踊り子イシルファータの出産




 アラビア音楽に乗せ、激しく腰を振る。

その度に美しくカールしたダークブラウンの髪が揺れ、その顔は見るものを魅了した。

毀誉のベリーダンサーと謳われた踊り子、イシルファータ。音楽が徐々にテンポを上げ、

腰の動きも一層激しくなる。その動きに合わせ、貴金属がジャラジャラと揺れる。

観客も音楽も最高潮に達したところで、一瞬の静寂が訪れる。

割れんばかりの喝采を背に彼女はステージを後にした。


 もう何年も踊りつづけてきた。しかし臨月の体でも踊りつづけることになるとは思ってもいないことだった。

大きく突き出た腹を抱えながら何日、いや何ヶ月踊りつづけてきたことか。

だがいっこうに産まれる気配はなかった。マイヤールの囲われものとなった日から、

その異常な性欲の果てにこうなることは予想していたが、臨月になってまでステージに立たされるとは
……


 1ステージ終えるたび、息が切れ、歩くのもままならぬほどに腰が重くなる。

マイヤールはそんなイシルファータを見ては欲情する男だった。


 腹部が硬く張り、異様な感覚が下腹部を支配した。


“お、おぅ
……..ハァーーー、さ、産婆を……呼んで”


イシルファータはその場に座り込んだ。


ステージ衣装のまま大きな木製のイスに倒れこむように腰をおろす。

ゆっくりと締めつけらるような痛みが腰から腹部へと広がる。

イシルファータは突き出た腹をさすりながら、顔をしかめている。


“おおぉ
…..。ふぅ〜”


黒いベールをかぶった産婆たちが、慣れた様子で動き回っていた。


産室へ男性が入ることは固く禁止されている。マイヤールといえども例外ではない。


だが、イシルファータは、彼女を舐める視線を感じていた。

分娩用のイスの対面に作られた小さな小窓。

そこに異常な性欲に昂ぶった男の気配を感じていた。


“ハァ〜〜、あぁ〜”


見られている。苦悶しながらも、イシルファータは興奮を覚えた。


彼女の子宮は弱い収縮を繰り返していた。


絶える事の無い、痛みに悶えながら、彼女は衣装の上から乳房を揉みしだいた。


鋭敏になった乳首が衣装にこすれ、勃起する。初乳が衣装に滲んでいく。


挑発するように小窓をにらみつけながら、イシルファータは自らのクリトリスに

手を伸ばした。触れただけで性感が駆け巡る。喘ぎ声が漏れる。


彼女はおもむろに立ち上がり、乳房を隠している布地をめくり上げ、

露になった乳房を刺激する。下腹部が更に硬く張り、締め付けられるような感覚が強くなる。


ゆっくりと腰を振る。乳房への刺激と並行して腰の動きもだんだんと激しさを増してきた。


“あああぁっ”


突然イシルファータは腹を押えたまま、床にくず折れ、そのまま苦悶に顔をゆがめた。


“ああーーーーーー”


分娩イスの肘置きに片手でしがみつき、低い叫び声をあげる。


“ひぃー、アハーー、ハァハァ”


苦しそうな息遣いが続く。イシルファータは、イスの下に転げ落ちかのような姿で、

両足を投げ出し腹をさすりつづけた。


“あああああああーーっ”


言い知れぬ痛みに、あられもない肢体をさらし、声をあげる。


一人の産婆が彼女の腹部をさすり始めた。と、急に立ち上がり他の産婆たちへの

元へと戻っていく。産室の空気がざわめいた。双子なのだ。


“おおおおおっっ”


男の視線が絡みつく。


“はううううぅぅーーー”


産婆が体の汗を拭っている。


イシルファータは痛みをこらえ、両腕を両の肘掛にからませ、四つん這いの体位で

次の痛みに備えた。形の良い臀部を小窓へ突き出している。男を挑発しているかのようにも見える。


“おおっ、あああああああーーっ”


股間に付着した赤褐色の粘膜を産婆がふき取る。イシルファータの唸り声が

響くだけで、いっこうにお産が進む気配はない。


イシルファータの荒い息遣いが聞こえる。


“おぐぐうぅぅぅーーーー”


口から漏れ出るうめきを押えようと、腕を口にあて、顔を上に向けて必死にこらえる。


激痛に身悶えするたび、黄金の腰巻がジャラジャラと音を立てた。


“あぁー、ハァハァハァ。”


腹を押えてもどうにもならない激痛。ヘソの少し下あたりに小石程度の塊が感じられた。


弱々しく腰を振り、少しでも分娩の進行を早やませようとするが、彼女の思い通りにはならなかった。


彼女はイスにしがみ続けることもできなくなり、ズルズルと床にずり落ちた。


“あぐううぅうーーー、ああああああああーーーーーっ”

イシルファータは陣痛のたび、ペルシャ絨毯の裾を握り締め、片手で腹部を

押えながら獣のような呻き声をあげつづけた。


だが、それでも悶絶する表情は尚色香を放っていた。


その後、何度目かの陣痛をやり過ごすと、天井から下げられたシルクの産綱に

ぶら下がる格好で、立ち上がり、両足を大きく開き、マイヤールの視線と対峙した。


“あああああうぅううーーー。

んぐぐぐぐうううーーーーーーーー”


彼女はそのままの格好で放尿し、激しく肩で息をしながら立ち続けた。


いきんだためか、少し恥骨のあたりが膨らんだようにも見える。


産婆が駆け寄り、イシルファータをイスに座らせ、両足を閉ざしたまま

足首と付け根を硬く縛った。いきみにくくするためである。


“ああああっ、ああああーーーー。
おおーーーーーー。あううううぅぅぅぅぅぅ”


イシルファータは痛みを逃すことも、いきむこともできず、ただ唸り、叫びつづけた。


既に日が暮れようとしていた。産気付いてから二度目の夜である。


マイヤールはその様子を別室で眺めながら、美酒をすすっている。


“あがああああああーーっ、あああぁぁぁぁ、あああ

ぁぁぁ、

んっぐううううーーあああああーー”


閉じられた股間から、液体が垂れ流されている。


産婆が、イシルファータの足を開くと、おびただしい液体が股間から流れ落ちた。


両足を
180度拡大し、分娩イスの両の皮ひもに縛り付ける。


股間から赤黒いものが見えた。微妙な肉片のようにも見える。胎児の鼻と唇が

イシルファータの股間から覗いていたのだ。


“ハァ、ハァ、ハァッ。おおおおおっっ”


夜になっても、全身汗みどろになりイシルファータは分娩の苦しみに悶えていた。


マイヤールに股間を晒しながら、イシルファータは全身を痙攣させてもがいていた。


両の手には、しっかりと産み綱が握り締められている。


“んんんんんんんんーーーーっんぐうがああ

ああああーーーあああああーー、

ああああああーーー、ああああーーー、

あああああああーーーー”


いきみと絶叫が繰り返される。しかし、顔面でつかえたままもはや動こうとしない。

膣口は、胎児の顔面を通り抜けさせるほど広くなってはいないのだ。


ヴァギナが根元まで裂け、子宮からの出血とあいまって、股間は血にまみれていた。


産婆が足元で、ヴァギナを押し広げようとしているが、顔面が大きくて娩出させることができない。


刃先がヘラのようになっている幹子に菜種油を塗り、イシルファータのヴァギナへ左右、

上下に差し込んだ。てこの原理で、ヴァギナを押し開く。もう一人がイシルファータの

腹部を圧迫する。


“ああぎゃああああああ

ああーーーーーー、ああああ

ああああーーーーーー、おおおおうう、

んんぐうううううあああああああああ

ああーーーーーーー”


股間から血飛沫が上がる。それでも顔面は恥骨に挟まったままである。


イシルファータは絶叫しながら、産婆を押しのけようとするが、

足が固定されていて思うようにならない。


“んんぐうううううううーーーーーー、


ああああああああーーーーっ。

きってーーーーーーーーー

あああああああああああああああっ


そのままの状態でどれほどの時間がたったのか。満月がくっきりと夜空に浮かんでいた。


“んがああああああ

あああーーーーー、


ぎゃあああああああ

あああああああああ

あああああああーーーっ”


血飛沫をあげながら、一人目の胎児が娩出された。


“ハァ、アアア〜、ハァ、おっ、うううおおおおお”


二人目を娩出するための陣痛が容赦なくイシルファータを襲った。


彼女はしっかりと肘置きを握り締め、下半身を血に染めて第二の分娩に苦しみ悶え続けた。


股間はぬぐってもぬぐっても血に染まった。おびただしい出血。


産婆の一人が、ヴァギナからの出血を止めるため、赤く焼けた焼き鏝を

イシルファータの股間に押さえつけた。ジュゥ。


“ギャアアアアアアアーーーーーー”


絶叫とともに皮膚の焼ける匂いが産室に漂う。


分娩というよりは、拷問と呼ぶに相応しい。


うつろな視線が小窓を眺めている。


“おおおおおおおおおうううぅぅぅ。

おあああああ〜〜〜”


数時間後、二体目の胎児の肉片が見え隠れ始めた。


“んんんんんっぐううううううっ、

アアアアアアア〜〜〜。”


見え始めた肉片を産婆がひきずり出そうとしている。逆子なのだ。


胴体が出始めたところで、会隠が裂けた。


頭がつかえる。


イシルファータは股間から胎児を半分ぶらさげたまま、背を仰け反らせ、絶叫しつづけた。


“あああああああーーー、ああああ

ああああああああ、
ああああああ

ああああああああっ。


んっぐふうううううっ、ぎゃ


あああああああああああーーーっ。”


血煙をあげ、二体目が娩出。イシルファータはそのまま意識を失った。


再びヴァギナに焼き鏝をあてられたが、もはや、イシルファータはピクリと反応しただけであった。

胎盤を取り出し、空になった子宮に止血剤の薬草が入れられ、汗と、血をふき取られ、

ベッドに横たえられたイシルファータの顔は青白く、死んでいるのかと思われるほどであった。


“イシルファータ、お前は良い女だ。さて、次はどうするかな
……。”


マイヤールのねっとりとした視線が、イシルファータの裸体を舐めまわしていた。








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