“うぐぅ、う、ウウウウ”
修道衣に身を包んだままハンナは苦しげな呻き声を挙げ、自室のベッドに横たわっていた。
横たわったハンナの腹部は大きく膨れ上がっている。腹部が波打つのが僧衣の上からもわかる。
ハンナは出産の恐怖と苦痛に身を捩り、必死に胎児を娩出しようとしている。
“ぐうっ、んんっ、んぐゥゥゥゥゥ、むうんんんーーーー”
容赦ない陣痛。初産の身に激しく打ち寄せる激痛になすすべもなく身悶えし、悲痛なうめきが続く。
ハンナは声を出すまいと健気にも轡を手で押さえつけ、必死に産みの苦しみを乗り切ろうとしている。
修道女の性交は許されない。もちろん妊娠、出産などもってのほかである。
毎月一回ミサの説教に訪れる枢機卿にその性を散らされ、ハンナはほどなくして妊娠した。
堕胎を試みたが、効果はなく、出産の日を迎えることとなったのだ。幸いにも修道衣は
臨月のハンナの腹部を覆い隠すのに好都合だった。夜の祈りの後、ハンナは産気づいた。
下腹部が張り、鈍い痛みが何度となくハンナを襲う。初めての出産ではあっても女の本能が
ハンナにその時だと悟らせたのだ。
誰にも気付かれてはならない。極秘裏に出産を済まさねば。彼女は自室に篭り、
肌着を幾重にも固く結び合わせ、大きな結び目を口に咥え、陣痛が襲う度、
呻き声が漏れないように硬くかみ締めた。今まで経験したこともないような異様な痛みが下腹部を襲う。
“うんぐぅぅぅぅぅぅ。うううっ”
ハンナは声にならない悲鳴をあげ、下腹部を抱えてベッドの上を転げまわる。
“ううぅーっ、ぐうっ、んぐふー、んんーーーーっ”
修道衣がはだけ、ボテリと醜く膨れ上がった腹部があらわになる。
“んぐぅうううう”
シーツをつかみ必死に耐える。廊下を歩く修道女達の足音が聞こえ、ハンナは激痛と戦いながら
、結び目を咥えた口の上から更にタオルを覆い、後ろでしっかりと結んだ。
“うぅぅう、うんんんんんっ、むぐうう、うむううう、うんぐぅぅーーー”
目を見開き、腹部を抱きかかえベッドの上で転げまわる。激痛は激しさを増すばかりだ。
“うっ、んぐぅぅっ、んんんんーーー。うんっぐぅ、うううっ、
んんーーーー、ううっ、うぐっ、うっ、うっぐうぅっ、んんんーーーーー
んんっぐぅうううーーーっ”
ハンナが呻き声を挙げ、苦しみに悶える度に腹部が大きく波打つ。
妊婦の乳房がだらりと法衣からはみ出す。
“うむぅ、むうううぶっ。んぐぅーーっつ
腰骨が砕けそうな激痛が腹部を襲う。ハンナは絶えることのない陣痛に悶え続けた。
玉の汗が滲み、本能的に両足を左右に大きく広げていた。恥部を露にし、仰け反り悶える。
胎児が胎内で蠢き、ハンナの肉をえぐっているかのような激痛が彼女を襲った。
“ぐむうううっ、おっ、うっ、んぐううううううううううーーー”
ハンナは白目を剥き、大きく仰け反ったまま耐えがたい激痛に声にならない悲鳴をあげた。
そのまま両足と腹部を痙攣させ、四肢をだらりとシーツの上に投げ出し動かなくなった。
気絶したまま半裸の修道女は、黒く変色した乳輪から乳白色の乳汁を滲み出し、
両足を左右に広げ、恥部を露にしたままハンナはベッドの上に横たわっていた。
“ハンナの様子は?”
“気を失っています。”
“赤ん坊はどうなっています?”
“お元気な様子です。さすがはルシフェル様のお子様です。ほら、こんなに元気にお腹を蹴って”
2人の修道女が半裸のハンナを見下ろしながら囁きあっている。院長のアクイレーナと
その侍従のバイラの2人であった。
“さぁ、礼拝堂に運びましょう。いよいよです。”
黒衣に身を包んだ修道女達がハンナを抱え挙げ、地下の礼拝堂へと運んだ。
地下の広間には黒衣を纏った修道女と男たちが蝋燭を手に、全裸で十字架に貼り付けにされたハンナを取り囲むように並んでいた。
膨張した腹部をせり出し、ハンナは両手を貼り付けに、両足を硬く閉じられたままの格好で十字架に縛りつけられていた。腹部が波打っている。
“ハンナがとうとうそのときを迎えた。ルシフェル様の化身が今産まれようとしている”
院長が声高に黒衣の群集に呼びかけた。
途端にハンナの腹部が大きく蠢き、激烈な陣痛が彼女に襲い掛かった。
“ああああああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜っ”
猿轡が取り払われたハンナの口から絶叫があがる。
激痛に身悶えしようとするが、十字架にしっかりと結わえ付けられた体は思うように動かない。
激痛が全身を貫く。
“うおおおおおおおああああああっ”
絶叫が響き渡る。一体なにが起こったのか。何故自分がこのような目にあっているのか。
彼女には全くわからなかったが、胎内に宿った胎児が想像を絶する苦痛を自分にもたらしている
ことだけは確かだった。宿してはいけない罪の子だった。だがそれは修道院全体で巧妙に
しくまれた受胎劇だったのだ。
“おおおうっ、おおおお〜〜〜ぎゃあああああ”
ヘソから下が異様な膨張を示すと同時にハンナの口から咆哮があがる。閉じた股間から
どす黒い血が流れ落ちた。ハンナの苦しみは煉獄の炎に焼かれる死者のそれだった。
絶え間ない絶叫が堂内にこだまする。
修道女の一人が固く閉ざされたハンナの両肢の間から男根ほどの太さの黒塗りの
逆さ十字をハンナの股間に挿入した。
“あああ〜〜〜っ。おおうううううおおおおおーーーー”
絶叫する口からよだれが垂れ、乳房からは母乳が垂れ流しになっている。
ハンナの閉ざされた肢の真下に桶が置かれ、修道女が左右に立っている。
“あぁ〜。いだい〜〜。いぎいいいーーーーー”
ハンナの肢を縛っているロープが解かれ、修道女達が彼女の両足を左右に大きく広げた。
逆さ十字が刺さったままの股間が露になる。
“おおっ、おっ、おあああああーーーーっ、あああっ、
あぎゃあああああーーーーーっ”
絶叫とともに十字架が股間からズルリと抜け、どす黒い粘液とともに羊水がハンナの股間から
しとどに迸り、盥にバシャシャと流れ落ちた。盥は祭壇に添えられ、堂内の男女は黒衣を脱ぎ捨て、
堂内の床に書かれた円の周りで、絡み合った。女は男をしゃぶり、男は女に挑みかかる。
淫らな絵画を見ているようだった。
全裸の修道女達が、破水したハンナを十字架から降ろし、床に書かれた円形の図の上に
両手肢を大きく開いた状態で寝かせる。その間もハンナは絶え間ない激痛に絶叫し悶えつづける。
両手足をばたつかせ、苦しみ悶えるハンナを女達は押さえつけ、床の上に作りつけられた皮ひもに両手肢を縛り付ける。
“ああぁっああああーーーっ。”
手足の自由を奪われながらも仰け反り、臀部を床に擦り付け腰を上下させる。
かろうじて動く胴体をくねらせ激痛に喘ぎ、泣き叫ぶ。
“いぎぃいいいーー、おっ、おあああああーーーっ。
いぎゃあああーーーっ。
ああっ、ああっ、おおおうううぅっ、おあああーーーっ”
下腹部が大きく波打っている。ハンナは相変わらず腰を振り、首を左右に激しく揺らし、
激痛から逃れようともがいている。ハンナの叫び声の隙間から、男と女たちの淫靡な喘ぎ声が
漏れ聞こえる。堂内には淫蕩な地獄絵図が広がっていた。
“おおっ、うおおお、ああああーー、ぎゃあああーーーーっ”
胎内の赤ん坊がハンナの恥骨をこじり開ける。悪魔の申し子は激痛となってハンナの胎内で
暴れている。股間が何度も大きく盛り上がり、なすすべもなく四肢を震わせ、泣き叫ぶハンナの姿は
正常な人間なら目をそむけるたくなる光景だった。
“ああああーーーっ、おあああーーっ、
おぐうううああああーーーーーーーっ”
汗みどろで悶絶するハンナの股間からブシュっと赤黒い粘液が飛び散った。
更に激痛が炎となってハンナを焼き尽くす。恥骨の辺りが異様な盛り上がりを見せている。
“うあああああーーーー、んぐあああああーーーーっ、
ぎゃああああーーーーっ、おおおおおおーーーっ”
血にまみれた股間から肉片が覗いた。胎児の両足が漸く母体から娩出されようとしていた。
頭部が産道につかえ、胎児の動きが止まる。
“あがああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっっっっ”
救いようのない苦痛。汗まみれの顔に朦朧とした瞳がどうすることもできない激痛に翻弄されている。
ハンナは泣き叫びつづけるしかなかった。
“あぐううううううーーーーっっっ、あぎゃああ
ああああああーーっっっっ”
断末魔の叫びが続く。胎児の父親である枢機卿が祭壇に立ち、悪魔の祈りを唱え始めた。
産道でつかえている胎児の動きが再び活発になる。子宮が、肉がえぐられるような激痛にハンナは白目を剥いて悶絶した。
“うがああああああああああああああ
あーーーーーーーーーーーーーーっっっっ、
んんっ、ぐぉおおおおおおおおーーーー、
あぎゃああーーーーーーーー”
壮絶な絶叫が響き渡る。ゆくっりともどかしいほどにゆっくりと胎児の胴体が
赤黒い粘液と共に娩出されてくる。胎児は、わざと母体の苦痛を大きくするために
緩慢な動きをしているようでもあった。
股間から胎児の赤黒い胴体がぶら下がった。
“うあああああああああああ
ああああーーーーーーーーーーーっっっ”
地獄の絶叫をあげるハンナが身を捩るたび、股間にぶら下がった胎児の胴体がブラブラとゆれる。
汗にまみれ、下腹部を赤黒く染め上げたハンナは悪魔の申し子を娩出しようともがきつづける。
乳房からは母乳が噴出し、上半身を濡らしていた。産道がえぐり、砕かれる。下半身が押し潰され、
肉をわしづかみされているような地獄の激痛。
“おああああああーーーーーーーー、
ぎゃあああああああーーーーあああ
ああああーーーっっっっ”
断末魔の咆哮とともにズルリと胎児が娩出された。ハンナはガクリと頭を垂れ、脱力した。
修道女が娩出された胎児をひっぱり、ズルズルとへその緒、胎盤を引き出し、
それらを引きずったまま赤ん坊を祭壇へと運んだ。
群集の祈りと共に血まみれの赤ん坊が産声をあげる。
ハンナのうつろな瞳に、父親によって高々と掲げられ、産声をあげる赤ん坊が映っていた。