魅せられて

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3 ・ ドブ鼠の群れ


紫織の携帯に、今日も名も知らぬ男からのメールが入った。

内容にちょっと興味を引かれたのは、それが暴走族らしいグループだったからである。

またセックスかとうんざりするようなメールが多い中で、街の中を自由自在に走り回りたい

女の子は集まれという趣旨の呼びかけは、確かに未知の魅力があった。紫織が応答すると、

間髪を入れずレスが戻ってきた。

「常盤台一家の健だ。今夜の7時、中川のみどり橋の下まで降りて来い」

電車の便が悪くて、指定された場所までタクシーを飛ばしても30分はかかる。それでも紫織は

行ってみることに決めた。

昨夜付き合った50才近い小父さんが援助だと言って3万円くれた。拾ったような金がまだ

そのまま残っている。おかげでファミレスで注文するメニューの贅沢にも、豪華に盛り付けた

フルーツパフェなどもつけるようになったし、近頃覚えたばかりの化粧品は、外国製の

ブランド品である。売春という自覚はあまりなかったのだが、身体を売れば金になる。

こんなに幼い未成熟な身体でも、大人たちはかえって珍重して悦んでくれるということは

紫織にも判っていた。

夕刻、約束の時間より前にタクシーを拾って、紫織は中川の河川敷に行った。

堤の上を走る舗装された道から、河川敷に下りる枝道が何本も出ている。タクシーの窓から

注意していると、大きな橋の下に単車や乗用車が何台も集まって輪を描いて走り回って

いるのが見えた。

あれだ・・・

「おじさん、あそこあそこ・・・、あの近くに連れて行って・・・」

こんな子供に指示されて言う通りにしなければならない商売が忌々しいのか、運転手は

仏頂面をして無言のまま土手を降りると、

「ここまでしか走れねぇんだよ。規則だから、後は歩いて行きな」

「うぅん、まだ遠いじゃん」

「そんなこと言ったってしょうがねぇ。あいつら暴走族だろう」

こんなのと係わり合いになったら後が怖い。運転手は早々に紫織を車から降ろすとUターン

して行ってしまった。料金は4800円である。

タクシーに降ろされたところから、バイクがたむろしているところまで、まだ500メートル以上

あった。紫織は胸をときめかしながら、アスファルトの敷いてない地面の上を走った。

ともすれば転びそうになる荒々しい大地の感触である。何年ぶりというより、紫織にとって

生まれて初めての経験であった。

グループの方でも、紫織が駆けてくるのに気がついたらしい。何人かがエンジンを止めて

こちらを凝視していた。それが若い女の子だとわかると、男たちの態度が急に変わった。

「何だァおめぇ、こんなところまで何しに来たんだっ」

「健ちゃんていう人いる? 名前は健ちゃんきゃ判んないんだけど」

紫織が息を弾ませながら言うと、グループの中から兄貴分らしいのが「おぉっ」と声を上げた。

「俺だ俺・・・。あんた、メールくれた子かい」

「はい、すぐにジカレスくれて有難う。嬉しかったわ」

「ようっ、ついてるぜ。この子はよう、昼間メールでダチになりたいと言ってきたんだ。名前は、

えぇと何て言ったっけ・・・」

「立花紫織です」

「カッコいいっ」

仲間の一人がひょうきんな声を上げた。空気が和らいで、連中は簡単に紫織を仲間に入れることを

承認してくれたようだ。紫織のほうにも、妙な警戒心とか、取り澄ました気持ちは全くなかった。

まだそれだけ子供なのかもしれないが、一時代前の愚連隊やチンピラの組織では考えられない

おおらかさである。

人数は十二・三人くらい。それほど大きなグループではないが、気がつくと、その中に一人女が

混ざっていた。革ジャンを着て、暴走メットをかぶっているので顔立ちは良く判らないのだが、

少し小柄なほかは立ち居振る舞いは若い男たちとほとんど区別がつかない。紫織はちょっと

緊張したが、女は紫織のことなどほとんど眼中にない様子で、カワサキの250CCのバイクに

颯爽と跨る。さぁ行こう、と言うようにヴィンヴィンと激しい空ぶかしを5・6回、それを合図に

みんなそれぞれのマシンに散っていった。

「おめぇ、名前なんだっけ」

「紫織です。立花紫織・・・」

「あっそうか、それじゃ俺の車に乗れ。助手席だぞ」

「はいッ」

先ほどの四千円も払ったタクシーとは全然違う乗り心地、硬くて男臭いシートに転がり込むと、

ゴロゴロと腹を揺するようなゆれ方で車が動き出した。

それから先は、ほとんど無我夢中である。

「うわァッ、凄い凄い、危ないッ、いやッほー

スピードはそれほど出ていない。むしろ騒音と信号無視、ジグザグ走行で当たり構わず迷惑に

なるだけの走り方だが、初めて暴走族の車に乗った紫織にとって、そのスリルはどこかの

遊園地のジェットコースターなどの比ではなかった。

絶叫して騒ぐだけ騒いで、力を使い果たした感じでみどり橋のたもとに戻ってきたのは、明け方の

三時を過ぎた頃であった。九時からおよそ六時間、都内と街道筋と千葉県下の走りやすい道路を

占領して蛇行運転を繰り返してきたから、活気に溢れていた仲間も流石にフラフラである。

河川敷に車とバイクが集結すると、それぞれに声を掛け合って家路に急ぐ、社会的には

言い訳のつかない暴走集団の若者たちも、ひと皮脱げば小気味よいほど素直な少年たち

であった。

燃えきってしまったような身体をグッタリと助手席のシートに埋めて、紫織は吸い込まれるような

眠気に自然目を閉じていた。

「あぁあっ、面白くねぇな。紫織っそっちのシートを倒せ」

「え、えぇッ」

いきなり健に声をかけられて、紫織はビックリして身体を捩った。

「倒せって、どうすれば良いの」

「ちぇっ、何にもしらねぇんだな。その横にあるレバーをこうするんだ」

仰向いた紫織の胸の上にのしかかるようにして、健が腕を伸ばして反対側にある助手席のレバーを

動かす。とたんに背もたれのシートが支えを失って、ガターンと勢い良く後ろに倒れた。

「わッ・・・

そのまま、上になった健の右手が紫織のまだ硬い半球形の乳房を握った。

「うぅーん」

紫織はのけぞったが、今日はジーパンを穿いているので動きは窮屈である。セーターを胸の上まで

捲くられて上半身の素肌は露出したが、腰から下を車の中で開放するにはかなりの努力が

要った。

「面倒くせぇ。はやく脱げっ、このやろう

答える代わりにハッハッと息を弾ませながら、紫織は懸命にファスナーをおろし、腰を浮かして

ジーパンを尻の丸みから抜いた。ほんの半年前なら、こんなに苦労しなくても簡単に脱げたものを、

いつの間にこんなに大きく膨らんでしまったのだろう。そんな詮索をしている余裕もなかった。

足先から力任せに引っ張られて、ルーズではないソックスが片方とジーパンが、スポッとパンティー

ごと抜けた。

窓には黒のフィルムが張ってあるから、外から見られる心配はないのだが、狭い車のなかで

不自然な形で脚を広げたポーズは卑猥というより滑稽である。

その上ズボンから直接引っ張り出した健が、男根を根元まで挿入しようと擦り付けるものだから、

硬い布地が粘膜に当たってガシガシと痛い。紫織は思わず声を上げそうになるのを、歯を噛んで

何回も耐えた。ここで、健に少しでも嫌がっていると思われたくなかったのである。

いくら初対面でも、一晩中声が嗄れるまで楽しませてくれた友達へのお礼としてはヤラせて

上げるのは当然のことだと紫織は思った。中年の親父から貴重品扱いされて、謝礼にお金を

貰うのとは根本的に質が違うのである。

「紫織ッ、おめぇ生理はいつ終わった」

「えっと、三日くらい前」

「それじゃまだ大丈夫だな。イ、イクぞう」

「イケるの? そ、それじゃイッてぇ」

「ようしっ」

グイングインと間隔をあけて大腰に、健が突きまくると、身体が揺れてその度に車がギシギシと

音を立てた。

ズキィン・・・、と奥の方に異様な衝撃があって、若い健の筋肉がビリビリと硬直して時であった。

突然、客席側の車のドアが開いた。

「何だよぅ。派手に揺れてるじゃねぇか、スケは言うこと聞いてんのか」

「おおっ、やってるやってる。可愛い顔しているな」

顔を突っ込んできたのは、族の仲間でまだ10代の少年が二人だった。

「馬鹿ッ、今イッているとこだ。ちょうど良いところにきゃがって」

あわてる気配もなく、健はそのまま射精を続ける。紫織の体内にドクッドクッと微妙な肉の痙攣が

しばらく続いた。

「紫織ちゃんよぅ。どうする、こいつらにもヤラせてやって良いか?」

なんと答えたらよいのか、紫織が黙っていると、健はようやく重なっていた身体を起こしながら、

車の中に首を突っ込んでいる少年に言った。

「まだ残っているのは何人くらいだ?」

「えっとぉ、五人ですけど・・・」

「そうかい、みんな仲間なんだからよ。俺一人快い思いをするわけにもいかねぇだろう」

それは独り言だが、紫織に対しては、否応なしの宣告になった。

「キネ子は、もう帰ったのか」

「いえ、まだいますよ」

「けっ、あの男嫌いが・・・、紫織ちゃん、女の前でも平気かい?」

「その人、嫌じゃないかしら・・・」

「男とヤルのが嫌いでよ、レズのタチなんだってよ。モーションかけられるかも知れねぇぞ」

紫織は薄い笑いを浮かべた。どっちみち、若者たちはこのままタダでは帰してくれないだろう。

レズの女に見られても、ちっとも恥ずかしいことなんかないじゃない・・・

それよりも、狭い車のシートでおまんこをさらしていることの方が苦痛だった。

ヨタヨタと身体を動かし、少年たちに引きずられるようにして、紫織は車の外にでた。

上を向くと、東の空がわずかに薄く明るくなっている。穴から溢れて内股を伝わってズルズルと

流れ落ちる大量の精液の感触が快かった。

その下半身はスッポンポンである。4人か5人か知らぬが、これから順番に犯されることを思うと、

恐怖というより期待の方が先にたつ。それは今まで感じたことのない不思議な衝動であった。

健は一度射精しているから落ち着いていて、車のトランクから毛布を持ってきて場所を作り、

みんなが納得するように順番を決め、キネ子という女にも

一応の声をかけた。

「ようキネ子、お前はどうする? 見ているだけで

良いんかよ」

「いいよ、私のことなんか、みんなでお楽しみなさいよ」

声の調子では、はたちはとっくに過ぎているような

感じだった。

そしてそれから、壮絶な輪姦劇というか、若い男たちが

噴出する性欲を処理する凄惨な現場が開始された

のである。

初めに名乗りを上げたのは、無口で大柄な、見るからに

腕力の強そうな男だった。

「俺、もう半年もやっていねぇからよ」

男はズボンを脱ぎながら言い訳のように言った。

「こんなの見ていたら、ヤル前に洩らしちゃうかも

しれねぇ。悪いけど先に出させてくれ」

「いいよ、いつもの順番でやったろうじゃん」

「こんなとき女を取り合ってモメるなんてみっともねぇからよ」

彼らの方でも、たまたま飛び込んできた女の子を寄ってたかって楽しみあうといった経験は、

これまでにも何回もあったのだろう。毛布を三枚、手際よく橋桁のコンクリートの上に敷くと、

少年の一人が、下半身をさらしてぼんやりと立っている紫織の肩を羽交い絞めにするような

かたちで毛布の上に運んだ。少年がそのまま胡坐をかくと、紫織の頭がちょうど良く胡坐の

中に入って安定が良い。

「いいよ。三ちゃん、乗っかってきな」

「うっす、すまねぇな」

三ちゃんと呼ばれた大柄な男が、下から紫織の太ももを両手でヒョイと持ち上げると、立膝で

中に割り込む。

「軽いな、ちっちゃいけど、あんた幾つよ」

「十四・・・」

「いいねぇ。だけど警察には言わないでね」

紫織が返事をする暇もなかった。

ズン・・・、と独特の衝撃があって、ド太い男の肉塊が容赦なく割り込んできた。

「ウゥ、グッ・・・」

「さっきやってるからすべりが良いや。痛くなんかねぇだろ」

上半身を羽交い絞めにされているので息が苦しい。何か言いたくても言葉にならないのだった。

男も遊んでいる余裕はなかったのだろう。それきり無言で激しく腰を動かす。時間にすれば、

ほんの一・二分だったと思う。

「くっそう・・・、もうイキやがる。だーめだっ」

ガツーンと男根の付け根を紫織の陰丘に叩きつけると、まだハメたままの肉の間から、ブクブクと

押し戻されるように精液があふれ出してきた。

「よっし、さぁ交代だ。交代交代・・・」

いつの間に用意したのか、次に並んだ少年が乾いた雑巾のようなタオルでゴシゴシと紫織の

股の間を拭いた。

十四才の肉体は、皮下脂肪の蓄積が薄くてまだ女らしい柔らかさを持っていない。触れば

発条のような弾力を持った筋肉と、ピィーンと張って弛みのない皮膚の新鮮さが、10代前半の

少女を構成していた。これが成熟した女には絶対に見られない若い果実の魅力なのだが、

中年の男が数万金を投じても味わってみたいと思う肉体の価値を、当事者である紫織は

まだ自覚することが出来なかった。仕方のないことだが、いわば青春の無駄遣いである。

だが彼らは彼らなりに、人間が一度しか神から与えられない貴重な時期を、精一杯享受して

いるのだった。

三番目の男が終わって、次の少年が抱き付こうとしたとき、それまで紫織を支えていた男が

声を出した。

「おい俺、脚が痛くってたまんねぇよ。ちょっと形を変えてくんねぇか」

「反対向きにしろ。両手を突けば動きやすくなるぜ」

たちまち、寄ってたかって後背位のワンワンスタイルができあがったのだが、少年たちの勢いは

両手を突いて支えていられるほどヤワな動きではなかった。

「もっとケツ上げてくれ。これじゃ入んねぇよ」

両膝が浮き上がるほど腰を抱えられて、紫織は顔を直接毛布にこすり付けられる形になった。

埃と油の匂いにむせ返りながら、穴に突っ込まれるたびに紫織はゲッゲッと咽喉を鳴らした。

ようやく四人目が終わると、胡坐の少年が最後になって紫織を横抱きにして斜め後からハメる。

体位としては、これが一番楽な形になった。



4 ・ 姉弟は恋人


橋桁のコンクリートにつんのめるように前後に動かされると、額や頬ぺたが毛布に擦れて

ヒリヒリと痛い。背筋の骨の突起に沿って皮膚が破れ血が滲んでいた。それでも紫織にとって

セックスが痛いのはある程度覚悟の上なのである。

金持ちの小父さんに援交とかでホテルに入れられて柔らかいベッドの上で裸になるのは

如何にも自分の性器を売り物にしているような気がして夢中になることが出来ない。いつも

どこか白茶けた気持ちで股を広げていたのだが、こうなると初めて紫織は魂が宙に浮いた。

頭の中が空っぽになって、自分が輪姦されていることなど少しも感じることが出来ない。

ただ、そこに女に餓えた男たちがいて、彼らのためにセックスをしているという実感である。

痛くても苦しくても、自分の性器がその役に立っていることが嬉しいのだった。

「おい、しぃちゃん、悪いけど俺のちんぼ、もう一度口でイカせてくんねぇかな」

グラグラと頭を揺すって今にも崩れそうな紫織の顔を正面に向けて、最初に終わった筈の健が、

まだ物足りないような声で言った。

返事は一切関係がない。再び直角に硬くなった男根を紫織の口元に突きつけると、下から顎を

抑えてグイッと腰を入れた。

「ウグゥッ、ゲ、ゲゲッ」

夢中になって、健の太腿の付け根の辺りにしがみつく。女と違って逞しく、カチカチに張った

筋肉が頼りになった。後ろで腰を使われると、ブッとい肉塊が何の抵抗もなく気管の奥まで

入ってしまう。今までも援交で舐めさせられたことはあったが、ペロペロと舌を使って周りを

舐め回すだけで、咽喉がおまんこと同じ役目をすることを、紫織はこのとき初めて知った。

「おおっ気持ち快いッ。おめぇ、最高の道具持ってんな」

「アグゥ、グフッ、グフッ・・・」

「よっし、イクぞ。吐くなよ」

まだ残っていたらしい、かなりの量の精液を、直接紫織の胃袋に流し込む。存分に出してしまうと、

健は突然大きな声で言った。

「おっし、みんな解散だ、早く散れ」

慣れたもので、今までの集団私刑はいったいなんだったのか、何事もなかったような顔をして、

若者たちは思い思いの方向に消えていった。

「いいか、この次は来週土曜日だぞ」

「イェイ、再見・・・

走り去るとき、紫織がよろめくほど頭を叩いていった少年がいたが、それも愛撫のひとつなので

あろう。まだフラフラする足元を踏みしめて、紫織は彼らが遠くなるまで手を振っていた。

残ったのは、リーダーの健と、キネ子と呼ばれた年上の女ライダーである。

「キネ子、悪く思うなよ」

健が、如何にも申し訳なさそうな口調で言った。

「別に、姉ちゃんが嫌いになったわけじゃねぇよ。タマには他の女とヤッて見たかっただけだ」

「フン・・・」

キネ子は鼻の先で冷笑するように、横目で紫織を見つめながら言った。

「あんた、早くジーパン穿いたほうが良いよ。明るくなってきたから」

「あッはい、すいません」

気がつくと、本当にあたりが明るくなりかけている。紫織はあわててジーパンを穿き、汚れた肌を

セーターで隠した。二時間近く股を広げたままで、何人もの男を受け入れていたので、ジーパンを

穿いても股がうまく閉まらないような気がする。歩くとヨタヨタと身体が傾いでしまうのである。

「家まで送って行ってあげるけど、親は大丈夫なのかい?」

「平気です。母ちゃんはきっと外泊していますから」

「へぇ何で、両親とも・・・?」

「お父さんとは別れて、今は母ちゃんと二人なんです」

「あらそ、じゃあ気は楽だね」

女は年上らしく、それだけで紫織の家庭環境は察した様子だった。

「あの、ちょっと、聞いても良いですか?」

ようやく気持ちが落ち着いてくると、紫織は控えめに言った。さっき健がキネ子に謝った言葉が

ひどく気になったのである。

「なんだ」

「こっちのおねぇさん、もしかして健ちゃんの彼女じゃなかったの?」

「彼女ォ・・・?」

一瞬キョトンとして、健はキネ子のほうを見たが、しばらくすると、鼻の頭にしわを寄せて

ヘラヘラと笑った。

「ウン彼女って言やあ彼女だよなぁ。そうだろ姉ちゃん・・・」

「ヘンなこと言わないでよ。私がお前の彼女なわけないだろ」

キネ子は相変わらず仏頂面である。

だが、この短いやり取りの中に、紫織は異様に肉欲的なあるものを感じた。それは一種のカン

と言っても良かった。

「あッ、本当のお姉さんなの?」

「まぁな、フッフッフ・・・。こいつのおまんこは知っているんだけどよ」

健は本当の姉の前で私を犯したのだ。しかも、二人は何だかただの関係ではなさそうな・・・

呆然としている紫織を急かせて助手席に戻し、キネ子に追尾させて、夜明けの空いた道を

30分くらい走ると、やはり東京とは違う一段格の低い家並みの奥に、十棟ほど纏まった

五階建てコンクリート作りの団地が見える。

「あそこです、どうもありがとう」

「おふくろは、本当にいねぇのか」

「うん、土曜日は小父ちゃんに逢いにいってると思う」

「なんだ、彼氏がいるのかよ」

我が家は二階である。おぼつかない足取りで車から降り、エレベーターのない階段を上ると、

ドアに朝刊が挟まっていた。昨夜母親が帰宅していないことは気配でわかった。

「上がって行きますか?」

「もういいよ、寝る前にシャワーで洗え。男の汁がいっぱいついているから臭ぇぞ」

「はい」

「来週の土曜日、また来れるか」

「行くよ。でも健ちゃん、お姉さんに悪いんじゃないの?」

思わず声を潜めて、紫織はささやくように言った。

「余計な心配しなくたって良い。あいつはヤリたいときに勝手にヤッてるだけなんだ」

「・・・・・・・・・」

二人が去った後、紫織はすぐに風呂場に言ってお湯を沸かした。せっかく貰った大量の精液を

洗い流してしまうのは惜しいような気がする。紫織は感謝の気持ちを込めて、丁寧に時間をかけて

下腹と太股の周辺を洗った。誰が何をやったかはほとんど覚えていない。印象に残ったのは

やっぱり健が一人だけである。

あの健ちゃんが、本当のお姉さんと・・・

いったいどうやって、どんなセックスをやっているのか、紫織の年令では想像の範囲を超えていた。

その情景を頭に描こうとすると、何だかものすごく羨ましいような、自分もその仲間に加えて

貰いたいような、不思議な衝動がこみ上げてくる。

それまで紫織は自分の肉体を男の遊び道具か、売れば金になる商品といった物質的な側面から

とらえていたのだったが、それは生まれて初めて身体の底から湧き上がってきた精神的な欲求と

言っても良かった。

そのことを思えば思うほど子宮が燃えて、どうしようもなく発情する。

全身に熱い湯を浴びながら、紫織は洗ったばかりのクリトリスと穴の周りを五本の指を使って

痛くなるほど掻き毟った。

それでなくても、深夜から明け方まで複数の肉棒に突き立てられ、掻き回されて傷だらけになった

粘膜である。今でも充血して腫れ上がっている筈だが、無理に刺激すると、何故かその痛みが

たまらない快感に変わる。

紫織は独り狭い浴室のスノコの上で背を丸め、全身を震わせて、夢中でオナニーに耽った。

「オ、オ、イク、イクゥゥッ」

それに反応して身体は跳ねると、ゴツゴツと浴槽にぶつかる。

「見て見てぇッ、健ちゃん・・・ッ」

仰け反って尻を高く上げると、ゴツンと音がして頭がタイルの壁に当たった。

男に抱かれた後オナニーするのはいつものことだが、我を忘れるほど快かったのは初めてである。

それは紛れもなく、異常な性感覚を持った紫織の性の開花と言ってよかった。




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