嫉妬はたちまち激しい快感に変わって、新しい性欲が噴き上げてくる。
美帆は男にしがみついて夢中で腰を振った。
「てめえ、こんなもの見て嬉しいのか?」
「チッ違う、あなたが好きだから…」
「甘ったれんじゃねえ!」
平手で、思いきり頬を張られた。
「わッ」
宗彦が無情に男根を抜いた。
「いやァッ。やめないでェッ」
それを追って、美帆は、芋虫のように身をよじった。
画面では、ケン坊が仰向きになって宗彦の尻の穴を舐めながら、自分で
親指ほどの軟らかいものをしごいていた。
「ねえッ、イッても良い?」
「キン玉もねえくせに、そんなんでいけるのかよ」
「いじわるッ。これは私のクリちゃんよッ」
やがて、先端から薄い葛湯のような液体がトロトロと細い糸を引いて流れ出した。
「汚ねえ、自分で舐めてしまえ」
ケン坊が、敷布に落ちた自分の液体を這いつくばって舐めている。
美帆は異様なビデオと現実との区別がつかなかった。
火照った穴のまわりをさぐると、淫汁が割れ目を伝って尻のほうまで
滴っていた。粘液がからみついた指先を、美帆はためらわずに口に入れた。
抜かれたあとが、まだ疼いている。汚れた指をくわえたまま放心状態に
なっていると、突然、画面から別の声が聞こえた。
「ねえちょっと、もう良いでしよう。はやく代わってよ!」
エッ…?
「イヤ気持ちが悪いッ。女のくせにザーメン出すなんて…、最低ネ」
画面が激しく揺れて、カメラが壁のほうを向いた。
「あら、あんただって、おツユをいっぱい出すじゃない」
「バーカ、私は天然の女だもん濡れるのは当り前でしョ。はやく交代して!」
声だけが勝手に録音されて、キャハハ…、と笑った。
美帆ははじめて、このビデオがどうやって撮影されていたのか
理解することができた。
機械はひとりでは動かない。その奥にもう一人カメラを持った女がいたのである。
三、罠の真相
再び激しく画面が揺れて、カメラは、いま美帆が抱かれているベッドそのものを
写し出していた。
これまでは、こちら側から見た位置で撮影されていたので、それほど
違和感はなかったのだが、今度はビデオと現実が同時進行している
かたちになった。
同じベッドの上で、全裸の女が脚を拡げてこちらを向いている。巨乳だが
少し垂れ下がった乳房、全体にタップリと脂肪がついて、太腿のボリュームは
美帆よりふたまわりも肉厚だった。
膝を立て、女は羞かしげもなく股を正面に向けた。
「ハイ、おまんこのVサイン…」
両手で陰毛を掴むと、思い切りよくパッと左右に拡げる。生鮭の切り身のような
臓物をさらして、女はキャハハッと卑猥な笑い声をあげた。
会社で仕事をしている姿からは想像もできない。忘年会の晩、美帆をあの店に
誘った先輩OLの日出子である。
「面白えか…?」
ぼう然と、美帆は夢を見ているような気持ちだった。
「まあ、遊びはこれからだ…」
身体を起こすと、宗彦は美帆の左脚をかつぐように自分の肩に乗せた。
「うぅ…、むッ」
熱い肉塊が、幾層にも重なったヒダを圧し分けてメリ込んでくる。のけ反った胸に、
激しく鞭の音が鳴った。
「痛ゥッ」
爪先が痙攣して宙におどる。
鞭を使いながら、宗彦は容赦なく下半身をクリトリスに叩きつけた。
その度にプルプルと乳房が弾む。
「ア、快い…ッ」
はらわたを掻きまわされるような衝撃が何回もきた。
「い、いく…ゥ」
「顔を見せろ!」
宗彦が髪の毛を掴んで顔をねじる。頭の中を、再び白い竜巻が
通り過ぎていった。
「も、もっと、虐めてくださいッ」
両手が何かに掴まろうとして泳いでいる。
「立てッ」 膝立ちにして、鼻先に濡れた肉塊を突きつけられると、
美帆はもたれ掛かるようにそれをくわえた。そうしていなければ身体が
ベッドに崩れてしまうのである。
「このままでオナニーしろ!」
前のめりになって、反射的に手首を陰毛の間に埋める。
「歯を立てるんじゃねえぞ」
釣竿の先端のように、よくしなう鞭の先がヒュッと風を切った。
「ひぇぇぇ…」
みるみるうちに、背中から右の尻タブにかけて薄赤い線が浮かび上がる。
「しっかりやれよ。続けて3回イッてみろ」
「いきますッ。ま、待って…」
指を2本、穴の奥に突っ込んでザラザラした天井をえぐる。その動きで
全身が尺取り虫のように波をうった。
「くッ、くゥ…ッ」
「1回…」
宗彦が、冷酷に数をかぞえた。
「どうだ。お前がこうやってイクところを、妹にも見せてやろうか」
「いやぁッ、カンニンして…」
「本当はお前だって、妹が犯られるところを見てえんだろ…?」
ヒュッ、ピシッ…。
「変態のくせに、正直に言ってみろ!」
「み、見たいッ。ヒィ…ッ」
美帆は、ガクンと首の力を抜いた。
「イ、イクゥ…ッ」
「よし、2回目だ」
とうとうその姿勢に耐えられなくなって、美帆は顔を斜めにして、ズルズルと
崩れ落ちてしまった。
「どうした、まだ一回残ってるぜ」
「す、すいません。もう一度やります」
口もとに涎が糸を引いている。腰が抜けたようになって、美帆は焦点のない
視線で男を見上げた。
「罰だ、今度はちゃんと立ってやれ」
ヨロヨロと立ち上がったがベッドが不安定でともすればよろけそうになる。
乳房のまわりから腹にかけて、血の滲んだミミズ腫れが縦横に走っていた。
「おまんこを拡げてみろ!」
「こ、こうですか…」
踏ん張った膝を曲げ、少し腰を落として、美帆は自分で割れ目をひらいた。
先刻のビデオで、日出子がやったVサインである。だがこちらのほうが、
はるかに残酷なポーズだった。
割れ目の中央に表皮のムケたピンクの粒が露出している。身体は細くて
まだ少女の面影を残しているが、美帆のクリトリスは意外に大きかった。
先刻からの手荒らな挿入とオナニーの連続で、粘膜が爛れたように
赤くなっている。
「オ、オナニーやっても良いですか…?」
「よし、イクまでちゃんとやれよ」
指がクリトリスをこすりはじめた。
快感が昇ってくると、今にも倒れそうに腰がガクガクと前後に揺れる。
「ぶって…」
とつぜん美帆が訴えるように切羽詰まった顔をあげた。
「イ、イキそう…、なんですッ。力いっぱいぶってェッ」
宗彦の鞭が、下腹部の毛の生え際を2度、尻の丸みを1度、激しく打った。
「ああッ、ああぅッ…」
「よし、イケッ」
乳首を一直線に結んで、乳房を裂くような一撃…。
「ギャァッ、い、いくゥ…ッ」
背骨を反らしたとたん、身体を支える力を失って、美帆はつんのめるように
ベッドから転落した。
失神したように動かなくなった美帆の頭の上で、ビデオの日出子が、
こちらも絶頂に近づいたらしい嬌声を撒き散らしている。
「ダッ駄目ェ。いくよゥ、いっちゃうゥ…」
淫らな女のさえずりが、美帆には子守歌のように聞こえた。
眼を開いたのは、それからどのくらい経ってからだったろうか。
ハッとして身を起こすと、宗彦はベッドに仰向けになってタバコを吸っていた。
「そんなところで寝てると、風邪をひくぜ」
宗彦が、他人ごとのように言った。 汗に濡れた身体が冷えきって、
つめたくなっている。
「ここに来て、触ってろ」
ベッドに這いあがると、まだ射精していない肉塊は十分な太さを
保ってはいたが、さすがに硬直しているわけではなかった。握ると
独特の弾力があって、美帆はふと、この感触に憧れるケン坊の気持が
わかるような気がした。
気がつくとビデオがまだ写っている。画面は相変わらず同じベッドを
写し出しているのだが、角度が違っていた。
あるいは、別の日に撮影したのかも知れない。カメラを固定して
テープだけがまわっているといった感じである。
ビデオの宗彦は、寝そべって日出子に男根をしゃぶらせていた。
太った身体を窮屈そうに曲げて、日出子が尻をこちらに突き出している。
濃い陰毛が、内股から後ろにハミ出していた。
「それじゃ忘年会のあとで、その女を連れてくるんだな?」
宗彦が、女の乳首を指先ではじきながら言った。
「まさか、お前みたいなデブじゃねえだろうな」
「違うってば…」
尻を向けたまま、日出子が言った。
「可愛い子よ。まだスレていないし…」
それから顔をあげて、ズルそうに男の反応をうかがう。
「私のタイプじゃないけど、スゴク好きそうな感じ…。きっと犯ってみたくなるわ」
「実物を見てからだ。気にいったら仕込んでみるさ」
「ぜったい気にいるわよ。その代わり、私も可愛がって…。お願いよゥ」
日出子は精一杯の媚びを見せて言った。
「気づかれるとヤバいから、その日は友達と三人で行く。
そのほうが良いでしょ?」
美帆は、背筋から血が引いていくような気がした。
あの二次会は、はじめから日出子が仕組んだ罠だったのだ…。
震えながら、美帆はまばたきもせずビデオの画面を見詰めていた。
「あの女に感謝しろ」
乳首をピンとはじいて、宗彦が笑った。
「お前が俺に会えたのは、あいつのお陰なんだぜ」
「私のこと、気に入ってくれたんですか?」
美帆は、ウワごとのように言った。
「さァそいつは、これからのお前次第だな」
「わ、私、離れたくない…」
何故か落し穴にハマった悔しさは少しもなかった。画面では、日出子が
狂ったように宗彦のアナルを舐めまわしている。
衝動的に宗彦の腹に跨がると、美帆は再び硬直した男根を握って
自分の穴に当てた。
「やってッ、もっとインランにして…」
ビデオと現実と、二人の宗彦が、それぞれタイプの違った女に
奉仕させている。それは何とも奇妙な淫楽の構図だった。
四、魅せられて
その夜、美帆はとうとう自分の部屋に帰ることが出来なかった。
一晩中、精を吸い尽くされてしまった感じである。
外泊は、これが二度目だった。
最初はあの忘年会の夜から一週間目の金曜日である。
アブないよ…、と言われたことを忘れたわけではないが、美帆は、
宗彦のことが頭から離れなかった。一目惚れとはちがう。もっとナマナマしい
性の衝動である。
どうしても、もう一度逢いたい…。
何回も思い迷ったあげく、思い切って一人で地下の店に行く
ビルの階段を降りた。もちろん先輩にも内緒である。
「御指名は…?」
フロントのボーイに聞かれて、心臓が早鍾を打った。
「あのゥ、宗彦さん…、とおっしゃる方がいらっしゃったら…」
フロントが店内マイクで呼び出しをかける。運よくと言うか、宗彦は出勤していた。
「来ると思っていたよ」
美帆を見ると、宗彦は無表情に言った。
「惚れるのは勝手だが、俺とつきあうとお前の人生変わるぜ」
「か、変わっても良いわ。そのほうが、私に合ってるみたい」
どうなっても良い…、美帆はすがりつくような気持ちで言った。
その夜、店でジン・トニックを三杯飲まされ、麻痺した身体をマンションに
連れ込まれて徹底的に犯られた。
はじめ怖さが先に立って、脱がされるのをためらったのだが、いきなり
殴られて部屋中を引きずりまわされた。
「ユ、許して…、脱ぎますッ」
「覚悟してきたんじゃなかったのか。いい加減に酔いをさませ!」
バスルームに連れて行かれて、頭から冷水を浴びる。
「口をあけろ」 ガタガタと震えいるのを、濡れたタイルに正座させられて、
頭からジョボジョボと熱い小便が降ってきた。
「ゲェッ、ゲフッ…」
咽喉の奥に、微かにアルコールの匂いがする濃い液体が流れ込み、
美帆は必死でそれを嚥み下そうとした。
「いいか、言う事きかねえと裸のまま追い出すぞ」
「聞くからッ、こ、ここに置いて…」
もう一度頭から水をぶっかけられて、ベッドに突き倒された。
「おまんこ持ってるんなら、自分で広げて見せろ」
「ハッ、ハイッ」
オナニーさせられて、イキかたが悪いと言ってクリトリスがねじ切れるほど
踏みつけられた。少しでもためらうと手心を加えない激しい鞭が飛んでくる。
それでも、身体のどこかで不思議な声がもっともっとと叫ぶのである。
何回いかされたのかも覚えていない。解放されたのは翌日の夕方、
宗彦が店に出る直前であった。
よろめくような足どりで部屋に戻ると、聖子がひとりでパンを食べていた。
振り返ったが白い眼で口をきこうともしない。後ろをスリ抜けるように
自分の部屋に入って、美帆はホッと溜め息をついた。
身体中がダルい。淫液がまだジトジトと滲み出してブルーのパンティを
濡らしていた。着かえようとして鏡を見ると、背中から尻の凹みにかけて、
赤から紫色に変色した鞭の痕が何本も交差していた。乳房と首筋に
噛みつかれたようなキスマークが無残な痣になっている。
前の晩ほとんど寝ていなかったのに、夜になるとまた性欲が疼きはじめた。
あの人から離れたくない…。
なぜか宗彦から虐待されればされるほど、反対に気持がつのるのである。
それは、美帆の肉体が持って生まれた被虐への願望であった。
そして今日、美帆は午前中ベッドにもぐって、断続的にオナニーしていた。
「お姉ちゃん、電話だよ」
聖子に呼ばれて、受話器を取る。
「お前、生理は何時からだ?」
いきなり、宗彦の声であった。
「えッ、イエまだ…」
「よしそれじゃ、いまからこっちに来い」
「あッ、あの…」
一方的に電話が切れた。
「何よ、また出かけるの?」
「ちょっとね。今夜、また遅くなるかもしれないけど…」
「好きねえ」
聖子が、皮肉たっぷりに言った。
だが何と言われようと、気持ちはもう外を向いていた。
妹の冷たい視線を振り切って家を出る。
ようやく目的のマンションにたどりついたとき、美帆の気持ちは
もう一匹のメス犬になっていた。