淫楽の青い鳥(1)


最 初 の 痴弄







    一、青い鳥

 昭和20年代の後半、世の中がようやく戦後の混乱から立ち直りかけて

いたころの話である。

 当時、私はまだ高校生だったが、学園生活は現在とは比べものにならない。

世間には自由と民主主義の嵐が吹き荒れ、教師の権威が完全に地に墜ちて

いた時代だった。

 いわば、戦後の第一期生である。

 そこには、受験勉強に追われる最近の学生には思いもつかない野放図な

青春があった。

 ようやく実現したばかりの男女共学で、新しく入ってきた女生徒やめぼしい

下級生を集めて演劇部をつくり、県の演劇コンクールで優勝したりして、

肩で風を切って歩いていたのもこの頃である。

 校舎は旧軍隊の兵舎跡で、それだけに広くてガッチリとできていたが、

教師の指導など関係なく、授業に出るよりも勝手に占領した演劇部の部室で

とぐろを巻いていることの方が多かった。

 こうなると、教師はもう手も足も出ない。タバコを吸おうが女を引き込もうが、

見て見ぬふりというのが実情である。第一、演劇に知識や素養のある

先生など一人もいなかったのだから仕方がない。

 私にとってマゾの第一号となった女もこの部屋で犯したものだ。

青島好子という、まだ毛も生え揃っていない少女だった。

「なぁ良いだろう、ちょっと連れてこいよ」

「でもねぇ、あいつにできますかね」

「できるさ。俺が教えてやるから、本人が聞いたらきっと喜ぶんじゃねぇか?」

「そりゃそうだけど…」

 好子はこの男の妹である。私より一年後輩で、アダ名をねずみといった。

「その代わり、今度はお前に演出助手をやらしてやるぜ」

「分かりました、話してみます」

 演劇部の公演で、メーテルリンクの「青い鳥」をやろうという話である。

主役はもちろんチルチルとミチル、そのミチル役にねずみの妹を連れて

こいというのだ。今思えば無茶苦茶な企画なのだが、当時の学生演劇は

だいたいこんなものであった。

「でもヤチは蹴らないでくださいよ。まだ可哀そうだから」

 ヤチを蹴ると言うのは、当時の学生の隠語で強姦のことだ。ねずみとは

2・3度一緒に女学生を犯したことがある。いくらなんでも妹を姦るのだけは

まずいですから、とねずみは言った。

「分かってるよ。なんにもしないから安心しろ」

 そのとき好子は中学二年生、ようやく15才になったばかりだった。オカッパの

髪に自然のウェーヴがかかって、眼がパッチリと大きい。小柄だが

乳房の膨らみもはっきりと分かった。こちらが若かったせいもあるが、

近ごろのコギャルと違って、こましゃくれたところがなく、香ばしい処女の

色気さえ感じる。外見だけ見れば、ミチルの役をやっても決しておかしくはない

美少女であった。

 どうやって話をつけたのか、ねずみが好子を連れてきたのはそれから

三日ほど後のことである。
  


  二、最初の痴弄


 放課後、あたりはもう薄暗くなっていた。中学生なので、初めて上の学校に

入ってきた好子はそれだけでひどく緊張していた。

「おいねずみ、モク買ってこいよ」

 ひととうりの説明がすむと、さりげなくねずみを外に追い出す。残ったのは、

膝小僧が見えるスカートに通学カバンを抱えた少女と二人きりである。

「それじゃ、一日おきにこの部室で練習をするんだが良いな?」

「でもあの、先生に言ってからでないと…」

「先公には黙ってろ。いちいち相談することはねぇ」

「はい」

「これからはミチルって呼ぶぜ。役になりきる為だからな」

「はい」

「演劇の稽古は厳しいんだ。これからは俺の言うことを聞けよ」

 固くなってうつむいたままうなずく。ごつい兵舎の部室の中に、思春期の女の

体臭が微かに漂っていた。

「俺の前では恥ずかしがるんじゃねぇぞ。どんなことでも言われたとうりにしろ」

「えぇ…」

 好子は急に不安そうな眼をした。言うとうりにしろと言われても、何をどうしたら

良いのか見当もつかない。

 こんな子供が果たして芝居ができるのかどうか分からないが、そんなことは

私にはどうでも良かった。

「ちょっと、立ち上がってこっちを向いてみな」

 何の気なしにこちらを向いたところを、いきなり腕を掴んで引き寄せると、

スカートの中に手首を入れた。

「ひぃッ」

 好子は短く息を引いたが、とっさに抵抗することができなくて、そのまま

棒を呑んだように立ちすくんでしまった。演技も何も知らない未熟な少女の

反応である。

「いいか、こういうこともあるんだからな」

 掌に触れた太股はまだ固くて、女に特有の温かい柔らかみがなかった。

構わず指をパンティの中に入れると、盛り上がった肉にへばりついたような

感じで、細い陰毛の感触があった。

「こうやると気分が出て、芝居が上手くなるんだ。演技の練習だから怖くねぇよ」

 ずいぶん勝手な理屈だが、その程度の能書きでも奇妙に説得力があった。

恥ずかしさと恐怖で身動きできないのを幸い、両足の合せめをこじあけるように

指を入れると、好子はよろめきながら無意識に踵を浮かした。

「い、い、いや…」

 ワレメは浅い溝で、それほど濡れていたというわけではないが、

小便の残り滓のようなヌメリがあって、指の動きは楽であった。だがその奥の

どこに穴があるのか、いくら探ってみても良く分からなかった。

 ちぇっ…、

 そのとき、廊下を急ぎ足で戻ってくるねずみの足音が聞こえた。



    三、未熟な恋


 こうして「青い鳥」の練習が始まったのだが、最近の学生演劇に比べたら

内容はお粗末なものであった。もともと演劇部とは名ばかりの女を手に入れる

ための手段なのである。

 あの日、ねずみが戻ってきたとき、私はスカートから腕を抜いて知らん顔を

していたのだが、好子が何も言わなかったのは意外だった。恥ずかしくて

言えなかったのか、あとで酷いめにあわされるのが怖かったのか、

好子はうつむいたまま黙っていた。

 それからというもの、私は練習に名前を借りて、好子を苛めることに

異様な快感を味わうようになった。まだ熟していない少女の肉体は、

青春真っ盛りの旺盛な性欲の対象としてまたとないご馳走である。

「へたくそっ、もう一回やってみろ」

「ひぇッ、ごめんなさい」

「もっと真剣に、思い切って俺に抱きついてみろ」

 『思い出の国』で死んだお爺さんに再会したミチルが、懐かしがって

しがみつくシーンである。好子は一生懸命にやろうとするのだが

なかなか上手くゆかない。

「仕様がねぇ、ミチルだけ残れ。あとは解散だ」

 後輩の部員たちの前では、さすがにそれ以上できなかった。

あとは二人になって、存分に楽しめば良い。

 練習は放課後なので、兵舎の外はもう薄暗くなっていた。それから

二・三回演技をさせてみたが、椅子に腰を下ろしてタバコを

ふかしながらそれを見つめているのも不思議な優越感があった。

「お前、身体が固いんだよ。柔らかくしてやるからこっちへ来い」

 私は容赦なく少女の肩に手をかけた。

「そこに寝ろ。もっと女らしくしてやる」

「ど、どこに…?」

 部屋の隅に、旧軍隊が使っていた頑丈な長テーブルがあった。

「いいから、その上に乗っておまんこ出してみろ」

「うえぇ」

 好子は本能的に後退りしたが、ほとんど抵抗する気配はなかった。

テーブルに押し倒すと、ベッドというよりマナ板である。

紺色のヒダの多いスカートを捲ると、まるまるとした小麦色の太股が

ムキ出しになった。

「いやァ、ユ、許して…」

「正直に言ってみな。お前、本当は俺が好きなんだろ?」

 ギョッとして、好子は眼を大きく見開いたままこちらを見つめた。

それは無意識に心の中にあった気持ちで、自分でもまだ気がついて

いなかったのである。少女の初恋とは、案外そんなものなのかも

知れない。

「好きなら好きと言えば良いんだ。可愛がってやるからよ」

 強引にパンティを下ろすと、あのとき触った陰毛がホヤホヤとした

感じでくっきりとした縦の線を覆っていた。

「好きなら俺の女になれ。えぇっ、なるのかならないのか」

「す、好き…」

 声が震えていた。マナ板のような長テーブルの上で、私は

跳ね返りそうに硬直した男根を好子の陰毛に当てた。




<つづく><もどる>