どうしたものか・・・?
足立はラブソファーにどっかと、腰を下ろしていた。
煙草を口にくわえ、ライターを探す素振りをしている。
胸ポケットを探り、ズボンの後ろポケットにも手を当てるが、ライターが見つからなかったらしい。
ガラステーブルにあったマッチで火を付けていた。
足立がくつろいでいる大振りのソファーしか、ここには椅子が無い。
足立の隣に座るのは、気が引ける。
顔を合わせて1時間と経っていない足立に、わたしは戸惑いを感じていた。
戸惑いというより人見知りかもしれない。
しかし、このままぼーっと立っているのは、あまりにも間抜けすぎる。
部屋の散策をする振りをして、足立の様子を見ることにした。
部屋といってもラブホテルの造りは、どこも似たようなもの。
洗面所は、暖かいクリーム色。
人工大理石で、作られているのだろう。
オレンジがかった照明は、薄暗く光っている。
正面には大きな鏡があり曇りひとつない。
無表情な顔を、映っていた。
能面のような無表情な顔。
少し緊張しているわたしの顔はきまって、無表情に固まってしまう。
初対面の相手にその顔は、きつい印象を与えることが多い。
足立はこの顔を見て、どう感じたのだろうか・・・。
洗面所奥のドアを開くと、トイレになっていた。
通路を挟んで向かい側、磨りガラスのドアは、お風呂場だった。
白いシーツで被われたWベットは、ひんやりとした手触り。
枕元にはお決まりのテッシュの箱と、コンドームが2個設置されていた。
表情に変化が無い足立に、戸惑いは深まっていく。
なぜ、わたしはこんな事をしでかしてしまったのだろう。
逢って1時間と経たない人と、ラブホテルに居る。
限りなく異常な状態であった。
ファスナーを開ける音に振り返ると、足立が赤いロープの束を取り出していた。
「これで縛ってあげようね。」
足立の眼をまじまじと見つめてしまう。
口元がゆっくりと、微笑の形に変わっていく様を。。。呆然と見つめ続けた。
足立の視線にわたしは、すでに縛りつけられてた。
「さあ、こちらに来て服を脱ぎなさい。」
心拍数が一気に上がっていく。
躰が硬直し、動けなくなる。
痛いほどの視線に晒され、躰が縮んでいく錯覚を覚えた。
これが羞恥心というものだろう。
顔が熱い。
紅潮している顔をあげることができない。
恥ずかしいと感じている事を、悟られたくなかった。
うつむくことで、隠しとおせるわけなど無いのに。
のろのろとカーデガンのボタンを、うつむいたまま外しだす。
脱いだカーデガンをたたみ、クローゼットに入れた。
ワンピースの胸元から裾までのボタンをゆっくりと外す。
そして、ハンガーに掛ける。
たったそれだけの動作に、5分はかかった。
黒いスリップの裾には、幅広のレースが付いていた。
うつむいたまま、そのレースの花柄を見続けた。
足立は、一言もしゃべらない。
わたしに失望したのだろうか?
それともスリップを脱ぐのを、待っているのだろうか?
無言に耐え切れない。
次の言葉を催促するように。。。わたしは顔を上げた。
凝視している足立と、視線があってしまう。
「あの・・・。」
「このまま縛って欲しいと、みえるね。」
ロープを手に立ち上がる足立を、畏怖の念で見守る。
足立が恐いのではない。
これから行われる事が、恐いのだ。
縛られるのは、自分が望んだ事であったのに。
縛られて、玩具にされたいと想っていた。
空想したその行為は、官能的で淫靡だったのに。
この恐怖心は何なのだろう?
足立は正面に立ち、わたしの首にロープをかけ、結び目の位置を調節している。
ロープにはあらかじめ幾つかの結び目が作ってあるようだった。
ロープは肌に暖かく。。。恐怖心が少し薄れていく。
膝立ちになり結び目を調節する足立の背中を、ぼんやりと見下ろす。
その姿勢の足立は無防備に見え、どこか滑稽でもあった。
太ももの内側を軽く叩かれた。
わたしは足立を見つめる。
再度太ももの内側を、手の甲で2度叩かれた。
足立は何も言わない。
わたしは叩かれた意味を理解していた。
ゆるゆるとわたしは脚を開いていく。。。
肩幅に脚が開くと、そこにロープが通される。
ロープの先は、首のロープに通されキュッと引かれた。
「うぅ・・・。」
敏感な部分に結び目が当たるよう調節されていた。
手際よくロープを扱う足立によって、縛り上げられてく。。。
目を閉じ目眩のような感覚が、躰に沸き上がるに任せた。
「手を頭に当て胸を張りなさい。」
電話で何度も聞いた足立の声。
その声はどこか安心感すら感じられ、素直に指示に従った。