ロマンチック街道沿いにあるきれいな小都市、ローテンブルク。ここには、「一年中ク
リスマス」として有名なおもちゃ屋がある。大きな店の上から下まですべてクリスマス
用品で埋め尽くされている。冬になると、雪の降る日の夜は、イルミネーションが輝き
思わず目を奪われる。
ローテンブルクのもう一つの顔が、世界で唯一の拷問博物館である。人間の残酷さが当
時の酷い道具と共に見る者の目に飛び込んで来るが、よく見ていると、不思議な事とに
気が付く筈だ。何故か、ここに展示している物は、若い女性相手の拷問器具ばかりなの
だ。当時の拷問の様子を再現した精巧な模型も数多くある。街の真ん中に引き出され、
大勢の見物人が見ている中で、裸に剥かれようとしている女性、すでに、全裸にされて
乳首を器具で責められて泣く女、机に俯せで縛り付けられ、股間に二本の木の棒を押し
込まれている女、さらに、もっと酷いことをされて血を流す女、女、女。
博物館の地下は、見学客が絶対足を踏み入れる事のできない場所である。若い女性を痛
めつけ、奴隷として責めることの出来る数々の部屋が、そこにある。恋人を、愛人を責
める所ではない。ヨーロッパ各国を訪れる一人旅の若い女性を誘拐、拉致、監禁して、
その若い体を思う存分に楽しむ部屋である。古い、石造りの地下室で、娘達が、どれだ
け悲鳴をあげようとも、どれだけ泣き叫ぼうとも外にその声がもれることは絶対なかっ
た。
そんな一室に、今日の生贄が運び込まれていた。久しぶりの日本人。どこでさらわれた
のかは一切不明だった。日本人を予約して半年、日本語に全く不自由しない私は、どう
しても、日本の若い女性を徹底的に痛めつけてみたかった。彼女の手荷物を探る。パス
ポートがあった。名前は香月、写真を見る限り、年齢の割には幼い顔立ちをしてい
る。もうすぐ、彼女は、その幼い顔を涙でくしゃくしゃにして、私の手から逃れようと
縛られて不自由な体でもがくことになるだろう。
香月を閉じ込めた部屋を隠し窓から覗いてみる。薬で眠らされた彼女は、後ろ手に縛ら
れ、木の床に転がされていた。TシャツにGパンというラフな格好だ。彼女が目を覚ま
すのが楽しみだ。部屋の中に置かれている物を見て、それが何を目的にしたものか気が
付いた時の香月の反応が...
私は、わざと色々な物を置いておいた。壁には大きな文字で「拷問」と書いた紙が張っ
てある。そして、何本もの黒光りしたロープ、大小様々な太さの棒、いかにも痛そうな
鞭、先端が丸くなったチューブ、他の道具を詰めたカバン、天井から下がる鎖、木の台、
蝋燭...そんな物が彼女の目にはいる筈だ。
彼女が動いた。初めは極く僅かに、体を動かしただけだが、次第に意識が戻っていくの
だろう。かすかなうめき声がもれる。目が開く。何がどうなっているのか全くわからな
い、きょとんとしたあどけない表情だ。突然、彼女の目に驚愕が浮かぶ。縛られている
ことを理解したようだ。両手が後ろにまわされて固定されている。足首もがっちりと縛
られている。まもなく、周りにある物にも気がつくだろう。こんな時、女の子はどんな
ことを感じるのであろう。何を思うのであろう。すべてをその目が語っているようだ。
「いよいよゲームのはじまりだ...」
私はゆっくりと腰をあげた。時間はたっぷりある。香月には無限と思える位の長い時間
がある。苦痛にまみれ、恐怖に泣く長い、長い時間が...