淫楽の青い鳥(2)


処女破りの体験




    一、処女破りの体験

 年上の女との経験は何回かあったが、当時私は高校三年で18才、

ミチルこと青島好子は中学二年生であった。今どきのコギャルマゴギャルと

違って、そのころの15才と言えばまだ子供である。

 私自身、偉そうなことを言っても、女をリードして快感を与えられるほど

セックスに馴れているわけではなかった。こみ上げてくるのは、ただ若さに

まかせた動物的な性の衝動である。

 体重をそのまま少女の身体に乗せて、私は何の手加減もせず、いきなり

下腹に力を入れた。

「……!」

 好子は異様なうめき声を上げたが、ほとんど言葉にならなかった。

息を詰めたまま、ヒクヒクと全身の筋肉が震わせている。

「どうした、気持ち良いんじゃねぇのか」

「クッ、ク、クゥゥ…ッ」

 ニチャニチャと濡れて、押し込めば何の抵抗もなく結合してしまう女しか

知らなかった私は、好子の反応が意外だった。それまでに経験した女たちと

違って、下半身の感覚が滑らかにいかないのである。

力を入れれば入れるほど、何かに挟まれているような感じで前に進む

ことができない。

 身体を起こして股間を覗いてみると、肉の間にメリ込むようになって

いるのだが、濡れていないせいか、まわりの柔らかいところを一緒に

巻き込むような形になって、これではうまく挿入できる筈はなかった。

「何だ、処女膜か…」

 今思えば幼稚なものだが、その時はそうとしか浮かばなかった。

 ようやく大人になりかけている少女が処女であることは当り前だが、

こちらも若かったし、それほどの感動もなかった。

「待ってろ、入りやすいようにしてやる」

 ここまで来て失敗ったら先輩として格好がつかないという奇妙な

見栄もあった。指先に唾を落としてコテコテと亀頭に塗ると、私は好子の足を

思い切り左右に拡ろげた。

「動くんじゃねぇぞ、処女の穴はわかりにくいからな」

 指で肉ベラを開けてみると、ツルリとした粘膜の真ん中に深い凹みがあった。

 クリトリスの隆起が小さくて、周囲を薄い陰毛が覆っている。薄いというより、

まだ生え揃っていないのである。恐怖と羞恥で好子は完全に抵抗する

意思を失っているようであった。

「ようし、ちょっと我慢してろ」

 まだ大人になりきっていない、細くて丸い太股を抱えて、私は真ん中の

凹みを狙ってぐいと腰を入れた。

「ぎぇぇ…」

 低いが、魂を切り裂くような声であった。

「うぐぅッ、い、い、痛ゥゥ…」

「もうちょっとだ。見ろ、ちゃんと入っていくじゃねぇか」

 確かに、重なり合った肉の隙間を圧し分けるような感じで、根元近くまで

没しているらしい感触が伝わってきた。



    二、ピンクのズロース


 好子が、ほとんど抵抗らしい抵抗を示さなかったことは不思議である。

おそらく激痛といって良かったのだろうが、歯ぐきをむき出して耐えながら、

好子は必死に肩にしがみついていた。

 だが時間にすれば、5分とはかからなかったろうと思う。たちまち脳天に

悪寒のような神経の爆発が起こって、私はあっけなく射精してしまった。

その瞬間、抱えていた太股がブルブルと痙攣したのが唯一の反応である。

 もちろん快感などある筈もなかった。終ったあと、好子はまるで

死体のように固い長机の上で動かなくなっていた。

「おい、眼を開けろ」

 薄目を開けたが、まだ正気に戻っていないようだ。好子はぼんやりと

焦点を失った視線をこちらに向けた。

「お前、ハンカチを持っていねぇのかよ」

 内部が蠕動するのか、赤く腫れ上がったような肉唇の間から一定の

時間を置いてドロッとした淫液が溢れ出す。それが割れ目を伝わって、

紺色のスカートの上に啖を吐いたように溜まっていた。

「仕様がねぇな、汚しやがって…」

 脱がせたズロースで撫で上げるように拭いてやると、その刺激で

目が覚めたのか、好子があわてて起き上がろうとした。

「ご、ごめん…」

「見ろよ、やっぱり血が出てるぜ」

「いや私、知らなかった」

 精液で薄められたピンク色の血が染みついているズロースを

鼻先に突き付けると、自分が悪いことでもしたように怯えた眼で

こちらを見上げる。その視線には、理不尽に犯されたことを恨む色は

微塵もなかった。あるいは好子が生まれながらに持っていた

被虐願望への芽生えだったのかも知れない。だが二人とも、

まだそんなことを自覚できるような年令ではなかった。

「汚ッたねぇな。濡れてるから持って帰れ」

「だいじょぶ、自分で洗うから…」

 ようやく起き上がって長机から降りると、好子は両足を揃えて

まともに立っていることが出来ないようであった。初めて男を受け入れたあと、

女は股の関節には何か特別な変化が起こるのかもしれない。

 立っていられないので、好子は部室の壁に寄り掛かって、

ようやくのことでベトベトに汚れたままのズロースを穿いた。

「早くしろ。先公に見つかるとヤバいぜ」

「う、うん」

 ゴツい木の扉を開けると、演劇部の部室の隣りにはウォッチという

アダ名の英語教師が仮住いしていたが、ひっそりとして物音もなかった。

如何にも旧兵舎の跡らしく、頑丈に作られているが、夜になると

戦死した兵士のお化けでも出てきそうな雰囲気である。

 一緒に外に出たが、足どりはやはりおぼつかなかった。ガニ股で、

ときどき危うくよろけそうになる。

「どうしたんだよ。それくらいのことで、もっとしっかりしろ」

「ごめんなさい。もう歩けるから…」

 好子は少女とは思えない淫らな微笑を浮かべながら言った。

「何だかヘンなのよ。いつまでも挟まってるみたいで…」



    三、しごかれる日々


 強姦同様に処女を失ったことは、好子にとって一生忘れることの

出来ない衝撃であったに違いない。だがその反面、好子が示した態度は

ほかの少女にくらべて変わっていたことも確かである。

 ほとんど拒絶反応がないので、私はそれから後も練習にかこつけては

演劇部の部室に残して何回となく好子を犯した。

 自由になる女が出来ると、いくら射精しても、すぐに立ち直って

またヤリたくなる年令である。その度に、好子は首に縄を繋がれた

子犬のように私の要求に応じた。

 セックスの快感もまだ理解していない。オナニーさえやったことがない

少女なのだが、どんな苦痛でも嫌だと言わなかったし、終ったあと

恥ずかしそうな微笑を浮かべて、あれ以来いつも持ってくるようになった

ハンカチでワレメを拭いた。

 恋人というより、血気盛んな若者の生理的な排泄用の女といった

関係である。それでも好子は文句ひとつ言うわけでもなかった。

 演劇部の公演の日も次第に近づいてくる。県内の高校が八校ほど

参加して、一年に一度行われる演劇コンクールである。『青い鳥』の稽古にも

けっこう熱が入っていた。

「駄目だ。ミチル、もう一度やり直し!」

「ハイ」

 舞台の袖から駆け出してきて、中央で力尽きたように倒れる。

手に持った鳥籠を高く掲げて見えない青い鳥を追うような仕草をするところが、

どうしても上手く出来ない。と言うより、スタッフが見ている前で厳しく

稽古を付けるのが、いじめに似た一種の快感であった。

「下手クソ、そんなんじゃお客は感動しねぇよ。お前主役なんだぜ。

わかってんのか」

「す、すいません」

「今日も特訓だな。よし、それじゃミチルの他は全員解散…!」

 何回も同じことをやったので、膝小僧がスリ剥けて血が滲んでいる。

部室の床にへたりこんで、好子は肩で息をしていた。

 演出助手のネズミが可哀想な顔をしたが、特訓をやめて良いという

権利はなかった。

 もともと好子を連れてきたのは兄のネズミである。私より一年後輩で

気の弱い男だったが、学生演劇の魅力にとりつかれて授業より部活のほうが

楽しくて仕方がない。演出助手になったことが嬉しくて、私の言うことなら

何でも聞いた。

 当時の高校生は先輩と後輩の区別が厳しかったし、まして私は

初代部長である。コンクールに優勝するためには、運動部そこのけの

しごきのような稽古も平気でやった。

 妹の好子が私に犯されていることはウスウス感ずいていたのだろうが、

見て見ぬふりをする他になかったのである。

 簡単な打合せを済ませて部員たちが帰ってしまうと、私は当然のように

好子のセーラー服の襟首を掴んだ。

「稽古はもういいから、こっちへ来い。早くズロースを脱げよ」

「あぁッ、は、はい…」 

突き飛ばされるように、好子は硬い木の長机の上に両手を突いた。


<つづく> <もどる>