セックスを貢いだ女(3

処女のあとさき




    一、処女のあとさき

 変態…と言われても、淳子にはピンとこなかったようだ。

「どっちみち、あんたの女だから…」

 裸のまま膝に縋るようなポーズで、淳子は初めから観念したような

顔をしていた。

「あんたの好きなようにして…」

 処女を奪われ、三日も待ちぼうけを食わされたあげく、路上で

嬲りものにされても離れようとしない。これも一種の変態であることには

違いなかった。

「お前、そんなに虐められるのが好きか」

「いや、怖い」

「怖かったら何故ついてくるんだよ」

「だって、捨てられたくないもん」

 本人は真剣なのだが、答えは支離滅裂である。惚れているというより、

身体がついてきてしまうのであろう。

「おまんこ、見せてみろ」

「アッ、いや…」

 薄暗い電灯の下で、素肌をタタミに転がして強引に股を広げる。

それほど濡れていると言うのではないが、温泉マークで見たときとは

明らかに様子が違っていた。

「へぇお前、女になってるじゃねぇか」

「ほ、ほんと…?」

「かたちも変わってるぜ。もう痛くないだろう?」

 両側の肉唇をひらくと、ポッカリと暗い穴が開いている。あの時は

ただのっぺりとした凹みだったが、クリトリスをつつくとアワビが縮むように

ギュッと穴が締まった。

 べつに傷が残っているわけでもなかった。私も処女の性器を

使用前・使用後にわたって直視したのはこれが初めてである。

だがこのままハメてしまったのでは、何となく馴れ合いの強姦みたいで

面白くなかった。

「待ってろ」

 ふと思いついて縄を探したのだが、そのころの私は緊縛用のロープなど、

まだ持っていなかった。あったのは当時闇市でアルバイトに売っていた、

進駐軍払い下げのゴム紐である。これなら押し入れのボール箱に

いくらでもあった。

 商売ものだが構うことはない、パラパラと束をほどいて、15メートルほどの

長さを4ツ折りにして先端を淳子の手首に巻いた。

「どッどうするの?」

 淳子は、呆気に取られたように顔だけ上に向けた。

「俺の女にしてやる。どこにも逃げられないようにな」

「はぁっ…」

 とたんに、淳子の眼の中に奇妙な喜悦の色が浮かんだ。

「手を後ろにまわせ」

「はッ、はい」

 首の後ろで両手首を交叉させると、ワキの下が露出して、汗に湿った

腋毛がムキだしになった。

 当時洪水のように流れ込んできた外国映画の影響で、女たちは

腋毛を剃る習慣を身につけはじめていたが、淳子はまだ生まれながらの

体毛を残していたのである。



    二、ゴム紐縛り


 幅1センチ足らずの平打ちのゴムテープだが、進駐軍のやつは

自然に肉に食い込むような弾力があった。

 後ろ手というより、半分バンザイのかたちで手首を縛ると、余った紐を

左右に分けて、背中から乳房の上を締める。パンパンに盛り上がった

膨らみが3ッにくびれて、乳首が引きつったように歪んで横を向いた。

 ハッハッと小刻みに息をしながら、淳子は胸から腹にかけて

芋虫のように締めあげられたゴムの弾力とたたかっていた。

ロープと違って、身体に巻きつけるだけで呼吸も苦しくなるほど

全体が縮むのである。

 見る見るうちに手首の血がとまって、指先が白くなった。

 膝をあぐらに組んで手首の結び目につなぐと、嫌でも股間を

のぞき込むようなかたちで背中が海老のように曲がる。最後に

縦割れの線に沿って、溝に食い込むように噛ませた両端を

T字型にウェストで結んだ。

 出来上がるまでに、15メートルのゴム紐を四ッ折りにして6束が必要であった。

「どうだ、気持ち良いか」

「うぅぅ…」

 それでも微妙な伸縮性があって、淳子は必死に姿勢を起こそうと

するのだが、すぐ元に戻ってしまう。残酷といえばこれ以上残酷な

いたぶりかたはなかった。

「いくぜ。もっと気持ち良くしてやる」

 乳房に巻いたゴムを一本だけ引っ張って指を離すと、パチィィンと

小気味良い音がしてビリビリと身体が震えた。

「ヒェェェ…ッ」

 これは、下手な鞭打ちよりよほど確実な効果が上がる。

 柔らかい腹の肉を狙ってゴムをはじくと、ビシャッと肌が鳴って、

正確に臍の真上に当たった。

「アゥゥッ」

 筋肉が跳ねた拍子に前のめりになって、あぐらのまま尻を高く揚げる。

 今にもはじけそうに張った白い肌に容赦なくビチバチとゴムを打つと、

たちまち桜色の横線が何本も浮き上がってきた。

 横線だけではなかった。T字型にまわしたゴムを掬って思い切り

引っ張ると、溝の真ん中をめがけて放す。

「ギャッ」

 淳子は犬のように啼いてヒリヒリと尻たぶを振った。

 それでも息が詰まって、大声で悲鳴を上げることが出来ない。

 四・五発噛ませておいて縦のゴムをはずすと、白く泡を吹いたような

粘液がツウ…ッと糸を引いた。

「いいか、入れるぜ」

 ダルマのような身体を仰向けにしてワレメを天井に向けると、

真っ赤に充血した肉の塊りが見るも無残に腫れ上がって、

ほおずきの実を潰したようになっている。片手で尻を抱え

片手で痛いほど硬直した男根を握って、私は捩じ込むように

真上から体重を沈めた。

「ぐふッ、ウゥンッ」

 とたんに括約筋が収縮して、はっきりそれとわかるほどの

脈動が伝わってきた。淳子は全身で痙攣していた。



    三、奴隷第一号


「あふッ、あふッ…」

 体重がかかるたびに喘ぐのだが、息を吸い込むことが出来ないので、

ときどきヒューッと咽喉が鳴った。淳子にとって、それは快感とか

陶酔といった感覚とは別次元の衝撃であったに違いない。

 だが実際には、ひどく不自由な姿勢だったし、これでは

長続きしそうもないので、ゴムを緩めてやろうとしたのだが、

結び目が堅く締まっていて解けそうもない。仕方なくナイフを使って、

ハメたままブチブチとゴム紐を切った。

「アッ、アッ、アヒィ…ッ」

「バカ、静かにしろっ」

 何しろベニヤ仕切りのバラックアパートである。大きな声を出すと

たちまちアパート中に響き渡ってしまう。両手で女の口を押さえて

遮二無二射精まで持って行くより他になかった。

「いくぜ…」

 ドクッと精液の塊りがいっぺんに抜けた。続いて二度三度、

規則正しいリズムで男根が脈を打った。

 ようやく落ち着いて身体を放すと、淳子はしばらく呆然として

思考能力を失っているようであった。

 やがて両足を縮めたまま、腹筋が跳ねるような痙攣の揺り戻しがきた。

 身体を起こそうとしても自分では起き上がることが出来ない。

眼が虚ろになって、ぼんやりとこちらを見つめているだけである。

「どうした、骨がはずれたのか」

 にやにやと笑いながら聞くと、淳子はまたビクッと全身で震えた。

「き、気持ち快い…!」

 うわ言のようにつぶやく。

「へぇ、イッたのかよ」

「わ、わかんない」

 生まれてから僅か二度目の性体験である。イクとかイカないとかいった

感覚がわかる筈もなかった。

 初めてのときもそうだが、淳子には普通のセックスとは違った肉体の

反応があったのである。ようやく我にかえったあとも、淳子はまだ

不思議な恍惚の中に身を浸していた。

「お前、変態だぜ。解っているんだろうな」

「変態でもいいけど…」

 俯いて、淳子は心配そうに言った。

「私なんかで、満足してもらえるかしら?」

「仕様がねぇ、犯りたくなったら犯ってやるよ」

 たった2回の経験で女の眼の色はこれほど変わるものか…。

初めて会ったときとは別人のような媚びと色気が宿っている。

「嬉しい、わたし待つのは平気だから…」

「その代わり、浮気はするぜ」

 私は思いきり突き放すように言った。

「お前ばっかり構っているわけにはいかねぇからな」

「はい」

 鼻をすすって、淳子は何回もうなずいて見せた。嫉妬がないわけでは

ないが、それさえゾクゾクするような痺れに変わってしまうのであろう。

こうして、淳子との奇妙な同棲生活が始まった。

 SM用語で言えば、奴隷第一号である。



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