★★★☆★ ★☆★★★

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四、初めてのお客さま

 運転手が帰ってから、美歌はバスルームで丁寧に髪と陰毛を洗った。

ダニや虱がウジャウジャとついていそうで、割れ目の奥まで指を入れて

丹念にヌメリを落とした。嵌めなかったのは確かなので、性病の心配は

大丈夫と思う。顔も洗ったのだが、それでも唇の周りにこびりついた

精液の匂いは、なかなか取れなかった。

 野獣だと思っていた男が実は廃人同様の無能力者だったのは

ショックだが、やはり貴重な体験だった。それから美歌はあの臭いを

思い出しては、浮浪者の群れに犯される場面を妄想して、その度に

オナニーに耽った。

 三日目の夜、電話のベルが鳴ったときも美歌はオナニーしていた。

パジャマを脱いで自分で毛を毟るように引っ張り、割れ目が捩じれるほど

虐めた。美歌のオナニーはクリトリスを刺激するより、いつもこんなやり方で

することが多かった。

 ちょうど十時半をまわった頃であった。

「ああ、俺だけどよ、憶えているだろう。客をつけたから、すぐに新宿の

プリンスホテルへ行ってくれ」

「えっ、あの私、もう寝たんですけど」

「馬鹿、ちゃんと起きてるじゃねぇか。相手は待っているんだ、すぐに支度しろ」

 それは三日前、線路の向こうに見えたホテルである。

「困るんです。あした学校もあるし…」

「言い訳はどうでも良いからよ。やるっきゃねぇだろう!」

 美歌はしどろもどろになった。まさか、本当に客を紹介してくるなんて

信じられなかった。

 どうしよう…。

運転手の怖い顔がオナニーの妄想と重なって、頭の中で

くるくるとまわった。

「いいか、絶対に俺の顔を潰すなよ。大切な客なんだからしくじるな。

わかったな!」

 もう一度念を押して部屋番号をメモさせると、電話は一方的に切れた。

 美歌はベッドから起きて、あわただしくミニのワンピースに着替えた。

初めからそれが自分の責任でもあるかのように、自然にそうなって

しまうのが不思議だった。

 タクシーを飛ばしてホテルにたどり着くまで、およそ40分かかった。

「遅かったじゃないか…!」

 客というのは、ちょっと凄味のある中年の男で、美歌を見るといきなり

不機嫌そうな声を出した。

「済みません」

「お前、女子大生だっていうのは本当か?」

「はい」

「何年だ」

「2年です」

「学生証見せてみろ」

「いま、持ってなくて…」

「フフフ、まあいい、今夜は私の言うこと聞くね?」

「はい」

 言葉に癖があって、中国系の人かもしれないと思った。

 私はこの人に買われたんだ…。

 売春という初めてのスリルに、美歌の身体がまた痺れはじめた。

「裸になってこい」

「はい」

 買われたのだから、何をされても従わなければ…。

 ドアの横で、ワンピースを脱いだ。それが理不尽であればあるほど、

美歌には逆らうことのできない絶対の命令に聞こえた。

 男はベッドに腰掛けたまま、ここに来て座れと言った。男の足元で、

美歌は全裸のまま正座させられる形になった。

「舐めろ」

 浴衣を捲ると下には何も穿いていなくて、毛深くて大きなのが

半分勃起していた。

 男が髪の毛を掴んで、顔全体をゴシゴシと下腹にこすりりつける。

時々、咽喉の奥を突かれて嗚咽したが、その苦痛がかえって快かった。

オナニーしながら頭に描いていた幻想が甦ってきて、身体から力が抜けた。

「ボンヤリしてるんじゃねぇ!」

 いきなり乳房を蹴られた。

「ウググ…」

「もっと一生懸命しなければ駄目。お前誠意がないよ」

「ファイ、フイマヒェン…」

「よし、つぎケツの穴…」

「はい…!」

「舌を出して、中のほうまで入れる。わかったね」

 何を考える余裕もなく、美歌は奉仕することに徹した。ただ一匹の獣に

なって男に仕える、美歌の本能が求め続けていた快楽がそこにあった。

 しばらく舐めさせた後、男はベッドに大の字になって、上に乗れと言った。

「後向きになって、しゃがんで嵌めるんだ。股を広げて、口でしごくのと

同じように腰を使ってみろ」

 言われた通り男を跨いで、自分の股間を覗き込むような姿勢になった。

「駄目、手を使うんじゃねぇ。そのままで入れるんだ…。穴がちょうど

真下になるように持ってこい」

「はい…」

 濡れて直立しているのを真ん中に当て、蛙のように両足を踏ん張って、

何とか狙いをつけた。そっと身体を沈めるとヌルッと入った手応えがあった。

「よし腰を振ってみろ。馬鹿! それじゃ抜けちゃうだろう」

「ごめんなさい、もう一回します…」

 失敗すると男は口汚なく美歌を叱った。その度に、丸く張った美歌の尻を

ビシャビシャと叩く。たちまち太股から腰にかけて、濃いピンクの

まだら模様が出来た。

 少し馴れたころには、脚がだるくて、もう少しで尻餅をつきそうだった。

挿入の快感はまるでなかった。初めての、ただ男の道具になっている

だけの体位で、それでも美歌は辛抱して懸命に奉仕をつづけた。

「あんまりよく締まらないね」

 暫くすると、男はニヤニヤと笑いながら言った。

「仕方がない。ケツに入れてやろう。そのほうが良く締まる」

「えッあの、私まだ…」

「やったことないのか?」

「はい」

「じゃちょうど良い。教えてやるよ」

 男は、蹲っている美歌の割れ目からヌメリを取って、たっぷりと

穴の周りに塗った。

「手を使って良いから、狙いをつけて突っ込んでみろ」

 膝がガクガクして、踏ん張っているのももう限界だった。震える手で

男のものを掴むと、美歌はここと思うところに当てた。

メリメリと喰い込んでくるような感じがして、思わず腰を浮かした。

「馬鹿野郎、怖がっていないで、こうやるんだよ!」

 いきなり腰を抱えて、力まかせにグイッと押さえつけられた。

「ぎぇぇ…!」

 頭の芯で火花が散った。息を詰め、奥歯を噛んで堪えようとする。

体重を乗せて一気に貫通され、双丘が引き裂かれるような劇痛。

男が容赦なく突き上げると、美歌はその度にヒッヒッと咽喉を鳴らし、

荒馬に翻弄されるように腹の上で踊った。

 結局、尻の穴で一度。抜いたあと、ぐったりとなったのを仰向けに

転がされて、口の中にもう一度…。

一晩中なぶり廻されたあげく美歌は解放された。

「お前、犬は好きか」

 終わった後、男は思い出したように変な事を聞いた。

「好きです」

「そうか、まぁ、それは後にしよう」

 追い立てられるように部屋を出されて、ホテルの回転ドアをくぐると、

空が仄かに明るくなっていた。



    五、中央ハイウェイ


 初めて破られたアナルが一日中疼いて、トイレに行くのも苦痛だった。

ほとんど寝ていないので、頭がぼんやりする。期待しているわけでは

ないが、今夜もまた電話がくるのではないかと思うと美歌は

落ちつかなかった。

 6時すぎ、やっぱりベルが鳴って、すぐ受話器を取った。

「榛名美歌さんですか?」

 昨日の運転手とは違う若い男の声だった。

「そうですけど、どなたでしよう?」

「ええと、あんた学生さんね、学生証を落しませんでした?」

「あ、拾って下さったんですか」

「今、近くにいるんだけど、持って行ってあげようか?」

「待って…」

 美歌は咄嗟に言った。

「悪いから…、私が貰いに行きます」

「どっちでも良いけどさ」

「近くって、どこなんですか?」

「すぐ下の公衆電話だよ。じゃあ待っているから、早く出てこいよ」

 小さく笑う声が聞こえて、電話が切れた。

 普段着のセーターにいつものGパンを穿いて、急いで外に出てみると、

白のハイエースが停まっていた。運転席から手招きされて近寄ると、

もう一人、電話ボックスから別の男が出てきて、

どうぞ…、と助手席のドアを開けた。そのまま中に押し込まれ、美歌は

二人の男に挟まれて動けなくなった。

「済みません。学生証、わざわざ有り難うございました」

 いったいどういう連中なのか、怖くて震えそうだが、何とか持ちこたえて

美歌は頭を下げた。

「あんた、本人なの?」

「そうです」

「可愛いね、女子大生って、やっぱ、違うんだね」

 そのとき、車の外から声が聞こえて、後ろのシートにまた一人男が

入ってきた。両手に缶ビールのケースを抱えている。美歌を見ると、

ひょうきんな声を上げた。

「あれ、もう来てるの? ちょっと顔見せてよ。うわぁ、最高じゃん」

「うるせぇな、黙って座れ」

 それまで気が付かなかったが、後部座席にもう一人いた。合計四人…。

「ドライブでもしましようよね、せっかくのご縁だからさ」

「でも私、何にも支度してませんから」

「良いじゃないっすか、そのほうが面倒なくて…。学生証はちゃんと返しますよ」

「行くぜ…!」

 運転席の男が、嫌応なしにエンジンをかけた。

「あ、ちょっと…!」

「いいからいいから、帰りはちゃんと送ってやるよ」

 美歌は、もう観念していた。

 どこをどう走ったのか、車は中央高速に乗って、スピードは100キロを

超えている。

 暫くして、後ろの男が声をかけた。

「女をこっちによこせ」

「はいよ。ちょっと君、いい子だから少しのあいだ辛抱してね」

 缶ビールの男がシートを倒し、前の席から美歌を引きずり出した。

「ほら、騒ぐんじゃねぇよ」

 タタミ一畳半ほどの空間で、羽がい絞めにされ、Gパンを毟り取られた。

下半身、あのクルリと丸い尻と柔らかい太股が剥きだしになった。

「いくぜ…」

 男が美歌の片脚を肩にかついで、股を一杯に拡げた。

「あうっ…」

 まだ、ほとんど濡れていないところに挿入されて、思わずのけぞった。

乾いた肉が内部に喰い込んで、強烈な刺激があった。車輪の振動が

ゴツゴツと背中に痛い。下腹部がぶつかる度に、美歌は荒い息を吐いた。

「たまんねぇぜ、この女」

「そんなに良いかい?」

「締まってる、そのうちグチャグチャになるって、へっへっへ」

「どらよ。俺にもやらせてくれ」

 助手席の男が、シートを乗り越えて移ってきた。

「何だ、まだこんなもの着てんの?」

 セーターを手荒く脱がせ、乳房を鷲掴みにする。

「良いオッパイしてるじゃん…」

 自分の股間に美歌の頭を乗せて、ズボンのジッパーを下げた。

「おら、しゃぶってみな」

 乳房を掴んだ手で、力まかせに引き寄せられ、唇が生暖かい

肉の塊りに触れた。無意識に口をひらく。

「グフッ、オェッ…」

「やった。この女、相当に好きだぜ」

 缶ビールを飲みながら見ていた男が、またひょうきんな声を上げた。

「女も気分出してんのか?」

 運転している男が、ハンドルを握ったまま言った。

「イカすのは良いけどよ、中に出すなよな。あとでやる奴が汚ねぇからよ」

 急に男が腰を捻り、ガシガシと骨が擦り合わされるような感じがして、

太くなったのが一番奥を突いた。

「退け、そっちまで飛んでも知らねぇぞ!」

「ぐっ、ぐうっ…!」

 その途端、一気に引き抜かれて、美歌は脚の関節が外れそうになった。

「わぁ、汚ねぇ!」

「バカ、どけって言ったろう。何か拭くものねぇのかよ」

「これで良いよ、こいつで拭いてやれ」

 缶ビールの男がパンティを拾って、美歌の脇腹から臍のあたりを

乱暴にこすり廻した。

「顔も拭いてやれよ。涎を垂らしやがって、ズボンがベチャベチャだぜ」

「よしよし、選手交代だからな、きれいにしてやろう」

 べったりと、頬に髪が貼りついているのをパンティでぬぐって、

男は飲みかけの缶ビールを美歌の口に当てた。

「飲みなよ、一息いれさせてやるぜ」

 乾ききった咽喉を、ビールが滲みわたるように通り過ぎて行く。

「ありがとう…」

「どうだ、気持ち良かったかい?」

 美歌は、微かにうなずいた。

「おい、気持ち良かったってよ」

「そうかい。玩具になって嬉しいか?」

 また、小さくうなずく。

 本当は、快感など全然なかった。気持ちが良いというだけなら、テレクラで

見つけた男たちとセックスしたほうがよほど感じる。それなのに、使い捨ての

道具のように扱われていると、全身が酔い痴れるのだった。まるで麻薬に

痺れたようになってしまう。クリトリスだけの快感など問題ではなかった。

美歌にとってこの感覚は、クリトリスより数倍上の快楽だったのである。

「フフフ…。お前、相当なマゾだな」

「マゾ…?」

 美歌は、怪訝な顔で、男たちの顔を見上げた。

「わたし、マゾですか…?」

 美歌は、呟くように言った。

「そうさ。インランで、どっちみち男の玩具にしかなれねぇけどよ」

「………」

「ま、人間以下だってことが解ればいいさ。これ以上の幸せはねぇだろうよ」

 缶ビールを飲ませながら、男は手を伸ばすと乳首を摘んで

プルンプルンと揺すった。

「ようし、もういっちょ、気持ち良くさせてやっからな」

 空き缶を窓から外に捨てて、男は素っ裸になった。パンティでゴシゴシと

拭かれたあとなので、入れるとき、ひだが巻き込まれて千切れそうに痛かった。

 床に這わされ、尻を上げていると、強く突かれる度に身体が前のめりになって、

あちこちに頭をぶつけた。

「やって、強くして…!」

「この野郎、催促してやがる。よほどスキだぜ」

 男は容赦なく、五分ほど抜き差ししてから背中一面に精液を噴射して終わった。

 イクとすぐ別の男が前に回って美歌を膝の上に乗せた。眼の前に

ふくらみを拡げて、卑猥な冗談を言いながらクリトリスを弄り、乳首を

グニグニと揉む。この男が一番しつこかった。先刻からの挿入で傷ついたのか、

指で掻き回されると、まるで火傷の痕を擦られているようで、痛いというよりは

ジンジンと熱い。





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