赤 い 魅 惑





血の味って知ってますか。

まだ5歳くらいだった時、母の化粧箱からそっと持ち出したカミソリ。

不思議な魅力のある刃の光。

刃を掌に握り、スッと曳いたら、掌に赤い線が一筋。

あ〜すごい!

痛みより、その赤い色にすごい感動を覚えたわたし。

何が起こっているのかよくわからなかった。

次々に、掌や指先に赤い線が増えていく。

すごい!すごい!きれいだなぁってごく自然に感じた。

赤い線をペロっと舌で舐めてみると、ちょっとしょっぱい味。

でも、なんだかおいしい。不思議な味。

初めて知った血の味。



やがて痛みが出てきた。

やっぱり何が起きたのかよくわからず、母に手を見せた。

その時の母の驚きの顔は忘れられない。



血の味って好き。「いい塩梅」の味。

もしかして昔は吸血鬼?

看護婦はわたしの天職かな。採血が大好きなんだ。

血を抜かれるのは、もっと好き。

献血で身体の血が抜けていく感覚が好き。

手術で出血が多くて血圧が下がったとき、す〜っと意識が薄れて

まるで、深い沼に沈んでいく感じがした。死ぬってこんな感じかな。

嫌いじゃないよ、その感覚。

4回も手術を受けたのは、沈む感覚をまた経験したかったから・・・のわけないか。

望まずも経験できたけれど。



ご主人様に、わたしの血、味見してほしいって言ったらなんていうかしら。うふふ

いいえ、できることなら、ご主人様の赤い血を・・・



       みあ







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