魅せられて


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19 ・ 宴のあと


「よぅし、女の子が二人いてくれりゃ大助かりだ。頼むよ、しぃちゃん」

「ウン、いいよ」

「有難ぇ、お前さん、いつもものわかりがいいからな」

「ギヤアァァッ」

そのとき、高校生のほうがモロにハメられて紫織とは対照的にオーバーな叫び声を

上げた。

「うるせぇな、今は女子高生がホームレスと同棲して、気に入らないおっちゃんを

ブッ殺してしまうご時世だぜ。恰好つけるのもいい加減にしろ」

グスッと鈍い音がして、女がどこかを殴られたらしい。それきり悲鳴も泣き声も

聞こえなくなった。

「箱の上じゃ痛いからよ、俺が後ろから抱くから吊り橋でやろうぜ」

「オッケー、それじゃ俺のほうから先にヤラせてもらおう」

「その代わり中出しすんな。妊娠しちゃったらヤバいからよ」

「判ってる、それ常識・・・」

気楽な会話を交わしながら、一人の若者が

背中に回ってわきの下から乳房の上を

抱いた。もう一人が膝の後ろをよいしょと

両手で持ち上げて、行き所がなくなった

男根を紫織の股の間に押し付けながら言った。

「しぃちゃん悪いけど、俺のちんぼ、穴に

入れてくんない」

吊り橋の形で抱き上げられたまま手を伸ばして、

男の性器をさぐると、紫織は先端を自分でクリトリスの下に当てた。

「おぉしっ、ハマッたぁ・・・

男根が女の肉に包まれたのがわかると、男は脚を持った手を換えて、紫織の尻を

両腕で抱え込むように激しく上下に揺すった。

しばらくの間、男と女の荒々しい呼吸が交錯する。

こんな不自然な姿勢からでも、紫織の感覚は昂まってくるのを停めることができない。

あと一歩で、ズキィィンと全身の神経が脈を打とうとしたとき、尻を抱えていた手から

突然力が抜けた。

「しぃちゃん早くっ、早く・・・っ」

ズサッと身体が斜めになって、危うく後ろの男に支えられた紫織の眼の前に、

欲情で匂い立つような肉塊が突きつけて、男が切羽詰った声で言った。

「イッちゃうっ、我慢できねぇ」

同時に、ビチャッと相当な勢いで目頭から鼻にかけて、生暖かいものが飛んできた。

ほとんど考えている余裕もなく、紫織が口をあける。

第三射、第四射めの残った精液が口の中いっぱいに広がって、紫織は夢中で

生の油のような精液を嚥んだ。その度に、イキかけたまま止まってしまった快感の塊りが、

全身の血管を駆け回っているような気がする。

隣の女子高生は気を失っているのか、何も言わなくなってしまった。狭い魚箱の上で

仰向けにされたりうつ伏せになったり、男たちのやりたい放題に転がされて犯されている。

紫織がいたから助かったのだが、もし一人だったら、屈強な七人の若者を相手にして

ヤリ殺されていたのかもしれない。

それでも紫織が相手にしたのは前後三人、残った四人が年上だが新鮮な女子高生の

ほうに群がったのである。時間にすれば僅かに30分足らずの、竜巻に飲み込まれたような

ひとときであった。

いつまでもこんなところにグズグズしていてはヤバいので、男たちは体力には余裕が

あったが、そうそうに女肉料理の宴を切り上げて岸壁に戻った。

「しっかり歩け、腰抜かしていると置いてっちゃうぜ」

それでも女の子が動けなくなっているので、最後に射精した予備校生らしい青年が

仕方なく肩を貸した。

「おい秋男、この子後ろに乗せるのは無理じゃねぇのか」

「健の車に乗せてやったら・・・、親がうるさいんならウチで泊まっても良いよ」

紫織の提案に賛成して、女を乗用車に運ぶ。後部座席のドアを開けて

放り込むと、グタッと身体を折り曲げたまま身動きもしない。

「ねぇあんた、大丈夫・・・?」

さすがに心配になって助手席から声をかけると、少女は僅かに顔を上げて弱々しく

手を振って見せた。

その仕草は肉体を蹂躙されたことへの恐怖や怨嗟ではなく、本当に芯から疲れきって、

消耗の果てに身体を動かすこともままならないといった感じである。

あぁ、この人も・・・

ホッとして、紫織の胸に、急にこの女子高生への親しみがこみ上げてきた。

どうせ秋男にナンパされて暴走族の車に乗りに来るような女だ。高校生だからって、

一晩ぐらい外泊しても親は何にも言わないだろう・・・

「行こう。この人も身体汚れているから、ウチでお風呂に入れてあげる」

紫織は勢いよく言った。

「何だよ、今夜は俺が泊めてもらおうと思っていたのに、俺は送るだけか?」

そう言えば、今夜の宴には何故か健だけが参加していないのである。

「いいじゃん、三人で泊まれば、その代わりエッチはなしだよ」

「それはかまわねぇけど、こいつの親は平気なのかよ」

「いいの、泊めて、悪いけど・・・」

後ろの席から、女がまだ喘いでいるような声で言った。

「こんな恰好で家に帰ったらバレバレよ。畜生、秋男ったら・・・」

その気持ちは、紫織にもよく判る。紫織は助手席から身を乗り出すように

後ろを向いていった。

「ねぇ、あんた高校生・・・、でしょ?」

「ウン、高二だけど」

「わァ、わたしようやく中三よ。これから受験で大変なの」

「あらそう、若いわネェ」

少女はちょっぴりお姉さんぶった口調になって言った。

「でも感心したわよ。私なんか、とっても真似できないことやるんだもん」

「ウフフ・・・」

あれだけ犯されながら、この人もやっぱりわたしを見ていたんだと思うと、

紫織は全身で好意に似た情感を感じる。

「わたし、紫織って言うの。ね、ね、お姉さん名前、教えて」

「私・・・? エリカっていうの。上条エリカ、ヘンでしょう」

「へぇ、わりとアイドルっぽい名前ね」

「フン、私この名前嫌いよ。もっと俗っぽいのが良いな。犬ならポチ、猫ならタマ

みたいな、どこにでもあるような名前・・・」

女子高生、上条エリカは、輪姦のショックからはもう立ち直っているようであった。

事件にもなりかねないほど、オーバーに悲鳴を上げて嫌がったわりには

諦めが早いというか、現実を何の障りもなく飲み込んでしまう。これも現代っ子が

備えている特質のひとつなのであろう。

だが実際に団地の部屋に戻って二人で風呂に入ってみると、エリカがあれだけ

騒いだのも無理はなかったと紫織にも納得できた。

素肌が直接荒削りの魚箱の板に当たって出来た擦りむき傷が、背骨のふくらみに

沿って火傷のように何箇所も剥けている。二の腕には青黒い痣が地図を描いて

乳房の裏側にまで広がっていた。

「ずいぶん酷くされちゃったねぇ、お姉ちゃん大丈夫・・・?」

傷口にしみないように優しくぬるま湯をかけながら、タオルを使わず指で撫でるように

汚れを落としてやると、エリカはときどき痛そうに身体を縮めたりするが、それでも

精一杯の明るさで言った。

「平気、平気、でも私って、しぃちゃんみたいに慣れてないから、有難うねぇ」

「ううん、わたしだって大分やられたわよ。ホラ、こんなにでっかい青タンが出来た」

吊り橋でハメられたとき、脚をつかんだ力が強かったのか、両腿の内側に

大きな青痣が残っていた。

「ひどぉい、よく我慢できるわね」

「あはは、わたしってさァ変態だから、神経が鈍いのかな」

「へぇぇ、信じらんない・・・」

こともなげに変態だという紫織の顔を、エリカは感心したように見つめていた。

「だってさァ、わたしここの毛が濃いでしょう?」

紫織は青タンを見せた内股をいっそう大きく広げながら言った。

「きっとセックスが好き過ぎるのよ。お姉ちゃんは薄いから良いな」

「あらそう、アラほんとだ。私ってまだ子供なのかしらネェ」

比べてみると、確かに年下の紫織のほうが、陰毛は黒々と密生している。

エリカのそれは、犯されたばかりの中身が腫れて外側に捲れている様子が

薄い毛の奥にハッキリと見えた。

同じ学級の友達とはほとんど口を利かない紫織も、年上のエリカには

すっかり打ち解けることが出来た。

それから互いの身体を比べあったり、今までに経験した男をコキおろして

大笑いしたり、二人で一時間近くも浴室で戯れていると、先刻の事件も

まるで映画館で見たスクリーンの中の幻影だったように思えてくる。

さっぱりとした気分で部屋に戻ると、送ってきた健が畳に寝転がってボンヤリと

テレビを見ていた。

「アイヤー、健ちゃん、まだいたんだ」

「今日はここに泊まると言ったろう」

「ウンそれは良いけど、どうしたのさ、お姉さんと何かあったの?」

「えぇぇ?紫織、おめえまだ聞いてねぇのか」

今度は健の方が意外そうな声を出してムクリと半身を起こした。

「今夜はお前の母ちゃんがキネ子のところへ来るんだ。昼間電話が

あったんだってよ」

紫織は始めて聞く話である。湯上りの素っ裸のまま棒を呑んだように

立っていると、健がすまなそうに言った。

「そうか、俺が言わなきゃわかんねぇんだな。ゴメン、言うの忘れちゃった」

「いいよ、そんなこと、あの人の自由なんだから」

紫織はぶっきらぼうな調子で言った。

たしかに、キネ子が母に会いたいと言っているという話しを聞いて、紫織が

ご主人様に抱かれることを条件に約束してもらったことは事実なのだが、

それが今日だったとは気がつかなかった。

道理で、今日は会ったときから健の様子はどこか違っていた。エリカを

抱きにこなかったし、いつもならふざけて風呂場を覗きに来るのに、黙って

テレビなんか見ている。

健とキネ子は姉弟でつながりあっているらしいから、母の絹枝が姉と会うことは

健にとっても何か心のわだかまりになるのかも知れない、と紫織は思った。



20 ・ 乱れ女子高生


今夜、母の絹枝がキネ子と逢っている。紫織にとってはエリカのことより

そのほうがずっと重大な事件だった。

わざわざご主人様に抱かれに行ったのも、健から絹枝をキネ子に紹介してほしいと

頼まれたからだ。

いくら変態で犬同然の母親でも、娘が付き合っている彼氏の姉で、しかも

レズ好みのサディストだという女のところへ逢いに行くというのは憚るだろう。

折りよく絹枝がご主人様から、娘の紫織を生け贄に出せと命令されて

困り果てている弱みに付け込んで、交換条件として出したのがキネ子と

逢わせるという筋書きである。それで紫織は条件を満たしたわけだが、

まさか絹枝がキネ子に逢いに行くとは思わなかった。

もしかしたら、絹枝がこんな約束で娘を連れてきたことを主人様に白状して、

ご主人様の逆命令でキネ子に逢いに行かされたのかも知れない・・・

と紫織は思った。

「ねぇ、何時なの。あの人がお姉さんと会うのは・・・」

「知らねぇよ、俺はあいつのやることなんか関係ねぇんだ」

健は、この話題にはあまり触れたくないような感じで言った。

姉のキネ子と絡みがあるといっても、べつに惚れ合っている姉弟でもないし、

そのくらい教えてくれたって良いじゃないか・・・

と紫織も負けていない。

「だってぇ、わたし、お母さんが何やっているのか知りたいんだもん」

「お前の母ちゃんはマゾなんだろ。紫織がそう言ったから紹介しただけよ」

「うん、マゾ牝、畜生だって自分で言ってた」

「だったらそれで良いじゃねぇか。キネ子も変態だからよ、だからヤリたかったんだろ」

「ねぇねぇ、健ちゃんのお姉さんて、どんな変態?」

「あいつは気違いだ。キネ子がお前の母ちゃんと何をやろうと、俺には関係ねぇよ」

健がこれほど嫌悪感をあらわにするのは珍しかった。

言われてみれば、輪姦とか人前でセックスするのは平気なのだが、若さに

任せてやっているだけで、紫織に比べれば健ははるかにノーマルな性欲の

持ち主である。

そんな会話を、エリカが全身を耳にして聞いていた。

「さぁ、そろそろ寝っか。俺はまだエリカとヤッていねぇからな」

「いいよ、わたし見てる」

「ひェェ、またヤルんですかァ」

エリカはオーバーなゼスチュアで言ったが、それほど嫌がっている素振りではなかった。

「うん、背中が痛かったら俺の上に乗れ。跨っているだけで良いよ」

「ふわぁ、リーダーと、光栄だわァ」

秋男にナンパされてグループに入ったばかりの新米のエリカは、リーダーの健から

指名されたことがよほど嬉しかったのだろう。

これで年下の紫織とも、対等に話し合うことが出来る・・・

単純と言えば単純、愚かな虚栄心だが、若い娘の心情とはこの程度のものだ。

湯上りのタオルを巻いたまま、エリカはさっそく寝そべっている健のズボンを脱がしに

かかった。

その横で、紫織が何の感動もなく、表情を失った顔でボンヤリとエリカの動作を

見守っていた。嫉妬めいた感覚は少しもなかった。

「ちょっと、これでも良いのかしら、おちんちん、立ってこないよ」

ズボンを脱がしたあと、腹の上にグタリと横になっている男根を摘んでしごきながら、

エリカがどちらにともなく言った。

「やっぱり紫織ちゃんのほうが合ってるんじゃない?」

「そんなことねぇよ。初めに舐めてから入れろ。じゃないとお前も痛ぇぞ」

「あ、そうね・・・」

長い髪の毛が、健の下腹から臍の周りに散っている。ジュコジュコと音を立てて、

顔全体を動かして男根を舐めるギコチない動作が、いかにも女子高生らしくて

新鮮だった。健はたちまち勃起したらしく、エリカが巻いたバスタオルを

身体から引き剥がしながら言った。

「ホレ、上に乗れ。穴の場所ぐらい自分でわかるだろう」

「う、うん・・・」

慌てて起き直って、男の腰をまたぐ。エリカが突っ立った男根を割れ目の中心に

当てようとして俯くと、すだれのように長い髪の毛が垂れ下がった。

「あ、痛・・・、でもいい」

体重でモロにメリ込んだらしく、エリカは思わず呻き声をあげたが、粘膜がすぐに

その苦痛を吸収してしまったようだ。両手を男の胸において、しゃがんだ形で

膝をバネに身体全体で上下に跳ねる。どこで覚えてきたのか、あるいは偶然

そうなってしまったのか判らないが、それがエリカのやり方であった。

マワされたときの疲労からまだ快復しきっていない筈なのに、アフッ、アフッと

息を切らして身体が弾むたびに、髪の毛が前後に揺れる。

だがこの姿勢なら、体重がかからないだけ男は楽だ。

「おい紫織、タバコ取ってくれ」

横着に上を向いて、女に身体を預けたまま、健が言った。

「俺って早漏なんだ。タバコでも吸っていねぇとイチコロでイカされっちゃうよ」

身体の接触面積が最小だから、感覚はすべて一点に集中する。

紫織が投げてやったキャメルに火をつけて、フーッと天井に吹き上げながら、

健は今にも射精しそうになるのを懸命に耐えている様子だった。

「ねぇ、お姉さんはどこでお母さんと会っているの?」

「俺の部屋だよ。ラブホなんかでヤレるわけねぇだろ」

「やっぱり・・・、設備が作ってあるんだ」

「そんなもんねぇけど、キネ子はもともと・・・、わっいけねぇ、動かすなようっ」

「えッえッ、どうしたの?」

「イッちゃうじゃねぇか、わわわっ、もう駄目だ」

腰を跳ね上げるようにして、エリカを振り落とす。つんのめって、エリカは健の

顔の上にのしかかる形になった。その背中に、ベタベタッと白いミミズのように

つながった精液が降りかかる。

「ふう、危ねぇ。お前みたいのが一番妊娠しやすいタイプなんだよ」

その前に何回も中出しでイカれているから、今更そんな心配も詮無いことだが、

突然道具を引き抜かれて、エリカも奇声を上げた。半分イキかけていたのか、

健の顔の上に覆いかぶさったまま乳首を据われながら、ブルブルと痙攣している。

「ゴッゴメン、満足できなかった?」

「いや、いいんだ」

健は半分になったキャメルを紫織に渡しながら言った。

「何だかよぅ、今夜は気分が乗っていねぇみたいで、すぐにイッちまったぜ」

その理由が、キネ子と絹枝の逢引にあるらしいことは、紫織にも察しがついた。

あの二人がどこで何をやっているのか、健は知っているに違いない。せっかく

途中まで聞きだした話しが、突然の射精騒ぎで中断してしまったのである。

「ねえぇッ、リーダー何とかしてェ」

そのとき、エリカが切羽詰ったような声で言った。

「私ィ、今日はまだ一回もイカされてないのよゥ。酷いじゃないッ、こ、こんな目に

あわせておいて・・・」

「はあ? お前数え切れないほどイッたんじゃねぇのか?」

「だってェ、自分たちばっかり良い思いしてさァ。あんなところでイケるわけないでしょう」

それは確かに、あれだけマワシをとられれば、痛いばかりで気分を出しているヒマなど

なかったのだろう。

「あいつら、女の気持ちなんか全然わかってないんだから・・・」

「そういうな、秋男がヤッても良いと言ったんだ」

「あんな奴、もう良いわよ。私だって仲間に入れてもらえるんでしょう」

「そりゃ良いけどよ、おめえ暴走族になりてぇんか」

「違うわよゥ、だったらリーダー抱いて、私を抱いて、イクまでやってえェ」

風呂に入って、グループのリーダーとサシで絡んでもらえることになって、

圧し潰されていた性欲が熱せられた気球のように弾けそうになって

しまったのであろう。有無を言わさず犯されてきた感覚の残り火が、

このまま燻ぶって終わる筈はなかった。エリカは恥らう気配も見せず、

素っ裸で健に絡み付こうとした。

紫織がそっと背中に散った精液を拭き取ってやったのも気がつかないようだ。

こうなると、高校生とはいえ食べごろに実った女の肉体である。中学生の紫織に

比べて、うねる姿態には淫気に満ちた蛇のような迫力があった。

こうしてこの日も明け方まで、リーダーの面目にかけてエリカを納得させるまで、

健は精力を振り絞ることになった。

三人でヤル気になれば、エリカはためらわずに応じただろうが、結局その夜は

紫織も二・三度オナニーしただけで、呆然と年長の男と女が演じる淫靡な痴態を

見つめていた。頭の片隅で、犬になった絹枝が、キネ子からいったいどんな

辱めを受けているのか、考え続けていたことも確かである。





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