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十九、つがいのメス


もう理性もためらいもなかった。無我夢中で、江理子は綾乃と呼ばれた

女の股間に手を伸ばした。

冷たい…

冷え切って、内腿にベットリと乾いた粘液がコビリついている。

それは綾乃が発情して洩らしたのではなかつた。

穴の奥を竹竿で抉られて、一種の自衛反応から大量に分泌した

液体である。投げ出した両足の間に、真っ赤な淫肉がザクロを

割ったようにナマナマしくハミ出している。そっと手を触れると、

そこだけが肌の冷たさと反対に驚くほど火照って熱を持っていた。

「うぷッ」

江理子は何を考える余裕もなく、膨らんだ女の肉に顔を埋めた。

生臭くて、少し饐えたような臓物の匂いが鼻をつく。だがそれを

厭わしいと思う気持ちはなかった。先刻まで源次郎に犯されながら、

強制的に自分の性器を舐めさせられていた綾乃に対する気持ちを、

これしか表現することが出来なかったのである。

舌の先に、周囲の肉よりやや固いコリコリとした感触の塊があった。


唇で挟んで、柔らかく舌を這わせる。快感を与えようとするのではなく、

少しでも苦痛を和らげてやるにはこの方法しかない。

それは江理子の、と言うより女の動物的な本能である。

だが感覚を失ってしまったのか、綾乃はピクリとも動かなかった。

「手の縄を解いてやれ」

源次郎が、煙草に火をつけながらノンビリとした調子で言った。

「それじゃ身体を動かすことが出来ねぇだろうが」

ハッとして見ると、後ろ手に括られて紫色になった手首が背中と畳に

はさまれて潰れそうになっている。

江理子はあわてて綾乃の上半身を反転させた。

腹や乳房に巻いた縄はすっかり緩んでいるのだが、何縛りというのか、

源次郎が手首にかけたロープは思いのほかきつく、手の甲が

二倍くらいに膨らんでなかなか解くことが出来ない。

江理子は指先に力を入れて、結び目の瘤をひとつずつ剥がすように

解き放していった。

「す、すいません…」

「待って、もう少しだから」

柔らかくて肉厚な江理子の胸と、痩せた綾乃の肌がイヤでも触れ合う。

ようやく結び目が解けると、幾重にも巻かれた縄目の跡が痛々しく

無残だった。

冷え切った女の手を、江理子は自然に暖かい乳房に当てた。

「うぇぇぇ…」

突然、綾乃が激しく嗚咽して赤ん坊のように震えながらしがみついてきた。

その涙を舐めとるように、江理子は自然に唇を重ねた。

涙の味と淫液の味が何故か同じである。

「ふふふ、やっと獣らしくなったか」

全裸の源次郎が、鼻から太い煙を吹き出しながら言った。

だがそれは決して笑っている声ではなかった。

「そうやって年増どうしが抱き合っている図は、あんまり格好の

いいもんじゃねぇな」

「………」

「キスだけじゃ面白くねぇ、もっと大っぴらに愛し合ってみろ」

「え、えッ」

「お前ら、これから大友の旦那のところで見世物になるんだ。

見世物と言うものはな、客を楽しませることが仕事なんだぜ」

見世物…?!

呆然と、江理子は源次郎を見つめた。

「おまんこを晒して恥ずかしがる年でもなかろう。いつまでも

子供みたいに抱き合っていねぇで、早いとこ気持ち良くなってみな」

ゾッとして、江理子は自分に与えられた役目を思い出さずには

いられなかった。レズといえば、淫靡だがどこかロマンチックな

イメージがある。たしかに江理子の頭の中にも、最初はそんな思いが

ないこともなかったのだが、現実に行われようとしている年増女の

カラミは、想像よりはるかに猥褻で肉欲の臭いに満ちた見世物であった。

男との媾合とは違う。

欲望が凝縮した肉の突起物がなければ、いきなり気持ち良くなれと

言われても身体が反応しないのである。とても、綾乃の毛の中に

指を入れる勇気はなかった。何とかしなければと思うのだが、

江理子には脂肪の薄い背中の傷をいたわるように撫で回す

ことしかできない。

「ちぇっ、仕様がねぇな」

舌打ちして、源次郎が奥に向かって大きな声で呼んだ。

「おぅい誰か、台所にスリコギがあるから持って来い」



二十、深い穴


腕の中で震えている綾乃を持て余して、抱き合ったままの

江理子の後ろで、微かに襖が開く気配がした。

振り向くと、玄関であったときと同じ服装の加奈である。

今までこの部屋で起っていたことを知らない筈もないが、

何をやっていたのか、手にかなり使い込んで味噌の色が

沁みこんだ丸い木の棒を持っていた。

「これしかないんですけど…」

最近では形も小さくなったが、当時のスリコギは大型のスリ鉢で

味噌などを摺る、長さも三十センチ以上ある太いものだ。

「それで良い。こいつらを繋いでやれ」

源次郎がこともなげに言った。

片膝を立ててはいるが、黒々とした陰毛が臍の近くまで生えあがって、

先刻まであれほど勢いの良かったものが、ダラリと畳の上に

伸びて奇妙な爬虫類のように見える。

「即席で教えてやるしかなかろう。このままじゃ使い物にならん」

頷いて二人の横にしゃがむと、加奈は感情のない調子で言った。

「ちょっと、あんた、上を向いてお股を広げてちょうだい」

「ま、ま、まだ何か…」

綾乃を庇おうとする手を押さえて、加奈が言った。

「奥さんは待って、この人が先だから」

奥さんと呼ばれて、江理子は思わず言葉を呑んだ。

加奈はそんなことには一向に頓着していない様子で、

綾乃を元の位置に戻すと、痩せた太腿に片手を添えて

大きく左右に開いた。それからおもむろにスリコギの太いほうを

源次郎に向ける。

「こっち側で良いですか」

「そうだな、これから何人でも男を咥えるんだ。穴は

大きくしてやったほうが良い」

「はい」先端を無造作に女の穴の口に当てる。

「うぅぅ…」

とっさに何をされるか察して、綾乃が呻き声をあげた。

「おツユは出ていますね。乾いていると痛いから…」

土手の肉を指でつかんで開きながら、加奈が片方の手首に

グイと力を入れる。とたんにグスッという感じで、太くて丸い先端が

いっぺんに五センチほど穴の中に沈んだ。

「ムム…ッ」

それから、ゆっくりと全体を回転させながら、グスッ、グスッと

段をつけて半分近くまで埋め込んでゆく。

その度に仰向けになった女の腹筋が激しく収縮して、

ギクッギクッと跳ねるように上半身が波を打った。

「いいですか?底まで届きましたね?」

確かめるように言って、加奈がスリコギを握ったまま顔を上げた。

「それじゃ奥さん、どうぞ…」

「こ、こ、これを?」

「大丈夫ですよ。こっちのほうが細いから」

「はは、はい…」

膝でにじり寄って、江理子はマジマジとその部分を凝視した。

これが、昨日まで頑なに貞操を守ろうと抵抗していた女の性器とは

思えないすさまじさである。腫れた肉の襞を巻き込んで、赤土色に

変色した固い木の棒がグサリと突き刺さっているのだが、

ともすれば腹圧でそれを押し戻そうとする。

その度に、えみ割れた周囲の粘膜が膨らんだり縮んだりしていた。

「横になって脚の間に入って、早くしてください」

真っ直ぐな棒なので、穴の位置が直線にならなければ

挿入することが出来ない。これが意外に難しい作業なのである。

江理子には、自分の角度がどうなっているかさえ判らなかった。

伸ばした脚を交叉させて、X字型に腰を入れると、スリコギの端が

ようやく虎刈りになった恥骨の上に届いた。

だが先端が上を向いているので、これ以上は巧く穴に収めることが

出来ない。

「ど、どうすればいいの」

「もっと腰をあげて、おサネをこちらに向けて」

短く切り取られた陰毛を引っ張りながら、加奈が言った。

「そのまま前に出てください。もう少し…」

「あ、うぅッ」

クリトリスに異様な感覚があった。何か固いものが、突然グスッと

肉を分けて潜り込んできたのがわかった。

「よぅし、繋がったか」

成り行きを見ていた源次郎が、そのときゆっくりと立ちあがった。

「おまんこを合わせろ。二人ともサネが剥けているから、

少しは感じるだろう」



二十一、不貞の言いわけ


源次郎が女の髪を掴んで捩じるように顔を上に向ける。

胡座をかいた股間に垂れ下がって、まだ硬くなっていない亀頭を

綾乃の唇にこすり付けた。

反射的に開いた口に押し込むと、ぐいぐいと顔全体を前後に揺する。

自然、綾乃の角度が変って、江理子は不自由な姿勢で腰を左に曲げた。

それでも繋がった穴の奥まで相当な圧力がかかって、

源次郎が顔を揺するたびに括約筋が収縮するのか、ヒクヒクと

微妙な感触が伝わってくる。それを受け止めようとして、

江理子は粘膜と粘膜を貼り付けるように身を寄せていった。

「ウムッ、はぁぁッ」

ようやく余った部分が見えなくなった。どちらに深く入ったのか

判らないが、硬い木の棒が、身体が動くたびに子宮を

突き上げられるような気がする。

「うふふ、さすがに年増の道具だ。けっこう丈夫に出来てる」

源次郎が、綾乃の鼻を濃い陰毛にこすりつけながら笑った。

「もっと腰を使え。それだけ感じるんなら上等だ」

「あぁぁ、はい」

内臓の奥で、何か得体の知れない物体が動く。意識が朦朧となって、

自分でも何をやっているのか良く判らないのだ。

江理子はただ夢中になって相手の粘膜に自分のクリトリスを

噛み合わせようとした。何年ぶりかで体内に男根を受け入れて、

絶頂に達しようとする直前で突き放された感覚が、見る見るうちに

上昇する。

「あぁもう、もうッ」

「イケよ、イッてみな。こいつは面白い見世物だぜ」

「うぁぁ…」

恥もたしなみも忘れて、けものじみた声をあげた瞬間、

中間にいた綾乃の下半身が何の前触れもなく大きく跳ねた。

その煽りで、結合した江理子の腰が弾むように上下する。

「ダッ、駄目ェェ」

「馬鹿野郎、こいつもイッてるんだ。一緒にイカんかい」

「イキますッ、イ、イカせて…」

頭の中が真っ白になって、眼の奥に流星のような火花が飛んだ。

堰を切ったように、快感が飛沫を上げて溢れ出し全身を覆った。

もう何をされても良かった。

「お願いですッ。ハ、ハメて、もっとイカせてくださいッ」

「けっ、こんなに太いのを填めてるじゃねぇか。贅沢な女だ」

蔑んだ声で源次郎がつぶやく。それからゆっくりと綾乃の口から

男根を抜くと、腕を伸ばして二つの穴に食い込んだスリコギを

ぐるぐると廻した。

「あッううむ、イッてしまうッ」

密着した肉の襞を強引に掻き回され、江理子はひとたまりもなく

悲鳴を上げた。

「ゆ、許してください…ッ」

「なんだ、イカせてくれと頼んだんじゃなかったのか」

「ひぃぃ…」

すぐ横で、加奈が背中を向けたまま俯いている。この女も、

何回となく源次郎の調教を受けてきたのであろう。

俯いた背中に、奇妙な嫉妬の翳が滲んでいた。

辱めと言えばこれ以上の辱めはないが、自分と同じ畜生の道に

堕ちて行く女に嫉妬する加奈の気持ちはいったい何なのだろう。

源次郎の嬲りは、それからまだしばらく続いた。

スリコギを抜いて連結を解かれてから、二人並んで交互に

挿入され、二匹のめす犬は抱き合ったまま前後の見境もなく

イキ狂った。

ようやく解放されたのは、もうあたりが暗くなりかかった夕方である。

身体のあちこちに、イキ切ってしまった後の気だるく重苦しい倦怠感が

残っている。淫肉の周辺が厚ぼったく腫れて、表に出てからも

江理子は歩くのがやっとだった。

ようやく駅までたどりついて電車に乗ったが、ともすれば

吸い込まれるように眠ってしまいそうになる。

だが眠れないのは、この後でしなければならない飼い主の嘉助への

言い訳である。

三年近くの間、インポの嘉助に仕える貞淑な妾として過ごしてきた

貞操の垣根を、跡形もなく踏み壊されてしまったことを、どうやって

説明したら良いのか。旦那の嘉助は女どうしで愛撫するところを

見せろと言うのだが、あの陰湿で嫉妬深い性格を思うと江理子は

身がすくんだ。蒼浪として、江理子は嘉助の待っている

金町の家への路を辿った。

こうなっては、行くも地獄、戻るも地獄である。






(つづく)もどる