鏡・・・やだ、恥ずかしい。

「目をつむらなくても良いだろう。ようく見な。」

 こんなところを見られてたなんて、この前は横からだったから

分からなかったけど、前も丸見え、毛も見えるし、しかも、こんなに大きな

お尻の穴に、冷たい金属がはまってる。お尻の穴の中まで見える。

「素敵だ。」

「恥ずかしいです。」

「それがすきなんだろ?」

「そんなこと言えません。」

「奴隷が隠し事をしてはいけない。」

 そんなこと言ったって、言えないことは言えないよ、恥ずかしくて。

「もうちょっと開くかな?」

 わ!お尻の穴が広がった。皮がぱんぱんに伸びきってるって感じなのに。

黙ってるから、お仕置きされてる訳かな。限界って感じなのに。

「好きです。恥ずかしいことをされると、感じます。恥ずかしいことを

考えただけで、前が濡れてきます。」

「前って何だ?奴隷の言葉ではない。」

 そこまで言うのかよ。

「膣。」

「好きじゃないな、その言い方は。」

「はい。おまんこです。」

「ちゃんと言いな。」

「恥ずかしいことを考えただけで、おまんこがぐちょぐちょになってきます。

はしたないからだです。」

「悪くない。すばらしいことだよ。」

「ありがとうございます。ほめていただいて、嬉しいです。」

 すらすらと言葉が出てくるけど、本心じゃないよ。私は、あくまで奴隷を

演じてるんだから。

「ご主人様が、喜ぶことなら、どんなことでも我慢します。」

「そうか、それなら、浣腸をしたあとで、私をいかせてもらおうか。」

 やだ。どんなことでも我慢しますなんて言わなくちゃよかった。

「どうした、嫌か?」

 嫌だっていったら何されんのかな。よくある話なら、縛られて鞭打ち?

痛いのは嫌だな。鞭打たれた跡が残るのも困るし。

「いいえ、喜んで、ご奉仕させていただきます。」

 お尻の穴に入れてたのが、小さくなった。あ、とれた、みたい。

「どうした、ケツの穴をぴくぴくさせて。」

「変な感じなんです。お尻の穴が広がったままみたいで。」

「すぐに馴れる。」

 大丈夫かなあ。お尻の穴の締まりが悪くなったみたいだけど、

これで浣腸されたら我慢できるかなあ。あ、薬が入ってきた。

嫌だ、嫌だって思ってきたけど、恥ずかしいけど、体は、浣腸されるの

嫌がっていないみたい。

「あのー。」

「なんだ。」

「革のベルトを貸していただけませんでしょうか。」

「それをどうする気だ。」

「今日はなんだか、我慢できそうになくて、あれで栓をしようと思いまして。」

「ほー。わかった。それなら、今日は裸になりな。」

「え?」

「下着も全部脱いで、革のベルトだけになるんだ。濡れるといけないからな。」

「は?はい。」

 どうしたんだろ、今日は。ま、いいか、それより急がないと。

 あきらめがつくって言うのか、裸になっちゃうと何とか我慢できるけど、

脱いでいるところを見られるのは、かなり恥ずかしいな。

 一番太いのが革のベルトに付いてるけど、大丈夫かな。薬が漏れないように

お尻の穴を締めてるから、なかなかこれが入らない。

痛い。何とか入ったけど、ベルトが苦しいのは、お尻に薬が入っているからかな。

わー、鏡に映った私ったら、恥ずかしい姿。黒い革のベルトがグロテスクだな。

毛がはみ出してるのもグロテスクでいやらしい。

 ふー、これでよし、それで、こいつの前にひざまづけばいいのかな。

「お願いいたします。」

 げ!出した、ぽろんと。始めてまじまじと見させてもらうけど、変な形だね。

こんなのが股の間でぶらぶらしてじゃまじゃないのかね。ま、我慢我慢、

痛いのよりはましって考えて。で、どうすんのこれ。

舐める?くわえる?きたねー。おしっこが出るんでしょ、ここから。 

「早くした方がいいんじゃないのかな。」

 そうだ、早くしないと、どうせ、分かんないんだから、めちゃくちゃに

なんでもやってみよ。

 え?信じらんない、これ、石鹸の匂い。 やばい、漏れそうだ。

 舐める、くわえる、それから、吸い付く、おー、大きくなった。上下に動かして、

早く動かしたり、ゆっくり動かしたり、口の中でも舌を使って、そうだ、軽く歯も

立てて、あ、ちんぽがひくっていった。軽く歯でこするのが効いたのかな。

あんまり奥までくわえると、おえってなる。あーあ。早くいってくれ。

 今日は、お尻の穴に栓をしてるんだから、ちょっとくらい力をぬいても

大丈夫・・・え?

「どうした、漏れてるぞ。」

「ごめんなさい。トイレに行かせて下さい。」

「栓をしてるから大丈夫じゃなかったのかな。」

「駄目なんです。」

「許す。早くいきなさい。帰ってきたら、きちんとここの掃除をしてもらうから。」

「ありがとうございます。」

 ご主人様は、知ってたんだ、お尻に栓をしても、意味のないことを。

でも、ここに来る前にトイレを済ませておいてよかった、漏れても、

お薬だけだから。急いで急いで。腰を浮かしたままで、お尻の穴から

栓をぬいで、わー、栓が抜けきらない内に漏れてきた。手がびしょびしょだ。

便器の外までとばしちゃった。裸でよかった。ブラウス来てたらブラウスまで

濡らしてたかもしれない。

 そうだ、ご主人様をいかせることが出来なかったんだ。もしかして、

お仕置きがあるのかな。なにされるんだろ。鞭かな、ロウソクかな。

胸が痛い。なんだこの感じ。じーんと締め付けられるような胸の痛み。

「ちょっと出かけるから、掃除が済んだら、勝手に帰りなさい。」

「は?」

「どうした。」

「い、いえ。」

「それと、生理の日には来なくていい。来られるときは、留守番電話に

伝言しておけばいい。電話番号は、電話の脇にメモしておいた。」

「はい、お心遣いありがとうございます。」

 がっかり。え?やだ、私、何かを期待していたみたい。

「それと、あのー。」

「なんだ。」

「前からちょっと気になってたんですけど、この部屋は・・・」

「そうか、話してなかったか。この部屋は、初めから私の部屋だ。」

「そうすると、あいつはいったい・・・」

「利用しただけだ。」

「初めから・・・」

「いや、おまえとつきあってると分かったから、利用した。」

「そうだったんですか。」

「そのうちに合わせてやる。」

 今更、会いたくなんか無いよ、あんなやつに。

「いいです。」

「おまえが会いたがってるだろうと思って、会わせてやるわけじゃない。」

「?」

「今は、分からなくてもいい。」

「はい。」

 きれいに片付けられたこの部屋は、ご主人様の部屋だったんだ。

あの黄色いチェックの、男臭くないカーテンも。ご主人様は、きれい好きの

几帳面?第一印象とだいぶ変わって来ちゃったな。背が高くなくて、

ちょっと太ってるのは変わり様がないけど、結構奴隷の私に細かく

気をつかってる優しさがある。



        11)


 長かった。二週間がこんなに長いなんて、どうしちゃったんだろう。

最初の一週間があんなに短く感じたのに、何がこんなに変わったんだろう。

恐ろしくて、不安で、恥ずかしくて、嫌で嫌でたまらなかったのに、

それが、嫌じゃない。ご主人様に何をされるのか、ちょっぴり気になる。

 落ちて行く?名前も知らないご主人様に、奴隷として仕え、例え、

週末だけとはいえ、淫らな写真で脅されてはいるけども、素直に

ここに通ってくる自分が信じられない。

 うまく説明できないんだけど、ご主人様といると、安心していられる。

何も考えなくていい、悩まなくていい、ご主人様の言うとおりにしていれば、

気持ちいいことをしてくれる。気持ちいいからって、自分から進んで

恥ずかしいことはしたくないし、痛いのも嫌いだし、浣腸も嫌い。

でも、恥ずかしい、嫌だ、やめてほしい、逃げ出したいと思っているのに、

ご主人様の命令に従っていると、ほっとする。これって、マゾっていうのかな。

「ねーねーちょっといい?」

「なんですか?」

 なんだこの男?

「どこ行くの?忙しい?」

「はい。」

 ナンパ?残念でした、私は、こんな青二才に興味ないの。

「冷たいナー、ちょっと話だけでも良いじゃん。」

「先を急いでいますから、失礼します。」

 いつまでも、ついてくんじゃねえよ。

「お茶するくらい、時間とってよ。」

「お断りします。」

「ねーねー、このマンションに入るの?ここに住んでるの?それとも

ここに訪ねてきたの?」

「あなたに関係のないことです。」

 もう、帰れよ。

「なにすんのよ。」

 わー。エレベーターの中に突き飛ばされた、あ、扉が閉まっちゃう。

「痴漢!」

 近づいたら蹴飛ばしてやる。

「ずいぶん乱暴だな。可愛くねえな。」

 触るなよ、へんなとこ。

「痛いなあ、殴ることねえだろに。」

 怖い。早くエレベーターつかないかな。 やった、ついた、扉が開いた、

走って逃げよう。

「待てよ。」

 待てって言われて待つ馬鹿がいるかってんだ。あ、ご主人様だ。

「どうしたんだ。」

「痴漢なんです。あいつ。」

「なんだおまえら、俺は、何もしてねーじゃねーか。」

 かっこわりー。逃げてった、逃げてった。

「どうした、ふるえてるな。おや、気丈なおまえが泣いたりして。」

 あ、涙が出てる。これって・・・怖かったからじゃない。

「嬉しかったんです。こうやって、ご主人様に抱いていただいて、

ほっと安心したんです。それで、涙が。」

「さ、部屋に入ろう。」

「はい。」

「浴室に行きなさい。今日は、毛を剃ってあげよう。」

「は、はい。」



        12)


「バスタブに腰を下ろして。」

「はい。」

「足を開いて、そうそう、腰を突き出すようにして。」

 まだ、覚悟が出来てないんだけどな。ここの毛を剃られるって事は、

絶対にご主人様以外に、裸を見られてはいけないって事だし、そう、

見られて恥ずかしいだけじゃなくて、ちょっと変わったこの性癖まで

ばれちゃうかもしれないんだよね。

「危ないから、動くな。」

「はい。」

 変な感じ。くすぐったいような、ちくちくするような、でも、やっぱり

恥ずかしくてあそこが濡れてきちゃう。

「あ!申し訳ございません、気がつきませんで。」

「どうした。」

「あの、奴隷の私がのけぞるようにして、ご主人様が奴隷の股の間で

うずくまるようにして、しかも、奴隷の下の毛の始末をさせるなんて、

とんでもないことかと思いまして。」

 ちょっと心にもないこと言っちゃったかな。

「なるほど、確かにそうかもしれない。これからは、自分でやってきて

もらおう。でも、こうされることもなかなか良いんじゃないかね。」

「はい、ご主人様。お分かりのように、恥ずかしくて感じています。

おまんこも濡れ始めています。」

 こういう台詞が、男を喜ばせるんだ。

「そうか、どれ。」

「あ、いや、う。」

 ご主人様ったら、いたずら小僧のような目をして、指を入れてきた。

う、れ、し、い。

「ありがとうございます。」

 え?何で?やだー。もうやめちゃうの?もっとしてほしいのに。

ご主人様だってしたいくせにさ。 やだ、何してんだろ。見てる?

あそこを広げて見てる。

「そんなにじっと見られたら、恥ずかしいです。」

「恥ずかしいのが好きなんだろ?」

「それはそうですけど・・・」

「それじゃ、やめようか。」

「ご主人様の意地悪。」

 恥ずかしい、だから、やめてほしい、隠れたい、逃げ出したい、でも、

感じてくるから、やめないでほしい。そう思うことが、また、恥ずかしくなる。

この矛盾した繰り返しが、胸を熱くさせて、よけいにまた感じてしまう。

こんな私の心を、ご主人様は知っているくせに。

「きれいになった。」

「ありがとうございます。この次からは、自分でしてきます。」





つ づ く



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