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十六、めかけの貞操
広げた股の間に、女の身体が芋虫のように丸くなって転がっている。
喰い込んだ繩で乳房が縊れているのが痛々しかった。
脚を閉じることが出来ず、江理子は両手で上半身を支えて、
尻餅をついた姿勢のまま呆然と源次郎を見上げた。
「ダ、旦那さまに…」
思わず口をついて出た言葉がそれである。
「旦那?」
源次郎は一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに合点がいったのか
目尻に笑いを浮かべながら言った。
「そうか、お前さん、大友の妾だったな」
「だ、旦那さまに、申しわけが…」
説明しようとするのだが、うまく言葉が出ない。
濡れそぼった淫裂を曝したまま、江理子は唾を嚥んだ。
今さら、貞操を失うことをためらっているのではなかった。怖いのは
陰湿で執拗な嘉助の嫉妬である。
「旦那はどう言うか知らんが、妾には、もともと貞操なんかねぇんだ」
「………」
「浮気をすれば、おまんこが汚れるとでも言うのか」
「いえ、そ、そんなことは」
「まぁ良い、貞操なんてこんなもんだ」
源次郎が、いきなり蹲っている女の髪の毛を掴んでズルズルと
引き起こすと、捻じ曲げるように顔を男根に向けた。
「見ていろ。この女は綾乃といって、近ごろ流行りの戦争未亡人だが」
品物を見下ろすように、言葉には何の抑揚もなかった。
「亭主は海軍だったそうだ。南の海で船が沈んで、家を焼かれ、
子供を連れて路頭に迷っていたところを女郎に売られた。
それだけでも有り難いと思わなければいかん」
言いながら、半開きになった女の口許にグスリと男根を突き刺す。
髪の毛を手前に引くと、いきなり咽喉の奥を突かれて女の身体が
ヒクヒクと震えた。
「それなのに、まだ亭主に未練があって、客を取るのは嫌だと吐かしやがる」
女の髪の毛を前後に揺すりながら、源次郎は低い声で言った。
「その報いがこれだ。このご時世に、死んだ男に操を立てて飯が食えるか」
「ゲッ、グェッ…」
「おまんこが使えねぇ女郎は、生かしておくだけ無駄だ」
自分では腰を揺すらず、両手で綾乃の唇をぐいぐいと下腹に
擦りつけながら、源次郎は息も乱さずに言った。
「お前も妾なら、男の玩具になることぐらい知っているだろう」
「………」
「それとも、こいつと同じように貞操が大事だと言い張って見るか?」
「い、いえ」
「妾も女郎も家畜同然、言われたら黙って股を広げるのが畜生の勤めだ」
根元まで深々と男根を嚥み込んで、グラグラと首を揺すっている
女の顔をグイと上に向ける。とたんに、跳ね上がるような勢いで
男根が咽喉から抜けた。
「ゲフッ」
「えぇっそうだろう。覚悟を決めて、てめぇも何とか言ってみろ。
解ったのか、解らねぇのかっ」
「わ、わかり…」
ろれつが回らない口で、ようやくそれだけ言うと、綾乃は跳ね出した男根を
唇で探しながら途切れ途切れに喘いだ。
「お許し下さい…、お、お助け…」
「客を取るなら勘弁してやるが、今日から人間じゃねぇ、畜生に格下げだ」
「は、はい…」
「野良犬の分際で、今度わがままを言ったらおまんこを踏み潰すぞ」
「します、しますからッ」
「だったら今夜から客を取れ。三日分の稼ぎを取り戻すまで、飯を食うなっ」
「くうゥゥッ」
綾乃は、呻くような声を上げた。箒の柄で容赦なく掻き回された肉は、
おそらく腫れ上がっているであろう。
その穴で今夜から客をもてなさなければならない。貞操がどうのこうのと
言っている段階ではないのだ。
「判ったか、判ったらそれで良い」
手を放すと、すがりどころを失った身体がドサリと鼻から前に倒れる。
ギョッとして見ると、背中で縛られた手首が紫色になって膨らんでいた。
「さて、お妾さんよ、あんたはどうする?」
巻きついた縄を手繰りながら、源次郎が振りかえってニヤリと笑った。
十七、波乗りかもめ
旦那の嘉助の脂ぎった顔が、糸が切れた凧のようにフワフワと
遠くなっていった。もうためらっている余地はなかった。
ガタガタと身体が震えて、江理子はほとんど無意識に大きく股を広げた。
「お、お願いします」
「へっ、無理に犯らせろと言っているわけじゃねぇんだ」
吐き捨てるように、源次郎は唇を歪めた。
「ヤリたくなったんなら、正直にヤリたくなりましたと言え」
「いえ、わ、私はそんな…」
「嘘をつけっ、さっきはこいつに舐められてイキかけていたんじゃ
なかったのか」
「はッ恥ずかしい…」
「感じやすいおまんこらしいな。淫乱が旦那にバレたらどうするんだよ」
「わ、私はもう…」
「興奮して、自分からちんぼを咥えにゆきましたとでも言うのかい」
源次郎が面白そうに、縄を解いた綾乃の腹を枕に横になりながら言った。
「は、はい」
打算も計算もなかった。そう言わなければ収まりがつかない成り行きである。
「犯されるわけじゃねぇ。ヤリたいんなら味をみてやるから、
上に乗ってみな」
「えぇッ」
「いつまでも股を広げていないで、自分でハメに来いと言っているんだ」
「はは、はい」
何かに憑かれたように、江理子はフラフラと立ち上がった。
おそるおそる見ると、濃い陰毛の奥から生えた男根が、ビクビクと
天井を向いて躍っている。
「何やっているんだ。全部脱いでしまえ」
一瞬立ち竦んだが、江理子は震える指先でワンピースのボタンを外した。
反抗すればどうなるかは判っている。ワンピースをスルリと肩から落とすと、
滑らかな胸から脇腹にかけての線が露わになった。その下は、嘉助に
鋏で刈り取られた後の無惨な陰毛である。
「やっぱり年だな。腹の肉が弛んでるぜ」
痩せた女の尻を枕に、源次郎が上を向いたまま言った。
「そこはどうした、おまんこが虎刈りになっているが、旦那の趣味か?」
「い、いえ、あの」
恥ずかしさに頭にカッと血が上って、江理子はよろけるように、
突き立った男根の上に身体を伏せた。陰毛を男の眼から隠すには、
それしか方法がなかったのである。
「重い、ダブついた腹を乗せるな」
「あッはい」
「お前くらいの年増になれば、男の扱い方は知っているだろう」
「エッ、どッどうすれば」
「跨って上からハメるんだよ。もっと身体を起こせ」
だがそれでは、虎刈りを源次郎の眼の前に晒らすことになってしまう。
「グズグズしているんじゃねぇ。しっかりと腰を跨いで土手を広げるんだ」
消え入りたいような恥ずかしさに耐えて、江理子はノロノロと
身体を起こした。
「こ、こうですか」
「馬鹿野郎、おまんこをもっと下に向けろっ」
「は、はいッ」
男根が斜めになっているので角度が合わない。踏ん張っている太腿が
緊張して、踵までガクガクと揺れた。
「下手糞、出来なけりゃ自分の手を使って入口を探せ」
二年間、嘉助の肉体からは一度も得たことのない感触である。
手を伸ばして、江理子は熱っぽく弾力のある肉塊を摘んだ。
淫裂に添ってなぞるように、怖る怖る動かして行くと、綾乃に
舐められたあとの粘液が残っているのか、意外なほど滑らかに
亀頭がすべった。そしてすぐに、ヌルッとわずかな凹みに落ちた
ような手応えがあった。
「あぁ…ッ」
間髪をいれず、源次郎が下から腰を跳ね上げる。
いきなりグシュッと脳天まで突き上げられたような気がして、江理子は
前のめりに浮いた身体を男の胸で支えた。
「見ろ、簡単に入ったじゃねぇか、おまんこを外すんじゃねぇぞ」
思いきり脚を開いているので、膝の力が効かなかった。
振り落とされまいとして、必死に男の肩を掴む。弾んだ尻の重さで、
身体が沈むたびに、ハンマーで打ち込まれるような力で身体の
中心を鋭い衝撃が貫く。
「はッ、はッ、はァッ」
男の腹の上で大揺れに揺られながら、江理子はゼイゼイと咽喉を鳴らした。
十八、崩落
三十代半ばの男の筋力は逞しい。
しがみつこうとすると、下から跳ね上げられ、落ちてくるところを
グサリと突き刺す。その度に、内臓を突き上げられるような衝撃があった。
「アハッ、うむッ」
「ほらもっと腰を使えっ。ダラシがねぇぞ」
「ふぇッ、ハッハッ」
息の継ぎ目がないので、声にならない。かわりに穴の周辺が、
グシュッ、ブシュッと異様な音で鳴った。
「おまんこをちゃんと絞めろ。空気が洩れてるじゃねえか」
締めろと言われても、どうすることも出来ない。妾として二年間、
男の用をなさない嘉助の男根を舐めてきた江理子にとって、
それは全身の関節がバラバラになってしまうほどの激しさである。
荒れ馬の背で翻弄されるように、江理子はものの五・六分、
源次郎の腹の上で踊った。
「けっ、締まりのねぇおまんこだな」
突然腰の動きを止めて、源次郎が軽蔑したように言った。
「まるでブカブカじゃねぇか、これでよく大友の妾が勤まったものだ」
江理子は息を荒くして突っ伏したまま答えることが出来ない。
侮辱と言えば女にとってこれ以上の侮辱はないが、締まりが悪いと
言われても、実際にまともなセックスは一度もされたことがないのだ。
嘉助のインポは、誰にも知られてはならない秘密なのである。
「だから、女を抱いてみろなんて言われるんだ。こんなおまんこで
恥ずかしいと思わねぇのか」
「………」
動きの止まった穴の奥が、ドキッドキッと大きな脈を打っていた。
血管が膨らんで脈を打つのか、男根が内部で跳ねているのか
さだかではないが、これまでに味わったことのない反応である。
何故か判らないが、源次郎の上に身を伏せたまま背筋が
痺れたようになって、それは一種の陶酔に似ていた。
女として最低の罵声を浴びせられながら、どうしてこんな
恍惚を感じてしまうのか理解できない。
そのとき、更に不思議な現象が起こった。
「うぅぅ…」
江理子は、微かな呻き声を上げた。身体はほとんど動かしていないのに、
男根の先端から麻薬のような液体が滲み出して、粘膜が蕩けて
ゆくような気がする。挿入されたものと肉の壁が溶けあって、
ひとつになってしまったような感覚である。
「身体を起こせ。いつまでもウットリしているんじゃねぇ」
声を掛けられて、慌てて起き上がろうとしたのだが、広げたままの
股関節に力が入らなかった。江理子が身を捩って、体勢を
立て直そうとしたとき、思いがけなく二度目の不思議が起こった。
蕩けている肉の中に、突然、めまいがするような快感が湧き上がって、
ジンジンと滲みわたるように広がってくる。
「アァア、うむッ」
抑えることが出来ず、江理子は虚ろな眼を宙に向けると、ほとんど
無意識にクリトリスを男の陰毛にこすりつけた。
ギクッ、ギクッと、腰骨が勝手に前後に動く。クリトリスが、溶けて
溢れ出した粘液でヌルヌルと粗い陰毛の上を滑った。
「カッ身体が、ヘン…」
「どうした、今ごろ気持ち良くなってきたのか」
蔑んだような声で、源次郎が笑いながら下から乳首を摘んだ。
キリキリと刺すような痛みで、快感がたちまち増幅する。
「うぅぅ…むッ」
「てめぇ変態だな、快かったら快いとハッキリ言ってみろ」
「い、快い、アァ快いッ」
羞恥という感情が蒸発して、もうすでに頭の中に残っていない。
夢中で腰を揺すりながら、江理子はメスに変った顔を歪めた。
「イッ快い、い、いくぅ…ッ」
「馬鹿野郎、勝手にイクんじゃねぇっ」
それまで動かなかった源次郎がいきなり腰を跳ね上げると、弾みで
女の身体が転げ落ちるように横転する。
「いやぁッ」
ぶざまに股を広げたまま、江理子は畳の上で二度三度、バッタのように跳ねた。
虚空を掴んで、腕が宙に泳ぐ。すぐ横に、男の枕になっていた綾乃の裸が
身動きもせず転がっていた。
「よぅし、ちょうど良い。この女の穴に指を入れてみろ」
源次郎が、ふと思いついたように言った。