読者投稿小説
by・Slave master








 淫畜市場 Lot #101・友美−(3)



 「あっ、本多さんですか。先日はどうも!」



 あの「二次面接」の日から三週間が経った有る日、友美の自宅に

木村からの電話が入った。

 「二週間後」という結果回答の期限を過ぎて、何の音沙汰も

なかったため、すでに「就職浪人」というより「フリーター」

となることを覚悟した友美は、実家の母親にも

「もう、就職はだめかも…。」

と打ち明けていた。

経済的に自立が困難であろう友美は再び実家に戻ることも考えたが、

また、あの母の夫と共に暮らすことは「生き地獄」に戻ることであり、

序々に行き場を失っていくという不安感にさいなまれていた。



 「やっぱ、あのうちにも戻れない…いっそ、お水の仕事でもやっちゃおうかな…」



 もはや、まともな就職など諦めかけていた…そんな時の電話である。



 「は、はい、先日はお忙しいところ、大変ありがとうございました。」



 木村の人なつっこい声に、とても親近感を覚えていた友美は自然に

気取らぬ明るい声で謝辞を述べていた。



 「で、…結果のほうは、いかがでしたでしょうか?…」



 恐る恐る友美は、本題を切り出した。



 「ええ、私としてはね、正直、本多さんを大いに来ていただきたいと

感じましてね、そのように社内に諮ったんですが…」

 「は、はい…」

 「ほら、やっぱり、うちも一応、会社組織なもんで、役員会なんかが

あってね。そこいらへんが素直に「うん。」って言ってくれないんですよ…。

まったく、あいつらは人を見る目がないんだ。」



 (ああ、やっぱり、ダメかぁ…)

 友美は、そんな言葉を喉の奥でつぶやいたような気がした。



 「では、今回は不採用ということでしょうか…」

 「うーん、ただね、私はあなたがここに来てくれれば、きっと実力を

発揮してもらえて、私の利益にも叶うと思うんですよ。…えー、そこでね、

一つ改めて相談したいことがあるんですよ。」



 木村は、もったいぶるように何かを切り出そうとしていた。



 「あっ!はい、どんなお話しでしょうか?」



 友美が最期のチャンスとすがるような思いで、木村の提案を

受け入れる準備をした。



 「まあ、こんな私でも、一応は社長って立場なんでね。

「ある条件」を受けてくれれば、まあ、社長推薦の特別採用ってことで

通せるんですよ。…そういうことで改めて応募いただくことはできますか?

…本多さん。」



 「え、ええ…、で、その「条件」とは…」



 友美は、言い知れぬ不安感を感じ、その感情を隠せずに声を

震わせながら、言った。



 「それはね、ちょっと電話では説明しづらいんですよ…。でね、

一度直接お話しさせてもらえたらと思って…。」



 (やっぱり、この機会を逃したら…。まあ、話を聞くだけならいいか。

妙な話なら、すぐ断ればいいんだから。)

 一瞬、戸惑ったものの、追い詰められた状況を考えれば、恐る恐る

木村の誘いに近づく覚悟を決めた。



 「はい、分かりました。では、再び御社のほうに伺えばよろしいですね。」

 「いや。会社のほうじゃまずいんだ。」

 「えっ?…というと?」

 「ほら、さっきも言った通り、会社の連中と君のことで意見が

合わないんでね。その条件については会社以外のところで話しをしたいんだ。」

 「か、会社以外のところ?…ですか。」

 「うん。私の別荘で、ゆっくりメシでも食いながら…あっ!心配しないで。

大丈夫。何も君と俺が二人っきりで会おうって、いくらなんでもそんなことは

しないよ〜。ごめんね〜、誤解させるようなこと言っちゃって。あははは…」




 あっけらかんと自分の不安を見ぬいて、それを払拭してしまった木村の一言に、

木村に対する安堵と信頼の感情が友美の心の中を満たしていった。



 「え、いや、あははは…そうですよね。私みたいなのが社長さんと

二人っきりでいたら変ですもんね。」

 「そうそう、俺、犯罪者だと思われるよ。あははは…」



 ほんの数秒間であろうか、この初老の男と若い娘は、まるで既知の友人のように

賑やかな笑い声を上げ合った。



 「あ〜あ、…でね、今、私と一緒に働いてくれている女性秘書も

同席させようと思うんだ。彼女の仕事の話もいっしょに聞いてもらえればさ、

何かの役に立つかもしれないし、それにうまく我が社に入社してもらえれば、

彼女は君の先輩になるんだからね。まあ、堅苦しく考えずに…」



 友美は、この社長…いや、木村という男にいままでにない温かみと

安らぎを感じていた。



 「はい!喜んでお伺いさせていただきます。」

(この人なら、私のことをやさしく受け入れてくれそうだわ…)

 「ああ、よかった。じゃあ、どこで待ち合わせようか?…」



 友美はその3日後の土曜日に街の中心街にあるホテルのロビーで

待ち合わせることを約束し、受話器を置いた。



 「うん、これで何とかなりそうだわ…。ところで、「条件」って何だろう…。」



 「こらぁ!テメエー俺ら舐めてんじゃねーぞ!おらぁ!」

 「あっ、あっ、ゆ、許して、許してぇ〜」



 まだ20歳そこそこであろうか、色白の小柄な娘が二人の日焼けした

チンピラ風の若い男に何度も足蹴にされながら、四肢を荒縄で緊縛され、

悪戯された芋虫のようにのた打ち回り、悲鳴に近い声を上げ、哀願を繰り返す。



 「ごめんなさいぃぃ…もう、もうしませんからぁぁ〜。嫌あぁぁぁー…」



 ここは、木村通商本社の最上階。この最上階は一般の社員達は一切立ち入る

ことの出来ない場所…というよりは社会からは隔離された場所なのである。

表向きの社長室や役員室なその下の階にあり、エレベータもその階までしかない。

 ここは木村が、自身の欲望を実現するために築いた「桃源郷」、木村の

「天国」である。この「天国」は、そこに囚われた女達にとっては「地獄」

に他ならないのだが…。

 唯一、社長室からの裏階段のみが「最上階」と「社会」との通路であるが、

普段は厳重に鍵がかけられている。その鍵は、30代半ばの美人秘書・清美と、

木村本人しか所持していない。

 秘書・清美…30半ばでありながら、理想的なプロポーションと涼しげな瞳、

美人画のように通った鼻筋、潤んだ唇、そして、腰まで伸びるつややかな黒髪…

スーツ姿でもツンと上を向いた乳房や洋梨のように実った尻肉、そして、

彫刻のように引き締まり括れたウエストが美しいコントラストを表現し、

男達の性感を直撃する。

…その如何しようもない肉体に併せて、英語・ロシア語・ハングル語と同時通訳も

こなせるという抜群の語学力。

優秀な記憶力。そして、何より…犬よりも忠実な木村に対する忠誠心。

 この清美の知性が、天性の嗅覚を持つ木村の商才と結びつくことにより、

近年の不況もものともせず驚異的な成長を、この木村通商にもたらして

いるといっても過言ではない。

 しかし、この欠けるところなき美人秘書・清美も、例の「最上階」では

哀れな「牝奴隷」の一人である。ただし、その驚異的な能力と神秘的な美貌、

そして何もかも捧げる忠実で献身的な木村への奉仕…牝奴隷の中で唯一、

「地獄」と「現世」の間を行き来できる権利を得ているのもそれらの賜物である。

 ただし、木村にしてみれば、その特権も清美に対する「報酬」ではなく、

単に会社の仕事で使い物になる牝が清美だけだということに過ぎず、

他の牝奴隷どもは、友美同様、男の肉棒だけを追い求めるような学生時代を

過ごし、何ら知性も理性も持ち得ない全身性器のセックスマシーンに成り下がり、

もはや風俗嬢くらいしか就職先などないような低脳女子学生を「正社員」

「OL」という餌で釣り上げては「最上階」に囲って玩ばれているのである。



 「…アアア、グワアアァァァ!」

 「死ねやぁ!この牝奴隷がっ!」

 「ねえ、どうしたの?」

 「あ、姐さん。」



 清美の声に、鬼畜の表情をしたチンピラ供が「スッ」っと素直な男子の

表情に戻った。



 「いやさぁ、この馬鹿野郎がメシを食わねえもんだからさ、いつもみてえに

栄養剤を点滴したらよ、勝手に抜いちまいやがって…」

 「ほんとだよ、このクソアマがよっ!」



 吐き捨てるように罵声を浴びせると同時に、プロレスの如く全身の体重を掛け、

うら若き牝奴隷の腹部めがけてエルボードロップを食らわせた。



 「アグゥガッ!」



 最期の悶絶を上げ、全身を硬直させた牝はそのまま観念したかのように、

静かに眼を閉じた。



 「もう止めよっ!」

 「え〜だって、こいつ、チョー気に入らねーんだもんヨ!」

 「ほんとだよ!メチャムカツクんだよ、このバカ!」



 清美は、鬼畜供と脱力した牝の間に立ちはだかり、切れ長の瞳から

鋭い目線をチンピラに送った。



 「あんた達!ご主人様が自分の奴隷を勝手に傷つけられるのが

一番嫌いなのを知ってるだろ!」

 「…」

 「今度、こんなに責めたら…あんた達、例のクスリ…もうやんないよっ!」



 チンピラ供が、まるで職員室で叱られる生徒のようにシュンとしているのは

実に滑稽な風景である。



 「ああ、分かったよ。…もうしねぇよ。」

 「でもよ、こいつ、もう三日もまともにメシ食ってねーんだよ。

マジ死んじまうよ。」



 清美はチンピラの言葉を聞きながら、傷ついた牝の身体に慈悲深い

視線を向けながら近づいた。



 「奈緒ちゃん…大変だったね。痛かったよね。ごめんね。

…もう大丈夫だからね。…」



 清美は牝奴隷・奈緒子の微かに震える身体をそっと抱き寄せた。



 「…奈緒ちゃん…許してね…」



 清美は何度も悔い、詫びながら、序々にその声を涙声に化していった。



 「うっ、うっ…お姐さぁーん…アアアァーン」



 奈緒子は今まで必死に閉じ込めていた感情を爆発させるかのように、

顔を歪めて幼児のように号泣した。



 「…もう大丈夫…」



 清美は、溢れる涙を振り切るようにジッと眼を閉じると、己が感情の

スイッチを切りかえたかのように、涼やかな美人秘書の顔に戻った。



 「あんたたち、もうここはいいから、風呂の準備しなさい。」

 「はいっす。」



 鬼畜の去った後の責め場に、清美の清んだ声が響いた。



 「さあ、奈緒ちゃん。お部屋に行って、ご飯食べようね。」

 「…食べたくない…」

 「どうして?…おなか空くでしょ?」

 「おなか…すかない」

 「そんな、奈緒ちゃん、いつまで駄々こねてるの?」

 「ごめんなさい…お姐さん。でも、本当に食欲がないの?」

 「じゃあ、なんで点滴抜いちゃったの?」

 「そ、それは…」



 清美の質問に窮し、冷たいコンクリートの床に視線を落とす奈緒子。

どれだけ沈黙の時間が経った頃だろうか。清美の沈黙に怯えながら、

奈緒子は清美の仏のような穏やかな顔に視線をやった。その視線に応え、

そっと微笑む清美。

 自分の置かれた哀れな境遇に絶望するも、刑務所以上の厳しい監視状態の中で

自分の意思で絶命し、せめて魂だけでも自由になろうとするには、拒食症と称して

餓死するしかないと考えた奈緒子。

 自分の意思で自由を得ようとする奴隷には許されぬ行為をした奈緒子は、

まともに清美と視線を会わせることができずに「スッ」と眼を反らした。

…が、その直後、母のように暖かな清美の眼が、みるみるうちに冷酷な

阿修羅の眼に変わっていき、抱き上げていた奈緒子の肉体を冷たい床に

突き放した。



 「あんた、いい加減にしなよっ!」

 「ヒッ!」

 「お前さ、男のチンポをくわえ込むことしか出来ないバカな淫畜のくせにさ、

可憐なお嬢様気取りなんかすんじゃねぇよ!」

 「えっ、そ、そんなぁ…」

 「へっ!いいんだよ。別に飢え死にしたきゃメシも何も食わなきゃいいさ、

でもね、断食してやせ細った惨めな牝奴隷を…ご主人様がどう始末するかねぇ?」

 「…し、始末?」

 「そうだよ。ご主人様はプルプルとした牝肉がお気に入りなんだよ。

だから、ここの牝達はみんな餌食らって生きてられるんだ。」

 「…」

 「その肉感を失った牝奴隷なんか、自分で死ぬ前に、ご主人様とあのチンピラ供に

さんざん甚振られて始末されるんだよ。殺されるんだよ!」

 「ヒッ!」

 「生きたまま内臓取り出される「ハラキリショー」とか、顔面にコンクリート

塗られて呼吸が出来ずにもがきながら何度も犯される「生殺しレイプ」なんてね。」

 「いや、そんなのいやぁ!」

 「そうだろ?…いいかい?ここでどうにかなるためにはね…ご主人様に全てを

捧げ、どんなご奉仕もして、少しでもご主人様に気に入ってもらうことなんだよ。」

 「…」

 「ここの牝にとって、ご主人様は絶対の神様なんだよ。生かされるも、

殺されるも…みんなご主人様のお考え一つ。」

 「か、神様…」



 清美はさっと立ち上がると、牝達の食事が置いてある餌場から、

オレンジジュースの瓶を持ってきた。



 「さ、三日間も食べなかったんじゃ、急に食べ物食べると下痢しちゃうからね。

今日はジュースでもお飲み。」




 清美は自らの口にジュースの瓶を咥え、一口、その液体を含むと、奈緒子の唇に

そっと接吻をし、口移しでジュースを与えた。奈緒子は、再びそっと眼を閉じ、

清美の唇から与えられた甘酸っぱい液体をゆっくりと飲み下した。

 まるで自分の哀れな身の程を諦め、その運命を素直に受け入れるかの如く…。

 奈緒子の閉じた瞳からは涙が止めど無く流れていた。



 「おい、清美。」



 その日の夕方、「最上階」に現れた木村が真っ先に清美を呼んだ。



 「はい、ご主人様。」

 「うん、今度の土曜日。今年の新しい牝奴隷に「奴隷契約」を結ばせることにした。」

 「はい。」

 「お前も一緒に同席してほしい…いいか?」



 「いいか?」と言われても、奴隷である清美には「駄目です。」とは言えない。




 「はい。お供させていただきます。」

 「うん、この娘だ。どういう風に奴隷の仕事を説明するか…考えといてくれ。」

 「はい。」




 木村は、友美の履歴書と身体計測のビデオ写真を、清美に向かって

ポンと投げ与えた。

 清美は、友美のポッチャリと丸みの帯びた肉感を写真の中から読み取りながら、

履歴書に眼を移した。



 「友美ちゃん…か。かわいらしい…。」




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