百鬼夜行








百鬼夜行は「ひゃっきやぎょう」と読みます。日本の伝説、民話、伝承などに現れる妖怪を集めたもので、

安永年間、狩野派の絵師鳥山石燕が描いた「画図百鬼夜行」が有名です。

夜間に百鬼夜行に出逢ったという話は「大鏡」の藤原師輔をはじめ、「今昔物語」「江談抄」「宝物集」

「宇治拾遺物語」などにも見ることができて、平安時代から中世にかけてはよくある話であったようです。

百鬼夜行に出くわした時には、尊勝陀羅尼(そんしょうだらに)の護符を持っているか読誦で難を逃れる

こともあります。

なお、このページは1996年行われていたCSK(Cyber Space Kingdom)パビリオンに出品された
画図百鬼夜行・・・安永五年(1776年)
今昔続百鬼・・・・安永八年(1779年)
今昔百鬼拾遺・・・安永十年(1780年)
より要点を採録したものです。原本は国立国会図書館所蔵。




河 童 かっぱ 頭に皿があって、髪はおかっぱ、子供 くらいの大きさで甲羅のあるものとないものがあります。甲羅 のないものは全身が毛で覆われているようです。
猫 股 ねこまた 化け猫にも二種類あって、死んだ猫が祟るものと、年を経た飼い 猫が妖怪になるものがあります。年を経た猫が変化した妖怪が 「猫股」
犬 神 いぬがみ 代々犬神を受け継ぐ家系の人 があるとされています。犬神筋の人は犬神を祀る必要があり、も しこれを粗末に扱えば内外に厄をもたらします。
山 姥 やまうば 山中に住む老婆の妖怪、土地を豊作にさせたり富を与えたり する一方で、旅人や子供をとって食うという話も数多く残っています。
山 童 やまわらわ 悪い妖怪ではなく、昼飯などで山の仕事を 手伝ってくれるようです。
地方によっては、春になると川に入って河童 になると言われています。
幽谷響 やまびこ 幽谷響や山彦と書いて「やまびこ」と呼びます。木魅の項に記した とおり、これも山の中の音(声)の妖怪です。
天 狗 てんぐ 仏教僧がいろいろな執着、妄念を 捨てきれずに死ぬと極楽に行けず、魔道「天狗道」に落ちて、天狗に 生まれ変わるといわれます。
木 魅 こだま 長年を経た老木・巨木は魂を持つといわれ、木魅や木霊と書いて 「こだま」と読みます。現在でも、山で大声を出したときの反響を「こだま」といいます。
狐 火 きつねび 狐火は、真夜中遠くに松明か提灯かのような火がいくつも見える ものです。数多くの鬼火のことを、狐松明、また狐の嫁 入りと呼ぶ地方もあります。
網 剪 あみきり 網剪は蚊帳を切り裂く妖怪で、 朝になって蚊帳を片づけるときに、すっぱりと切れているところ があると、網剪によるものだといわれました。
窮 奇 かまいたち だいたいは旋風のお化けで、 出会うと、鋭い鎌で切ったような切り口の傷ができますが、 痛みも出血もみられません。
たぬき いろいろと化け ますが、狐が女性に化けることが多いのに対して、狸は男性それ も僧、坊主に化けることが多いようです。
垢 嘗 あかなめ 長い舌で風呂場の垢をなめてゆく妖怪です。風呂場が汚くて垢が ついていると現れるそうです。
かわうそ 河童と同様 水の妖怪であり、馬を引き 込むとか人を引き込むとかの話が残っています。失敗して 魚を届けるとか秘薬を教えるという話があります。
絡新婦 じょろうぐも 絡新婦は女郎蜘蛛とも言われます。大蜘蛛の妖怪ですが、 妖異な絶世の美女に変身します。正体を知ら れると、他人には秘密にするように約束させられます。
てん 鼬はいたちのことですが、てんは貂という動物のことで、「百鬼夜行」では同じ動物・妖怪に扱われている ような気配です。鼬は群れて怪火の元になるという話が あります。
姑獲鳥 うぶめ 産女、産婦と書いてウブメ、ウグメと呼ばれたりします。 身重のまま亡くなった女性の霊が変化したものといわれま す。子供を抱いて水辺に現れるようです。
海座頭 うみざとう 海坊主の類はいろいろ と報告されています。海で死んだ人の霊であるとか、海上の強風や波、巨大な蛸、トドが変化したものといった 説があります。
野寺坊 のでらぼう 夕暮れに人のいないはず の廃寺で鐘の音がする。一説には、お布施が無くて廃寺に追い込まれた寺の住職の恨み が寺に残って鐘を鳴らすのだそうです。
高 女 たかじょ 部屋を覗き込んで、ゲタゲタと笑う。 それが2階であっても、背が伸びて覗き込む。ただ覗くだけの 妖怪で、男運のなかった醜女が死後に変化するという話もあります。
手の目 てのめ 盲人が悪者に殺され、持っていた 金品を盗まれました。盲人は成仏できずに、悪者への 恨みと犯人を探そうという怨念から、妖怪に変化して手の目 になったそうです。
鉄 鼠 てっそ 皇子 誕生の祈祷を行った頼豪阿闍梨が戒壇建立を許されず、断食して死ぬことで皇子に祟り、鉄の牙をもった八万四千匹の鼠が、比叡山 の教典を喰い破ったと伝えられます。
黒 塚 くろづか 安達ヶ原の鬼婆といった方が通りがよいでしょう。宿を 求める旅人に対して昼間は親切な老婆のふりをして、夜になると 殺して食べてしまう恐ろしい鬼婆がいたということです。
飛頭蛮 ろくろくび 首が離れて飛ぶ抜け首は 中国の妖怪「飛頭蛮」が日本に入ってきて 変貌したものといえるでしょう。 首がつながったまま伸びるイメージが定着したのは江戸時代からのようです。
逆 柱 さかばしら 家を建てるときに、柱を逆さに すると、屋鳴りがして、凶事が起こるようです。柱になっても 木の精霊がいるということでしょうか?
反 枕 まくらがえし 枕返しとは、寝て いる人の枕がはずされて、足下の方にいったりすること をいいます。寝ている間に反枕(枕返し)とい う妖怪が現れていたずらするのだと思われていました。
雪 女 ゆきおんな 「ゆき おなご」とも言われますし、似た(ほとんど同じ)妖怪に雪 女郎というものもいます。だいたいどの伝説をみても、美し い顔で、色白で、真白な着物をきて現れます。
生 霊 いきりょう 生きたまま魂が遊離し災を なすものを生霊といいます。好きな男性を奪われた 女が、無意識に自分の生霊を飛ばして、奪った女性を責め 時には相手を殺してしまうようです。
見 越 みこし 見越し入道、見上げ入道、高入道、お見越し、 次第高などとよばれる妖怪で、多くの話では、道で出会う妖怪で、 見上げれば見上げるほど背が高くなっていくことになっていま す。
精螻蛄 しょうけら 昔の家には、屋根に明かり取りの窓が作られていました が、その窓の方を見るとのぞき込むも のがいる、外へ出て見ても誰もいない時、しょうけらが覗いているのだ、と言われます。
兵主部 ひょうすべ 兵主部はもとは兵主という名前 で、その元は 蚩尤だといわれ、半人半獣の怪物で鉄を主食にします。これは 鉄器を使用する異民族を意味するともいわれます。
わいら
山にいて大きな牛かサイのような体で、前足の鋭い 鈎爪で小動物をとって食べているのではないかということで す。雄は土色で、雌は赤色であるともいわれます。
おとろし いつもは鳥居や古寺の山門に棲んでいて、 神社や寺に落書きしたり悪戯したりすると、鳥居からどすんと 落ちてきたり、襟首をつかんだりして戒めるそうです。
塗 仏 ぬりぼとけ
全身に色を塗られた坊主の妖怪怠惰な僧を襲ってくるとも言われ、仏壇を開けると 目玉をぶらぶらさせながら、突然現れるといいます。危害を 与えることはないようです。
濡 女 ぬれおんな 「ぬれおなご」、「ぬれよめじょ」など と言われるようです。人面蛇体に描か れていますが、単にずぶぬれの女性の姿で現れたりもするよ うです。一般に海の妖怪といわれます。
ぬらりひょん 忙しい夕方の刻に現れて、かってに人の家に上がり込んで、 座敷に座ってお茶を飲み、のんびりしている妖怪がぬらり ひょんだといわれます。一説には海坊主だとも
元興寺 がごぜ 大和の元興寺で埋められ ていた男が、夜になると鬼になって現れ、鐘つき堂の小僧を 襲ったそうです。関西では子供をさらう鬼 ・妖怪のことをガゴゼとかガゴジとかいったりします。
おうに 未詳。鬼あるいは鬼女の一種でしょうか?
青坊主 あおぼうず 青坊主は麦の葉が青い頃に、夕暮れに帰り遅れた 子供を、麦畑の中から真っ青な麦坊主が出てきてさらってい くという話もあるのですが、妖怪 であるかどうかは不明です。
赤 舌 あかした いつも赤い舌を出しているので赤舌といいます。河童に良く似た水の妖怪のようです。陰陽道の万事に凶の日を赤舌日というのですが、それと関係が有るのかどうかは不明です。
ぬっへっほふ とても変な姿の妖怪で、 ぶよぶよとした肉の塊に手、足がついています。のっぺらぼうとは 名前が似ていますが、種類は違うようです。
牛 鬼 うしおに 牛の頭を持った鬼ですが、一般には海の妖怪とされ ていて、人間や船を襲う妖怪のようです。「枕草子」の「名おそろしきもの」に書かれている窮鬼 (いきすだま)が牛鬼とされています。
うわん 廃屋や古寺の横の静かな夜道を歩いていると、とつぜん 「うわん」という声で驚かす妖怪のようです。 音だけの妖怪でしょうか?詳しいことはわかっていません。
蜃気楼 しんきろう 蛤は江戸時代までは 特異な能力を持つと思われていた。「蛤は蜃ともいい、気を吐いて 空中に楼閣を映し出す 」と。 蜃が蛤であるために蜃気楼も蛤が出すということになったようです
燭 陰 しょくいん 燭陰は中国の神で、「目を開けば昼となり目を閉じれば夜となる。飲まず食わず息せず息すれば風となる。 身の長さ千里、無けいの東にあり、人面蛇身で色赤く 鍾山のふもとに住む」
人面樹 じんめんじゅ 花の一つ一つが人の首のようで、 笑ったりしています。人面樹に関する伝説はアジアの国々にも残っています。中国には、 人参果という赤ん坊のなる木が登場します。
人 魚 にんぎょ 日本で最初の記述は、日本書紀(619年推古天皇の時代)に、 摂津で怪物のよう な顔をした人魚が漁師の網にかかった話。 人魚の出現は何か大事件の前兆といわれていました。
反魂香 はんごんこう 反魂樹から作られるという霊香。死者の魂を呼び戻す呪術に使用されます。 能の「花筐(はながたみ)」の中の 照日の前が継体天皇を偲びながら舞うシーンで 出てきます。
彭 侯 ほうこう 中国では千年の樹齢を重ねた木は精霊が宿ると考えられて いました。そのような木を伐ると、中に黒犬に似た獣を見つけることが あり、これを彭侯と呼びます。
天狗礫 てんぐつぶて 誰もいない山中で突然に大音響がして、石や砂がつぶてのように 降ってくることを「天狗礫」といいます。これは、山に不浄を 持ち込んだときの天狗の 怒りだといわれます。
道成寺鐘 どうじょうじのかね 若い僧に惚れた女が蛇身に化して僧を追いかけ、鐘の中に逃げ込んだ僧を 鐘ごと取りまいて焼き殺し、鐘まで溶けてしまったということです。 歌舞伎「京鹿子娘道成寺」
灯台鬼 とうだいき 灯台鬼の話は、「平家物語」や「源平盛衰記」の俊寛の話に挿話として 入っているようです。また 「和漢三才図会」の薩摩国、鬼界島の中の記述を参考にしているようです。
泥田坊 どろたぼう 自分の田畑への執着が、死んだ後もこの世に残って妖怪に変化した ものです。他人のものとなった田畑に出て、「田を返せ、田を返せ」と わめき続けます。
古庫裏婆 こくりばば ある山寺に、七代も前の住職の妻という女がやってきて 庫裏に住みつき、死んだばかりの死体の皮を 剥ぎ取って食べる鬼婆に変わってしまった。 この鬼婆のことを古庫裏婆と呼びました。
白粉婆 おしろいばば 白粉の神である脂粉仙娘の侍女。 大きな笠をかぶり、雪の夜に酒を買いにいくといいます。またの名をオシロイバアサンといい、鏡をジャラジャラひきずってくると いう話もあります。
蛇骨婆 じゃこつばば 右手には青い蛇をにぎり、左手には赤い蛇をにぎる。蛇五婆ともいわれ、夫の蛇五衛門という妖蛇が封じ込められて しまったので、夫を守るため蛇塚に近づく者を威嚇してくるとも いいます。
影 女 かげおんな 物の怪の棲む家には、月の光で女の影がうつるそうです。 男だけで暮らしている家には、「影女」が棲みつくことがあり、 月夜には影だけが現れるようです。
倩兮女 けらけらおんな 一人で歩いていると、背後から「ケラケラ」笑う声が します。ふり向くと40歳ほどの中年女が 朱色に染めた唇で笑っています。怖くなって逃げだそうとすると、前回よりも大声で笑います。
煙煙羅 えんえんら 煙の妖怪。竈や風呂場から立ち登った煙の中に、 人のような顔の形が浮かび上がる。空中に止まって漂っているときがあります。 そんな姿が妖怪を感じさせたのでしょうか。
紅葉狩り もみじがり 謡曲「紅葉狩」では、紅葉狩の最中に戸隠山の鬼退治を命じられた平維茂が、 美女に誘われて酒宴に引き込まれますが、変化した鬼女を退治します。
朧 車 おぼろぐるま 京都の賀茂大路では、朧月夜にはどこからともなくギシギシときしる音が して、牛車が現れます。その牛車の正面には巨大な人面が現れるとの ことです。
火前坊 かぜんぼう 10世紀の末頃には高僧たちが焚死往生を 願って、鳥部山でみずから焼死したそうです。しかし、中には極楽へ 行けない僧もいて、その霊が火前坊になったそうです。
蓑 火 みのび 雨の降る晩に、着ている蓑の端などに突然怪火(怪光?)が現れて くっつくものをいいます。熱くはありませんが、燐光の一種でしょうか。払えば払うほど数が増えるともいわれて います。
青行灯 あおあんどう 百物語は 話が一つ終わるたびに百本の蝋燭を順番に消していくのですが、行灯に青紙を貼って暗くしていく 方法もある。その時 鬼の話をすると、行燈から妖怪が現れたといいます。
雨 女 あめおんな 中国巫山の神女は、朝に雲となり、夕には 雨になるといわれています。だから「雨女」というのも、この類だろうと いうことです。妖怪というよりは、「雨神」に近いものでしょうか。
小雨坊 こさめぼう 小雨坊は、修験道の霊山である大峰・葛城の山に雨の降る夜に僧の姿で 現れて、人に斉料を乞う霊です。修行の半ばで亡くなった修行僧の霊 なのでしょうか。
岸崖小僧 がんぎこぞう 岸崖小僧は、子供ほどの大きさで、身体中に毛が生えています。足には 水かきが付いていて、尻尾があり、歯が強く、魚も頭からばりばり食べます。
あやかし 「あやかし」は海の妖怪で、船や磯や瀬や怪火、ある時は山のようなものに化けるよう です。あやかしの化けた船や山には逆に つっこむのが良いとされているようです。
鬼 童 きどう 「古今著聞集」巻九では、市原野で牛を殺してその中に隠れ、源頼光を 殺害しようと待ち伏せした鬼童丸の話があり、盗賊とか悪党が山に逃げ妖怪になったことも考えられます。
鬼一口 おにひとくち 耳まで口が裂けた鬼で、一口で人や動物を食べてしまうそうです。「伊勢物語」六段で、男、女と書かれている話が、業平と清和天皇の后である 藤原高子と解釈されているようです。
蛇 帯 じゃたい 蛇は洋の東西を 問わず、古来さまざまな怪異なイメージに使用されてきました。「蛇帯」というのは女性の妬みが帯にとり憑いて、毒蛇に変化して 嫉妬の相手を絞め殺すものです。
小袖の手 こそでのて 江戸時代、京都の商人が娘に着物(小袖)を 買い与えた ところ見知らぬ娘が その小袖を着て立っていたりしました。小袖の両袖口か ら白い女の手が出てきて、皆驚きました。
機 尋 はたひろ これもの「蛇帯」ように女性の怨みが 変化したもので、家を 出たまま帰ってこない夫への恨みが、機で織られる織布に塗り込められ、 できあがった布が蛇と変化して夫を探すそうです。
大座頭 おおざとう 風雨の夜に徘徊するそうですが、人なのか妖怪なのかよく わかりません。大入道と関連したものかどうか、あまり言い伝えが ないようです。
火間虫入道 ひまむしにゅうどう 生きているときに、うつらうつらと一生を 過ごした人が、死んで火間虫入道になるようです。夜に仕事をしていると 現れて、灯油をなめていくようですが、実害はないようです。
殺生石 せっしょうせき 「玉藻の前」に変化して陰陽師に見破られ逃げ出した八百歳の妖狐は栃木県那須野で討ち取られましたが、 妖狐は石に変化し周囲の動物を殺してしまうので 殺生石と呼ばれました。
風 狸 ふうり 風狸は風母、平猴、風生獣とも呼ばれます。木によじ登り、風の 道を読みとり、グライダーのように滑空して、風に乗って空を飛ぶことが できます。簡単に山をも超えることができました。
茂林寺釜 もりんじがま 有名な文福茶釜に化けた狸のことです。 守鶴という僧に化けた狸が七代の住職に仕えたそうですが、昼寝している ときに尻尾を小僧に見つかって、寺を出ることになったそうです。
羅生門鬼 らしょうもんのおに 平安京の羅城門は二層からなる大きな楼門でしたが、渡辺綱に腕を斬られた鬼は茨木童子という名前で知られています。 その顛末は謡曲や絵巻物などに記されています。
夜啼石 よなきいし 昔、子供を身ごもった女が、この石の所で夜に強盗に襲われて斬り 殺されました。その後、石から悲しい泣き声が 聞こえるようになった。この石は小夜の 中山久延寺に残されています。
芭蕉精 ばしょうのせい 芭蕉のたくさん生えていた琉球などでは、二里 (約八キロ)も三里も続いて森のようになっているところがあって、 夜などに通ると、芭蕉の精に出会うということでした。
硯の魂 すずりのたましい ある人が赤間ヶ関産の石硯を買ってきて、ある日、硯の中に海が現れ、やがて源平の合戦もこのようで あったかという様子でした。 赤間ヶ関は下関の近く、平家が滅亡した場所です。
屏風覗 びょうぶのぞき 屏風は寝室にあって、いろいろな秘め事をみるものですが、それが魂か恨みを もったのでしょうか、情事のとき屏風の上に現れて覗くようです。女性の姿をしているようです。
毛羽毛現 けうけげん 全身が毛に覆われた犬のような姿をしていますが、一種の疫病神のようで、 じめじめしたところに棲みつくようです。毛羽毛現の棲みついた家からは 病人が出ると言われています。
目目連 もくもくれん 人が住まなくなって荒れ果てた空家には目目連などが住みつく ということです。空き家の障子は破れていて当然ですから、 そのたくさんの穴のあたりが出所かと思います。
狂 骨 きょうこつ 恨みをもった人骨を井戸の中に隠したりすると、やがて骸骨姿の幽霊が 現れます。自分の骨の在る場所を示そうとしているのか。狂骨は相手かまわずに祟るようです。
目 競 めくらべ 平清盛が 福原に遷都したとき、いろいろな怪異が現れたようです。 千万のどくろが現れて清盛をにらみつけたが、逆ににらみ返した。平家一族に滅ぼされた貴族や武家の恨みか。
後 神 うしろがみ 暗い道を歩いていたりすると、急に後ろから髪をひっぱられることが あります。 これは後神の仕業であると思われました。未練と同時に臆病神のようでもあります。
否 哉 いやや 「いやみ」ともいわれるようです。この妖怪はイヤミといって、後ろ姿は美しいが顔は爺だ ということですが、本当に妖怪だったのでしょうか。
方相氏 ほうそうし 方相氏は無形の疫鬼を追い払う役割でしたが、時代がたつにつれて、 その恐ろしい姿から方相氏自体が疫鬼とみなされて、駆逐されるように なってしまいました。
滝霊王 たきれいおう あまり情報がありません。もっとも修験道などでは、滝は修行する 場所として聖なる場所ではあります。滝に棲みついた 仏教系の神仏でしょうか。
白 澤 はくたく 中国の黄帝が蚩尤をほろぼした後に東巡したときに、 桓山付近の海岸で白澤(はくたく)という神獣にあいました。白澤は 人間の言葉を理解し、あらゆることを知っているそうです。
隠 里 かくれざと 民家から離れた山の中には、一般の人には見つからない隠里があります。家には不思議なものがいろいろ あって、迷い込んだ人は何か一つ持って帰ることを許されて いるそうです。




百鬼夜行絵巻・・国立歴史民俗博物館 蔵

もの言わぬスターたち
性犯罪研究 怪談と妖怪の世界

実録・公開処刑